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財務省の姑息な策略 国民生活を破壊、欠陥だらけで破綻した消費税還付案の「狙い」
http://biz-journal.jp/2015/09/post_11594.html
2015.09.17 文=垣田達哉/消費者問題研究所代表 Business Journal
マイナンバーカードを活用して消費税の軽減税率分を消費者に還元する財務省案は、すこぶる評判が悪い。同案は欠陥だらけの粗悪品だが、そもそもその目的と方法に大きな矛盾が生じている。特に、流通業の現場、事業者側からの視点で考えるとそれがよくわかる。
■無店舗販売は対象外なのか
財務省案は、小売店と飲食店しか想定していない。宅配ピザやそば屋の出前は、読み取り機(スキャナー)を持ち歩くのかという問題もあるが、それ以前にスキャナーを持ち歩くことができない無店舗販売への対応が一切示されていない。
インターネット通販やテレビショッピング、雑誌やカタログ通販などの無店舗販売は、食品の販売が増え続けている。スキャナーを置くことができない無店舗販売で、電話やパソコン、携帯電話からマイナンバーを伝えたり入力させるというのだろうか。
店舗のスキャナーでさえ、マイナンバーを読み取らせない方法を取るという。パソコン等でマイナンバーを入力することは、セキュリティ上問題があることは明らかだ。ネットでマイナンバーをやり取りすることは無謀だろう。
無店舗販売のシステムが含まれていない財務省案は、それだけでも破綻している。検討するに値しない欠陥提案である。
■財務省案でも対象品目の線引きはしなければならない
財務省や自民党が、本来の軽減税率制度の難点として挙げているのが、対象品目の線引きの難しさである。筆者は生鮮食品と加工食品の線引きの難しさについて、6月30日付本連載記事でも指摘しているが、財務省案は酒類以外の食品を還付対象とし、非食品を還付対象外としている。店頭で税率が10%で統一されたとしても、結局財務省案でも線引きはしなければならない。
例えば、飲食店の「生ビール1杯とつまみ3品のほろ酔いセット」、小売店の「バレンタインのハンカチとチョコレートのセット」、旅館やホテルの「1泊2食付き」、居酒屋などの「飲み放題&食べ放題」などは、軽減税率の対象か対象外なのか。財務省案でもそういった線引きは必須であり、それを消費者に告知しなければならない。単純な軽減税率を否定する根拠となっている線引きの難しさは、財務省案にも共通している。線引きをなくすという目的を、同案では果たすことができない。
財務省は、店頭での一律10%の税率が事業者の負担を軽減するということで、レジでのマイナンバーカード利用を考えているが、財務省案では事業者の負担は店頭での軽減税率よりはるかに大きくなる。
■店頭一律10%でも、事業者は8%で管理しなければならない
店頭で10%の商品を販売し、8%対象商品か非対象商品かの判別を還付申告センター側でするとしても、小売店や飲食店でも、どの商品が対象なのかはレジ側で管理せざるを得なくなるだろう。消費者に、10%の商品か8%の商品かを国が告知しても、消費者はそれを常時覚えているわけではない。当然、購入時や飲食時に店側へ問い合わせる。小売店は、消費者が購入する前に8%かどうかを知らせる必要があるので、値札や棚カードなどで消費者に告知することになる。飲食店はメニューで告知することになるだろう。
しかし、消費者と国(還付センター)とを結びつける客観的な証拠はレシートになる。そうなると、消費者はレシートにどの商品が8%なのかを印字(印刷)してほしくなる。いちいち還付センターに問い合わせたり、ネットで検索して調べるより、レシートに8%と表示してあれば、8%の商品や飲食をどのくらい購入したかがすぐわかる。
「そんなサービスを事業者がする必要はない」というかもしれないが、還付金額が間違っているのではないかと思う消費者は、還付センターだけでなく、小売店や飲食店に購入履歴を問い合わせる可能性がある。その時に、消費者のレシートと事業者側のデータを照合し、どれが8%対象商品かを調べ、電卓で計算するようなことは、とても事業者側ではできない。レシートに8%対象商品の金額はいくらかを印字したほうが、事業者にとっても消費者にとっても楽になる。
