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小宮一慶:世界同時株安で年金にもリスク 運用比率上げたGPIFは大丈夫か?
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150918-40037622-collegez-ind
BizCOLLEGE 9月18日(金)11時7分配信
8月半ば以降、日本を含む世界中の株式市場が乱高下を続けました。日経平均株価は9月16日現在で1万8000円台を回復しましたが、8日には1万7000円台後半まで下落していました。ピークより10%強落ち込んだことになります。ボラティリティ(変動率)は少し落ち着いてきましたが、それでもまだ油断はできません。
これによって私が非常に懸念しているのは、年金の運用です。公的年金の積立金を運用している年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、昨年、国内債券(主に日本国債)の運用比率を下げて、株の比率を12%から25%へ引き上げました。それにより、相場が支えられ、「官製相場」の一翼を担ったわけです。いいか悪いかは別として、これは相場を張っているわけですから、株価が下がれば運用実績はマイナスになる恐れがあります。私は当時から、それを非常に懸念していました。
その懸念は、現実になりつつあります。株価の急落が起こり、GPIFの運用にも影響があったとの報道がありました。ただでさえ、日本は年金の財源確保が難しい状況です。その上、運用で減ってしまったら、年金制度の先行き自体がより厳しくなることは間違いありません。 今回は、社会保障費の財源について思うことを述べたいと思います。
■GPIFも損失を被っている
先にも述べたように、昨年11月以降、GPIFは日本株の運用比率を12%から25%へ引き上げました。当時137兆円の残高がありましたが、その後、株価が上昇したことで、142兆円まで増えたと言われています。
そこまではよかったのですが、8月半ば以降、上海株の暴落から始まった世界同時株安の影響で、日経平均はピークより10%以上の値を下げ、現時点で1万8000円台をつけています。
当然、GPIFも損失を被っているのではないかと考えられます。一部の報道では、GPIFの7-9月期の運用実績がマイナスになるのではないかとの話も出ています。
相場を張っているのですから、当然、いい時も悪い時もあるでしょうが、あくまでもGPIFは国民の年金を預かっているわけです。株式の運用比率を上げてしまったことが本当によかったことなのかどうかを十分に検証しなければならないのではないでしょうか。
ただでさえ、年金にはなけなしのお金を使っているわけです。今年度予算96兆3420億円のうち、社会保障費は31兆円を占めます。内訳の中でも最も大きなものです。そして、その中で一番使われているのが「年金への補てん」です。一般会計から年金特別会計に「補てん」をしているのです。日本はもう、多額の予算を年金に割かなければ、制度を維持できない段階に来ているのです。
そういうと、今説明しているGPIFが140兆円ものお金をもっているのに、なぜ、一般会計から年金特別会計に「補てん」しなければならないかという疑問をお持ちの方も少なくないと思いますが、年金受給者と20歳以上の年金を支払っている人をざっくりと1億人だとすれば、140兆円というお金は、実は一人当たりにすると140万円くらいにしかならないからです。だから、毎年巨額のお金を補てんする必要があるのです。
■GPIFの株式の運用利回りはバブル時代並み
ちなみに、GPIFの株式の運用利回りは「6%」を想定しています。この数字は、83年から89年あたりの数字を参考にしています。過去、株価が最も高騰した80年代後半のバブル期を含んだ時期です。GPIFの資金全体では4%程度の運用利回りを想定していますが、これも長期で考えればなかなか厳しい数字です。
バブル期の最後となった89年12月29日に、日経平均株価は最高値3万8915円をつけていました。83年末に9893円だったことを考えると、この間に4倍近くまで上昇していたのです。驚異的な上がり方ですね。その後、7000円台まで下落したのは皆さんご存知の通りです。
ところが、今はかなり戻したと言っても、1万8000円台。ピークでも2万円台という水準です。このような中で、バブル期の利回りを想定することなど、そもそも合理的ではないのです。
