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どんどん家計を圧迫! なぜケータイ料金は安くならないのか? デフレの時代に通信料だけが高止まり
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/45451
2015年09月22日(火) 町田 徹「ニュースの深層」現代ビジネス
■首相の一言で株価が急落!
安全保障法案の審議が大詰めを迎えていた先週月曜日(9月14日)午後、日経平均株価が終値で約1週間ぶりの1万8000円割れとなった。
この日、景気指標の悪化と上海株の下落で冷え込んでいた投資家心理を一段と悪化させたのが、前週末(9月11日)の経済財政諮問会議で飛び出した安倍晋三首相の携帯電話料金の引き下げ指示だ。
重くなる一方の家計の通信費負担に対する配慮をみせることで、陰る支持率の挽回を狙ったのだろうが、逆効果。1995年に携帯電話料金の認可制を撤廃したために、政府は具体策を持ち合わせていない。
にもかかわらず安直な支持を出した結果、業績の悪化懸念をはやす投資家に通信事業者株を売り叩かれ、アベノミクスの象徴だった株高を冷やす結果を招いたのだ。
携帯電話料金の高止まりは、長期にわたった稚拙な競争政策の所産である。本気で、速やかに大幅な通信費の引き下げを実現したいのならば、今回のように思い付きを口にするような対応は論外だ。
過去のどの時点で、総務省の「携帯料金政策」は失敗したのか。米連邦通信委員会(FCC)との対比も交えながら検証し、安倍政権が採るべき通信政策の選択肢を探ってみよう。
11日夕方、経済財政諮問会議が首相官邸の4階大会議室で開かれた。その議事要旨によると、民間議員をつとめる伊藤元重東大大学院教授が、今後のアベノミクスの焦点のひとつとして「高過ぎる携帯電話料金の引き下げ」を取り上げた。
「消費支出の中に占める通信費のシェアが非常に高くなっており、これも含めて、いろいろな政策のレベルで消費を抑え込んでいるものをもう一回全部洗い出してみる」べきだと主張した。
これに対して、高市早苗総務大臣がこう反応する。
「確かに家計支出に占める通信費の割合は増加しており、特に近年、スマートフォンの普及によって、携帯電話料金への支出が増えている。総務省では、携帯電話事業者のネットワークを利用して低廉なサービスを提供するMVNOの振興等に取り組んできた。しかし、 依然として家計にとって通信費の負担がかなり大きいと考えられるので、より低廉で利用しやすい通信料金を実現するための方策を検討したい」
菅義偉官房長官も「そこは強く支持したいと思う。特に通信3社の寡占状況が続いているため、ぜひ、もっと競争ができるような環境を作っていただきたい」と賛意を示した。
そして、会議の最後に報道関係者を入室させて、安倍首相が「携帯料金等の家計負担の軽減は大きな課題である。高市総務大臣には、 その方策等についてしっかり検討を進めてもらいたい」と是正を指示してみせたのだ。
■なぜ携帯料金は高くなる一方か
これといった具体策が示されない中で、同じ11日、KDDIが「これまでより1000円安い月額1700円」で、「通話回数の制限なく5分以内の通話が無料でかけ放題となる」新料金プランの導入を発表したことに、週明けの東京市場は激しく反応した。
プラン自体は、アップルの新型スマホiPhone 6sの発売にあわせた販売促進戦略だが、官邸の意向を受け入れると通信事業者の収益力が大きく低下するのではないかとの見方を呼んだのだ。
14日の東京市場では、前週末比9.8%の値下がりを記録したNTTドコモを筆頭に、同8.6%安のKDDI、同6.4%安のNTT、同5.5%安のソフトバンクと通信4社が値下がり率の1〜4位を独占した。相場全体の値動きを示す日経平均株価も同298円52銭安の1万7965円70銭と、終値ベースで9月8日以来の1万8000円割れとなった。
政府は本当に携帯電話料金の大幅な値下げを実現できるだろうか。
答えは否だろう。大手通信事業者は、「総務省は受け身。総論だけだ」と、同省が逃げ腰で、経済財政諮問会議の様子を伝えてきたに過ぎないと明かす。官邸からの厳しい圧力にもかかわらず、総務省は実現を迫る行動を起こしていないのだ。
問題は、総務省のことを、官邸や政治に対する「抵抗勢力」と片づけられないことだ。総務省はやりたくても、前身の旧郵政省時代に、携帯電話料金の認可制を撤廃して届け出制にした結果、どんなに事業者が利益を溜め込んでいようと、値下げを迫る手段を失ってしまったからである。
当時、電電公社の民営化を柱とする1985年の通信自由化を受けて、携帯電話業界は新規参入が活発だった。
東京を例にとると、NTTドコモ、日本移動通信(IDO、KDDIの母体のひとつ)、東京デジタルホン(ソフトバンクの前身)、ツーカーセルラー東京(日産自動車系、KDDIが吸収合併)の携帯4社に加え、NTTパーソナル通信網(後にNTTドコモに営業譲渡)、DDIポケット(ウィルコム、Yモバイルと変遷後後、ソフトバンクが吸収合併)、アステル(電力会社系)のPHS3社が参入し、7社の競争体制が生まれていた。
勢い料金競争も活発で、規制(料金認可)で縛らなくても、消費者の利益が守られると考えられた時代だった。
実際、年代順に情報通信白書を辿っていくと、800MHz帯域で第2世代のデジタルサービスが開始された1993年5月に月額1万7000円だった携帯電話の基本料は、3年7ヵ月後(96年12月)に7割以上安い4400〜4600円に、同じく平日昼間3分間260円だった携帯電話の通話料は6割以上安い80〜100円と急ピッチに下がった経緯がある。
■家計に占める通信料は急上昇!