■還付センターで対象品を区別するのは負担が大きい
マイナンバーカード自体やスキャナーで、8%対象商品かどうかを判別するのは難しい。そうなると、還付センターで個々の消費者のすべての買い物・飲食履歴のデータを集計して、判別することになる。これは、システムとしてはかなり重い。それだけではない。客との金銭のやり取りというのは、さまざまなトラブルが発生する。後述するが、こうしたイレギュラー対応を還付センター側でどこまで可能かという不安がある。
8%対象商品だけのデータを事業者からセンターに送信するほうが、センターとしての負担は軽くなる。そうなれば、事業者側で8%と10%の商品データを管理しなければならない。その場合、消費税は全品一律10%となり、消費者への還付だけのために8%の商品管理をしなければならなくなる。センターの負担を軽くすれば、事業者の負担が大きくなる。
これでは、店頭では10%でも、実質事業者側で軽減税率対応をすることになる。財務省案でも、事業者の負担が軽減されるとはいえない。
流通業(小売店や飲食店等)が最も避けたいことは、客(消費者)との接点での「煩雑さ、複雑さ、トラブル」である。その接点のほとんどが、金銭の受け渡し時(レジ等の支払い時)なのだ。ところが、マイナンバーカード利用案では、レジでのこのトリプルパンチが計り知れないほど流通業に大きな負担を与えることになる。
■煩雑さがレジ待ち時間を長くする
レジで、客がマイナンバーカードを財布から出し、スキャナーに当てる行為は、簡単で時間もかからないように見えるが、意外と手間がかかる。駐車場から出る時に駐車料金が無料であっても駐車券をどこからか取り出し、読み取り機械に入れて遮断バーが上がるまでと同じようなものだ。
しかも今のレジでは、ポイントカードやクレジットカードなどのカードを読み取ることが多い。そこに、マイナンバーカードが1枚増えることになる。財布からマイナンバーカードを出すという作業は、そんなに簡単なことではない。
もちろん、レジ待ちの間に事前にカードを出して用意する人もいるが、大事なカードだから自分の番が回ってくるまでは財布の中に入れておきたいという人もいるだろう。レジの支払い時になって探す人も出てくる。複数枚のカードを取り出さなければならないので、誤ってカードを落とす人も出てくる。レジの時に探す人が10人のうち1人、マイナンバーに限らずなんらかのカードを落とす人が100人のうち1人いれば、そこで数秒間はレジ待ち時間が長くなる。数秒間で済まないこともある。
■スキャンすることも意外と煩雑で複雑
客側がマイナンバーカードをスキャンする場合は、慣れない人だとスキャンしたかどうかがわかりづらく、何度もスキャンする人が出てくるだろう。客にスキャンさせるのは、店側も客にとっても時間がかかるので良い方法とはいえない。
では、店側がスキャンすれば簡単かというと、それでも結構時間がかかる。店側がスキャンする場合は、客からカードを受け取り、スキャンして客にカードを返すという行為をしなければならない。受け取りに1秒、スキャンに1秒、返却に1秒かかれば、それだけで3秒かかることになる。今までのレジ時間に、最低でもプラス3秒上乗せされることになる。
大切なカードだから、客が財布に収めるのも慎重になる。そこにクレジットカードなども利用すれば、カードを1枚ずつ財布から出し、1枚ずつ戻す行為は、さらに時間がかかる。客がカードを落とすようなことがあれば、拾う行為の時間もかかる。
レジでは、いろいろなことが起こる。1人のレジ対応で平均5秒増えると、12人で60秒(1分)増える。120人で10分増えることになる。レジ待ち時間が増えることは、客も店も困ることだ。特に店側にとっては、レジ待ち時間が長くなることは、致命的な欠陥になるので、レジ台数を増やしてキャッシャー(レジ係)も増やさなくてはならなくなる。
■複雑な操作
