6. 2015年9月30日 11:25:08
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中国経済の減速の実態 悲観論者が言うほど悪くない? 減速ペースを抑制する方法 2015.9.30(水) 李鍾和 中国、7.5%成長に向け一層の景気刺激策の可能性も 中国政府が景気減速ペースを抑制するためには、現実的な成長目標を抱くことが肝要(写真は上海の金融街の夜景)〔AFPBB News〕 識者は中国経済の成長予測について議論することが大好きで、最近は悲観論者が優勢となっている。だが、多くの人が他国経済の経験を基に予想を立てている一方、中国は過去30年間、経済成長の型を破ってきた。では、中国の経済見通しは支配的な見方が示唆しているほど悪いのだろうか。もし、そうだとすれば、どうすれば見通しを好転させられるのか。 中国の状況は確かに深刻だ。昨年の中国経済の成長率は7.4%と、1990年以降最も低い水準だった。 今年の政府目標である7%は達成できそうになく、国際通貨基金(IMF)によると、2016年の成長率は恐らく6.3%程度にとどまる。 明らかに、国内の弱々しい経済活動と外需の減退が被害をもたらしている。 出生率と投資収益率の低下が労働人口の増加と資本蓄積を減退させており、中国は長期的な成長の勢いも失っている。また、中国にとっては、技術主導の生産性拡大を生かすことも徐々に難しくなってきている。 有力エコノミストの悲観論と楽観論の欠点 中国が抱えるこれら全ての難題から、元米財務長官のローレンス・サマーズ氏とハーバード大学の氏の同僚、ラント・プリチェット氏は、中国が歴史的によく見られる「平均への回帰」が表す成長パターンに屈し、その経済成長率が今後20年間で2〜4%まで下がると主張している。 しかし、中国の成長パターンがこれまで例外的だったことを考えると、中国が突如、一般的な軌道をたどり始める可能性は低そうだ。 同じように欠陥があるのが、元世界銀行チーフエコノミストの林毅夫(ジャスティン・リン)氏の見解だ。米国との技術的キャッチアップがもたらす急激な生産性拡大などを伴う永続的な「後発者の優位性」のおかげで、中国は今後さらに20年間、年率8%の成長を達成できると林氏は述べている。 だが、これは「条件付き収束」という標準的な成長理論を説明できない。 似たような1人当たりの所得水準に収束していくのは、労働者の技能や制度機構の質など、同等な構造的特徴を持つ経済国だけだ。 潜在的なGDP成長率は年5〜6% これらの理由から、筆者はあまり極端でない見解を取り、中国の潜在的な国内総生産(GDP)成長率が2030年までに平均5〜6%に低下すると予想している。この予想は、過去30年にわたる中国の比類ない成長と他の経済国の経験が生み出したデータに依拠する条件付き収束の枠組みに基づいている。 筆者は林氏とは異なり、避けることのできない中国の景気減速は間もなく訪れると考えている。しかし、サマーズ氏とは異なり、減速は必ずしも悲惨なものになる必要はないと思っている。 このシナリオのカギを握るのは、中国の指導者たちが現実的な予想に基づいて、中国経済をよりバランスの取れた持続可能な成長軌道に乗せることだ。中国の指導者には、国内の制度的な弱さや政治的な不確実性、外的ショックに起因する課題など、避けられない試練への対処を誤る余裕はない。 外交的には成功のAIIB、問われる中国の運営能力 中国のように大規模で予測不能な経済においては、政府は直接介入やマクロ経済政策に依存することはできない〔AFPBB News〕 いかなる効果的な戦略においても、その第一歩となるのは、中国のように大規模で予測不能な経済においては、政府は直接介入やマクロ経済政策に依存することはできないということを認識することでなければならない。 政府はむしろ、生産性を押し上げ、成長に対する下方圧力を相殺する改革を実行しなければならない。 労働力、土地、金融など、要素市場における改革は不可欠だ。中国の指導者は、労働市場の柔軟性と労働力の可動性を改善し、土地の活用、買収、保障を効率化し、より市場本位の金融システムを構築しなくてはならない。 現時点では、中国の金融システムは厳しく規制されており、多くが国有の銀行に支配されている。 この状態を変えるために、政府は市場に基づく信用配分を推進する必要がある。 資産バブルを回避し、生産性が高く革新的な企業を支援するためには、中国には、効果的に監督、規制された資本市場に支えられた、柔軟かつ効率的な金融セクターが必要だ。 同様に、持続的な技術革新と産業の高度化を推進する政策は、生産性を向上させることができる。そして、例えば知的財産権保護を強化することなどによって、国内の研究開発力を高める措置はイノベーションを育むことができるだろう。 中国の巨大な国有企業部門の改革も生産性を押し上げられる。先日発表された国有企業改革は期待できる一歩だ。この改革は、民間資本を導入する混合所有制を促し、コーポレートガバナンス(企業統治)を強化し、商業事業を促進するだけでなく、エネルギー、資源、通信業界を民間投資家に開放すると約束している。この一連の新たな国有企業改革は、熱心に追求すべきだ。 経済のリバランスとの兼ね合い 中国、成長率目標7.5%は達成可能か 中国政府が経済のリバランスを進めているだけに、生産性向上はなおのこと重要〔AFPBB News〕 中国が投資主導型、輸出主導型の成長から、国内消費とサービス業に基づくより持続可能なモデルへの移行を推し進めているため、生産性を改善させるためのこのような努力は、いっそう重要になる。 輸出志向の産業からサービス業への資源の再配分は、元に戻せない生産性低下を招く可能性があるからだ。 同じように、企業に賃上げを促す政策は家計所得と国内消費を引き上げるが、賃上げは輸出競争力を損ない、外国直接投資の流入を妨げる可能性もある。リバランス(再均衡)を図る政策だけでは平均な生産量を大幅に伸ばすことが見込めないため、生産性の向上は中国の長期的繁栄に欠かせない。 政府が現実的な成長目標を持つ重要性 中国にとってパズルの最後の一片は、現実主義である。現状では、中国政府はリバランスと改革を推し進めながら年率7%前後の真っ当な成長率を維持することに躍起になっている。 危険なのは、改革の施策が効果を発揮するまで、中国当局は成長目標を達成するために短期的な景気刺激策に頼り、不適切な資源配分と構造的な脆弱性を悪化させる恐れがあることだ。 昨年の中国の債務総額がGDPの2.82倍に達し、米国の債務水準を超えたことを考えると、シャドーバンキング(影の銀行)部門から地方政府や民間企業への無謀な貸し付けがさらに増えれば、中国経済は、次第に高まる金融危機のリスクの人質になってしまう。 このような結末を避けるために、中国は今後数年の成長目標を6%前後に引き下げるべきだ。そうすることで、中国経済をもっとバランスの取れた、より持続可能な長期的成長軌道に乗せるために必要な大胆な改革を追求することができるだろう。 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44878
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