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独フォルクスワーゲンのヴィンターコーンCEOは辞意を表明。世界の自動車株への影響はどの程度になるのか・短期的な下落で済むのか(写真:ロイター/アフロ)
日経平均、現実味を帯びる1万7000円割れ 市場には株価浮揚の材料が見つからない
http://toyokeizai.net/articles/-/85545
2015年09月24日 江守 哲 :エモリキャピタルマネジメント代表取締役 東洋経済
日本がシルバーウィークの5連休を楽しんでいる間、世界の株式市場が下落基調を強めている。23日のNYダウ(ダウ工業株30種平均)は続落、前日比50ドル安の1万6279ドルで取引を終えた。突如発覚したドイツのフォルクスワーゲン(VW)の不正問題やFOMC(米連邦公開市場委員会)での決定に対する失望が尾を引いている格好だ。筆者が指摘している中国経済への懸念もあり、株価浮揚の材料を見つけるのが困難になりつつある。
■「好転する」兆しのない原油価格
9月16・17日のFOMCについての解説や、それに対する市場の反応についてはすでに報じられているので、ここでは深入りしない。だが、今回のポイントはFRBが金融政策決定プロセスについて、「真の独立性」をほとんど放棄したことにあるのではないか。
つまり、イエレンFRB議長はハト派とはいえ、すでにかなり前から「年内利上げ」を宣言している。これを撤回することは、FRB(米連邦準備制度理事会)の信任失墜に直結する。したがって、現時点ではかなり困難になりつつある年内利上げの可能性を依然として維持しながら、胸の内は「早く世界経済が改善し、利上げできるようになってほしい」と願っているに違いない。
問題は世界経済だけではない。インフレ率の低迷もある。インフレ率に大きな影響を与えているのが原油価格だが、その原油市場が好転する兆しがない。もちろん原油価格が「運よく」上昇すればその限りではないが、このままだとインフレ率の上昇はありそうもない。とすると、FRBの「デュアル・マンデート」(2つの委任された権限)である「雇用とインフレ」についての目標達成はあり得ない。
残念ながら、FRBやECB(欧州中央銀行)、日銀などの中央銀行の金融政策決定者は、金利操作はできても原油価格を操作することはできない。
米国のオバマ政権は、シェールオイルの増産をてこに、雇用創出と景気回復を目論んだ。ここまでは良かったのだが、これが原油価格の下落を引き起こし、世界の景気や金融市場に結果として悪影響を与えたことは誤算だった。さらに中国経済の大幅な減速という難題も浮上してきた。FRBができることはすでに限られており、今後も厳しい政策対応が迫られることになる。わずか1カ月でFRBが利上げできるような環境に劇的に改善するはずもなく、もし、この状況下でFRBが10月27日・28日の次回FOMCで利上げをすれば、それは驚きでしかない。信任が失墜するだけである。
■高い変動率が続き、売りが加速する懸念
今回のFRBの利上げ見送りによって、株価にとっての今までの良いパターン、つまり「利上げ見送り→市場に安心感→株価上昇」のサイクルが、「利上げ見送り→世界経済の不透明感→市場に不安感→株価下落」の悪いパターンに転じた点はきわめて重要である。
年内のあと3カ月で、FRBが願うような「世界経済の回復と原油価格の反転の兆し」が確認できるのだろうか。それがなければ、年内利上げは見送られ、市場の不安定さだけが残ることになる。
一方で、筆者は、市場関係者が「FRBの利上げ時期にあまりに執着しすぎ」だと感じている。より重要なのは、FRBの利上げ時期よりも、繰り返し警鐘を鳴らしているように、中国経済の悪化と企業業績の修正リスクだ。
業績予想はこれまでの経済環境を前提としたものである。この大前提が崩れてしまえば、割安とみられていた株価収益率(PER)は、一転して割高となってしまう。また市場にショックがあった場合には、株価が割安な水準でも売られることさえある。
ヘッジファンドや機関投資家などのプロといわれる投資家には、株価急落時には、それに伴う資産目減りを回避するため、機械的にポジションを調整、つまり株式の売却を行う傾向がある。また市場ボラティリティ(変動率)が高まった場合にも、収益のブレを低減するため、同様に機械的に株式の売却を行う。
このように、高いボラティリティを伴った下落局面が到来すると、機械的な売りが出るのが現在のグローバルマーケットの性質だ。現在の市場構造を理解していないと、割安な株を購入したつもりでも、一時的に大幅な含み損を被ることになりかねない。
■日経平均1万6000円割れの懸念も
こうした、ただでさえ不透明な市場環境の中に、大きな問題が発覚した。フォルクスワーゲンによる排ガス試験の不正問題である。調査の対象は米国から欧州などにも広がっている。世界経済のけん引役である自動車業界への不信感が高まる懸念がある。
同社のマルティン・ヴィンターコーン最高経営責任者(CEO)は辞意を表明したが、自動車業界への不信感が尾を引くようだと、経済面だけでなく、世界の株式市場への悪影響は不可避であろう。
また円高リスクにも引き続き注意が必要である。今、米国が望んでいるのはドル高ではなく、どちらかといえばドル安である。日本サイドにドル円相場の方向性に関する「実権」はないため、いつ円高に進んでもおかしくない。
もちろん、現状では円高は日本株にとっては上値抑制要因になる。ドル円の上昇は「平均3年」とされ、2012年に始まった今回の円安局面はすでに3年が経とうとしている。
外国人投資家は今回の下落局面で日本株を大きく売り越したが、いったん離れた市場にすぐに戻ってくることはないだろう。そのため、日本株は半年程度、安値圏での低迷を強いられることになるのではないか。
10月に日銀が追加緩和を実施し、これが株価反転につながるとの期待もあるが、果たしてどうだろうか。筆者は、2014年10月31日の「黒田バズーカ第2弾」前日の日経平均高値1万5701円と、大幅緩和が実施された10月31日の始値1万5817円に開いているマドが気になって仕方がない。つまり、1万7000円割れどころか、黒田バズーカ第2弾直前の水準まで相場が逆戻りするのではないかという懸念を持っている。この筆者の懸念が、杞憂に終わればいいのだが。
24日以降、今後1週間の日経平均株価の予想レンジはかなり広くなるが、1万6500円〜1万8000円としたい。
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