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花王本社(「Wikipedia」より/Lombros)
最高益・花王が抱える「深刻な問題」と「疫病神」
http://biz-journal.jp/2015/09/post_11682.html
2015.09.25 文=田沢良彦/経済ジャーナリスト Business Journal
花王が化粧品事業の立て直しに動き出した。
花王は8月26日、化粧品事業の看板ブランド「ソフィーナ」の情報発信拠点「ソフィーナビューティパワーステーション」を11月13日から東京・銀座にオープン、同時にソフィーナの新シリーズ「ソフィーナiP」を11月13日に同拠点で先行発売し、16年1月から全国百貨店で発売すると発表した。
澤田道隆社長は7月28日の15年12月期中間決算発表会で「化粧品事業の立て直しは今後20年、30年先まで続く大改革になる。下期からその第一弾を開始する」と宣言しており、銀座拠点開設とソフィーナiP発売を「化粧品大改革の第一弾」と位置づけている。
業績低迷が続く化粧品事業の立て直しにやっと本腰を入れたかたちだが、お荷物のカネボウ化粧品事業の再建も未だ道半ば。業界関係者のなかには「念願の化粧品事業育成を20年、30年もののんびりとした取り組みで本当にできるのか」と、同社の本気度に首を傾げる向きが多い。
■紙おむつに稼ぎを頼る不安
同社は15年12月期の中間連結決算で、過去最高となる連結営業利益601億円を稼ぎ出した。その稼ぎ頭となったのは、中国人観光客の「爆買い」でも話題になった紙おむつだった。紙おむつを含むヒューマンヘルスケア事業の売上高は、前期比21.2%増の1329億円。営業利益はコストダウンなども奏功し前期比2.0倍の144億円を叩き出した。その一方で、カネボウ化粧品を含む化粧品事業の売上高は1147億円で前期比6.7%の減少、営業利益は154億円の赤字だった。
このアンバランスな営業利益に、澤田社長は非常な危機感を抱いたといわれている。紙おむつの「メリーズ」は、山形県の酒田工場で生産増強をしているにもかかわらず店頭での品薄状況が続いている。しかし、08年の約1億3000万人をピークに本格的な人口減少が予測されている今、紙おむつ市場が将来的に縮小するのは目に見えているからだ。経営者として今の「紙おむつ景気」に浮かれているわけにいかないのは当然だろう。
そこで澤田社長が「ポスト紙おむつ」の収益柱として本格的に育成しようとしているのが、粗利益率の高い化粧品事業であり、今回の長期経営構想が化粧品事業の本格的建て直し行動となって現れている。
だが、現実は厳しい。花王にとって「化粧品事業は疫病神のようなもの」(同社役員OB)だからだ。
■カネボウ買収で狂ったシナリオ
「石鹸の花王」が化粧品事業に参入したのは1982年のこと。「花王の華の時代」といわれた1980年代には洗濯洗剤「アタック」、洗顔料「ビオレ」、入浴剤「バブ」、紙おむつ「メリーズ」など今日の同社を代表する数多くのロングセラー商品が生まれた。その余勢を駆っての参入だった。
だが90年代以降、「技術の花王」からロングセラー商品は生まれなくなった。今なお、80年代に生み出したロングセラー商品に収益を頼っているのが現状だ。
「将来の主力事業に」との期待を込めて花王は82年、基礎化粧品「花王ソフィーナ」を掲げて化粧品事業に参入。イメージ訴求の広告宣伝を繰り返す当時の資生堂やカネボウに対し、まるで学会で説明するかのように肌の断面図を使って効能を解説するなど、技術の花王らしい同社の立証主義的な珍しい広告を展開した。こうした取り組みが消費者に「化粧品業界のイノベータ」という印象を植え付け、瞬く間に人気商品入りするなど化粧品事業は順調な滑り出しを見せた。
