2. 2015年9月16日 14:06:20
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正午のドルは120円前半、スワップでは円投/ドル転コスト上昇 [東京 16日 ロイター] - 正午のドル/円は120.23円付近。午前の外為市場では、ドルが120円前半で方向感のない小幅な値動きに終始した。ユーロは1.1287ドルまで反発し、海外市場での下落分を一部取り戻した。 前日の海外市場では複数の米経済指標がさえない結果となったにもかかわらず、米株と米金利が上昇し、ドルが買い進まれた。 落ち着いた値動きとなったスポット市場とは対照的に、為替スワップ取引やベーシススワップ取引では円投/ドル転コストの上昇が顕著だった。 ドル/円スワップ3カ月物では、円投/ドル転に際してのジャパンプレミアム(金利平価からの乖離)が40.63ベーシスポイントまで拡大し、2011年12月27日以来、3年9カ月ぶりの高水準となった。 ドル/円ベーシス・スワップ1年物では、ドル・ディスカウント幅が49.875ベーシスポイント(ビッドサイド)と、2011年12月29日以来、3年9カ月ぶりの水準まで拡大した。 市場関係者らによると、円投/ドル転コストの上昇は、欧米銀が期末を控えてドル供給/円調達を手控えていること、自国通貨防衛のためにキャッシュ需要が高まった海外中銀が日本国債などの円資産を換金売りしている可能性があること、FOMC後もドル金利の先高観があることなどが影響を及ぼしているという。 http://jp.reuters.com/article/2015/09/16/forex-midday-sep-idJPKCN0RG09Z20150916 2015年 09月 16日 12:19 JST コラム:新たな「謎」出現と世界経済の構造変化=嶋津洋樹氏 嶋津洋樹 嶋津洋樹SMBC日興証券 シニア債券エコノミスト [東京 16日] - 世界経済の先行き不透明感が再び強まっている。今回のきっかけは中国。米国景気は堅調さを維持していると見られるが、金融市場に不安定さが残るなか、政策金利の引き上げなど、金融政策の正常化は困難との見方が強まっている。それどころか、米国でさえも金融緩和が必要との意見もある。
いずれにしても、このまま12月を迎えれば、積極的な金融緩和が物価上昇率を押し上げ、債券相場の逆風になるとの見方は今年も外れることになる。 一方で、債券相場に順風が吹いていないのも事実だ。普通に考えれば、世界的な株安を受けてリスク回避志向が強まり、安全資産と見なされる債券相場にマネーが流入し、債券高(金利低下)となりそうなものだが、主要国の債券相場はほとんど反応していない。 たとえば、米連邦準備理事会(FRB)が今週の連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を引き上げるのは困難との見方が強まっているにもかかわらず、米国の長期金利は15日時点で、中国人民銀行による人民元の対ドル基準値引き下げ前日の8月10日とほとんど変わらないかやや上回る水準で推移している。その説明として、中国などの新興国がドル高を背景とした自国通貨安に対抗し、外貨準備を取り崩している(米国債を売却している)というのは説得力があるだろう。 実際、中国は8月だけで外貨準備を939億ドルも減らしている。そのほとんどは民間の「質への逃避」に対する需要で吸収されたと考えられるが、長期金利の低下を抑えるには十分な規模だった可能性が高い。 また、物価上昇率についても、力強さには欠けるものの、安定的に推移していく兆しは見える。原油価格は8月下旬にいったん1バレル=40ドルを下回った後、足元で8月上旬の水準を回復している。エネルギー価格の影響を除く消費者物価を見ても米国やユーロ圏、日本などで安定して推移している。こうした物価動向は、ゆっくりとだが、債券相場の下押し圧力となってこよう。 