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紀伊國屋書店 新宿本店(「Wikipedia」より/Lover of Romance~commonswiki)
紀伊國屋書店の「慣習破り」に業界から批判殺到!アマゾン対策で村上本を9割買い切り
http://biz-journal.jp/2015/09/post_11567.html
2015.09.16 文=佐伯雄大 Business Journal
作家・村上春樹の雑誌連載をまとめた『職業としての小説家』(スイッチ・パブリッシング/以下、村上本)が9月10日に発売された。実店舗を運営する書店が一丸となってインターネット販売のアマゾンに対抗することを目的に、紀伊國屋書店が初版部数の9割を買い切ったとして話題になった本だが、そのやり方に発売前から他の書店が反発しているという。
日本一の書店チェーンとはいえ、発行部数の9割を買い切るというのはどういうことなのか。そして、村上本の流通ルートはどう変わっただろうか。
まず、出版社のスイッチ・パブリッシングが初版10万部を製作。そのうちの9割に当たる9万部を紀伊國屋が買い切った。残りの1万部はネット通販のほか、一部リアル書店との直取引分などに振り分けられる。紀伊國屋の9万部は、自社と大日本印刷グループ傘下の丸善やジュンク堂書店などへ卸される分と、出版取次3社(トーハン、日販、大阪屋)や他の書店へ卸される分に分かれる。つまり、「出版社→取次→書店」という従来の流通ルートから、「出版社→紀伊國屋書店(大日本グループ傘下書店)→取次→書店」になったのである。
さらに、ここでポイントとなるのが、「買い切り」という条件だ。出版界では、一部の出版社を除いて委託取引(期限内であれば、いくらでも返品可能)が通常の取引形態である。買い切りの条件を設定する場合、出版社は書店への卸正味(書籍の仕入値のこと)を下げて、書店の取り分を増やすのが通例となっている。大手チェーン以外の一般書店の卸正味は本体価格の77〜78%で、例えば店頭価格が1000円の場合、書店が得る粗利は220円〜230円となる。買い切りの場合には、卸正味を65%前後に設定するといわれている。
ただ、それだけ粗利益率がよくなっても買い切りはリスクが高いととらえる書店も多く、65%で仕入れても75%で返品する、いわゆる「歩安入帳」という返品可能な取引を望む声も多いというのが現状だ。
■書店から不満相次ぐ
今回の村上本の流通をめぐっては、卸正味設定の件で各書店から不満が相次いでいるようだ。
たとえば、第一報後に取次から今回の仕入れ方法について聞いた都内のある書店の担当者はこう語る。
「取次からの卸正味は78%で、買い切りが条件という通達があった。うちは通常、卸正味が77.5%でもちろん委託取引が前提。 78%は買い切りの卸正味ではないし、委託よりも高いというのもおかしな話。読者から注文があった分だけを仕入れるくらいしか対応しない」
また、別の書店担当者は語る。
「東京の書店組合に入っている書店は、76%で仕入れることができる。しかし、買い切りの正味としては大きすぎる。返品リスクが高いので発注は抑えた」
さらに、ある都内の書店担当者はこう反発する。
「紀伊國屋が都内の老舗書店と組織する書店団体『悠々会』経由であれば、70%で仕入れることができると聞いた。買い切りであれば、せめて30%の粗利は欲しいので妥当な卸正味。しかし、一部の書店だけが恩恵を受ける構図は理解できない。そのうえ、仕入れ先が取次以外にもあることが、公になっていないのも納得いかない」
ほかにも「出版社と直取引で仕入れている書店もあると聞いた。仕入れ先の情報が錯綜していて、取次の担当者もよくわかっていないようだ」など、紀伊國屋のやり方に反発する声が続出しているのである。
紀伊國屋は、リスクを冒して9万部を買い切り、「リアル書店が一丸となって販売する新しいスキーム」を標榜しているにもかかわらず、他の書店の目は冷たい。ある取次関係者は話す。
「村上本については、日販とトーハンが合計で5万1000部を取り扱うようだ。大阪屋分を除いても、残り3万部以上はある。紀伊國屋書店や丸善、悠々会の書店だけで本当に売り切れるのだろうか」
今回の紀伊國屋の行動が、果たして今後の出版業界に大きな変化をもたらすことになるのか。村上本の売れ行きに注目が集まる。
(文=佐伯雄大)
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