1. 2015年9月25日 11:21:46
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2015年9月25日 朽木誠一郎 働かないおじさんがウヨウヨ? 「限界集落職場」は急増するか 少子高齢化により、生産年齢人口の減少が見込まれる日本社会。企業でも若手社員の割合が減る一方、シニア社員の割合が増加しそうだ。そんな兆候がすでに出始めているためか、最近世間の若手社員からは、「働かないおじさんが以前よりも増えて、自分の仕事がきつくなった気がする」という悲鳴が聞かれる。社員の高齢化に伴い、今後こうした人々は本当に増えていくのか。そうだとしたら、企業は彼らをどのように再教育・活用すればいいのか。働かないおじさんが跋扈し仕事がマヒする「限界集落職場」の課題を考える。(取材・文/朽木誠一郎、編集協力/プレスラボ)働かないおじさんが急増? 「限界集落職場」が増える予感 多くの高齢社員を少ない若手社員が支える職場の到来に備えて、働かないシニアの意識を変えて行く必要性は大きい 少子化高齢化は喫緊の課題である。平成24年の内閣府の調査によると、日本はこれから長期の人口減少過程に入る。2026年に総人口1億2000万人を割り込み、2048年に総人口1億人を下回る9913万人に。さらに2060年には、総人口8674万人になると推計されている。
一方、高齢者人口(65歳以上の人口)は2042年まで増加の一途をたどり、3878万人でピークを迎え、その後は減少に転じる予測だ。高齢化率(総人口に占める高齢者の割合)は2035年に3人に1人、2060年には約2.5人に1人という社会が到来する。 このような少子高齢化による社会への影響は、しばしば企業の経営戦略の観点で語られるが、人事戦略についてはどうだろうか。総務省が発表している年齢階級別就業者数によれば、2015年7月現在で、全就業者数5644万人中25〜34歳が1120万人、35〜44歳が1501万人、45〜54歳が1399万人。総人口の推移と併せれば、向こう20年で全就業者数に占める中高年の割合はますます大きくなり、若手では小さくなることが容易に想像できる。 そんな兆候がすでに出始めているためか、最近企業で表面化しつつあるのが、中高年層が多い職場における諸問題だ。とりわけ若手社員が指摘するのがは、「働かないおじさんが以前より増えているのではないか」ということだ。 総合商社に勤務する30代の中堅社員・Aさんは、50代の「働かない上司」に悩んでいる。「動かない上司を動かして出した結果が、上司がチームを動かしたことになり、上司の手柄になる」とその理不尽さを語る。もともと「歯医者」を理由に遅刻・欠勤を繰り返すその上司との間では、「直行直帰で終日不在にしている日もあり、本当に仕事をしているのかと疑ってしまいます」と、信頼関係はもはや成立していない。会社自体も停滞ムードが漂う中で、個人としても成長意欲がかき立てられない職場にいるフラストレーションは大きい。「そもそも、団塊世代の人余りで中高年に与えられる仕事が少ない」(Aさん)という状況に愛想を尽かしつつあるAさんは、いずれ会社を飛び出すことも視野に入れている。 むろん全ての企業に当てはまることではないが、このように「限界集落化している」と若手社員に揶揄される職場が散見されるのも事実である。限界集落とは、過疎化・高齢化が進行した集落のことで、人口の50%以上が65歳以上の高齢者となり、自治、インフラ、冠婚葬祭などの共同体としての機能が急速に衰えて、やがて消滅に向かうとされる自治体を形容する言葉だ。働かないおじさんが増えて、職場の機能がマヒしてしまうことに当てはめている。 実際には、一般的な企業の定年退職規定・人事戦略に鑑みて、65歳以上の社員が大半を占めるような職場が出現することはまずあり得ない。しかし、働き盛りや未成年者の世代が都会に移住し、独居の高齢者やその予備軍が残る限界集落は、「働かない中高年」に若手が理不尽さを覚えるAさんの職場とダブる部分がある。「心情的には限界集落にいる気分」と言うことかもしれない。 「ピーターと働きアリの法則」に見る おじさんたちが働かない理由 そもそも年齢を重ねると、本当に人は働かなくなるのだろうか。 もしそうだと仮定した場合、中高年が働かなくなる理由の一端は、教育学者のローレンス・J・ピーターが提唱した「ピーターの法則」で説明できる。「あらゆる有効な手段は、より困難な問題に次々と応用され、やがては失敗する」としたピーターの法則によれば、企業のような階層組織においては、構成員は順調に昇進し、やがて有能に仕事ができる最高の地位まで達するが、そこからさらに昇進するとその地位では無能になるという。これは高い地位の仕事がより難しいのではなく、工場勤務の叩き上げ社員が工事長になってマネジメントに失敗するように、要求される技術とのミスマッチが起きるためだ。この説に照らせば、「働かなくなる」というより「働けなくなる」という言い方がより正確なのだろう。 しかし、このようなミスマッチが中高年層で起きると、若手にとっては悲劇でもある。中小企業に勤務する20代のBさんの上司は40代。とにかく仕事の効率化をさせてくれない。管理職でありながらITを利用した業務フローの改善提案を全て却下。Bさんがとあるウェブサービスについて「導入すれば残業しなくて済みます」と提案したところ、なんと「それじゃ給料下がるだろ」という返事が返ってきたというのだ。こうしたタイプの上司がさらに年齢を重ね、より重要なポジションに就くようになると、職場が「限界集落化」することは目に見えている。 終身雇用が保証された組織においては、働いてさえいれば給料が支払われ続けるため、組織の発展に寄与しない構成員が一定数生まれてしまう。