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VW規制逃れ、なぜ簡単には許されないほど「悪質な不正」なのか?(Business Journal)
http://www.asyura2.com/15/hasan101/msg/166.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 10 月 01 日 00:37:51: igsppGRN/E9PQ
 

                  フォルクスワーゲン・ザ・ビートル(「Wikipedia」より/Mario)


VW規制逃れ、なぜ簡単には許されないほど「悪質な不正」なのか?
http://biz-journal.jp/2015/10/post_11759.html
2015.10.01 文=中西孝樹/ナカニシ自動車産業リサーチ代表 兼 アナリスト Business Journal


 独大手自動車メーカー、フォルクスワーゲン(VW)のディーゼル排気ガス規制をめぐる不正問題が発生した。自動車業界史上最大のスキャンダルともいえる。

 9月18日、この問題が米環境保護局(EPA)から公表されて以来、VWの株価は30%も下落、世界中の株式市場に悪影響を及ぼしている。今後の成り行き次第では、欧州メーカーの強みであるディーゼルエンジンの将来をも左右しかねない大事件となった。

 ことの発端は、ディーゼル乗用車の排ガス数値について試験数値と実走行時との間に大きな乖離があったことへ、欧州委員会が調査を強めたことにある。非営利団体である国際クリーン交通委員会(ICCT)に調査を依頼したのだ。

 その調査を受託したウエスト・バージニア大学の研究結果が、VWの不正を暴く契機となったのだ。調査結果を元に、カリフォルニア州大気資源局(CARB)、米環境保護局(EPA)とVWとの交渉は実に1年以上に及んだ。最終的にVWは不正を認め、9月18日に正式に公表された。VWは米国で2009年モデルイヤー以降の48.2万台をリコールし、問題のあるエンジンを搭載した「ジェッタ」「ビートル」「パサート」等の米国販売を停止した。

■「ジキルとハイド」のエンジン

 EPAの指摘によれば、問題の「EA189タイプ」のエンジンには「ディフィートデバイス」と呼ばれる無効化機能ソフトが組み込まれていた。このソフトは、ハンドル操作、スピード、圧力などを検知し、室内での排ガス試験の走行と判断したら、排ガス規制モードで走行し、窒素酸化物(NOx)の排気を規制通りに抑える。通常走行だとソフトが認識すると、ディフィートデバイスにスイッチが入り、排ガス低減制御機能を停止させ、規制の40倍ものNOxを排出していたという。まさに、「ジキルとハイド」を地でいくエンジンだ。

 欧米では、かなり以前からディフィートデバイスは禁止されている。ちなみに、これを用いた違法ケースの摘発が過去にもある。1998年にフォードがディフィートデバイスを用いた大気浄化法違反により780万ドルの賠償金を支払った。日本でも大型トラックの排気ガス量が、試験走行と一般走行に大きな差異が生じていたことから、11年に車両総重量3.5トン超のディーゼル重量車にディフィートデバイスの一般走行での使用禁止を取り決めた。

 高い走行性能と環境性能を両立してこそのクリーンディーゼル技術である。VWは、この技術を「ブルーモーションテクノロジー」と冠を付け、06年から欧州、08年には米国へ幅広く展開してきた。日本市場へも導入直前であったが、この一件で再検討される公算が高く、国内消費者への実害は限定的に留まる見通しである。

■消費者を裏切った悪質な不正

 ブルーモーションテクノロジーを基にするTDIエンジンを搭載したモデルは、通常のガソリン車よりかなり高めの価格設定が通用してきた。それは、走行性能と環境性能を両立していると信じた消費者が支払った対価である。規制当局と消費者を裏切った悪質な不正は、簡単には許されることはないだろう。

 VWは不正ソフトの存在を認め、対策費に8700億円を第3四半期に計上することを決定した。VWによれば、現時点で08年から導入されたEA189タイプのみに不正が限定されるという。そのエンジンを搭載する車両は世界に1100万台ある。現時点では、正式なリコールとなったのは米国の48.2万台にすぎない。VW乗用車ブランドのCEOであるヘルベルト・ディースは、その内500万台程度が問題となる見通しを示した。そして、ドイツだけで280万台の排ガス不正対象車が公表済みである。問題は米国を離れ、欧州から世界各国に波及することは不可避な情勢だ。

 誤解を避けるべきは、問題のエンジンはEuro5と呼ばれる09年に実施された欧州排気ガス規制に準拠した比較的古いエンジンであるという点だ。現在のEuro6に準拠するエンジンを搭載するモデルには、法律と環境規制に適合しているとVWは説明している。

 米国の排気ガス規制は「Tier2Bin5」と呼ばれ、要求されるNOx排出量は0.04グラム/kmと、欧州Euro5の0.18グラム/km、現行のEuro6の0.08グラム/kmと比べ極端に厳しい。同時に、米国の軽油に含まれる硫黄成分は15PPM以下と、日欧の10PPMと比較してかなり甘い。