加えて、中国など新興国の外貨準備における米国債への需要は、少なくともドル高が続く間、弱まりやすい。 振り返れば、2005年当時のグリーンスパンFRB議長は、米国が政策金利を引き上げるなかで長期金利が上昇しないことを「コナンドラム(謎)」と呼び、その理由として景気の弱さのシグナルという基本的な認識とともに、年金勢などによる超長期債への需要、グローバル化に伴う予想物価上昇率の低下、海外の中央銀行による米国債に対する需要などを指摘した。中国など新興国の最近の動きは、その理由の1つが揺らいでいることを示している。 当時、中国などの新興国のみならず、日本や欧州も米国向けの輸出をけん引役に景気が回復。貿易黒字の拡大が外貨準備の増加を通じて、米国債への需要を高めていた。今回の景気回復では少なくとも今のところ、世界的に貿易が停滞気味で、ドイツを除くと輸出が景気をけん引する国・地域は見当たらない。 <米国債への需要が低下する可能性> こうした貿易の停滞は米国側の変化からも引き起こされている。それは原油の輸入減少などを背景に貿易赤字が縮小傾向にあることだ。というのも、前述の「謎」は、ITバブル崩壊後の米国が積極的な金融緩和策と財政政策で世界経済をけん引するなかで成立したと考えられるからだ。 つまり、米国景気の回復が産油国や新興国の輸出を刺激。そこで受け取った資金を米国の資産へ投資することで米国景気が一段と力強さを増し、米国向け輸出も増加するというメカニズムである。こうした仕組みが成立し、機能した背景には、当時、米国以外にめぼしい投資先がなかったこと、規制が緩く、高レバレッジを利用したハイリターンが提供できたことなどもあると考えられる。 しかし、米国は今や貿易収支が改善し、従来ほど海外から資金を集める必要がない。規制強化でハイリターンを約束することも困難になりつつある。一方、産油国や新興国は中産階級が台頭。それは従来に比べて輸出への依存度が低下することを意味するだろう。 もちろん、経済の成熟化はインフラ整備の必要性の低下を意味しない。最近の異常気象を踏まえれば、なおさら必要性は高まっていると言えるだろう。また、従来ほどの高成長が維持できなくなったことで社会的な歪みが顕在化しており、対応策として社会保障制度の拡充など、新たな支出も必要となっている。その分、産油国や新興国での過剰貯蓄は緩和し、米国債への需要も低下する可能性がある。 リーマンショック後、欧州債務危機の直後を除くと、世界的に財政政策の役割が拡大していることも、債券相場にとって逆風だろう。上述した産油国や新興国の状況はその典型だ。しかし、財政の健全化に最も熱心な国の1つであるドイツでさえも、南欧などでの反欧州連合(EU)、反ユーロ勢力の伸長を前に極端かつ拙速な緊縮財政を求める声は小さくなった。 米国ではサマーズ元財務長官などが「長期停滞論」への処方箋として、規制緩和とともにインフラ投資の必要性を訴えている。日本での「国土強靭化計画」も含め、インフラ投資による内需の拡大は世界的なトレンドとなりつつある。 しかも、金融緩和の効果もあり、日米欧の貸出は着実に増加している。それにインフレへつながるほどの力強さがあるとは言えないものの、コア物価には上述した通り、安定の兆しが見える。債券相場を支える低インフレ持続という構図は、リーマンショック後の規制強化、米国の貿易収支の改善、産油国や新興国での過剰貯蓄の緩和、世界的な財政政策の役割見直しなどを受けて変化している可能性がある。 今回の世界景気の回復が従来ほど貿易活動の活発化を伴わないのも、主要国における内需主導の景気回復という観点で見ると説明がつくように思える。 *嶋津洋樹氏は、1998年に三和銀行へ入行後、シンクタンク、証券会社へ出向。その後、みずほ証券、BNPパリバアセットマネジメントを経て2010年より現職。エコノミスト、ストラテジスト、ポートフォリオマネージャーとして、日米欧の経済、金融市場の分析に携わる。 