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企業の生き残りに必要な「3つのクラウド」を大前研一氏解説
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150920-00000004-pseven-bus_all
SAPIO2015年10月号
企業を成長させる方程式として、一昔前は「グローバル化」という言葉が常識だった。しかし現在、それだけでは成長は覚束なくなっている。いま世界には「三つのクラウド」という新たなビジネスの武器が生まれた。大前研一氏は「その武器を理解しているかどうかで見える景色は大きく異なる」と指摘する。
* * *
事業環境が変化するスピードが、年々早くなっている。
たとえば、パナソニックは事業をBtoC(企業対個人のビジネス)からBtoB(企業対企業のビジネス)にシフトしたことなどにより2014年度はV字回復と言われたが、2015年4〜6月期の営業利益は前年同期比7%減と急減速している。
新興企業はもちろん、大企業でさえ、ある年はコストカットや事業改革の効果が出て黒字になっても翌年にはすぐ赤字になるなど、業績があっという間に大きく変化するようになっている。
その一方では次々に新しい企業が生まれ、1〜2年で黒字化してスピード上場するケースも少なくない。
いまや事業環境は「3年で激変する時代」になったのだ。その中で企業が生き残っていくためには「三つのクラウド」の時代が到来したことを認識・理解しなければならないだろう。
三つのクラウドとは「クラウドコンピューティング」「クラウドソーシング」「クラウドファンディング」だ。
もはやハードウェアやソフトウェアは、クラウドの中(ネット上)で提供されているクラウドコンピューティングサービスを利用すれば、自前で持つ必要はなく、スケーラブル(いくらでも規模の拡大が可能)である。巨大なサーバーを自社の中に置く必要などないのだ。
人も、クラウドソーシングで国内外の人材に外注すれば、これまでの数分の一〜数十分の一のコストで済む。
たとえば、日本で発注したら3000万円以上かかるシステム設計は、フィリピンの人材に委託すると70万円でお釣りがくる。40倍以上の人件費の差がクラウドソーシングによって克服できるわけで、いまやブルーカラーよりもホワイトカラーのほうが国境を越えやすい時代になったのである。
さらには事業資金も、良いアイデアであればクラウドファンディングによって不特定多数の人たちから容易に調達できる。実際、スマートウォッチのベンチャー企業「ペブルタイム(PeBBle Time)」は、クラウドファンディングサイトである「キックスターター(KiCkstArter)」で2000万ドル(約25億円)もの資金を集めた。
このため、いまアメリカの大手ベンチャーキャピタルは、新たな投資機会が見つからなくて困っている。彼らの元には数千億円のカネが集まっているため、100億円単位の投資先を求めている。ところが、有望なベンチャー企業を輩出するシリコンバレーでは、ペブルタイムのようにクラウドファンディングで資金を集めるケースが増えているからだ。
そのうえ、ローコストに事業が進められるクラウドコンピューティングやクラウドソーシングの発達によって「サブミリオン」と呼ばれる、100万ドル(約1億2500万円)未満の資金でスタートして2〜3年で急成長する企業が多くなった。事業に多額の資金を用意する必要がなくなったのである。
20世紀の経営の三要素は「ヒト・モノ・カネ」と言われたが、いまやそれが三つのクラウドで代替できるようになり、すべて自前で持つ必要がなくなったと言っても過言ではない。21世紀の経営資源は、新しい事業環境が見えていて良いアイデアを生み出せる一握りの傑出した人間だけでよいのである。
言い換えれば、三つのクラウドを理解しているかいないかで、見える景色は全く違う。三つのクラウド時代の景色が見えている人にとっては、これほど事業機会があふれている時代はない。実際、そうした人たちに聞くと、少し考えただけでも、新しい事業アイデアが10も20も簡単に出てくると言う。
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