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財務省よ、国民を欺くな たった4000円の「還付金」で増税の痛みが軽減できるワケがない!
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/45307
2015年09月15日(火) 町田 徹 現代ビジネス
■ダマされてはいけない
消費税率の10%への引き上げと同時に導入することが公約になっている、「軽減税率」の導入案がやっと姿を現した。自民、公明の連立与党が財務省に作らせたもので、対象は「酒類を除く飲食品」。「精米」とか「生鮮食品」といった他の案に比べれば大盤振る舞いのように映る。
しかし、騙されてはいけない。この案は、消費税の欠陥である逆累進性の緩和や、痛税感の解消という触れ込みには程遠い。
問題は、我々がまだ見たこともない「マイナンバー(税と社会保障の共通番号)」カードを持ち歩いてポイントを貯め、後から還付を申請するという面倒臭さだけではない。
「消費税の2%分を還元」と言いながら、還付額に上限を設け、雀の涙しか還付しない仕組みを目論んでいるのだ。
総務省の家計調査をもとに計算すると、例えば、一人世帯の独身者は年収100万円未満でも30万円以上を食品購入に費やしており、本来なら6100円強の還付を受けられるはず。ところが、問題の上限に阻まれ、わずか4000円しか還付されないのだ。
しみったれた軽減税率と引き換えに、われわれ国民は、消費増税を受け入れられるだろうか。きっちり検証してみよう。
■そもそも軽減税率とは?
そもそも軽減税率とは何か。
今回のケースで言えば、消費税の(標準)税率が10%に上がる中で、生活必需品などに対象を限定し、低い税率(軽減税率)で購入できるようにすることだ。
欧州では、日本の消費税に相当する付加価値税が早くから普及しているが、その標準税率は20%前後と高い。そこで様々な商品やサービスを対象に、軽減税率を導入している。例えば、英国の場合、標準税率は20%だが、食料品や新聞・雑誌には0%の軽減税率が適用される。
フランスも標準税率は20%だが、食品に5.5%、新聞・雑誌に2.1%の軽減税率を設けている。欧州では政策的に自国製品の消費を促すために、生活必需品だけでなく、自国産の農産品などに軽減税率を適用することも珍しくない。
所得税と違い、消費税は捕捉が容易で、脱税を防ぎやすい。このため、相対的な消費税の拡大は世界的な流れになっている。
しかし、消費税は所得額に関係なく万人に同じ額が課税されるため、低額所得者に過酷な税だ。この点が、所得額が多くなれば高い税率を適用する累進課税制度のある所得税と大きく異なる。
この逆累進性の強さという消費税の欠点を緩和する効果があるとされるのが、生活必需品などを対象にした軽減税率なのだ。
■個人情報流出のリスクも
財務省は長年、軽減税率の導入を拒んできた。「税収が減る」とか「税制が複雑になって納税コストが上がる」、「脱税し易くなる」などが、その理由だ。
ところが、5%から8%、8%から10%への2段階の消費増税の実現はハードルが高いと見て、納税者の反発を和らげる施策が必要と判断、最初の消費増税前に内々ながら方針を転換していた。
これを受けて、自民、公明両党が昨年暮れの総選挙の際に、消費税率の10%への引き上げと同時に軽減税率を導入することを公約した経緯がある。
その財務省の実施具体案が、自民、公明両党が先週(10日)に開いた「与党税制協議会」の席でベールを脱いだ。
まず買い物時に現金やクレジットカードで10%の消費税を支払い、マイカードを店頭の読み取り機にかざしてポイントを貯めて、後で申請すれば2%分の還付を受けられる仕組みである。
評価できる点があるとすれば、党税調が今年5月段階で検討していた3案(「精米」、「生鮮食品」、「酒類を除く飲食品」)の中で最も対象品目が多い「酒類を除く飲食品」を選択したことだろう。
2017年4月の消費増税の実施に間に合わせるためには、政府、与党が今年12月までに軽減税率の導入策を決め、来年1月に始まる通常国会で必要な法案を成立させて、準備する必要がある。
だが、現在の導入案によって、増税に伴う家計への影響を緩和するという議論には首を傾げざるを得ない。
というのは、第1に、買い物をする段階で、10%の消費税を現金やカードで支払う必要があるからだ。これでは、納税者の資金繰りは一向に楽にならず、痛税感が和らぐわけがない。
第2に、還付を受けたければ、来年1月に運用開始予定のマイナンバー制度の個人番号カードを取得し、これを持ち歩いて、買い物のたびに店頭に設置された読み取り機にかざしてポイントを蓄積することを義務付けられることだ。
個人情報の流出リスクが指摘されており、あくまでも希望者限定だったはずの個人番号カードの取得が必須のうえ、買い物のたびに提示するのは、納税者にとってそれなりの抵抗感があるものだ。
何を買ったか、すべて税務当局に知られるのは誰だって気持ち悪いはずである。
■さらに所得制限を設ける「腹案」も!?