 これらの制約の中で、燃費と走行性能のバランスを取ることは決して容易なことではない。実際、スカイアクティブDで高い成功を収めてきたマツダは、マツダらしい走行性能を実現するために、米国市場へのディーゼル投入を慎重に見極めてきた事実がある。

■不正に手を染めた理由とは

 なぜ、VWがこれほどのリスクを取って不正に手を染めたのか。真相は今後の調査や公聴会の中で明らかにされていくだろう。

 筆者の読みは大きく3点ある。

 第一に、成長戦略の要であった米国販売100万台を達成するため、ブルーモーションテクノロジーを消費者に高く評価されようと功を焦ったことだ。

 第二に、ディフィートデバイスと同様の働きをする制御ソフトはエンジン始動時や低外気温時などに組み込まれることはある。VWの技術者が、ディフィートデバイスの定義を甘く見積もった可能性はある。

 第三に、弱い企業統治と複雑な組織による規律の問題である。本来、VWは社会貢献を含めたCSRの意識が非常に優良な企業である。しかし、その表面とは違い、内面は過去の公益企業時代の名残や、長期的な同族支配による複雑な企業文化を有すると考えられる。

 大株主である元監査役会会長のフェルディナント・ピエヒが22年間にわたり独善的な経営を続けたVWは、非常に特殊な会社だ。企業買収を繰り返し、複雑な組織と意思決定の仕組みを形成してきた。ピエヒは、結果主義に基づいた容赦ない人事を繰り返した。不正に走った遠因には、結果主義に対する厳しい経営姿勢が疑われる。

■危機をバネに、望まれる経営の近代化

 VWは、06年の600万台弱から14年に一気に1000万台を超える急成長を遂げ、15年上半期の世界販売台数でトヨタを抜き去り世界トップに躍り出ていた。しかし、グループ販売台数の36%を占める中国市場は失速気味。そこに、ディーゼルエンジンの不正問題が浮上した。さまざまな地域で、一部車両の販売停止や消費者のボイコットが起こるリスクがあるだろう。

 VWは、1000万台を目前に米国市場と品質問題につまずいたトヨタと同じ轍を踏む。ただし、トヨタは劇的な復活を遂げた。VWにもチャンスはあると考える。売り切り商売ではない自動車ビジネスでは、メーカーとユーザーはより長期的で親密な関係がある。その関係が切れてしまう前に、信頼を回復する時間的な猶予はあるものだ。

 ユーザーとの信頼回復を実現できる力がVWにはあると考える。この危機をバネに、経営の近代化を実現し、信頼を勝ち取れる新技術と新製品を待ち望む。VWの新経営体制の舵取りを注目していきたい。

(文=中西孝樹/ナカニシ自動車産業リサーチ代表 兼 アナリスト)

 

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コメント
 
1. 2015年10月01日 04:35:38 : HL0Tnh1ZXA
DEに関して日本車は出遅れていたが、マツダのDEはVWを抜いたようだ。
一説には、米が日本車の性能に合わせて規制を強化したため、VWはクリア出来なくなったので今回の不正に及んだとも言われている。

2. 2015年10月01日 18:43:38 : OO6Zlan35k
トヨタもVWの不正に抗議していた

2015年10月1日(木)大西 孝弘

 トヨタ自動車が数年前から、独フォルクスワーゲン(VW)のディーゼル車の排ガス性能に疑問を持ち、欧州の規制当局に取り締まりを要請していたことが「日経エコロジー」の取材で明らかになった。

 背景にはディーゼル車の開発において、VWと同じような燃費や走行性能を求めると、排ガス性能が発揮できなかったことがある。競合他社のデータと比べてもVWが不正ソフトを使っていなければ説明できないデータだったという。

 しかし、規制当局は動かなかった。実際、2013年の欧州委員会共同研究センターの調査で、不正ソフトを見つけていたと欧米メディアが報じている。EUではこうしたソフトは以前から違法としていたが、「規制当局は問題を追及しなかった」(英紙フィナンシャル・タイムズ)という。

 不正が明るみになったのは、欧州ではなく米国だった。環境NPO(非営利法人)のICCT(International Council on Clean Transportation)や米ウェストバージニア大学の調査からVWの排ガス性能に疑念が持たれ、最終的には米環境保護局(EPA)がVWの不正を発表した。


欧州の規制当局はVWの排ガス不正を認識しながら、問題を追及しなかったと報じられている(写真:ロイター/アフロ)
 以前から同業他社はVWに疑いの目を向けてきた。ディーゼル車のエンジンや排ガス技術は基本的に大きな差がない。それにも拘わらず、燃費や走行性能で差がついているならば、疑問を抱かざるを得なかった。

