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物価見通しについて、強気の姿勢を貫く黒田・日銀総裁(撮影:尾形文繁)
物価マイナス転落でも日銀総裁はなぜ強気?
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150930-00086454-shikiho-bus_all
会社四季報オンライン 9月30日(水)16時16分配信
総務省がこのほど発表した8月の消費者物価指数は、生鮮食品を除くベースで前年同月比0.1%の下落となりました。これは、日銀が量的・質的金融緩和を開始した2013年4月以降で初のマイナスで、デフレ脱却のための「物価上昇率2%」の目標実現は遠のいています。
消費者物価指数(生鮮食品を除く)は長年にわたるデフレで下落が続いていましたが、日銀が量的・質的緩和に踏み切った翌5月にマイナス圏を脱してゼロとなった後、6月からはプラスに転じ、14年4月には上昇率が1.5%(消費増税による影響を除く)まで拡大しました。
しかし、その後の上昇率は鈍化傾向を強め、今年に入ってからは0〜0.3%の低い水準で推移していました。それが今回の8月でついにマイナスとなったわけです。(14年4月〜15年3月は消費増税によって前年同月比の数字がかさ上げされているので、物価の趨勢を連続的に判断するには消費増税分を除いた数字を見る必要があります。)
消費者物価がマイナスとなった最大の原因は原油安です。8月の結果を品目別に見ると、ガソリン(前年同月比17.8%下落)、都市ガス代(9.5%下落)、電気代(5.1%下落)などエネルギーが前年同月比10.5%の大幅下落となりました。これらが物価上昇を0.99ポイント押し下げています。まさに物価マイナスの“主犯”と言っていいでしょう。
これを受けて市場では、「日銀が物価目標達成のため追加緩和に踏み切るのではないか」との観測が浮上しました。黒田日銀総裁はこれまで「物価目標の早期実現のために必要と判断すれば躊躇なく調整を行う」と発言しており、物価がマイナスとなって目標実現が遠のいたかに見える今はまさにその「調整」、つまり追加緩和が必要なときと見るこができます。
しかも、8月の消費者物価が発表された9月25日の昼に安倍首相と黒田総裁の会談が行われ、一段と追加緩和観測を強めることになりました。安倍首相がその前日に「アベノミクス第2ステージ・新3本の矢」を発表したばかりというタイミングだったのも注目されるところです。
■ 「物価は着実に改善」
追加緩和があるとすれば10月の可能性が高そうです。同月には金融政策決定会合が6〜7日と30日の2回予定されていますが、30日の会合では半年に1度の「経済・物価情勢の展望(いわゆる展望レポート)」を決定するため、それに合わせて追加緩和するというのが最も整合性があるからです。10月末と言えば昨年もサプライズ緩和があったので、「今年もその再来か?」という連想もあります。
しかし、物価上昇率と追加緩和の可能性はそう単純でないのも事実です。黒田総裁は28日の講演で、物価の基調について「着実に改善している」と従来通り強気の発言をしているのです。消費者物価はマイナスになったのに「着実に改善している」とは矛盾するようですが、8月の消費者物価指数の中身をよく見ると「改善している」ことがわかります。
品目別でエネルギーの下落が大きかったのは前出の通りですが、日銀によればエネルギーを除く指数だと前年同月比1.1%の上昇となっています。下落した品目が131だったのに対して、上昇した品目も339品目を数えます。つまり全体としては物価上昇が続いており、デフレ脱却の動きは持続していると言えるのです。
そもそも物価というものは、コスト要因と需給要因によって変動します。コスト要因とは原油価格の変動などによるものですが、これは国内の景気や経済情勢とは別の原因で変動するものです。したがって現在のように「デフレ脱却かどうか」を判断するうえでは、需給要因が重要になってきます。エネルギー以外の品目で上昇した品目が多いということは、国内の需要がある程度しっかりしていることを示しているのです。
こうしてみるとデフレ脱却に向けての動きも着実に進んでいると見ることができるわけで、そうであるならば急いで追加緩和しなくてもいいということになります。
実は総務省が発表している消費者物価指数には、(1)総合指数(2)生鮮食品を除く総合指数(3)食料(酒類を除く)とエネルギーを除く総合指数、の3種類があります。(1)は全品目(現在は588品目)を対象としており、物価全体の動きという意味ではメーンの指標です。
しかし、これに含まれる生鮮食品は天候などによって変動が激しいため、物価の基調的な動きを判断するには(2)(生鮮食品を除く指数)が適切です。日銀が目標としている「2%」も、(2)を尺度としています。
ただ、これまでみてきたように、(2)も原油価格などの変動の影響を大きく受けることから、その要素を除いた(3)を見たほうがデフレ脱却の度合いをより的確に判断できます。(3)は「酒類以外の食料」も除く指数。食料も米シカゴ市場の先物相場の影響などで変動しやすいことを考慮したものです。実際、(3)は最近、上昇幅が拡大傾向にあり、5月は0.4%、6月と7月はいずれも0.6%、8月は0.8%でした。
■ 消費者物価にはさまざまな指数が
これら3つの指数に加えて、日銀は「エネルギーを除く指数」の上昇率をまとめています。デフレ脱却の判断をより的確に行うには、(3)の「食料とエネルギーを除く」よりもエネルギーだけを除く数字が必要、という考えからです。「8月の上昇率が1.1%上昇だった」というのはこの指数のことです。
このように、デフレ脱却の判断と金融政策の見極めには消費者物価の各指数と品目別などをさまざまな角度から分析する必要があります。消費者物価指数は基準年について5年に1度の頻度で見直しており、来年7月分から実施する予定です。これに伴い、調査対象のうち30品目余りの入れ替えも行う方針です。その内容と影響については次回以降に詳しく紹介します。
※岡田 晃
おかだ・あきら●経済評論家。日本経済新聞に入社。産業部記者、編集委員などを経てテレビ東京経済部長、テレビ東京アメリカ社長など歴任。人気番組「ワールドビジネスサテライト」のプロデューサー、コメンテーターも担当。現在は大阪経済大学客員教授。著書に「やさしい『経済ニュース』の読み方」(三笠書房刊)。
※当記事は、証券投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。
岡田 晃
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