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[エコノフォーカス]GDP統計、実態下回る?
企業好調でもマイナス成長 ネット通販など新分野に漏れも
企業の業績が好調なのに経済成長率はマイナスに沈む。そんな日本経済のちぐはぐぶりに専門家も首をひねる。原因を探ると、国内総生産(GDP)統計が経済構造の変化をとらえきれず、実態よりも規模が小さいのではないかという疑問も出てくる。経済の物差しが揺らげば、政策にもゆがみが生じかねない。(赤尾朋子、藤川衛)
「マイナス成長だからといって景気対策に予算を割くより、もっと統計を精緻にすべきでは」。7月末、BNPパリバ証券の河野龍太郎氏は財務省幹部にこう伝えた。
内閣府が発表した2014年度の実質成長率はマイナス0.9%。ところが河野氏が新しいモノやサービスを反映させる目的で試算すると、プラス0.6%になった。消費増税に揺さぶられた14年度の日本経済の印象は随分変わる。
GDPは一定期間に生み出された付加価値の総額で、消費や投資、輸出入など、お金がどこに使われたかを推計する。これに対し、河野氏は新しいモノやサービスの状況を把握するために、そのお金が誰に支払われたかを推計した。
日本に近い手法でGDPを推計する米国では産業構造の変化を四半期ごとに反映させる。日本は5年に一度で、統計が変化に追いついていない可能性が濃厚だ。
GDPに詳しい法政大の中村洋一教授は「オンラインサービスをはじめ新しい産業は統計が未整備で、全ての経済活動が捉えられているわけではない」と話す。
GDPの個人消費の推計に使う総務省の「家計消費状況調査」をみても実態を正確に反映しているとは言い難い。例えば調査では、14年の1世帯あたりのネットを通じた支出額は月平均で6505円だった。第一生命経済研究所の永浜利広氏の試算によると、年間では4.3兆円使ったことになる。ところが経済産業省が企業に聞いて算出した14年の消費者向け電子商取引額は12.8兆円。ネットを通じた消費の規模は1桁違う。
家計消費状況調査では「手間のかかるアンケートに答えるのは専業主婦の世帯が多いとみられ、平均的な世帯の消費を反映しているのか疑問が残る」(永浜氏)。
訪日外国人旅行客(インバウンド)の消費もくせ者だ。GDP統計では輸出に計上されており、二重計上を防ぐために国内消費の推計額からインバウンド分を差し引く必要がある。
GDP統計の国内消費は日本人だけを対象にした家計調査を基に推計する。そこに外国人の消費も含む生産・販売側の統計を加味すると、国内の消費総額は前年度比で実質3.0%減だ。そこからインバウンド消費分を差し引くと、14年度のGDPでは消費が実質3.3%減とマイナス幅が大きく広がった。
内閣府は「インバウンドの動きが反映されていない可能性がある」とみる。インバウンド消費を過大に引いているのではないかというわけだ。
統計の「ゆがみ」は日本だけの問題ではない。米サンフランシスコ連銀は5月、1〜3月期の米実質GDP(速報)が公表値の年率0.2%増ではなく1.8%増だったとの試算を公表した。季節ごとの変動をならす作業が不十分だったことがゆがみを生んだという。
GDP統計は推計にすぎず、経済の実態を正確に測るのは至難の業。だが政府はGDPの増減が表す成長率をよりどころに経済政策の立案や税収の見積もりを行う。日本は低成長に入っており、推計次第でプラス・マイナスの符号が入れ替わる可能性もあり、統計の精度を上げることがより重要になる。
[日経新聞9月21日朝刊P.3]
- 精度向上に力、研究開発投資も対象に:金利利得も付加価値とする新基準で計算すればGDPは水増しされて当然 あっしら 2015/9/26 03:41:53
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