1. 2015年9月19日 01:02:30
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広木 隆「ストラテジーレポート」 2015年09月18日FOMCの決定を受けた株式市場の反応について 昨日の米国株式市場ではNYダウ平均が3日ぶりに反落し、前日比65ドル安の1万6674ドルで取引を終えた。一般的な市況コメントを読むと、「連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ見送りを好感した買いが入る場面があったが、最近は株価の戻りが続いていた反動から、買いが一巡した後は利益を確定する目的の売りに押された」と解説するものが多い。ゼロ金利据え置きの発表直後、売り買いが交錯した(午前3時)。その後、声明やイエレンFRB議長の記者会見でハト派的な内容が目立ったことなどから、市場の一部では利上げがずっと先になるとの見方が浮上し、ダウ平均は一時190ドルあまり上げた。但し、FOMC参加者の政策金利見通しによると、2015年末時点で適切と考えるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は中央値が0.375%。6月時点の0.625%から下方修正されたものの、依然として「年内の利上げ」がコンセンサスとなっている。利上げ時期を巡る不透明感が続くことが、結局相場の安定化を遠ざけている状況である。 僕には、FOMCの結果を受けた市場は、「無反応」だった、ように見える。結果発表後の上下動に上記のような「解説」をつけることはできるかもしれない。しかし、ナスダック総合株価指数は3日続伸し、プラスで終えている。要は、昨日の米国株市場は「まちまち」の動きで変動幅もわずか、イベント通過の材料出尽くしで前日まで上がった分を吐き出しただけだろう。 債券市場では10年債利回りがほぼ一本調子に約10bps低下した。2年債の利回りは13bps低下した。2年債は政策金利見通しをほぼ反映するから、利上げ期待分(=利上げをする・しないの予想がだいたい50%:50%で拮抗していたから、25bpsの利上げ期待の半分=12.5bps)がそっくりそのまま剥落した。10年債利回りは2年債利回りの低下に合わせてパラレルに下がっただけである。特段、「世界景気の減速」を懸念して長期金利が下がったわけではなかろう。為替市場の反応は、この米金利のブル・スティープニング化を、やはり素直に反映して円高ドル安となった。 今日の日本株も米国株の反応と同じである。日経平均は前日比360円安。昨日が260円高、一昨日が145円高だったから、イベント通過で過去2日の上昇分をそっくり吐き出しただけ、明日からのシルバーウィークの連休を考えれば、むしろ上出来である。 それなのに、某大手メディアの市況解説はこういう調子だ。 株、「利上げ見送り」でアク抜けならず 世界景気への不安増す <東京株式市場はFOMCの利上げ見送り判断に対して、「売り」で反応した。イエレン議長は記者会見で、利上げを巡っては世界経済や金融市場の動向を注視する姿勢を強調。世界景気への不安や利上げ時期を巡る不透明感が高まる結果となり、「米利上げでアク抜け」との期待は後退した。> <FOMC前は利上げ見送りで新興国不安が落ちつけば日本株にプラスとの見方もあった。(中略)だが、ふたを開けてみれば「FRBが利上げに踏み切れないほど世界景気は弱い」との解釈が勝り、利益確定売りに押される格好となった。> FOMCを受けた日本株の下落は「FRBが利上げに踏み切れないほど世界景気は弱い」との解釈が勝った結果だというのだ。これを読んで、僕はほくそ笑んだ。そう考えるひとが多いほど市場は間違う可能性が高い。つまりミスプライスを提供してくれるということだ。 今回、FRBが利上げ見送りを決めた背景として、世界景気の減速を指摘する声があるが、その点に過度に拘泥すると相場のシナリオを誤るリスクがある。確かにイエレン議長は記者会見で、海外情勢の見通しに触れ「中国やその他の新興国の成長をめぐる懸念が出ていることで、金融市場のボラティリティーが著しく高まった」と発言した。 