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「消費増税なら、やっぱり軽減税率導入は必須! 日本の景気が、増税に耐えられる保証はどこにもない。(現代ビジネス)」
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について
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付加価値(消費)税を“悪魔の税制”と評したが、財務省など統治者が、国家社会を経営していくためにそれを活用したくなる気持ちはよくわかる。
フランスで最初に導入され瞬く間に西欧諸国に広まったのは、付加価値税が輸出(グローバル)企業の国際競争力や収益向上に資する税制だからであり、周辺諸国は、それほど必要がなくとも、付加価値税導入国との競争条件をイーブンにするため対抗措置として導入しなければならなくなる。
(米国は、付加価値税が国民多数に忌避される税制であることや付加価値税がもたらす弊害をふまえ、先進国のなかで唯一付加価値税を導入していない。金融国家としての度合いを深めてきた米国は、他の国の付加価値税制度に利益を見出しているともいえる。付加価値税に支援されて投資先のグローバル企業が利益を増やすことで、配当が増えたり株価が上昇するほうが魅力的だからである)
冒頭に掲げた論考を書かれた真壁 昭夫氏がどういう立場のひとか知らないので、物事をきちんと考えていないだけなのか、特定分野の利益を代弁しているのかはわからない。
どちらであっても、真壁氏は、デタラメな説明によって、公明党が固執する「軽減税率」制度の導入を求めていることになる。
日本では消費税について外税方式による価格表示が容認されているので、真壁氏や公明党のような論が成り立ちやすく、実際にも錯誤でそう思ってしまう人たちがいても不思議ではない。
しかし、それはあくまでも物事をきちんと考えない人が犯す誤った判断である。
消費税については基本から錯誤にはまっている人が多いようだが、消費税は、消費者が負担する税ではなく、事業者が負担する付加価値税である。
税負担の増加を強いられた事業者は、負担をなんとか他のひとに転嫁しようと販売価格の引き上げをはかる。その結果、転嫁を仕掛けられた消費者は、消費税増税時に税の負担が増えたと考える。消費税はそのような動的構造ではあっても、消費者が負担するものではなく事業者が負担するものである。
日本の消費税制度の特異性は、企業(事業者)に課された税負担の転嫁を政府が必死にサポートすることである。
法人税のように黒字企業だけを対象にした課税ではなく、一定レベル以上の規模で事業を行っている事業者すべてに課税するため、円滑な制度運用に不可欠の支援と考えているのだろう。(「消費税は消費者が最終的に負担する税」という政府のウソの説明はサポートの最たるもの)
「軽減税率」(複数税率)制度も、消費税の負担構造と同じで、消費者の消費税負担を軽減するものではなく、軽減税率の適用を受けたものを扱う事業者の消費税負担を軽減するものである。
「軽減税率」(複数税率)制度は、輸出事業者が莫大な還付を受けている「輸出免税」制度の変形もしくは拡張である。
輸出には、ゼロ%という軽減税率が適用されていることを意味し、標準税率(現在8%)が大きくなればなるほど“輸出戻し税”(消費税還付の俗称)は増大する。
議論されている「軽減税率」(複数税率)もゼロ%税率でも構わないのだが、現行の標準税率8%の適用が考えられているようである。
標準税率10%のとき軽減税率8%では、消費税還付を受けるまでの利益を受ける事業者は少ないだろうが、標準税率が15%→20%と引き上げられるにつれ、消費税制度+「軽減税率」制度があることで、膨大な還付という“奇怪な利益”を得る事業が増えていく。
このような利害関係論理がどのような事態を引き起こすかと言えば、軽減税率の適用を受ける業界は、日本経団連のように、消費税の標準税率が引き上げられることを切望することになる。(財政危機や社会保障の持続性をダシにして自己の利益増大を図る)
受益者ではないのに「軽減税率」制度の導入を願う一般消費者は、法人税や法人向け固定資産税が引き下げられることも歓迎しなければ辻褄が合わなくなる。
「軽減税率」制度が消費者の消費税負担を緩和するという説明は、「法人税の税率を引き下げればものの価格が安くなって消費者の負担が軽くなる」という説明とロジック的にはなんら変わらないからである。
基礎ないし大枠の話はここまでにして、「軽減税率」(複数税率)制度で税負担の緩和ができるという話に妥当性があるか考えてみる。
生活必需品を今回の還付案の「外食を含み酒類を除く飲食料品」と考えると、家計消費に占める割合は平均で20%ほど、低所得者でも30%未満である。
ちょっと考えればわかるが、消費税で集める税収の目標が20兆円だとすれば、「外食を含み酒類を除く飲食料品」から徴収できる消費税額が減るので、その分、他の分野の税率(標準)を引き上げなければならなくなる。