レジで精算するというのは、何もないときはスムーズに見えるが、実はいろいろなトラブル対応ができるようになっている。例えば、マイナンバーカードを忘れた場合(後出し)、失くした場合(再発行)、商品を返品した場合、それぞれの場合にマイナンバーカードでも対応しなければならない。
どんなシステムかにもよるが、基本的には事業者側のデータとマイナンバーのポイントと、両方のデータを分けて管理しなければ対応が難しい。カードを忘れた場合、いつ(レジ清算直後、数時間後、数日後等)後出しされるかわからないが、事業者側のデータは変更する必要はなくても、マイナンバーカードのポイントを増やさなければならない。センター側には、新しいデータを送るだけだが、店側は過去の購入履歴から拾い出し、店側の売り上げにはカウントせずに、センターだけに購入履歴を送信しなければならない。
そんな煩雑で複雑なことはレジではできない。サービスカウンターなどで対応することになるが、非常に面倒な作業を強いられることになる。再発行にどう対応するのかも考慮し、システム構築しなければならない。返品の場合は、事業者側のデータもマイナンバーカードも減算しなければならない。
こうしたイレギュラー(トラブル)対応を、事業者とセンターと、どちらが何をするかということを決めなければならない。具体的なシステム設計とオペレーションを決めなければ事業者の負担がどのくらいになるかは想像すらできない。
しかも、こうした対応は中小企業になればなるほど不得意な分野だ。中小企業では、操作ミスやデータの送信間違いも頻繁に起きるかもしれない。送信された間違ったデータを修正することになれば、操作はより複雑になる。果たして、そんな操作を中小企業ができるのだろうか。
■後出しのレシート対応も意外と面倒
財務省案でも、マイナンバーカードを忘れた場合、レシートを取っておけば後日まとめてポイントに換える仕組みをつくるとしている。どんな仕組みをつくるにしても、レシートにポイント還元したかどうかの証拠を残さなくてはいけない。駐車場の駐車券に印を押してもらうようなものだ。消費税の還付にそんな三文判でいいのかという問題もあるが、レジ係がレシートに印を押す行為は、ひと手間増えることになる。駐車券に印を押す行為とダブる事業者も出てくるだろう。
しかも、駐車券などのスタンプと違って、税金を戻すかどうかの証書の役割をレシートが持つことになる。では、レジ側でスタンプを押すとなると、これも難しい。機械的にレジでなんらかの印を印字することは難しくはないが、時間がたつと消えることもある。レジ係の判断で区別することは間違いのもとなので、マイナンバーカードをスキャンしたことをレジが認識して印を印字することになる。それだけでも結構面倒なシステムになる。還元した証拠を残さないと不正が起きる。レシートの売り買いが起きる可能性もある。
もうひとつやっかいなことがある。レシートの印字は、時間がたつと消えるものが結構多い。還付してもらうための重要な証拠が消えてしまうのでは役に立たない。そうなると、レシートの品質や印字・印刷の機械を変更しなくてはならなくなる。
財務省案が事業者の負担を軽減するというのは真っ赤なウソである。
■消費税非還付店が続出する
こうしたレジでのイレギュラー対応やトラブルシューティングは、大手企業ならなんとかこなすことができるが、中小企業は最も苦手な分野だ。インボイスよりはるかに煩雑で複雑でコストがかかる財務省案は、中小企業ほど採用しなくなる。つまり、中小企業では「消費税非還付店」が続出する恐れがある。そうなれば、消費者はますます還付される大手の店を選ぶことになる。財務省案は、弱者救済ではなく弱い者いじめの案なのだ。
■システムは簡易で、センター設置に数千億円はかからないというのはウソ
財務省主税局税制2課長は「1億2000万人の個人(の情報)とポイントを、365日の買い物情報として管理する。システムは簡易で済む」(9月11日付読売新聞)というが、とても信じられない。