想定利回りは、いつからいつの水準をベースにとるかが非常に難しいところではあります。しかし、それでも好調だった時期を運用利回りのベースにするということは、あまりにも非現実的であり、楽観視し過ぎています。
■GPIFは株式の値上がり益を狙っている
また、6%を目指していると言うことは、GPIFは株式の値上がり益を狙っているのです。配当だけでは、6%などとれませんからね。値上がりしなければ、想定の利回りを出すことはできないのです。
以上の点を考えると、年金の運用は今のやり方で大丈夫なのだろうかと、私は強く懸念しています。
もちろん、短期的な実績だけで判断するのは、GPIFにとって酷なことかもしれません。しかし、繰り返しますが、彼らは国民のなけなしのお金を運用しているわけです。
本当に有り余ったお金を運用していて、その運用益で年金を支払えるのであれば、一般会計予算から10兆円も入れる必要はありません。これらの点を踏まえて、今後の運用の仕方について改めて議論すべきではないでしょうか。
もし、GPIFの運用がうまくいかなければ、どうなるでしょうか。当然のことながら、年金の受給年齢が後ろ倒しになることや、受給額が削減されることが考えられます。若年層にとっては、社会保険料の支払額が増える可能性もあるでしょう。
■医療費40兆円超の財源はどう賄うのか
厚生労働省によると、2014年度の医療費は、患者負担と保険給付をあわせて40兆円にものぼるとのことです。前年度より7000億円の増加です。12年連続で増加しており、今後も増え続けることは間違いないでしょう。
すでに皆さんは十分認識していると思いますが、日本は2007年に高齢化率が21%を超え、超高齢社会に突入しています。さらに重要なことは、今はまだ「超高齢社会のほんの入り口に過ぎない」ということです。高齢化が進展するのはこれからだということを忘れてはなりません。現状約26%の高齢化率が40%近くまでこれから上昇していくのです。
政府の試算では、現状40兆円の医療費の総額が2025年度には54兆円に達する見込みです。ここで考えなければならないのは、財源をどうするのかということでしょう。
医療保険も、今は労使折半で捻出していますが、上げざるを得ないと言っても限度があります。そうなると、また一般会計から補填すればいいかというと、そちらも限界があります。
年金は、受給年齢を後ろ倒しすれば、何とか維持はできるでしょうが、医療費に関しては待ったなしです。病気になって「医療費が足らないから、治療まで2年待ってください」などとは言えません。
今年度末には、「診療報酬の改定」が行われます。そこで、薬剤費をどこまで削れるか、高度医療のベッド数をどこまで減らせるか、在宅医療にどのようにシフトしていくか、などといったことが議論されるでしょうが、財政的には非常に厳しいのが現状です。そして、先にも述べたように、高齢化は益々進むのです。
ますます負担が増加する医療費の財源をどうしていくのかということも考えなければなりません。
それにプラスして、年金まで目減りしてしまったら大問題です。今一度、トータルで考え直さなければならないタイミングなのではないでしょうか。
■財源を増やすには成長戦略しかない
では、財源を増やすにはどうしたらいいか。結局のところ、成長戦略しかありません。それしかないのです。
今は、安保法制の審議に注目が集まっており、安倍政権もそちらに力を注いでいます。しかし、成長戦略なしには何もできないということを忘れてはなりません。資金がなければ、どんな手も打てないのです。そのためには、稼がなければならず、まずは経済の成長です。
そのために政府は、根本的な「国のあり方」を考える必要があります。ピーター・ドラッカーは、かつてこんなことを言っていました。「企業は、どうなるかということと、どうあるべきかということを峻別して考えなければならない」。これは国家についてもあてはまることです。
どうなるかということは、つまりは環境変化に任せて変化することです。日本ですと、高齢化がますます進展するということですね。ここまでは、みんな分かっている話です。大事なのは、もう一歩踏み込んで「どうあるべきか」を考えることでしょう。
日本の強みはどこか。それをどう伸ばしてこの国の経済を成長させていくか。どのような国づくりをしていきたいのか。ここがはっきり見えません。政府も考えていないわけではないでしょうが、はっきり言って場当たり的です。オリンピックだけでは力不足なことは明らかです。
今、国の根幹のあり方を考えなければ、将来はより厳しいものになるのではないでしょうか。
(構成=森脇早絵)
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