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ベネズエラはOPEC非加盟国を含む全産油国の首脳会議の開催を呼びかけている。ベネズエラ国営石油会社ペトロレオスがオリノコ川流域に建設した同国初の石油プラットフォーム(2011年7月28日撮影、資料写真)。(c)AFP/Ramon SAHMKOW〔AFPBB News〕
大手シェール企業倒産でジャンク債市場が危ない 原油価格は回復せず世界の金融市場が大混乱に?
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44816
2015.9.19 藤 和彦 JBpress
9月16日、シェール企業大手のサムソン・リソーシズが米連邦破産法第11条(日本の民事再生に相当)の適用を申請した。以前のレポート(「天津大爆発でさらに強まる原油価格の下押し圧力」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44583)で「サムソン・リソーシズが9月15日までに破産法の申請を行う予定である」と書いたが、予想通りの結果となった。
サムソン・リソーシズが抱える負債総額は42億ドル。今年3月のクイックシルバー・リソーシズ(負債総額23.5億ドル)に続く大型の倒産である。全米第2位の天然ガス生産企業であるチェサピーク・エナジーも今年7月以降配当を停止しており、「倒産も間近ではないか」との噂が広まっている。1986年の逆オイルショック後、米国では50%以上の原油生産企業が倒産した。今後、何パーセントのシェール企業が生き残るだろうか。
■ジャンク債市場に飛び込んできた「巨大なクジラ」
シェール企業の大量倒産で最も打撃を受けるのはジャンク債市場である。世界のジャンク債市場はリーマン・ショック以降の低金利時代の下、高い利回りを求める投資家の間で人気を呼び、その規模は現在2兆ドルにまで拡大したと言われている。しかしジャンク債市場はリスク性が高いため、ひとたび市場にストレスがかかると流動性が蒸発し、市場関係者の間でパニックが起きやすくなる。米国の利上げの動きと中国経済の急減速により、世界の金融市場全体のセンチメントが悪化しつつある。ジャンク債はその影響を最初に蒙る市場の1つである。
既に逼迫感が高まっていたジャンク債市場だが、よりにもよって「巨大なクジラ」が飛び込んできた。米格付け会社スタンダート・アンド・プアーズがブラジル石油公社(「ペトロブラス」)の信用格付けをジャンク級に引き下げたため、同社が発行する社債(発行残高560億ドル)がジャンク債市場になだれ込んできたのだ。
ジャンク債市場のこれまでの主役は国営ベネズエラ石油(360億ドル)や米通信大手のスプリント(310億ドル)だった。だが、ペトロブラスの社債発行残高はこれらを上回り、「ジャンク債市場の王様」となった(9月11日付ブルームバーグ)。
拡大する汚職スキャンダルへの対応に苦しむペトロブラスに、格下げによる資金調達コストの上昇が追い打ちをかける。ペトロブラスが発行する社債がジャンク債市場入りしたことで、シェール企業が発行するジャンク債がその分はじき飛ばされてしまうのではないだろうか。
ジャンク債は現在ETF(上場投資信託)などを通じて個人や年金が大量に保有すると言われている。シェール企業の倒産が相次ぐとETFを解約する顧客が増加し、発行体がエネルギー関連ジャンク債を市場で売らざるを得なくなる。
この動きは、リーマン・ショックを引き起こしたサブプライムローン関連債券等に対する取り付け騒ぎと同じである。ジャンク債はサブプライムローン債と同様、市場の流動性が乏しいことから、「売り」が続出すれば市場で価格がつかなくなる。そうなればETFを解約しようとした投資家たちがパニックを起こして、自らが保有する優良資産を投げ売りして現金を確保する動きに出るだろう。このようにETF発行体のジャンク債売りがサブプライムショックと同じように世界全体の金融市場を麻痺させてしまう「引き金」になってしまう懸念が高まっている(2015.9.19、週間東洋経済)。
■減産の兆しが見え始めた非OPEC諸国
この悪夢のようなシナリオを回避できるのは、原油価格が回復する場合のみである。
