4. 2015年9月18日 21:55:49
: OO6Zlan35k
2015年 09月 18日 20:00 コラム:米利上げ見送りで日銀に「試練の秋」=岩下真理氏岩下真理SMBCフレンド証券 チーフマーケットエコノミスト [東京 18日] - かつて、これほどまで米金融政策に対する市場の見方が二分したことがあっただろうか。異例の状況下で迎えた9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)は結局、利上げを見送った。 FOMC声明文とイエレン連邦準備理事会(FRB)議長会見は、予想以上にハト派の印象を与えるものだった。株式相場が混乱した8月以降、主要な国際金融会合を欠席し、公の場に登場しなかったイエレン議長の発言は慎重過ぎた。 筆者は昨年末に2015年の最重要案件は米金融政策の正常化と考えていたが、その実現のハードルはまだ高いようだ。世界経済のけん引役である米国でさえも、金融政策の正常化ができない現実が示され、株式市場は不安定な相場から抜け出す機会を失ったように見える。 今回のFRBの対応は、市場との対話の難しさを改めて露呈したが、今後の日銀、欧州中央銀行(ECB)の政策判断にも影響を与える可能性があろう。 <10月利上げの可能性も低下> 今月4―5日に開催された20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は共同声明に「いくつかの先進国で金融引き締めの可能性がより高まっていることに留意する」との表現を盛り込み、FRBの名指しを避けながらも、慎重な対応を促した。 筆者はこれを踏まえて、石橋をたたいて渡ってきたイエレンFRB議長が、国際情勢に配慮し慎重に対応すると見ていた。その通りではあったが、利上げ見送りの理由として、「国際情勢」だけではなく、「短期的なインフレ率の低下圧力の可能性」を挙げた点は重く受け止めている。 短期的なインフレ率の低下圧力がなくなったと判断するためには、最低でも今後2回か3回の物価指標を点検する必要があるだろう。また、原油だけでなく非鉄金属など商品価格全体の下げ止まりが確認できるまでは、利上げは難しいと考えられる。年内にその判断ができる保証はない。 その証左に付属資料で示されたフェデラルファンド(FF)金利の最初の利上げ時期について、2015年中と見ているメンバーが13人と一番多いが、2016年以降と見るメンバーが4人と前回6月時の2人から増えている。 そもそも、利上げを急ぐ必要がないとのハト派の根拠の1つは、低過ぎるインフレ率だった。今回、FF金利予想でマイナスが登場したのはサプライズだったが、これを提示したメンバーは低インフレの長期化を想定しているはずだ(恐らく今年末退任予定のミネアポリス連銀のコチャラコタ総裁ではないか)。 一方で、前回7月と同じく米利上げの条件として、声明文に「労働市場がさらにいくらかの改善」との表現が残ったのはやや意外だった。筆者は7―8月分で非農業部門雇用者数20万人増加ペースの持続、賃金の下げ止まりを確認できたと見ていたが、さらなる改善が求められた。 米労働省によれば、新学期前の8月は回答率が低いため、季節調整の歪みが出やすく、8月雇用統計は当初の数字から上方修正される傾向にある。10月2日発表の9月雇用統計でこの傾向が確認できるかだ。 今回発表された新しい経済・物価見通しでは、失業率の改善が前回より早まっており、2016年前半には5%割れを想定している。潜在失業率の水準も4.9―5.2%(前回5.0―5.2%)に修正されたが、今後の失業率低下に伴い賃金上昇の加速が期待されよう。 また、10月30日発表の7―9月期雇用コスト指数も、4―6月期は伸び率が鈍化したこともあり、持ち直せば先行きの賃金上昇への自信につながるだろう。労働市場に関する統計をしっかり確認するという観点からも、10月FOMCでの利上げの可能性は低くなったと言える。 <国際情勢の肝は中国の対応> 他方、国際情勢については、今回の市場混乱の震源地は中国だ。まずは中国当局が自国経済への不安を軽減するための対策を講じることである。 中国では、8月の天津港爆発事故の影響もあり、当面は冴えない経済指標の発表が続くと見込まれる。