立証主義的な広告展開で商品訴求力の強い花王ソフィーナは年を追うごとにシェアを伸ばし、基礎化粧品分野では2000年頃に業界大手の資生堂やカネボウの背中が見えるとところまで売り上げを伸ばしていた。その勢いに乗り、一挙に大手を追い越そうと06年に業歴、売上高、ブランド力のすべての面で花王を勝るカネボウの化粧品事業を買収したのが、花王の化粧品事業育成シナリオを狂わせた。その後の化粧品事業は苦難の連続だった。
基礎化粧品に強い「技術の花王」とメーキャップ化粧品に強い「感性のカネボウ」の相乗効果で、花王の化粧品事業育成は第二ステージに飛躍するはずだった。だが、化粧品事業の売り上げはカネボウ化粧品の売上高を連結化した07年3月期がピーク。08年3月期は辛うじて業績横ばいを確保したものの、09年3月期はリーマンショックの影響で売上高が前期比8.0%減の2908億円となり、営業利益は185億円の赤字に沈んだ。
10年3月期は売上高が前期比8.8%減の2651億円とさらに減少し、営業利益の赤字幅は302億円に膨らんだ。以降も業績は低迷し、期待したカネボウ化粧品との相乗効果は一向に生まれる気配がなかった。
「花王は親会社なのに『業界の先輩』であるカネボウに遠慮したのか、同社の経営独立性を尊重し、経営破綻の原因となったカネボウの『事なかれ主義経営』を改革しようとせず、両社の人事交流もほとんどなかった。売り上げもカネボウがソフィーナを大きく上回っているのを笠に着たカネボウ社員は花王社員を見下し、販売現場で両社員が揉めるのがしょっちゅうだった。相乗効果どころかライバル意識剥き出しだった」(業界関係者)
カネボウの繊維事業を買収し、真っ先に事なかれ主義の旧カネボウ社員の意識改革に取り組み、1年余りでカネボウの繊維事業を成長エンジンに変えた繊維メーカーのセーレンと対照的といえる。
買収したカネボウ化粧品事業を持て余し、その経営改革を先送りしていたツケが回ってきたのが、13年7月に発覚し社会問題化したカネボウ美白化粧品の「白斑問題」だ。これでカネボウ化粧品のブランド力は地に墜ち、その煽りで花王のソフィーナの客離れも進んだとされる。
■「化粧品大改革」の号令
「ブランド力回復不可能」とまでいわれた白斑問題で化粧品事業が深刻な打撃を受けて2年。表面的には赤字幅も狭まり、傷はだいぶ癒えてきたかにみえる。だが、販売現場での花王社員とカネボウ社員の対立、白斑問題などでもたついているうちに、看板ブランドのソフィーナはコーセーなど化粧品専業大手の製品群との差別化要素が薄れ、化粧品事業参入当初の業界イノベータ的存在感がなくなった。さらにスキンケア化粧品分野で台頭してきた富士フイルム、「無添加化粧品」で台頭してきたファンケルなどにも追い込みをかけられている。
白斑問題が社会問題化したのをきっかけに、花王は生え抜きの夏坂真澄氏をカネボウ化粧品の社長に送り込み、品質保証・顧客相談窓口の統合、新安全基準導入、顧客情報管理システムの運用改善などの経営改革を進めている。だが、「いずれも対症療法的な制度改革に終始しており、長年染み付いた風土改革にまで切り込んでいない。カネボウ社員の花王に対する面従腹背は相変わらず変わらない」(業界関係者)という。
さらに花王の「化粧品大改革」も、澤田社長が示した具体策は銀座の情報発信拠点開設とソフィーナ新製品発売だけ。それ以外は何も示していない。これには株式市場の一部でも落胆の声が聞かれる。
化粧品業界担当の証券アナリストは「花王は本気で化粧品事業を育成しようとしているのか。お荷物のカネボウ化粧品の改革を早急に済ませないと、何をやっても中途半端に終わるのではないか」と、不安視している。
(文=田沢良彦/経済ジャーナリスト)
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