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「停学処分」より軽い…東芝、特設注意市場銘柄指定でも不利益ゼロ?ビクともせず?
http://biz-journal.jp/2015/09/post_11609.html
2015.09.18 文=寺尾淳/ジャーナリスト Business Journal
9月14日、東京証券取引所は東芝の株式を15日付で「特設注意市場銘柄」に指定し、上場契約違約金9120万円を科した。東芝の15日の株価は前日比5.8円安で、4営業日続落した。
不適切会計問題に揺れ、2015年3月期の本決算を9月7日になってようやく発表した東芝への処分については、特設注意市場銘柄の指定が「上場廃止に準じる措置」だと説明されているが、これは上場廃止を前提とした処分ではなく、上場廃止の可能性は今のところ薄い。
最近の大企業の不祥事に対する東証の処分は、次のようになっている。
・西武鉄道…大株主の保有比率の虚偽記載
監理銘柄(04年10月)
→上場廃止、14年に西武ホールディングス上場
・カネボウ…債務超過状態の隠ぺい
監理銘柄(04年10月)
→上場廃止、法人格消滅
・三洋電機…過年度の決算訂正
監理銘柄(07年12月)
→解除(08年2月)
→パナソニックの完全子会社化、上場廃止
・オリンパス…過去の損失要因の隠ぺい
監理銘柄(確認中、11年11月)
→特設注意市場銘柄(12年11月)
→解除(13年6月)、上場維持
・大王製紙…前会長が関連会社から巨額の不正融資
監理銘柄(確認中、11年11月)
→解除(11年12月)、上場維持
・東芝…営業利益の1700億円水増し
特設注意市場銘柄(15年9月)→?
なぜ、東証から処分を受けながら、西武鉄道とカネボウが「上場廃止」になり、オリンパスや大王製紙は結果的に「上場維持」になったのか。その分岐点は、上場廃止基準に抵触するかどうかにある。
■特設注意市場銘柄とは?
有価証券報告書を訂正すると、西武鉄道は大株主の保有比率が、カネボウは債務超過になる点が上場廃止基準に抵触していた。しかしオリンパスは債務超過ではなかった。東芝の15年3月期決算も債務超過ではない。ちなみに、西武鉄道も株主構成の問題はあっても黒字決算で債務超過ではなく、昨年、西武ホールディングスが事実上の再上場を果たしている。
上場廃止基準には「有価証券報告書の虚偽記載」の項目があるが、東芝の場合、組織的に営業利益を水増しした不適切会計の問題は、金融商品取引法197条第1項で「犯罪」とされる虚偽記載とはまだ認定されておらず、クロかシロかはっきりしていない。
不適切会計の中身も、たとえば経営陣と公認会計士がこぞって逮捕されたカネボウのように、架空売上の計上で債務超過を隠ぺいするなど嘘で固めた決算で上場基準をパスし、投資家をだましたほどの悪質さはない。また、これも上場廃止基準である監査法人の監査報告書の「不適正意見」もついていない。オリンパスの場合も、組織ぐるみではあるが全社的とはいえなかったとされている。
そんな状況では、東証も上場廃止が確実な監理銘柄の指定は行えないが、組織ぐるみの問題なのでなんの処分も講じないわけにはいかない。そこで持ち出してきたのが、特設注意市場銘柄の指定だった。
■投資家への注意喚起が第一目的
特設注意市場銘柄というルールは8年前の07年11月、東証および合併前の旧大阪証券取引所で始まったが、その前年に起き、一時は全取引停止の事態に陥ったライブドア事件による東京株式市場の大混乱がきっかけだった。組織ぐるみのスキャンダルを起こしても上場廃止基準には抵触せず、クロかシロかまだわからない銘柄、悪質さの程度が軽い銘柄をとりあえずこれに指定して投資家に注意を喚起し、マーケットの混乱を防ぐ。それが特設注意市場銘柄を設けた第一の目的である。
もう一つの目的は、上場基準を満たし上場廃止基準に抵触していない銘柄でも、特設注意市場銘柄に指定して問題の改善がみられなければ、東証が上場廃止を命じられる道を開いたことだった。それによる上場廃止(整理銘柄指定)の処分は昨年まで1件も行われず「抜かない刀」といわれてきたが、今年になって2件続けざまに行われた。
・京王ズホールディングス…創業者への不正な資金流出
※京王電鉄とは無関係
特設注意市場銘柄(12年1月)
→上場廃止(15年5月29日)
・グローバルアジアホールディングス…有価証券報告書の虚偽記載