ざっくり言えば、単一税率なら消費税の税率を9%に引き上げれば達成できるのに、「軽減税率」(複数税率)制度があるために、10%にまで引き上げなければならないことになる。
何より始末が悪いのは、10%に引き上げなければならないワケが特定分野の事業者が得る利益を“補てん”するためということである。
仕組みの是非とはともかく、財務省案なら消費者とりわけ低所得者の消費税負担増を緩和することにはなるが、公明党案=「軽減税率」(複数税率)制度は特定事業者の税負担を“緩和”するが消費者の税負担を緩和するとは言えない。
外税方式で増進されている錯誤について簡単に説明したい。
消費税増税で間違いなく消費者に転嫁される消費税負担分は増加するが、負担のどの割合まで転嫁かされているかは定かでない。増税分がすべて転嫁されたと思うのは外税方式がもたらす錯覚である。
販売業者は、レジ的に10%の消費税をもらっていても、8%時代よりも少ない額しか負担する消費税を転嫁できていないこともある。
消費税の税率アップで政府部門の税収が増加しても、その原資は定かではない。事業者が思うように増加した消費税負担を転嫁できなくても、荒利を削って納税するしかないからである。
希望する価格で売れないときは価格を下げるしかない。価格を下げても、消費税の税率は変わらずにつきまとう。
消費者サイドから言えば、本来、店の儲けがいくらで消費税分がいくらということは問題ではない。あるものが総額としていくらで買えるのかすべてである。
真壁氏や公明党の説明は、商売上手とも騙しのテクニックとも言える話だが、同じ商品が、「本体価格950円+消費税10%:総額1,045円」と表示されるより、「本体価格980円+消費税8%:総額1,058円」と表示される方が、国民の多くは税負担が軽くなったと判断すると言っているようなものである。(国民の多くはそれほど思考力も判断力もないとバカにしていることになる)
数字で見ればすぐわかるように、このケースでは、消費税10%のほうが、消費税8%より、同じ商品を13円安く買うことができる。
販売業者の「売上に係わる消費税」は10%のほうが大きいが、そんなことは消費者にとっては無関係である。消費者にとっては、絶対額で安いか高いかが問題である。
商売人は、基本的に、より大きな利益を得るためにできるだけ高い価格でものを売ろうとする。特定商品に適用する消費税の税率を下げたからといって、消費者は、元の消費税税率のときより安くものを買えるという保証はない。
消費税の税率が上がったときは、事業者が一斉に負担増を添加しようとするから、一時的にはものの価格は総じて高くなるが、適用される税率が下がったからといって、低い税率を適用されるものの価格が安くなると決まっているわけではないのである。
昨年の消費税増税後、スーパーの販売価格は大きく上昇したが、5月、6月と月日を経るに従い販売価格は下落していった。売れない価格を続けるわけにはいかなし、競争相手が価格を下げれば対抗するしかない。
昨年は,消費税の税率が上がったにもかかわらず、それによる税負担の増加を転嫁しきれず荒利を削って納税する事態になってしまったことが、GDPがマイナスになった要因の一つである。
制度の主旨や内実からいっても、「軽減税率」(複数税率)制度は、消費者の消費税“負担”(転嫁)を緩和するものではない。
消費税は廃止すべき税制だが、論理の問題として言えば、財務省案の還付(給付)のほうが、消費者の消費税“負担”(転嫁)をなにがしか確実に緩和する制度である。
真壁氏や公明党もそうだが、財務省案の主旨や目的を問うべきなのに、仕組みなど運用に焦点を当てて批判している。
対象商品の低中所得者家計の消費額相当に及ぶかどうかの還付金額であれば、買い物実績をカウントアップする必要はなく、無条件で給付すれば済むことである。
最後に、真壁氏は、「財務省が考えた還付制度が提案された背景には、消費税の逆進性を抑えたいという考えがあるのだろう。相対的に所得の低い人と所得の高い人が同じものを購買した場合、所得に関係なく消費税負担は同額になる。所得水準の高い人の税負担が、高い人よりも相対的に重くてしかるべきなのだが、消費税の性格上、同じものを購買する場合にはそうした税負担の原則を満たすことができない。そうした税負担の逆進性を是正するために還付という手法を編み出したのだろう」と書いているから、本心では、財務省案が還付制度ではなく給付制度だとわかっているのだろう。
※関連参照投稿
「公明税調会長「還付案、修正でも応じず」 軽減税率:従来案で合意できなければ「参院選で自公は惨敗する」と恫喝」
http://www.asyura2.com/15/senkyo193/msg/669.html
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