しかし、議長はあくまで「懸念」と言っており、中国景気が減速していること自体には触れていない。それよりも、そうした「懸念」によって株安、ドル高などが進んだことが最終的に米国経済、特にインフレにどのような影響を与えるのかという点を注視していると述べている。これは以前のレポートで紹介したジョージ・ソロスの「再帰性理論」だ。市場の変動がファンダメンタルズそのものにも影響を与えかねないフィードバック・ループである。 イエレン議長の発言は、中国景気が減速を続けたとしても、それを所与のものと織り込んで市場が安定すれば利上げの条件が整うとも読める。中国景気が減速しているのは間違いないが、それは今に始まったことではなく既定路線であり、直近に減速感が一段と強まったという確固たる証拠もない。現状はまだ「懸念」が「市場」を揺らしているだけで、その影響はファンダメンタルズに及んでいない。ここからは拡大解釈かもしれないが、イエレン議長ほどの方になると市場を見る目も冷静なのだろう、おそらく(大変僭越ですが)僕と同じように、この相場は「センチメント(市場心理)」だけで揺れ動いていると捉えていると思われる。 問題は、市場とFRBが「いたちごっこ」の袋小路にはまっていることだ。市場はFRBの金融政策が不透明なことで安定性を欠いているが、FRBは市場が不安定だからこそ利上げに踏み切れないでいる。どちらかが先に、この悪循環を断ち切る必要がある。 僕は市場が落ち着くほうが先ではないかと思う。理由は次回のレポートで述べる。 レポートの冒頭に戻ると、米国市場はFOMCの結果を消化していない。とりあえずイベント通過で手仕舞うものを手仕舞ったという感じ。仕切り直しの相場は今晩からだ。ちなみに今週初め(9/14)、「米国株は買いで臨む」というレポートを書いたが、ここまでの結果をレビューしておくと、インデックスは月曜日のロングで成功である。アップル(AAPL)は昨日の下げでマイナスとなったが、アマゾン(AMZN)、ギリアド・サイエンシズはプラス(GILD)。フェイスブック(FB)はなんと昨日まで9連騰。アンダーアーマー(UA)は月曜の終値から昨日の終値まで8%超の値上がりで上場来高値更新中である。 さて、日本のシルバーウィーク中に米国株はどのような動きをするだろうか。S&P500は昨日の終値が1990。2000の大台回復が目前に迫る。2000を回復すると、今回の下げ幅に対する半値戻しを達成する。「半値戻しは全値戻し」との格言もある。利上げがとりあえず先送りされた間隙を縫って、戻りを試す展開ではないか。 https://info.monex.co.jp/report/strategy/index.html 2015年09月18日
焦点は再び中国に <ポイント> ◆昨日は、米FOMCが利上げを見送ったことから、米利回りの急低下と共にドルが対円や対欧州通貨で大きく下落したのが特徴的だった。ドル/円は一時119円台へ下落、ユーロ/ドルは1.14ドル台乗せへ上昇した。 ◆他方、豪ドル、NZドルやカナダドルもFOMC発表直後は大きく上昇したものの、利上げ見送りでも米株価やコモディティ価格が上昇しなかったことから、すぐに反落しほぼ発表前の水準に戻った。 ◆米FOMCでは、GDP成長率、コアPCEデフレータやFF金利の見通しを下方修正した上で、世界景気減速とそのインフレ率への影響の評価にもう少し時間がかかるとして利上げを見送った。Yellen議長は次回10月も含め年内利上げの可能性が高いとしており、筆者も現時点では12月FOMCでの利上げの可能性が引き続き高いとみているが、世界景気や米インフレ動向次第では来年に先送りされるシナリオも意識される状況が続きそうだ。 ◆本日は、FOMC後で材料も少なく、Stevens・RBA総裁発言(8:30)、Haldane・BoEチーフエコノミスト発言(20:05)およびカナダ8月コアCPI(21:30)くらいしか予定されていないため、FOMC結果の消化が続きそうだ。ドル/円は、120円前後では押し目買いが入るかもしれないが、利上げ時期が不透明な中で、積極的なドル買いは入りにくそうだ。こうした中、中国株価が大きく下落するようだと、再び119円台もありそうだ。 