http://www.asyura2.com/15/hasan100/msg/602.html
Tweet |
サントリーの佐治信忠会長と新浪剛史社長〔PHOTO〕gettyimages
酒税改定、また財務省の「庶民いじめ」だ! ビール各社も大混乱 もう発泡酒・第3のビールは飲めなくなる!?
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/45288
2015年09月16日(水) 週刊現代 :現代ビジネス
ビールの税率は約50%で、税金を飲んでいるようなもの。庶民は仕方なく発泡酒や第3のビールを楽しんできたが、財務省が税率を引き上げる。相変わらずの「庶民いじめ」に、ビール各社も大混乱!
■税金が2倍に!
「これはまさにサントリーが『狙い撃ち』にされた格好です。考えてみてください。ビールが値下げになって、発泡酒と『第3のビール』が値上がりになる今回の酒税改定でいったい誰がトクをして、誰が損をするのか。
国民的ビールブランドの『スーパードライ』のあるアサヒが笑い、第3のビール『金麦』に頼っているサントリーが泣くのは目に見えています。一方、キリンは、発泡酒を含め、各種バランスよく展開しているので、影響は比較的小さいでしょう」(ビール業界専門紙記者)
これまでサントリーの業績は絶好調だった。'14年12月期の連結売上高では、国内のビール各社のトップに躍進。今年8月に発表した'15年中間期決算でも、売上高は1兆2363億円、営業利益は765億円と過去最高を更新した。
プレミアムビール市場を牽引する『ザ・プレミアム・モルツ』や、第3のビールでシェアトップの『金麦』に加え、洋酒販売でも売り上げを稼ぐ。サントリーホールディングスの新浪剛史社長は、「われわれは世界を目指す」と意気軒昂だった。
しかし、そのサントリーにとって、厳しい向かい風が吹き始めた。
その原因が、政府・与党が'15年度税制改正大綱で決定するとみられる「酒税改定」だ。問題となる今回の改定のポイントはどこか。前出の業界紙記者が解説する。
「ビール系飲料は現在、3段階の酒税がかけられています。麦芽の比率などの原材料や製法によって分かれ、ビールだと1缶(350ml)あたり77円、発泡酒が同47円、第3のビールは同28円です。財務省はこの税率を見直し一本化することで、人口が減る中でも一定の酒税を維持したいと考えているのです。
一本化後は、ビール系飲料に一律1缶55円程度の税金がかけられると報じられています。発泡酒は10円値上げ、第3のビールに至っては税金が倍増します。
この金額で決定するかは不明ですが、ビールは値下げ、発泡酒と第3のビールは値上げになることは間違いない。'17年には消費税が10%になりますから、庶民は第3のビールさえ飲めないようになりかねない」
これまでビール各社は税金を低く抑えるように工夫して安くおいしい商品を開発していた。
財務省による「税制改定」は、ほとんどの場合、「増税」を意味する。ビール各社にしてみれば、絶対に避けたい事態だが、今度の改正案では、団結すべき4社の足並みが揃っていない。
■これまでの苦労が水の泡
その理由が、左に表を掲載した「各社のビール構成比」だ。これは今年上半期に出荷された商品のうち、ビールがどれほどの割合を占めるかというもの。
見ればひと目でわかるように、サントリーはビールの割合が低く、その分、第3のビールが多い。『スーパードライ』を抱えるアサヒはビールの割合が64・4%と抜きん出ている。
「財務省が考えている酒税改定が実施されれば、発泡酒や第3のビールに移っていた消費者がビールに戻ってくる可能性があります。売り上げに占めるビールの割合が高いアサヒとサッポロにとっては追い風になりますが、サントリーにとっては逆風です」(岡三証券投資戦略部ストラテジスト・小川佳紀氏)
サントリーの『ザ・プレミアム・モルツ』が堅調といっても、それは市場規模の小さいプレミアムビール部門での話にすぎない。発泡酒からすでに撤退し、第3のビールに重心を置く同社が一番、今回の酒税改定の割を食うのは明らかだ。
サントリーの中堅社員が憤慨する。
「血の滲むような企業努力の結晶である『新ジャンル』(第3のビール)への増税はいかがなものかと思います。これは私たちが少しでも安く消費者に届けようとした努力を否定するものです。こんなのありなんですかね? 商品開発には、莫大な費用もかかっていますし、財務省にはこういった要素を考慮してほしい」
これまでビール各社は財務省による酒税増税に対して、一致団結して反対してきた過去がある。
しかし、笑う者あれば、泣く者ありで、ライバル会社たちは、今回の酒税一本化がサントリーを叩き潰す千載一遇のチャンスだと内心ではほくそ笑んでいるのだ。
「ビールでは鳴かず飛ばずだったサントリーが近年、第3のビールで勢いを増し、目の上のたんこぶになっているのは事実です。早々に発泡酒から撤退し、経営資源を集中させて生まれた『金麦』が、それなりに優れた商品であることは認めます。しかし財務省の思惑でその失速が避けられないわけですから、こちらにとっては『棚からぼた餅』です」(アサヒビール中堅社員)
「ウチはビールなら『一番搾り』、発泡酒なら『淡麗』、第3のビールなら『のどごし〈生〉』とそれぞれに強いブランドを持っているので、当面はどっちでもOKですね。引き続き、それぞれのブランドで機能性商品に力を入れるなど、ブランド力の強化に力を入れていきます。