※旧社名 プリンシバル・コーポレーション
特設注意市場銘柄(12年6月)
→上場廃止(15年9月12日)
さらに、14年3月に特設注意市場銘柄に指定された学習塾のリソー教育について東証は、9月8日付で特設注意市場銘柄の指定を継続するとともに、9月11日付で「監理銘柄(審査中)」に指定した。もっとも上場廃止が決定的なわけではなく、内部管理体制確認書が再提出され改善がなされたと東証が認めれば、処分は解除される。
リソー教育の処分が注目を集めたのは、昨年特設注意市場銘柄に指定された際の理由だった。売上高、利益の過大計上で「不適切な開示処理をしたことで、第三者委員会の調査を受けたほか、過去の有価証券報告書や四半期報告書を訂正し、内部管理体制について改善の必要性が高いと判断された」とは、東芝の不適切会計問題の経緯にそっくり。東証が東芝に対し、「こうなることもありえる」と、わざわざ警告を発したと解釈することも可能だろう。
だが、東芝が今後たどる道は、京王ズやグローバルアジアのような整理銘柄指定→上場廃止や、リソー教育のような監理銘柄(審査中)指定というのはやや考えにくい。最も可能性が高いのは、オリンパスのような特設注意市場銘柄の解除だろう。なぜなら、東芝は日本を代表する有名大企業で、やったことは「カネボウほどひどくない」からである。
■有名大企業のダメージは軽い
東芝の株式は特設注意市場銘柄に指定されたが、投資家への注意喚起なので株式の売買はこれまで通りで、信用取引もできる。東証第1部から除外されるわけではなく、TOPIX(東証株価指数)の計算対象から外されることもない。投資家にとって東芝株を取引する際の不利益はほとんどない。
指定期間は1年間で、「内部管理体制確認書」を東証に提出し、不適切会計を招いた内部管理体制の問題が改善したと認められれば指定は解除される。もしそれが遅れても、指定期間の更新、延長の措置は受けられる。現在、マツヤという銘柄が13年5月以来2年以上、特設注意市場銘柄に指定され続けている。
この処分は学校の「停学処分」や「執行猶予」にたとえられることがあるが、イメージとしてはそれよりも軽い。これまでに指定された28銘柄中、「退学」、執行猶予を停止される「実刑」を受けたのは2件だけ。1件が今、その崖っぷちに立っているが、それは今年に入ってからの話である。
とはいえ、東証マザーズやジャスダックの銘柄など、有名大企業とはいえない中堅規模の企業にとって、特設注意市場銘柄指定後の運命はなかなか厳しい。指定後、顧客の流出、売り上げの激減、人材の流出、資金調達の道が事実上閉ざされるなど深刻な打撃を受けて、民事再生法を申請して事実上倒産したりするケースもある。また、事業免許を取り消されたり、非上場企業に吸収合併されたり、大企業の完全子会社になったりして、東証の処分を受けるまでもなく8銘柄が上場廃止の道をたどっている。後で指定を解除された銘柄も傷痕は残るのか、その多くは業績をなかなか立て直せずに株価は低迷している。
しかし、それを引き合いに「東芝の前途は厳しい」と思っては状況を見誤る。有名大企業にとってそれは、9120万円の上場契約違約金ともども「お仕置き」程度のダメージしかないからだ。
過去、IHIが有価証券報告書の虚偽記載で08年2月に、オリンパスが12年1月に特設注意市場銘柄に指定されたが、IHIは1年3カ月、オリンパスは1年7カ月で指定を解除された。IHIなどは特設注意市場銘柄の前に「監理銘柄(審査中)」に指定されていたのだが、オリンパス同様、その経営はビクともしていない。
過去の処分歴を理由に「IHIやオリンパスの株は絶対買わない」と決めている投資家は、おそらくほとんどいないはず。海外での事業活動でも、官公庁の入札参加でも、資金調達でも、人材の採用でも、IHIやオリンパスにとって今、不利益はほとんどみられないはずだ。東芝も指定を解除されて数年経過すれば、おそらくそうなることだろう。
特設注意市場銘柄の指定で、致命的なダメージを受けることさえある中堅企業と、お仕置き程度のダメージしか受けない有名大企業。だとすると、投資家を欺いて株式市場の信頼を損ねる「モラルハザード」を防ぎ、有名大企業にコンプライアンス(遵法)意識を持たせる手だては、マスコミをはじめ世間でさんざん騒がれる社会的制裁でイメージが低下することしかないのだろうか。
(文=寺尾淳/ジャーナリスト)
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