たとえば、日本人の半数(6000万人)が毎日どこかで買い物をするとする。その情報は、小売店や飲食店から、都度(おそらくリアルタイム)還付センターにデータ送信される。1人が平均5品の買い物をすると、6000万×5=3億件のデータが、毎日センターに送信されることになる。
2012年(平成24年)の総務省統計局の経済センサス活動調査によると、小売業の事業所数は、衣料専門店を除いても約100万カ所ある。この中には、ホームセンター、ドラッグストア、通販などの無店舗販売所も含まれている。飲食店は、バー、キャバレー、ナイトクラブを除いて約37万カ所ある。あわせて約137万カ所になる。
100万カ所から毎日3億件のデータが送信されてくる。そのデータは、加算だけではない。返品があれば減算データとして送られてくる。しかも、消費者からの問い合わせに答える必要があるので、その履歴は消費者に還付された後も保存しておかなければならない。
消費者は、正しく還付されたかどうかを確認したいということで、インターネット経由でセンターにアクセスすれば、少なくとも1年間の購入履歴を提示しなければならない。例えば、還付時期に1000万人の消費者が一斉にセンターにアクセスして購入履歴を照会したらどうなるのだろう。もちろん還付時期だけではない。消費者は、限度額に達したかどうか、センターに届いている情報が正しいかどうかを確認したくなる。常時、消費者からアクセスされることも想定しておかなければならない。
100万件以上の事業者と1億2000万人の消費者を相手にするシステムが簡易なわけがない。なんのシステム構築もしないで「簡易なシステムで費用も少ない」とどうして言えるのか。財務省案の提案責任者が、あまりにも根拠のない発言をすること自体、財務省案がいかに虚構の産物であるかという証である。
■財務省は、軽減税率を潰したい
レジや事業者、消費者にとって財務省案の問題点はまだまだあるが、これだけでも事業者は財務省案をやりたくないだろう。ほかにも、想定対応費用や還付上限が4000〜5000円では少なすぎるといった根本的な問題があるが、いずれにしても、財務省案が採用される可能性は極めて低いだろう。
実は、それを一番よくわかっているのが財務省であり国税庁だ。幹部は知らないかもしれないが、担当者はよく理解している。彼らは、財務省案が無謀であることを百も承知で出してきている。
では、なぜ出してきたのかというと「軽減税率を潰したい」からだ。財務省や自民党は、「軽減税率を実行するのは、マイナンバーカードシステムしかない。それがダメなら、軽減税率をやめて一律10%にするしかない」と言っているのだ。その証拠に、公明党幹部は「(軽減税率を)やるか、やらないか、どっちかだ。党内がだめと言うなら、軽減税率そのものが暗礁に乗り上げても仕方ない」(9月11日付朝日新聞)と語っている。公明党は、まさに財務省の術中にはまっている。
自民党の野田毅税調会長は15日の委員会終了後、記者団に「制度の答えを出すのは針の穴を通すより難しい」と述べている。財務省案でなければ、軽減税率は難しいと言っているのだ。財務省の狙いは軽減税率中止の一点にある。ところが、軽減税率を中止したからといって、消費税を据え置くことはしない。単純に10%にするしかないと、政治家や国民に思い込ませたいだけのための財務省案なのだ。
■なぜ日本でできない軽減税率
インボイスが面倒だという声が自民党には強い。しかし、今もインボイスに近いことは多くの企業が実施している。できないことではない。単なる「わがまま」でしかない。欧米などほかの国で実施されている制度が日本でできないはずがない。多少面倒であっても、日本でできないわけがない。どんな仕組みをつくっても問題点は残る。しかし、欧米は日本の財務省案のような複雑怪奇な方法はとっていない。
日本の現状は、ただただ「軽減税率をしたくない」というわがままを言っているだけである。「できない」のではなく「したくない」だけだ。軽減税率をしたくないなら、増税しないことが一番簡単なことである。
(文=垣田達哉/消費者問題研究所代表)
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