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日本郵政本社が所在する日本郵政ビル(「Wikipedia」より/Ons)
郵政3社上場、深刻な悪影響の危険 他銘柄の売り殺到、株価下落で市場全体低迷…
http://biz-journal.jp/2015/09/post_11587.html
2015.09.17 文=編集部 Business Journal
日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の郵政3社のIPO(新規株式上場)が11月4日に決まったが、これが株式市場の新たな波乱の芽になるとの懸念が浮上している。3社の上場で他の主力株に売りが出て、相場の下押し要因になるというのだ。
ただでさえ東京株式市場は中国経済の先行き不透明感や、米国の利上げ動向などを警戒し、8月以降大幅安に売り込まれている。足元では大きく戻す局面もあるが不安定な状況だ。需給面では外国人投資家の売りが目立つなど、世界の株式市場から資金が流出している。こうしたなかでの郵政3社の上場は、国内株式市場の需給悪化に拍車をかけるとの声が出ている。
日本郵政だけでも1987年のNTT以来の大型上場を、証券界はもろ手を挙げて歓迎している。当時のNTT株はバブル相場での上場となり、新規の個人投資家づくりに役立ったうえ、株式市場全般の活性化にも一役買った経緯がある。業界としては「夢よもう一度」と考えても不思議ではない。
しかし、当時と今とでは地合いが違ううえ、成長のイメージを描けたNTTと、成熟してしまっている郵政3社とでは、根本的に評価が違うと見るべきだろう。
■需給に大きな影響
また、大型上場は他の上場企業株の需給に影響を及ぼす。日本郵政だけで時価総額は7〜8兆円、3社合計では12兆円規模が想定される。全銘柄の値動きを示すTOPIX(東証株価指数)をベンチマーク(投資基準)としている機関投資家や、先物を使って利益をあげようとする裁定取引業者は、ポートフォリオ(運用資産の組み合わせ)を時価総額に合わせて組み入れているため、大型IPOは当然新規の買い対象になる。一方、運用資産は一定なので、買付資金は他の銘柄を売却することで調達することになる。その額は「現在の推計で、ざっと1.4兆円というところではないか」(裁定業者)といわれる。
上場日である11月4日には、こうした動きが出ることが想定されるうえ、郵政3社のTOPIXへの正式採用は今年12月末で、この時点で正式に「郵政3社買い、時価総額の大きい上場企業株式売り」のポートフォリオ入れ替えが行われる。
現在の時価総額上位はトヨタ自動車、三菱UFJフィナンシャル・グループ、NTT、NTTドコモ、JTが上位5社で、これにKDDI、ソフトバンクなどが続く。ただでさえ、株式市場が荒れているのに、こうした銘柄には機械的な売りが出て、株価の下押し要因になる。
また、ゆうちょ銀行は銀行セクター、かんぽ生命は保険セクターであり、機関投資家がこの2社を買うということは、他の銀行、保険株の売り要因になるのである。
■他の主力銘柄の売り要因に
話はこれだけではない。海外投資家がベンチマークとしている代表的指標にMSCIや、FTSEというのがある。これらは大型のIPOがあった場合、定期的な採用基準を待たず、早期に組み入れるルールがある。具体的にはMSCIが「アーリー・インクルージョン」、FTSEは「ファスト・エントリー」という。
まだ、正式に発表はされていないが、「11月中旬頃の採用が有力視されている」(デリバティブ担当者)。ここでも郵政3社を買い、他の日本株式を売るという動きが生じるのである。証券界が熱望する大型IPOは、実は他の主力銘柄にとっては売り要因になってしまうのである。
それでも郵政3社の株価が穏当にスタートし、その後に上昇すれば、新規の投資家づくりで市場活性化が見込まれる。
ただ、株価は将来の成長を期待して買うものである。たとえばゆうちょ銀行の成長のための方策として預け入れ限度額の引き上げが議論されているが、実現すれば民業圧迫に直結する。民間との連携も始めているが、将来の1株利益の成長は見えにくい。
そもそも、日本郵政の子会社である2社の同時上場は、東証を傘下に収める日本取引所グループ幹部も「ガバナンス上の問題があることは承知している」というほど、問題上場でもあるのだ。仮に株価が初値や公開価格を割り込むことが常態化するようなら、投資家の離反を招き、株式市場のさらなる低迷要因になりかねないのである。
想定株価は日本郵政が1株あたり1350円、ゆうちょ銀行が1400円、かんぽ生命が2150円前後と見られている。いずれも100株単位なので、合計で49万円程度。実際には需要予測などを通じて正式な売り出し価格が決まる。関係者によると、大手証券では3社まとめての購入を勧めているという。
ある証券会社OBはこう警告する。
「証券界はNTT上場の成功事例と当時の全般相場の上昇しか語らないが、NTTドコモの上場(89年10月)直後に日経平均は暴落し、JR東日本(93年10月)上場直後も株式市場は低迷していた」
さまざまな懸念を抱えたまま、郵政3社の上場が目前に迫っている。
(文=編集部)
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