それでも来週25日には米中首脳会談、10月には中国共産党中央委員会第5回全体会議(5中全会)と重要な政治イベントが予定されている。今後、中国当局がどのようなメッセージを出すかを、市場は待つことになりそうだ。 2008年のリーマンショック後の4兆元景気対策は過剰だったとの反省もあり、大規模な財政出動は考え難い。来年からは新5カ年計画も始まることから、消費主導の経済体質に転換できる対策(一部株価対策もあり)や金融緩和を根気よく続けるポリシーミックスで臨むしかないと筆者は考える。 前述した以外で主なイベントとしては、10月8日に次回G20会合が開催され、同月19日に中国7―9月期国内総生産(GDP)が発表される。次回G20会合前には、国際通貨基金(IMF)の新しい世界経済見通しが発表されよう。 9月G20声明文では、「世界の経済成長は我々の期待する水準に達していない」と表現された。新興国(特にアジア圏)を中心に成長率の下方修正が見込まれる。中国が動かず、米国が利上げできない状況が続くならば、日銀の追加緩和観測も強まることになろう。 <日銀追加緩和の前提条件> 日本では、当初想定よりも7―9月期の景気動向が弱くなっているのは事実だが、前向きな循環メカニズムが作用し続けている以上、日銀は標準シナリオを維持したいだろう。 目先は2つの重要指標が鍵を握る。まずは30日発表の8月の鉱工業生産統計。製造工業予測指数と合わせて、7―9月期が多少の前期比マイナスでも横ばい圏内にとどまれるかが重要だ。 もう1つは、10月1日発表の日銀短観・9月調査。業況判断DIは弱含み、企業マインドの低下は予想されるが、実際に企業収益の大幅下方修正には至らないと見る。また、設備投資計画では大企業では例年のパターン通り6月調査からの下方修正はやむなしだが、中小企業では上方修正見込みであり、全てが後ろ向きではない。 昨秋と今秋の相違点は、1)米国が利上げをできる経済環境に近づいていること、2)昨年の日本経済は消費増税後の内需の弱さが鮮明だったが今年は外需主導であること、が挙げられる。 10月展望レポートでは、日本の2015年度の実質GDP見通しは前年比プラス1%台前半に大幅下方修正、コア消費者物価指数(CPI)も機械的な原油想定に加えて他のコモディティーと為替を勘案し同0%台前半まで下方修正が見込まれる。問題は16年度のコアCPIの数字であり、物価安定目標2%の達成時期と絡むだけに、直前まで悩むだろう。 それでも今秋はエネルギー価格下落の影響が昨年比で一番大きく出る時期であること、足元の東大日次物価指数が上昇傾向にあることなどから、年終盤の物価上昇シナリオを諦めるのは、まだ早いと判断したいのではないか。 今回FRBが「短期的なインフレ率の低下圧力」を指摘しただけに、基調的な物価動向を重視するという説明は可能だ。目先は25日発表の8月全国CPIで、日銀独自に算出する生鮮食品・エネルギーを除くCPIが7月の前年比プラス0.9%から下落していないことを確認したい。 したがって、日銀が追加緩和を検討せざるを得なくなる状況とは、前述2つの重要指標が筆者予想より悪いものとなった場合や、外部環境で中国が今後何も対策を講じず、FRBが年内利上げできないとの見方が強まって株安・円高が進行する場合に限られるのではないだろうか。 *岩下真理氏は、SMBCフレンド証券のチーフマーケットエコノミスト。三井住友銀行の市場部門で15年間、日本経済、円金利担当のエコノミストを経験。2006年1月から証券会社に出向。大和証券SMBC、SMBC日興証券を経て、13年10月より現職。 *本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(こちら) 中国が三つのバブルに直面、株価暴落よりはるかに怖い=CS 2015年 07月 22日 為替こうみる:ドル118―122円、9月米利上げなら下抜けも=マネックス証券 山本氏 2015年 09月 10日 コラム:見過ごされた黒田発言、長期株高のサインか=木野内栄治氏 2015年 07月 24日 http://jp.reuters.com/article/2015/09/18/column-mariiwashita-idJPKCN0RI0VE20150918?sp=true
[12削除理由]:管理人:無関係の長文多数
|