為替こうみる:ドル118―122円、9月米利上げなら下抜けも=マネックス証券 山本氏 2015年 09月 10日 中国が三つのバブルに直面、株価暴落よりはるかに怖い=CS 2015年 07月 22日 訂正:コラム:見えてきた米成長加速とドル高再開の芽=村田雅志氏 2015年 08月 12日 http://jp.reuters.com/article/2015/09/16/column-hirokishimazu-idJPKCN0RG07Y20150916?sp=true コラム:「米利上げ・日銀追加緩和」観測の罠=佐々木融氏 佐々木融 佐々木融JPモルガン・チェース銀行 市場調査本部長 [東京 15日] - 日銀の金融政策に関しては、海外勢を中心に追加緩和期待が強いが、15日の決定会合では大方の予想通り据え置きが決まった。
記者会見での黒田総裁発言も追加緩和の可能性を示唆するようなものはなく、むしろ過去最高水準に迫る企業収益などを背景に、インフレ率が堅調に推移することに対する自信を維持しているようだった。 こうした中、追加緩和を期待して円を売っていた海外勢による円の買い戻しが15日午後の円上昇の背景になっていると思われる。 当社は、米連邦準備理事会(FRB)が今週16―17日の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げに踏み切り、また年内に2度目の利上げを行う可能性もあると考えている。一方、日銀の金融政策については、メインシナリオとして来年1月に追加緩和、場合によっては今年10月にも追加緩和が行われると考えている。 月並みな言葉で言えば、日米金融政策の方向性は反対、つまり米国が金融引き締め方向で日本は金融緩和方向ということになる。もっとも、こうした見方は市場でも一般的であり、為替相場もすでに織り込んでいると考えられる。 また、本コラムでかねてより指摘してきたように、ドルはFRBによる最初の利上げ前後のタイミングがピークになる傾向が強い。加えて、日本の経常黒字の急増、円ショートポジションの積み上がりから、円安にはなりにくくなっている。そのため金融政策の方向性の違いはあったとしても、来年に向けては緩やかなドル安・円高方向への推移になると予想している。 <市場の期待と逆方向に向かうリスク> ただ、筆者が本稿で指摘したいのは、逆の意味で日米金融政策が別方向に向かうリスクである。あくまで個人的な見解だが、FRBは市場が織り込んでいるほど利上げをできず、日銀は市場が期待するような追加緩和を行わないというリスクも無視できないのではないかと考えている。 まず日銀の金融政策については、個人消費の伸び悩み、所得環境の改善テンポが遅れていること、原油価格下落もあってインフレ期待が後退している可能性などを受けて、追加緩和を期待する声は根強い。 原油価格は、昨年6月のピークから追加緩和が行われた昨年10月末に向けて約4カ月間で25%程度下落した。今年も原油価格のピークは6月で、そこからの下落率は30%程度と、昨年よりも下落率は大きい。市場の期待インフレ率も昨年10月時点よりも現在のほうが低い。 しかし一方で、日銀も指摘している通り、企業収益が過去最高水準に達する中で、有効求人倍率は昨年10月時点に比べて0.1ポイントも上昇し、1990年代前半の水準まで戻している。失業率も約18年ぶりの水準まで低下してきている。FRBと同じロジックで言えば、今後賃金が上昇し始め、やがてインフレ圧力を強めてくる可能性があるということになる。 また、日銀がフォローし始めた、生鮮食品・エネルギーを除く消費者物価指数の前年比は6月がプラス0.7%、7月はプラス0.9%と伸びが加速している。9月以降の悪天候を考えると、生鮮食品の価格が今後上昇する可能性は高く、結果的に全体の消費者物価上昇率を押し上げるかもしれない。ちなみに、日銀が物価の目標としてプラス2.0%と定めているのは、全体の消費者物価上昇率の前年比である。 さらに、昨年10月に実施した追加緩和の理由に、当時2015年10月に予定されていた2回目の消費税引き上げ決定をサポートするという目的も含まれていたとしたら、今回は全く状況が異なることになる。 