10. 2015年9月24日 17:30:01
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「シリコンバレーNext」 男性の相手は「会話ロボット」、不倫サイトが見せた技術力2015年9月24日(木)瀧口 範子 「Ashley Madison(アシュレイ・マディソン)」という、カナダのサイトからユーザー情報が3200万人分漏洩した大事件。2015年7月に明らかになったハッカー事件だ。同サイトが、大人の浮気を仲介するサービスを提供していただけに、その被害は方々で個人的な問題を引き起こしているようだ。 しかし、もっと驚いたことにこのサイトでは、女性だと思われていたユーザーの多くが、実はソフトウエアで作られた会話ロボットだったのだ。男性を誘惑してサイトに登録させ、利用料金を巻き上げるために、会話ロボットが彼らの心を操作していた。何ともすごい時代になってきた。 そもそもAshley Madisonは女性のユーザーを獲得するのに苦労していたもようである。同サイトの利用料金は相手とチャットやメールを交わすごとに発生する仕組みなのだが、男性は有料、女性は無料という設定だった。 手作り偽女性ユーザーからロボットへ移行 しかし、同サイトに侵入したハッカー集団「インパクトチーム」がぶちまけたデータを精査した報道によると、Ashley Madisonは金を払って外部の人間に委託して、偽の女性プロフィールの作成を作らせたり、男性ユーザーとチャットやメールでやり取りさせたりしていたようだ。 ところが、それではとても手が回らなかったのだろう。早くも2002年ごろから、そうした「手作り」の偽女性ユーザーに変わって、「自動生成」された女性の写真とプロフィールが作られ、同時にユーザーとリアルタイムでやり取りする会話ロボットも登場していたという。会話ロボットが女性になりすましていた数は約7万人分と想定されている。 面白いことに、会話ロボットは二つの目的のために有用だったらしい。一つは、浮気をしたい女性がこのサイトに無数にいるというイメージを作り出して、無料ユーザーを有料ユーザーに切り替えさせること。そしてもう一つは、いつまでも浮気が成立しない偽女性ユーザーとチャットをさせ続けることで、男性ユーザーにお金を払い続けさせることだ。このような運営側の企みにまんまとだまされていた男性ユーザーがたくさんいたようだ。 こんなことが起こるとは、まるで人が人工知能と恋に落ちる映画「Her(邦題は「her/世界でひとつの彼女」)を地で行っている感じだ。Ashley Madisonの場合、相手が会話ロボットであることを明らかにしていなかった点で、詐欺行為とみなされる可能性が高い。 人間の中に会話ロボットが平然と混じっていても、ほとんどの人が気付かなかったというのも驚きだが、最近はもっといい意味で人工知能が人々の相手をするための技術開発が進んでいる。 日本でも、ロボットの「Pepper」が店頭で客を迎えてくれるようになっている。アメリカでは、物理的なロボットの形はしていないものの、電話の向こうでいろいろな質問に答えたり、Webサイトで、保険商品を選ぶのを手伝ってくれたりするのに、この手の会話ロボットやAIが多数開発されている。チャットだけでなく、音声でやり取りするタイプのものがことに注目されている。 まともな用途でも普及が進む会話ロボット 中でも競争が激しくなっているのは、医療関連の分野だ。例えば、患者の相手になって、その日の体調や気分、薬の摂取状態などを確かめるタイプのもの。病院へ毎日通うほどではないが、毎日体調などをチェックするのが望ましいという慢性病患者が相手だ。 この場合、コンピュータスクリーン上で看護士のような身なりをした担当者(=会話ロボット)が質問をし、患者がそれに答える。何気ない会話のようにしてデータを取り、異変が認識されると看護士や医師にアラートが届くという仕組みだ。もちろん、会話ロボットはその患者個々人に合わせたやり取りをする。アメリカは医療費が高額なので、こうしたロボットサービスを介入させることで、病院にとっても患者にとっても節約になると期待されている。 かつてWebサイトのカスタマーサービスによく出てきた会話ロボットは使い物にならなかったが、最近は性能がグンと上がり、こうした会話ロボット開発が医療や金融サービスなどの分野で進んでいる。 だが、同じ技術がAshley Madisonのように人をだますためにも使われるということだ。どんな技術も表側と裏側の使い道がある。これからは、この手の詐欺事件もどんどん出てくるのだろう。 瀧口 範子(たきぐち のりこ) フリーランスの編集者・ジャーナリスト。シリコンバレー在住。テクノロジー、ビジネス、建築・デザイン、文化、社会一般に関する記事を新聞、雑誌に幅広く寄稿する。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)、訳書に『ソフトウェアの達人たち: 認知科学からのアプローチ(テリー・ウィノグラード編著/Bringing Design to Software)』(ピアソンエデュケーション刊)、『ピーター・ライス自伝』(鹿島出版会・共訳))がある。上智大学外国学部ドイツ語学科卒業。1996-98 年にフルブライト奨学生として(ジャーナリスト・プログラム)、スタンフォード大学工学部コンピュータ・サイエンス学科にて客員研究員。 このコラムについて シリコンバレーNext
「シリコンバレーがやってくる(Silicon Valley is coming.)」――。シリコンバレー企業の活動領域が、ITやメディア、eコマースといった従来の領域から、金融業、製造業、サービス業などへと急速に広がり始めている。冒頭の「シリコンバレーがやってくる」という言葉は、米国の大手金融機関、JPモルガン・チェースのジェームズ・ダイモンCEO(最高経営責任者)が述べたもの。ウォール街もシリコンバレー企業の“領域侵犯”に警戒感を隠さない。全ての産業をテクノロジーによって変革しようと企むシリコンバレーの今を、その中心地であるパロアルトからレポートする。 http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/061700004/091700036
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