昨日までの世界:米国の先送り症候群、先送り時期は年内とは限らず ドル/円は、欧州時間には米FOMCの利上げリスクを織り込む動きからか上昇し、発表前に一時120.99円へ強含みとなった。その後、米FOMCが利上げを見送ったことから、米利回りの急低下と共に一時119.80円へ下落した。但し本日早朝にかけては120円台前半を回復している。 米FOMCでは、2016年、2017年のGDP成長率とコアPCEデフレータ、およびFF金利見通しは2015年から2017年分まで下方修正した上で、世界景気減速とそのインフレ率への影響の評価にもう少し時間がかかるとして利上げを見送った。Yellen議長は次回10月も含め年内利上げの可能性が高いとしており、筆者も現時点では12月FOMCでの利上げの可能性が引き続き高いとみているが、世界景気や米インフレ動向次第では来年に先送りされるシナリオも意識される状況が続きそうだ。 ユーロ/ドルは、欧州時間にかけては1.13ドル丁度を挟んだもみ合い推移が続いた後、米FOMCの利上げ見送りを受けて急上昇し、1.1441ドルの高値をつけた。 ユーロ/円は、欧州時間にかけてはドル/円の強含みとともに136円前後から一時137円乗せとなり、更にFOMC後は対ドルで円よりもユーロの方が上昇したことから、137.45円へ続伸した。 豪ドル/米ドルは、欧州時間にかけては原油などコモディティ価格の反落を眺め0.72ドル丁度前後から0.71ドル台半ばへ軟化して推移していた。その後、米FOMCの利上げ見送りが伝わると急反発し、一時0.7276ドルの高値をつけた。もっとも、米利上げ見送りでも米株価やコモディティ価格が上昇せず、リスクオンにはならなかったことから、すぐに0.71ドル台後半へ反落し、ほぼ発表前の水準に戻った。利上げ見送りの一因が世界景気に関する慎重な見方だったことが背景にあるとみられる。 豪ドル/円も、欧州時間にかけて86円台前半へ軟化した後、米FOMC発表後に87.51円へ急反発する局面があったもののすぐに反落し、一時86円割れとなった。 きょうの高慢な偏見:焦点は再び中国に 最新版のFX戦略ウィークリーはこちら 今週の経済指標カレンダー ドル/円は、本日は材料も少なく、FOMC結果の消化が続きそうだ。120円丁度前後では押し目買いが入るかもしれないが、利上げ時期が不透明な中で、積極的なドル買いは入りにくそうだ。こうした中、中国株価が大きく下落するようだと、再び119円台もありそうだ。 ユーロ/ドルも、米利上げ先送りと中国株価への警戒感から高止まりが続きそうだ。ECB追加緩和期待は燻るが、ECB高官からより明確な追加示唆発言が出ないと、下落基調への回帰は難しそうだ。 豪ドル/米ドルは、米FOMCも世界景気減速の悪影響の可能性を認めたことで、コモディティ価格と同様に上値の重さが再認識されたかたちとなっており、中国株価とコモディティ価格が下落すると、豪ドルも再び下落基調に戻りそうだ。 FOMC後:半永遠のゼロとドル伸び悩みのリスク
今週の特徴:米FOMCを受けてドル安 今週は、米FOMCの利上げ見送りを受けてドルが全般的に下落したのが特徴的だった。ドル/円は、15日に日銀の追加緩和見送りで119.40円へ下落した後、米コア小売売上高の予想比上振れで反発し120.99円の高値をつけたが、17日に米FOMCで利上げが見送られると再び120円割れへ反落するなど、結局9月入り後の119-121円のレンジ推移が続いた。ユーロ/ドルは、16日までは軟調に推移し1.1214ドルの安値をつけたが、週後半は反発基調となり、米FOMC後のドル安もあって8月26日以来の1.14ドル台乗せとなった。豪ドル/米ドルは、ターンブル新首相決定(14日)政権発足への期待感、原油価格の反発傾向、米コアCPIの予想比下振れ(17日)に加えて、米FOMCでの利上げ見送りから、一時0.7276ドルと8月24日以来の水準へ反発が続いたが、FOMC後の豪ドル反発は一時的に留まっている。 来週の見通し:半永遠のゼロとドル伸び悩みのリスク 来週は比較的材料が少なく、9月FOMC後の方向性を模索する展開が続きそうだ。