もちろん、今後の経済・市場の動きによる部分も大きいが、日銀の金融政策が市場に期待されているような緩和に向かわないリスクも排除せずに見ていく必要があるのではないだろうか。 <急激なドル安・円高が進む可能性も> 一方、米国については、失業率は過去3年間で3%ポイントも急低下しており、FRBが先行きの賃金・インフレ率上昇を懸念し、少なくとも年内に1回は利上げに踏み切るとの見方は根強い。実際、FRB高官からもそうした可能性を指摘する声は多く聞かれている。 FOMCは前回7月29日の声明文で、「委員会は労働市場がさらにあと少し(some further)改善し、中期的にインフレ率が2%目標に向かって戻るとの合理的な確信が持てた時」、利上げが適切になるとの考えを示した。その前の6月17日FOMCの声明文では、「労働市場がさらに(further)改善」とされていたところに、「あと少し(some)」が加えられたことから、利上げの時期が近づいているとの見方が強まった。 7月FOMC以降に発表された主な米経済指標を見ると、労働市場関連の指標の強さが目立つ。声明文の基準に立てば、利上げが適切な状況になっていると言えるだろう。 しかし一方で、その7月分のFOMC議事要旨では、数名(some)の参加者がインフレ率への下方リスクとして、「さらなる原油・コモディティー価格の下落とさらなるドル上昇の可能性」を挙げた。これは、「明らかな原油価格及びドルの安定」がインフレ率に対する下方圧力を和らげるとし、「メンバーは中期的にインフレ率が2%に向かい上昇するとの見方を示した」と記述された6月分の議事要旨から変化している。 さらに、中国経済についても、6月分の議事要旨では、何人か(several)が諸外国、「特に中国や他の新興国」の経済成長ペースに対する不透明感について言及した程度にとどまったが、7月分の議事要旨では、今後の米国景気を左右する要因として中国経済に度々触れ、「実質的な中国経済活動の減速は米国経済見通しのリスクとなる」とトーンが強まった。 7月29日のFOMCから先週金曜日(9月11日)までの動きを見ると、ドルの名目実効レートは0.7%上昇し、ニューヨーク原油(WTI)は8.5%下落した。ドル高の進行は一服したように見受けられるが、原油価格に関しては相変わらず下落圧力が強く、7月FOMC議事要旨で言及されたドル高・原油安からのインフレ下振れリスクは、一段と高まっているとも考えられる。加えて、上海総合株価指数は7月29日以降15%程度下落している。 現状、市場はFRBが年内に1回の利上げを行い、来年末までに合計3回の利上げを行うことをほぼ織り込んでいる。しかし、足元の状況に鑑みると、市場が織り込んでいるペースより早く利上げが行われるリスクよりも、市場が織り込んでいるほどの利上げは行われないリスクのほうが高いとは考えられないだろうか。 日米金融政策は、市場の読みとは逆方向に向かっているというリスクも頭の片隅に入れておいたほうが良いのかもしれない。この場合は、むしろ想定以上のペースでドル安・円高が進むことになる。 *佐々木融氏は、JPモルガン・チェース銀行の市場調査本部長で、マネジング・ディレクター。1992年上智大学卒業後、日本銀行入行。調査統計局、国際局為替課、ニューヨーク事務所などを経て、2003年4月にJPモルガン・チェース銀行に入行。著書に「インフレで私たちの収入は本当に増えるのか?」「弱い日本の強い円」など。 http://jp.reuters.com/article/2015/09/15/column-torusasaki-idJPKCN0RF17820150915 オピニオン:「ドル127円」シナリオの条件=中窪文男氏 中窪文男 中窪文男UBS証券ウェルス・マネジメント本部 最高投資責任者(CIO) [東京 15日] - 世界経済の先行き不安が高まる中、円高シフトを予想する声が増えている。