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アベノミクス「新三本の矢」を「折れない矢」にするために、絶対必要な二つのこと GDP600兆円越えは、こうすれば達成できる!
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/45535
2015年09月28日(月) 高橋 洋一「ニュースの深層」 現代ビジネス
■三つはいらない。ひとつに集中すればいい
安倍首相が24日、正式に自民党総裁に再選されたことに伴い記者会見をした。そこで、今後は経済に注力するとして、「新3本の矢」を披露した。(1)希望を生み出す強い経済、(2)夢を紡ぐ子育て支援、(3)安心につながる社会保障、という3項目だ。
思い出すのは、60年安保改定を行った岸政権と、その後を継いだ池田政権だ。岸政権は、岸首相が得意な経済ではなく安保を重視した政権だったが、池田政権は経済重視で、よく知られている「所得倍増計画」を打ち出した。
これは、インフレ目標より進化した「名目GDP目標」ともいえる。実は、世界では「インフレ目標よりも名目GDP目標のほうがいい」という議論すらある。
安倍政権は、岸政権と池田政権を合わせたことを狙っている。先の安保法では、集団的自衛権の行使がポイントであったが、それは、@抑止力の向上による戦争リスクの軽減、A防衛費の節減、B個別的自衛権の抑制の三つを目指したものだった(5月25日付け本コラム http://gendai.ismedia.jp/articles/-/43454)。
具体的な数字をいえば、戦争リスクは最大4割減少し、防衛費については、これまでも日米安保条約で7割程度減少していたが、今後の中国との軍拡にそれほどつきあわずにすむので、さらなる節約が可能である。
となると、池田政権が、岸政権が築いた「安価な防衛力」の恩恵を受け、その分を経済に投入して高度成長を作ったのと同じ戦略をとることができる。
そこで、「新三本の矢」となる。政治家の話は、だいたい「三つの柱」を軸にすることが多い。これは話をわかりやすくするためで、まず、「三つあります」と切り出して、1番目の話を話しているうちに2番目と3番目を考えているのだ。ところが、2番目まではなんとかなっても、3番目は出てこなかったという笑い話もあるくらいだ。
安倍首相はさすがにそうではないだろうが、ロジカルに考えれば、一番目に挙げた「強い経済」がすべてだ。これがうまくできれば、二番目の「子育て支援」と三番目の「社会保障」をうまくできるはずだ。
■まずは「消費税再増税」をやめること
もし政治家の話でなければ、目標には達成手段と達成時期を示すことが必要になる。ただし、政治家の場合、そうした野暮なことはいわない。
一番目の強い経済でも、2014年度に490兆円だった名目国内総生産(GDP)を600兆円に増やすという方向の話はあるが、安倍首相は「いつまで」とは言っていない。甘利明・経済再生担当相も、達成時期は今後の問題としているが、「東京五輪後に達成可能」という見解を出している。
ただし、この甘利経済再生相の見解は、これまでの政府による中期財政試算を言っているだけだ。それによれば、2014年度の名目GDP490.6兆円は、2020年度に594.7兆円、2021年度に616.8兆円となっているのだ。
まあ、この中期財政試算どおりのことをなぞることが「新3本の矢」、ということではないだろう。しかも、この中期財政試算には技術的な問題を含めて多くの問題点がある。
本年2月16日付け本コラム「財務省はまだ消費税を上げる気だ!「中長期の経済財政に関する試算」の正しい読み方」(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/42125)に書いたが、2017年度の消費増税の影響を過小評価していることと、デフレータ( *国民所得統計の名目値〔時価表示〕を実質値〔不変価格表示〕に換算するのに用いられる物価指数)の前提がインフレ目標2%に矛盾しているという根本的な誤りがある。
この際、まじめに「新三本の矢」といいたいのであれば、この中期財政試算の誤りを正す必要がある。それは、まず2017年度からの10%への消費再増税をやめることを意味する。
中期財政試算では、2017年度に消費税の再増税を行っても景気への影響は軽微であるとなっている。これは、2014年度の消費増税の時も同じことを言っているが、現実には2014年度はマイナス成長となった。
今年の経済財政白書では、2014年度の消費増税の影響が分析されているので、その分析を参考にして成長率試算をすると、2017年度は再びマイナス成長になってしまうはずだ。
■「再増税取り止め」だけではインパクトに欠ける
つまり、甘利経済再生相は、いまだに「消費増税の影響は軽微」というウソが書かれている中期財政試算に騙されており、中期財政試算どおりに、2021年度に名目GDPが600兆円を越すのを信じている。
ところが、それは2017年度の10%への消費再増税でくじかれてしまう。だから、甘利経済再生相の言うとおりにするなら、2017年度の消費再増税をやめなくてはマズいのだ。
それに、GDPデフレータを正しく計算すれば、名目4%成長になり、2020年度で名目GDPは600兆円を超える。要するに、オリンピック時には晴れて目標達成となるわけだ。
2017年度の消費再増税をやめることだけでも、大きな政治課題だろう。しかし、それでもやはり、「再増税取りやめ」だけでは、経済政策としては今ひとつに見える。それを超えるものとして何かあるだろうか。
まずは、2014年度の消費増税の失敗から分析しよう。多くのエコノミストや経済学者は消費再増税の影響を予見できなかったが、これには二通りのタイプがある。
一つは、金融緩和については「まったく効果がない」といながら、消費増税をしても経済は悪くならないといった人たちだ。消費増税の影響は軽微といった人たちの大部分がこのカテゴリーだ。これは、金融政策の効果を間違い、その上で財政政策の効果を間違ったのだから、話にならない。論外の人たちだ。
二つは、金融緩和には効果があるが、消費増税のマイナス効果が上回るだろうと考えた人たちだ。黒田日銀総裁はこのタイプだろう。
はっきり言えば、短期的には、財政引き締め策の効果は金融緩和のそれを上回る。これはイギリスなどでも観察されていることだ。
黒田日銀総裁は、消費増税の悪影響を見誤り、その結果、インフレ目標も未達になってしまった。実際、2014年度からの消費増税によって、GDPギャップ(潜在GDPと実際のGDPの乖離率)が広がってしまった。
■「世界に誇るアベノミクス」に
雇用環境が良ければインフレ率が多少低くても問題ないが、世間では「黒田総裁が当初掲げていた、インフレ目標(消費者物価上昇率)2%はどうした」という声も出てくる。
インフレ率の低迷の原因は消費増税の影響が多い。確かにインフレ率はマネタリーベースの伸び率(四半期前)とGDPギャップ(半年前)でかなり説明できる。この分析によれば、消費増税なかりせば、現在のインフレ率は1.0〜1.5%程度になっていただろう。
そうであれば、いまだにデフレ脱却がおぼつかないので、この際、日銀法改正をして名目GDP目標5%(インフレ目標3%)に設定するのも一案だ。そうであれば、2018年度にはほぼ名目GDPが600兆円となる。
これは、安倍総裁の任期は2018年9月までであることを考えれば、常識的には「自分の任期での目標達成を目指すはず」という、世の中の常識とも合致する。
それを達成するには、2017年の消費再増税の見送りと日銀法改正による名目GDP目標5%(インフレ目標3%)を掲げることは必須である。
これなら、世界最先端の名目GDP目標となって、「新しいアベノミクス」として世界に自慢できるだろう。
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