FOMCでは来年、再来年のGDP成長率とコアPCEデフレータの見通しと同時に、FF金利見通しも予測期間全般にわたり引き下げられた。更に、足許の世界景気減速懸念や市場の不安定の悪影響の評価に時間を要することが利上げ見送りの一因となっており、目先すぐには中国景気減速懸念や市場の不安定が解消するとは考えられず、筆者が想定する12月利上げすら後ずれするリスクが高まっている。こうした状況では、ドルは米経済指標だけでなく中国の株価・景気動向そして政策対応にも振られ易い中で伸び悩み、ドル/円は年末にかけて118-122円で方向感のない展開が続きそうだ。 来週の材料面では中国9月財新製造業PMI(23日)、ユーロ圏9月PMI(23日)、米8月耐久財受注(24日)および本邦8月コアCPI(25日)などが重要で、中国PMIが予想通り改善を示せばドル/円や豪ドルにとってポジティブとなる一方、ユーロ圏PMIは悪化リスクがあり、ユーロの上値抑制要因となりそうだ。 来週の経済指標カレンダーはこちら 1.ドル/円 来週のドル/円は、比較的材料が少なく、本邦も水曜まで休場の中、9月FOMC後の方向性を模索する展開が続きそうだ。FOMCでは来年、再来年のGDP成長率とコアPCEデフレータの見通しと同時に、FF金利見通しも予測期間全般にわたり引き下げられた。更に、足許の世界景気減速懸念や市場の不安定の悪影響の評価に時間を要することが利上げ見送りの理由となっているため、目先すぐには中国景気減速懸念や市場の不安定が解消するとは考えられず、筆者が想定する12月利上げすら後ずれするリスクが高まっている。こうした状況では、ドルは米経済指標だけでなく中国の株価・景気動向そして政策対応にも振られ易い中で伸び悩み、ドル/円は年末にかけて118-122円で方向感のない展開が続きそうだ。 来週は米国で21日に中古住宅販売、24日に耐久財受注および新築住宅販売、25日に2QGDP最終推計値およびミシガン大消費者信頼感確報値などが発表予定となっているが、全てが市場予想を上回るなどがない限り次回10月利上げの期待は高まらず、方向感は出にくそうだ。むしろ、Fedが中国を含む世界景気減速リスクの影響を評価しつつある中で、中国財新製造業PMI(23日)が予想通り改善を示せば、ドル/円の下支え材料となるかもしれない。 なお、本邦コアCPI(除く生鮮)は前年比-0.1%とマイナス化が予想されており、本来であれば日銀のインフレ目標である2%からの更なる乖離とデフレリスクを想起させ、追加緩和期待が高まるべきだが、日銀は原油安の影響を回避するためかエネルギーを除くインフレ指標(例えばCPI除く食料・エネルギーやCPI除く生鮮食品・エネルギーなど)を重視し始めており、物価が改善基調にあるとの判断を崩していない模様で、目先の日銀の金融政策見通しへの影響は小さそうだ。 2.ユーロ ユーロ/ドルは、米利上げ見送りを受けて高止まっており、中国株価が下落する場合には更に上昇するリスクがある。もっとも、23日にはDraghi総裁の議会証言があり、追加緩和の可能性・時期・方法について言及する可能性があるほか、ユーロ圏PMIもこれまでは回復基調が続いてきたが、世界の金融市場の不安定化の影響などから悪化リスクがあり、ユーロの上昇余地は限定的とみられる。 3.豪ドル 豪ドル/米ドルは米ドルの方向性に加えて、中国株価やコモディティ価格動向を睨んだ展開となりそうだ。豪ドルは9月7日に安値をつけたあと反発基調にあるが、中国株価の不安定と中国景気減速懸念、そこからくるコモディティ価格の下落を受けて反発基調が一服して下落が再開するリスクが高まっているとみられる。この間、中国財新製造業PMI(23日)が予想通り改善を示せば豪ドルにとってポジティブとなるが、持続的な押上げ要因となるかは未知数だ。 (今週のレンジ実績は月曜から金曜昼頃まで、数値はBloombergより) https://info.monex.co.jp/report/fx-strategy-daily/index.html
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