だが、UBS証券ウェルス・マネジメント本部の最高投資責任者(CIO)、中窪文男氏は、円安シナリオは当面健在だと主張する。同氏の見解は以下の通り。 <米利上げは10月の可能性もあり> 世界経済減速懸念の高まりとリスク許容度の低下を理由に、年内の円高シフトを予想する向きが増えているようだが、ドル円相場については、少なくとも年末まではドル高・円安基調で推移する可能性が高いと見ている。 主な根拠は2つある。第1に、日銀の量的・質的金融緩和は今後数年間、継続せざるを得ないということだ。2017年4月には10%への消費再増税を控えており、その前に景気波乱要因となるテーパリング(量的緩和縮小)に乗り出すのは現実問題として難しい。 むろん国債購入は量的な限界に近づいているので、今後は超過準備にかかる付利の引き下げや他の金融資産の購入増額など、質的な面の強化をより打ち出していくことになるのだろう。昨秋の追加緩和で3倍にした上場投資信託(ETF)と不動産投資信託(J─REIT)の購入ペースをさらに拡大したり、財投債や地方債、ヘッジ付き外債などを購入対象に組み入れたりする可能性がある。 2点目は、米連邦準備理事会(FRB)による利上げだ。最近の世界金融市場の大混乱を受けて、9月16―17日の連邦公開市場委員会(FOMC)で実施される可能性はやや低くなったが、米国経済の強さを考えれば、年内に少なくとも1回は利上げが行われる可能性は依然高い。 「Xデー」の最有力候補は、FOMCメンバーの政策金利見通しなどの公表とイエレンFRB議長の記者会見を伴う12月15―16日の会合だが、市場の混乱さえ収まれば、声明の公表のみである10月27―28日の会合で実施される可能性も低くない。実際に利上げとなれば、そこから数カ月間はドル高傾向が続きやすいことは過去の例が示すところだ。 一部には、日本の経常収支の黒字拡大に伴う実需の円買い・ドル売り圧力から、円高シフトの前倒しを予想する向きもあるが、そうした流れが本格化するならば、来年春先以降の話だろう。そもそも、豊富な対外純資産を背景に所得収支こそ高水準の黒字継続が見込まれるものの、貿易収支は中国向け輸出の落ち込みもあり、当初想定ほどは改善していかないと思われる。 このような理由から、ドル円相場は年末には1ドル=127円前後に到達する可能性もあると予想している。 <注意すべきリスクシナリオは> ただし、深刻なリスクオフが起きれば話は別だ。実際、このところ市場のリスク許容度の上下動に伴い、株価だけでなくドル円相場も乱高下を繰り返している。 足元で最も気がかりなリスク要因は、中国だろう。むろん、国内の抵抗勢力を抑えながら構造改革を進めている習近平政権にとって、経済成長は国民の支持をつなぎ留めるための最優先事項であり、いざとなればリーマショック後の「4兆元投資」以降、封印してきた巨額公共投資を拡大させてでも7%前後の成長率目標のクリアを目指すと思われる。今年の中国経済は6.8%程度の成長率を維持するのではないか。 とはいえ、上海株急落や人民元切り下げが引き起こしたように、何らかの材料に端を発するセンチメント悪化を通じて、中国が世界の金融市場に大きなリスクオフの流れを巻き起こす可能性は否めない。例えば人民元相場は現在、落ち着きを取り戻しているが、それも中国人民銀行が8月11日の切り下げ後に高まった資本逃避懸念を人民元買い・ドル売り介入で抑え込んでいるためだ。この危ういバランスをこれからも保てるかは定かではない。 中国からすれば、資本逃避は怖いものの、事実上ペッグしているドルの増価に伴い人民元が再び極端な割高水準になることも、輸出テコ入れの観点からは避けたいはずだ。今後、FRBの利上げを経てドル高が進みやすくなることを考えれば、どこかのタイミングで再び人民元の大幅切り下げに追い込まれる可能性は高い。1度あることは2度ある、2度あることは3度あると考えたほうがよいだろう。 また、中国以外の新興国経済の混乱によってリスクオフが増幅される可能性にも警戒が必要だ。