ところが、淘汰・再編が始まると、料金競争は消滅した。6年4ヵ月後の2003年4月になっても基本料が4300〜4600円と一部で100円下がっただけ。通話料は96年12月とまったく同額だった。
2000年代に入り、世の中がデフレの時代に突入しても、事態は改善しなかった。経済財政諮問会議に提出されたデータ(ベースは総務省の家計調査)は、過去10年間で家計に占める「通信費」(携帯電話料金だけでなく、郵便や固定電話、電話機も含む)が約2割上昇したと分析して見せた。
だが、データが公表されている過去15年間をみると事態はさらに深刻だ。家計に占める通信費の割合は、2000年の3.2%から2014年の4.9%と、1.5倍以上に膨らんでいるのだ。
この通信費の推移を2000年を100とする指数に置き換えて、その推移と携帯電話業界で起きた“事件”を重ね合わせると、どうすれば携帯電話料金という家計の重荷を解消できるかのヒントが、ひとつ浮かび上がってくる。
過去15年間のうち、指数が最も大きく上昇した2001年(前年から9.4ポイント上昇の109.4)は、前年10月にKDD、DDI、IDOが3社合併して、KDDIが誕生している。
同様に、過去10年間に着目すると、上昇幅の最も大きい2007年(前年から4.1ポイント上昇の133.9)には、前年4月にソフトバンクによるボーダフォン・グループの買収が起きている。さらに、3番目に大きかった2014年(前年から3.1ポイント上昇の149)は、前年4月にソフトバンクによるイー・アクセスとウィルコムの連結子会社化があったのだ。
つまり、通信業界で大きな淘汰・再編が起こると、時をおかずに、携帯電話など通信費の価格の下方硬直性が強まり、家計に占める負担が膨らんできたのである。
実は、こうした事態を予見して、料金上昇を未然に防止しようとしたのが、米連邦通信委員会(FCC)だ。ソフトバンクが買収した当時米携帯電話3位のスプリントを通じて、同4位だったTモバイルUSを買収しようとしたところ、これ以上の大手事業者の統合は競争環境を損ねるとして断固拒否したのである。
■アベノミクス停滞の象徴に!?
一方、総務省・旧郵政省は、2001年にNTTドコモが先陣を切ってサービスを開始した第3世代携帯電話(3G)や、現行のLTEを中心とした第4世代携帯電話(4G)の導入にあたって、既存事業者にだけ周波数を割り当て、競争が乏しくなることを容認し続けてきた。
さらに、4Gの周波数の割り当てでは、世界で常識になっている電波オークションを行わず、無料で4社均等に割り当てたうえに、その1社のイー・アクセスグループをソフトバンクが買収することを容認し、その際に料金規制を科すなどの競争維持・促進策を講じることもしなかった。
料金の高止まりは、新規参入促進策がMVNO事業者へのネットワーク開放やSIMロックの解除など、間接的・技術的な手法に限定されてきたことのツケなのである。
携帯電話事業は、総務省から希少資源である周波数の割り当てを受けないとビジネスを始められない。一般の産業と異なり、参入障壁の非常に高いビジネスだ。お蔭で、大手の携帯事業者3社はそろって、日本企業の収益ランキングのトップテンに名前を連ねている。
向こう10年から15年を展望した場合、携帯電話料金の高止まりが続く事態を打破するには、2020年頃のサービス開始が見込まれる第5世代携帯電話(5G)の周波数の割り当てで、例えば既存事業者をすべて排除して、他の業態からの新規参入を促すぐらいの競争・新規参入促進策が必要だろう。
そんなに待てない、もっと早く効果を上げたいというなら、副作用の小さくない料金規制の復活や、売買の対象ではなかったはずなのに、企業買収によってソフトバンクが労せず手に入れた4G用周波数を返納させて新規参入希望者に割り当て直すか、売却を促すといった荒療治も考えられる。
首相の高市総務大臣への指示が「できもしない指示」だったとして、迫り来る中国発の世界経済の後退リスクに打つ手がないアベノミクスの象徴と酷評されないためには、なんらかの抜本策が必要なのは明らかである。
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