 フォルクスワーゲンの不正の背景に自動車業界に共通する課題が浮かび上がる。

 1つは実燃費向上に対するプレッシャーだ。

 排ガス問題でも注目されたICCTが9月24日に発表した報告書が、再び自動車業界で注目を集めている。

 ICCTは報告書で測定データに基づき、カタログ燃費と実燃費のかい離が広がっている問題を提起した。カタログ燃費とは規定の試験モードに基づき、認定された燃費だ。実燃費とは実際に走行してみた際の燃費だ。従来からその差の大きさが問題視されてきたが、ICCTは実際の測定データに基づくかい離を公表した。

 下のグラフをご覧いただきたい。企業ごとのかい離率のグラフだ。かい離があるのはもはや前提である。ポイントは全社平均のかい離率から各社がどの程度の差があるかだ。試験以外のリアルワールドでは基準値の40倍のNOxをまき散らしていたと報じられたVWだが、カタログ燃費と実用燃費のかい離率は他社に比べて小さい。毎年の全社平均値より下回っているのは、VWグループと小型車が主力の仏フィアットと仏プジョーシトロエングループ(PSA)だけだ。この対象車はディーゼル車以外も含まれるが、欧州で走行しているクルマを対象としたため、ディーゼル車が多いと見られる。

 実際、これまでVWは実燃費の良さを売りにしてきた。VW日本法人のホームページでも、他社と比較しながら実燃費の良さをアピールしている。

 これは基盤とする欧州市場の特長がありそうだ。欧州の自動車事情に詳しいコンサルタントは「欧州の顧客は自動車の性能に厳しく、実燃費へのプレッシャーが強い」と話す。その中でフォルクスワーゲンは排ガス性能を犠牲にしてでも、実燃費を向上させようとした構図が浮かび上がる。

燃費とNOxは二律背反の関係

 ディーゼル車において、燃費とNOx(窒素酸化物)は二律背反の関係にある。エンジンの燃焼効率を上げれば燃費が向上する一方で、空気中の窒素と酸素が反応し、NOxが発生しやすくなる。それを様々な技術を使って両立させようとしているが、どうしても二律背反の要素は残ってしまう。

 特にこのジレンマを抱えるのが排ガス浄化装置の1つである再循環装置(EGR)だ。EGRは排ガスの一部をエンジンに戻し、エンジンの燃焼温度を下げてNOxの発生を抑える。EGRを機能させ過ぎると排ガスの循環量が増え、「燃費が最大で3〜4割悪化する」(日本自動車研究所のエネルギ・環境研究部の土屋賢次部長)。

 そこで実際には、EGRを「適度に」使って燃費の悪化を抑えつつ、残りは後処理装置でNOxを低減するのが一般的だ。VWは不正ソフトを用いて試験以外ではEGRなどを使わず、燃費向上を実現する一方で、NOxをまき散らしていたと見られている。

 もう一つの共通の課題が耐久性だ。ディーゼルエンジンの研究に長年取り組んできた早稲田大学理工学術院の大聖泰弘教授はVWの不正発覚後すぐにこの問題を指摘していた。「EGRを使うと使わない場合に比べて燃費の悪化だけでなく、エンジンの劣化が早くなる」と話す。VWの不正によって、快走を続けてきたディーゼル車の技術的課題が改めて認識されることになった。

ICCTが公表した自動車各社のカタログ燃費と実燃費のかい離率

CO2排出量で比較。リース会社のデータを活用した。2014年まで全社平均のかい離率は大きくなっている。2014年のトヨタ自動車のかい離率が伸びているのはハイブリッド車の販売が伸びたため
[画像のクリックで拡大表示]
 試験時とリアルワールドでのデータの違いは、排ガスだけでなく燃費でもある。VWはディーゼル車において燃費を優先したとするならば、環境よりカネを選んだとの批判を受けざるを得ないだろう。 なぜなら、燃費は直接消費者の便益になり、自動車の購入動機につながるが、排ガス性能は購入動機になることはあまりないからだ。規制をクリアするのは義務であるため、できるだけコストを減らしたいとの意思が働く。皮肉なことに、VWは環境軽視のしっぺ返しを制裁金や賠償、ブランド毀損などの巨額資金流出という形で受ける。

他の環境規制への波及も

 試験時と実態の格差が問題となってきたのは、自動車の排ガス規制が初めてではない。これまで大気汚染や水質汚染、化学物質汚染など様々な環境規制が同様の問題を抱えてきた。常に汚染を測定するとコストがかかりすぎるからだ。2兆円を超えるとも言われる巨額制裁金がVWに科されれば、環境規制をより厳格に適用するという動きが世界的に広がりそうだ。

このコラムについて
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