すでに多くの新興国が、米利上げを前にした資金の逆流で大幅な通貨安や株安に見舞われている。特に資源輸出国の中には、折からのコモディティー安を受けて、経常収支が悪化し、外貨準備も急減するなど、非常に苦しい経済運営を強いられている国もある。 むろんメインシナリオは、現在の市場の動揺が収まるとみられる10月あるいは12月に最初の米利上げが行われ、その後の利上げペースも緩やかになることから、新興国経済への影響も限られ、米国主導の世界経済成長は続くというものだ。 ただし、量的緩和後の利上げは過去に例のない未踏の領域であり、用心するに越したことはない。米利上げをめぐる不透明感や混乱が続く間は、特に新興資源国の経済危機が引き金となる世界経済の失速リスクにも従来以上に注意する必要があるだろう。 <分散投資と下値拾いが有効な局面> では、こうした世界経済情勢下での有効な投資戦略とはどのようなものなのか。大事なキーワードは、分散投資とバイ・オン・ディップ(Buy on dip、下値拾い)だと考える。 つまり、株式や債券だけでなく、ヘッジファンドやコモディティー関連銘柄などのオルタナティブ投資まで視野に入れたポートフォリオ分散を進めると同時に、言うは易く行うは難しいが、明らかな割安局面では下値を拾いに行く胆力を持つことだ。 例えば、原油価格も今後、前述した世界経済のメインシナリオ通りに進むならば、やがては上昇基調に入っていくわけであり、その前提で考えれば、現在の米エネルギー関連銘柄はやや売られすぎている感が強い。コモディティー自体への先物投資はお勧めしないが、足元で割安感の高いコモディティー連動銘柄については選別投資していく余地もあろう。 地域別に見れば、有望な投資先はユーロ圏だと考えている。今月20日のギリシャ総選挙で反欧州連合(EU)的な政権が誕生し、金融支援が再び暗礁に乗り上げるようなことがあれば話は変わるが、そうでなければ当面はこれまでのユーロ安や原油安の恩恵を背に受けて堅調な経済成長が見込まれるだけに、ユーロ関連は分散投資先の有力候補となろう。 また、日本株も昨今の下げを受けて、下値拾いのチャンスがある。4―6月期にマイナス成長となった日本経済については、7―9月期も劇的な改善こそ見込まれないものの、中国経済がハードランディングでもしない限り、大きく崩れる可能性は低いと見ている。 一方、気を付けるべきは新興国関連の投資だ。歴史が示すように、新興国市場は底なし沼のように下がるリスクがある。ハイパーインフレによる資産価格の大暴落もあり得る。その意味で、経済ファンダメンタルズが脆弱で政治リスクが高い国は、米利上げ局面ではお勧めできない投資先だ。逆に言えば、ファンダメンタルズが良く政治リスクが低い国については、下値拾いの機会もあろう。 最後にドル円については、冒頭で述べた通り当面は円安方向であり、円高シフトは来年以降と見ている。ただ、様々なリスク要因が顕現化して、仮に1ドル=115円台を下回るようなことがあれば、円高シフトの予想前倒しも確かに必要となってくるだろう。 *中窪文男氏は、UBS証券ウェルス・マネジメント本部のチーフ・インベストメント・オフィサー(CIO、最高投資責任者)ジャパン。日本生命、ブラックロックなどを経て、2014年6月より現職。京都大学経済学博士。一橋大学金融工学・経営学修士。 *本稿は、中窪文男氏へのインタビューをもとに、同氏の個人的見解に基づいて構成されています。 中国減速でも日本の輸出大きく落ちず、市場動向に注意=日銀総裁 2015年 08月 27日 米国株式市場サマリー(14日) 2015年 09月 15日 コラム:ドル相場、年内の利上げより重要なこと=佐々木融氏 2015年 08月 11日 http://jp.reuters.com/article/2015/09/15/opinion-fumionakakubo-idJPKCN0RE0VT20150915
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