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新国立競技場に新たな問題が浮上! スーパーゼネコンも怯む「過酷すぎる建設条件」が明らかに
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/45352
2015年09月17日(木) 伊藤 博敏「ニュースの深層」 現代ビジネス
■スーパーゼネコンも怯んだ
本命は大成で、対抗はどこか――。
東京オリンピックの混乱を象徴する新国立競技場の業者選定。第一段階となる9月18日の公募締め切りを経て、年内に優先交渉権者を選定することになっているが、早くも大成建設の絶対優位が動かない状況となっている。
理由は、白紙撤回されたザハ・ハディド案の旧計画で、スタンド部分を担う施工予定業者だったこと。また、取り壊された旧国立競技場を1958年に完成させ、「ウチの事業」という思いが村田誉之社長以下、社員に至るまで浸透していること。
さらに、審査基準が厳しく、採算割れの危険性があるのに、「納期に遅れるなどしたら国家的批判を浴びるのは必至」のリスキーな案件で、参加業者が圧倒的に少ないこと、などである。
9月1日から開始された公募の条件の厳しさは、ゼネコンのみならず、発注側の政府関係者も認める。
「設計と施工を一体化した『デザインビルド方式』なので、設計業者・建築家はゼネコンと組まなければならないが、これだけの工事を限られた納期のなかで仕上げられるのは、スーパーゼネコン(大成、鹿島、清水建設、大林組、竹中工務店)5社に限られる。しかも、5社が怯む内容だ」
事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)が示している業者選定の評価基準のなかで、最も高い評価項目は「コストと工期」である。これが140点満点のうち半分の70点を占めており、内訳は「事業費の縮減の実現性」が30点、「工期短縮の実現性」が30点、「維持管理費の抑制策の的確性」が10点となっている。
つまり、求められているのは、総工費上限の1550億円と2020年4月末竣工を視野に、それよりどれだけ「安く」「早く」できるかであり、工期については、「短縮の目標として20年1月31日とする」という一文が、さりげなく盛り込まれている。
3ヶ月の工期短縮は、国際オリンピック委員会(IOC)や東京都が求めている目標だが、ただでさえ厳しい工期をさらに前倒しにしろというのだから、大成以外のゼネコン各社が怯むのも無理はない。
しかも舛添要一東京都知事が繰り返しているように、「安かろう、悪かろう」ではダメで、デザイン性に機能性まで要求されている。
■他を圧倒する意欲を見せた大成
技術提案書に盛り込むことが求められたデザイン性は以下の通り。
「世界最高のユニバーサルデザインを導入した施設とするための具体的な方策」
「日本の伝統的文化を現代の技術によって新しい形として表現する方策」
「日本の気候・風土、伝統を踏まえた木材利用の方策」
さらに機能性である。
例えば、暑さ対策。新整備計画では、コストダウンを印象づけるために、安倍晋三首相が100億円の冷房施設を削った。その際、夏の甲子園の風物詩を持ち出し、「かち割り氷もある」と、お手軽な冷却対策を口にしたが、そんな冗談のような対策ではなく、予算内で熱中症患者が出ないようなしっかりとしたシステム設計を行わねばならない。
このほか、テロ対策、サイバーセキュリティーなども忘れてはならない項目だ。
このように新国立は、多くの内的な課題に加え、外的な難問も抱える。
資材や労務単価の高騰、それに伴う採算性の低下である。端的な例が、リニア中央新幹線の発着駅となる品川駅工事の第一回目の入札だった。落札者の出ない不調に終わったのは、発注価格を上回るコスト高騰が主たる原因だった。
この傾向は今後も続く。東京オリンピックを見据えた高層ビル、ホテル建設、高速道路整備など大型案件が続き、職人や一般作業員の確保が一段と難しくなっており、ゼネコンが新国立にエネルギーを注ぎ難い。つまり、無理して取りに行く案件でもない。
そうしたなか、「絶対やりたい、という思いはある」と、『産経新聞』(9月15日付け)のインタビューに、村田社長が答えた大成の意欲は、他を圧する。
旧整備計画でスタンド業者となっていたこともあり、作業員の確保や資材発注面でも一歩、リードする。
■飛び交う「怪情報」
ただ、大成優位でも波乱は残されている。9月7日には、旧整備計画で原案デザインを担当したザハ・ハディド事務所と、同じくJVとして設計の一翼を担った日建設計が、「合同チームを結成した」と、発表した。
「4000枚にも及ぶ設計図を手がけ、新国立の実情を知り尽くす2社は、他の設計チームをリードする。手を組むゼネコンがあれば有力候補となる」(政府関係者)
また、「五輪競技場を受注したゼネコン」という名誉とブランドを得ることもあり、「業界の盟主」をもって任ずる鹿島は、挑戦するのではないかと言われている。
ともあれ、難問山積の工事に挑む施工業者の選定作業が始まった。
1550億円と総工費の上限が決められたなかで、政府、JSCなどの要望に応えていると「赤字は必至」という見方もあるが、政府高官が大成に「赤字受注となる見返りに、建て替えが決まった代々木のNHK放送センターの受注優先権を与える」と約束をしたという“怪情報”も飛び交うなか、波乱続きの新国立競技場建設が、新しい枠組みのもとで動き始めた。
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