米エネルギー省が9月16日に発表した週間石油在庫統計で、オクラホマ州クッシングの原油在庫が2014年2月以来の約190万バレルと大幅減少した。それを受けて、ニューヨーク原油市場は2週間ぶりの大幅高となった(1バレル=47ドル台)。
シェール企業の原油生産もついに減少に転じた。米エネルギー省が9月10日に発表した統計によれば、米国の原油生産量は日量20.8万バレル減少した。米シティは9月8日、「年末までに米国の原油生産は最大で日量50万バレル減少し、減産の半分がシェールオイルとなる」との予測を公表した。
国際エネルギー機関(IEA)は9月11日、OPEC以外の産油国の来年の原油生産は価格下落で日量50万バレル減少して同5770万バレルとなるとの見通しを示した。これはソ連崩壊の影響で同100万バレル減となった1992年以来の大幅な減少である。
OPECも9月14日に、加盟国以外の産油国の来年の原油生産見通しを日量11万バレル引き下げ、同5760万バレルになるとの見方を明らかにした。原油価格の下落で米シェール業界が打撃を受けているのが主な要因である。
このように非OPEC諸国の減産の兆しが見え始めている。
■価格引き上げの動きが見られないOPEC
しかし、OPECの8月の原油生産量は日量3154万バレルと前月から増加し、OPEC産原油に対する需要見通しを同219万バレル上回る水準が続いている。OPECは原油価格が年内に反転上昇することには悲観的だが、価格引き上げに向けた動きは遅々として進んでいない。
ベネズエラはかねてからOPEC非加盟国を含む全産油国の首脳会議の開催を呼びかけていた。だが、サウジアラビアはベネズエラの提案に否定的な見解を示していることを明らかにした(9月11日付ロイター)。
イランは来年に見込まれる核開発を巡る制裁解除に向けて、世界市場におけるシェア拡大の姿勢を鮮明にしている。特にアジア向けの原油輸出価格を大幅に引き下げているとされる。イラン政府は2017年3月までの1年間の予算案で原油の平均価格を1バレル=42〜50ドルと想定し、あくまで薄利多売戦略を進める覚悟である(9月14日付ロイター)。
■原油の余剰は解消されず1バレル20ドルに?
前回のレポート(「中国経済の『長征』で市場に原油が溢れかえる」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44768)で、中国の8月の原油輸入量が日量629万バレルと前月に比べて97万バレル減少したことをお伝えした。年末に向けて中国の景気がさらに減速すれば、非OPEC諸国の減産を帳消しにするどころか供給過剰状態を一層深刻化させる可能性が高い。
中国では、8月14日の人民元切り下げに端を発する資本流出の動きが止まらない。その中にあって中国当局は深刻なジレンマに陥っている。資本流出を防ぐために人民元を買い支えれば、国内の流動性を吸い上げ、デフレ経済を一段と悪化させるリスクを高めることになる。一方、人民元安を容認すれば、膨大なドル債務に悩む不動産開発企業の返済負担が重くなるからだ。
にっちもさっちもいかない状況の中で、中国政府は9月14日、過去20年で最も抜本的な国有企業改革を断行すると発表した。だが、病はますます重くなるだけだろう。10兆ドル規模の中国経済で圧倒的な存在感を有する国有企業にメスを入れれば、短期的にはデフレ効果の方が大きいからである。1990年代以降、日本は景気対策と称して構造改革を進めてきたが、デフレが進行するばかりで「百害あって一利なし」だった。
ゴールドマンサックスは9月11日に「OPECのさらなる生産拡大で世界の原油の余剰が来年まで続き、原油価格は1バレル=20ドルまで下落する可能性がある」という見方を示した。筆者はこの見方が現実になる可能性が高いと思う。
ゴールドマンサックスは「米国の製油所が定期補修のため稼動を停止した時期(2015年10月から2016年3月まで)に原油価格が同20ドルになる確率が高い」としており、その後、供給過剰を背景に「今後15年間にわたって原油は安値で推移する」と見通す。逆オイルショック後、21世紀に入るまで15年間以上も低油価の時代があったことを考えれば、あながちあり得ない話ではない。今後ますます原油価格の動向に目が離せなくなることだけは間違いない。
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