このことを生物学の観点から説明した「働きアリの法則」も有名だ。社会的昆虫のアリは、集団のうち2割の働きアリが勤勉に働き、6割は普通に働き、残り2割は怠惰で働かない。 しかし、勤勉な2割の個体のみを取り出した集団では、そこにもやはり2:6:2の割合が出現する、というものだ。これは組織の宿命と言えるかもしれないが、ここで言う「怠惰な2割」には一部の働かない中高年社員も当てはまりそうだ。 40代で管理職をしているCさんは、中高年の年上の部下が業務時間中にPCでゲームを楽しんでいる様子に呆れている。「ソリティア(PCに初期インストールされている無料ゲームの1つ)の腕は、ここ半年ほどでメキメキと上達しているようです」とCさん。「最近はソリティアに飽きたのか、Googleのストリートビューで海外の景色を楽しんでいる」という。これも怠惰なアリと一緒なのかもしれない。 また、20代の女性社員・Dさんは職場でのトラブルの顛末を次のように語る。 「隣のマンションから苦情が入ったというので、上司の命令で窓にブラインドが付いたんですが、その苦情というのがどうやら窓越しに職場のPCでアダルトビデオを見ている社員が見える、というものだったらしく……位置関係から見て、『おそらく犯人は部長だ』ともっぱらの噂です」 部長は社長とプライベートで親しく、昼間から飲みに行くこともあるほど。「だから、絶対に社長が揉み消していると思う」とDさん。このケースにおいては部長の非は明らかだが、問題は一概に個人の責任では片付けられない組織の難しさだ。仕事をロクにしない限界集落職場のおじさんたちが、お互いをかばい合っている構図とも言える。 働かないおじさんを企業が 再教育・再活用するには? こうした働かない中高年がどんどん増えていくとしたら、企業は彼らをどのように再教育し、活用すればいいいのだろうか。 少子高齢化が市場経済に及ぼす影響の中でも、労働力の構造変化には注意しておきたい。特に、日本の経営モデルがベースにしていた終身雇用・年功序列の人材活用の変革は急務である。 これまで上意下達で知識や技術が伝承され、世代交代の際にアップデートされることで、企業は生産性を向上させてきた。しかし、高度経済成長の終焉と日本の生産年齢人口の変動により、それが機能不全に陥っていることが、今回紹介した事例からもわかるだろう。今後、日本社会がさらなる少子高齢化を迎えるにあたっては、既存の人的リソースをいかに適正配置するかが大きな課題になる。 職場に不幸をもたらすミスマッチは、会社組織が要求する成果や知識・技術が明示されていないことにより、起きる場合もある。企業は崩壊しつつある終身雇用や年功序列の制度を見直し、属人ベースの雇用システムを業務内容ベースのシステムに転換する必要があるだろう。社内教育制度や外部教育機関でのトレーニングによって、構成員それぞれの人材タイプごとに目標設定とその達成度の評価を改めて実施することで、生産性の向上を図ることができる。垂直方向へ向かう組織ではなく、人材の能力を水平方向に広げる組織こそ、今求められているのではないだろうか。 こうした組織改革を通じた人材教育の必要性は、何も中高年社員ばかりに向けられるべきものではない。働かない若手社員、指導しても成果を出せない若手社員に対する不満も、以前から企業には根強くあった。しかし、これからの企業では、これまで前提とされてきた社員の年齢構成、世代交代のバランス自体が崩れる可能性がある。多くの中高年社員を少ない若手社員が支える職場の到来に備えて、働かないおじさんたちの意識を変えて行く必要性は、やはり大きいと思われる。中堅出版社で働く30代前半の女性編集者・Eさんはこう苦笑する。 「加齢に伴い仕事の能力が落ちるから、働かないおじさんが増えるのは仕方ない、なんて話は、これと言った根拠もなく、ただの言い訳だと思います。要は、シニア社員が仕事に対する価値観を変えられるかどうか。それを社員に促せないならば、もはや会社自体が限界集落化していると言える。自分の職場を見ても、働かないおじさんのお蔭で仕事がどんどん増えている気がします。ただ、仕事が増える原因が本当におじさんのせいか、ということは、実はあまり重要ではない気もする。若手に『おじさんに搾取されている』と感じさせ、モチベーションを下げさせる職場の雰囲気が、一番の問題でしょう」 働かないおじさんが企業の 救世主になることだってある? 最後に、働かないおじさんたちのフォローもしておこう。実は、前述した「働きアリの法則」には次のような追加実験がある。働きアリは食料を見つけると、フェロモンを分泌しながら巣穴に戻り、仲間にその場所を伝える。勤勉な働きアリはフェロモンを正確にトレースしながら食料にたどり着き、巣穴まで運搬するが、一部の働きアリはフェロモンをトレースできずに道を誤る。この働きアリは歩き回るうちに巣穴に戻るが、この試行錯誤は勤勉な働きアリには発見できないショートカットを生むことがあるというものだ。このような揺らぎは、組織にイノベーションを引き起こすために必要でもあるようだ。 揺らぎがなく最適化され切った全体システムは、外的要因の変化に対して脆弱になる。短期的な視座においては非効率でも、人材に多様性を持たせておくことは、企業の生き残り戦略でもあるのかもしれない。 働かない中高年が増えて若手の労働意欲を削ぐようなことはあってはならないが、人的リソースの適正配置や目標設定と達成度の評価が行われた末の残り2割であるならば、それはいつか会社組織を救うためのリスクヘッジになり得る存在と言えるかもしれない。 あなたの職場は「限界集落化」していないだろうか――。 http://diamond.jp/articles/-/78908
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