朝ドラ『マッサン』効果でたまたまウイスキーがバカ売れしたかもしれませんが、ビール系は『プレモル』と『金麦』しかないサントリーさんは大変ですね(笑)」(キリンビール中堅社員)
思えば「ビール」の歴史は、財務省との苦闘の末に生み出されてきたものだった。飲料業界に詳しいジャーナリストの永井隆氏が話す。
「シェアが5%台と低迷していたサントリーが、'94年に起死回生の一手として投入したのが、発泡酒『ホップス』でした。当時はバブルも崩壊して、景気が悪化していた。サントリーは、ビールのような飲みごたえがあり、価格が安いものを作れば売れると考えたのです。結果、記録的な大ヒットとなり、サッポロ、キリン、アサヒが続々と参入しました」
■財務省は新浪社長が嫌い
急拡大する発泡酒市場に対して、財務省は、'96年と'03年に2度の増税に踏み切る。ビール各社は発泡酒の増税で「第3の道」の模索を余儀なくされ、まずは'04年にサッポロが麦芽を使用していない『ドラフトワン』を発売し、各社がそれに追随する。味や価格だけにとどまらず、機能性といった各面で各社の熾烈な開発競争が繰り広げられてきた。
そして今年上半期の「第3のビール」市場を制したのが、前述のように'07年に発売され、シェアを伸ばしてきた『金麦』。財務省はそこに網を掛けて、さらなる税金を搾り取ろうとしている。
それにしても、なぜ彼らはサントリーが最も大きな犠牲を払う形での改定に踏み切ろうとするのか。
その背景には、財務省と新浪社長の軋轢も関係があるという。新浪社長は三菱商事出身で、コンビニ大手『ローソン』の社長として辣腕を振るい、経営再建を果たした。
その手腕を買われ、'13年には安倍晋三政権下で政府の「産業競争力会議」の民間議員に選出。'14年には創業一族以外から初めてサントリーホールディングスの社長に就任し、さらに55歳の若さで経済財政諮問会議の民間議員にも選ばれた。
「これが問題だったのです。財務省としては、諮問会議が提言し、政府がまとめる『骨太の方針』に、財政再建に向けた歳出削減の数値目標を盛り込みたい。一方、諮問会議の民間議員は口でこそ歳出の抑制を唱えますが、経済成長のほうを優先するため、数字目標を明記した形での歳出抑制には慎重です。
新浪氏は『産業競争力会議』のメンバーに選ばれる前から安倍総理や菅義偉官房長官とも親しかったため、発信力と実行力が買われて民間議員に抜擢されました。
実際、諮問会議でも積極的に発言して、財務省の試算などにも公然と異を唱え、彼らの財政再建についての数値目標を『骨抜き』にすることに尽力した。それが財務省の逆鱗に触れ、今回の税制改正でサントリーを狙い撃ちにするような『意趣返し』につながったという見方もあります」(全国紙経済部記者)
■各社の次なる一手
今後、財務省の提案する税制改正案は自民税調、政府税調にかけられ、議論されていく。
「財務省が『やる』と決めたら、絶対に増税に踏み切るでしょう。ただ、発泡酒と第3のビールは『大衆消費物品』です。来年には参院選もありますから、庶民に受けの悪い増税を政治家が断行できるかどうか。最低でも3~4回にわけ、5~7年かけて行われるはずです。その間に、各社はどういった商品を揃えられるかがポイントです」(前出・業界紙記者)
すでに各社は酒税改定に向けて、個別に対策を講じつつある。
今後の業界動向を前出の永井氏が占う。
「アサヒは圧倒的なブランド力を誇る『スーパードライ』の派生商品を拡充させて、主力ブランドを売り伸ばす方針です。ただ、もう20年以上も『スーパードライ』におんぶに抱っこでやってきている経営方針には疑問が残りますが。
キリンは、原材料や製法にこだわり、少量多品種で展開する『クラフトビール』に注力。東京・代官山などにクラフトビールを楽しめる飲食店を作り、新市場の開拓に打って出ています。
そしてサントリーは、『モルツ』の後継商品として、一般のビール市場に新しく『ザ・モルツ』を投入し、シェアを拡大しようとしています。それで『スーパードライ』と『一番搾り』の牙城を崩せるかどうか。むしろ、洋酒販売の世界大手『ビーム社』買収や、食品事業の強化でわかるように、ビール類以外の分野を主戦場にするのではないでしょうか」
サッポロは大手4社の中で唯一赤字に転落し、苦境に立たされている。'13年に第3のビールとして売り出した『極ZERO』が昨年、国税庁からの指摘で発泡酒として売り出さざるを得なかったのが響いた。今後はビール系飲料以外に注力して活路を見出す。
ビール系飲料の総出荷額は年々減少し、ピークの'94年に比べれば、市場規模は25%も縮小した。縮みゆくパイを争って、ビール各社の競争は熾烈になっている。
しかし、これまでも財務省の介入を跳ね返す形で、ビール各社は新しい商品を次々と生み出してきた。今回の酒税改定にも負けず、消費者に新たな味覚をもたらし、リーズナブルな価格帯の製品が誕生することを期待したい。
「週刊現代」2015年9月19日号より
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民100掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。