一方、零細店を含めて全国の小売店が読み取り機をどの程度配備できるかも疑問である。
報道によると、先週金曜日(9月11日)の閣議後会見で、マイナンバー制度の導入そのものが遅れる可能性があることに関連して、麻生太郎財務大臣が、「(軽減税率の導入は、消費税率の)10%時であって、10%導入時とは書いていない」と述べ、軽減税率の導入を消費税率が10%に上がる2017年4月に間に合わせる必要はないとの考えを表明したという。詭弁を弄して、公約を反故したと受け止められても仕方のない発言だ。
そして第3が、消費税の2%を還元すると言いながら、財務省が還付額に一人当たり4000円程度とされる上限を設ける腹案を持っているとされることだ。冒頭で述べたように、総務省の家計調査(2014年分)をみると、年収100万円未満の1人世帯の独身者は、「酒類を除く飲食品」の購入に年間30万6876円を費やしている。
この2%分ならば、6173円の還付を受けられるはずだ。ところが、腹案通り一人4000円の上限を設けられると、それを超える2173円が切り捨てられてしまうのだ。
事情は、年収200万円未満の2人世帯も同じだ。年間47万1216円を食品購入に充てており、2%にあたる9424円の還付を受けられるはず。ところが、ひとり4000円の壁に阻まれて、世帯合計で8000円しか還付を受けられない。年収200万円未満の世帯で、9424円の満額還付を受けられるのは、構成員が3人以上いる世帯だけなのである。
また、3人世帯でも、年収が200万円以上250万円未満の世帯は、満額還付を受けられない。食品購入額が年間60万3528円に達し、その、2%は1万2071円になるが、3人世帯の上限の1万2000円で還付が打ち切りになるからだ。この年収で満額の還付を受けられるのは4人以上の世帯に限られる。
カラクリは、4人世帯でも、5人世帯でもほとんど変わらない。結局のところ、ほとんどの世帯で2%分を還付する軽減税率は看板倒れ。上限額の4000円しか戻らないケースが大半だ。
これらの点だけでも軽減税率の「羊頭狗肉ぶり」は相当なものだが、財務省には、さらなる所得制限を設ける腹案もあるという。そうなれば、2%の満額の還付どころか、4000円が有力という上限を含めて、還付そのものを受けられない人が続出する。
■まず個人所得税率を下げよ
連立与党や財務省は、軽減税率を消費全体の下支えではなく、低所得者の痛税感解消策とする考えが強く、年収300万円、400万円以上の世帯は対象外にされかねない。
それなら、大袈裟な軽減税率導入などという看板を降ろして、現在6000円を給付している低所得者向けの定額給付というバラマキ策を採った方が、行政コストもはるかに安上がりではないだろうか。
党税調の昨年6月の資料によると、「酒類を除く飲食品」に2%の軽減税率を導入するのに必要な費用は、1兆2600億円という。一方で、消費税率を2%引き上げて10%にすれば、税収は3〜4兆円規模で膨らむはず。
本来、増税分の半分ぐらいは、軽減税率の財源に充てても何ら不思議のないところだろう。個人番号カードを使った還付ではなく、買い物の場で軽減税率分の支払いで済む制度を作るべきなのはもちろん、上限設置や所得制限などもってのほかである。
国民に消費増税を強いる一方で、政府は数年内に標準税率が32.11%の法人税率を20%台に引き下げる方針という。
消費増税を断行し、軽減税率をしみったれたものにとどめるのならば、中国バブルの崩壊や度重なる集中豪雨の復興経済対策の意味も込めて、法人税と同じ直接税に分類される個人の所得税率の大幅な引き下げも検討すべきだろう。
潜在成長率を押し上げるためには、空前の内部留保を溜め込んで賃金や投資に回さない法人をこれ以上優遇するよりも、伸びない所得と重くなる一方の税負担の直撃を受けて縮む家計を重荷から解放する方が良策ではないだろうか。
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