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ジンコーポレーションが所在する東京・恵比寿プライムスクエア(「Wikipedia」より/Eurotuber)
ミュゼプラチナム、実質債務超過で顧客から解約殺到 ついに「恐れていた事態」到来
http://biz-journal.jp/2015/09/post_11538.html
2015.09.13 文=村上力/フリーライター Business Journal
■ついに「売り上げマイナス」
8月24日、当サイトは脱毛サロン最大手「ミュゼプラチナム」を運営するジンコーポレーションが私的整理に向けた手続きに入っていることを報じた。同社は顧客から受け取った前受金を全額売上計上した結果、簿外負債が累計で500億円超という途方もない金額に膨らみ、実質的な債務超過状態に陥っている。破綻か再建か――。同社の行方に注目が集まっている。
情報サイト「フォーサイト」による報道もあり、8月末、ミュゼには解約を求める顧客が殺到し蜂の巣をつついたようなパニックに陥った。コールセンターへの着信件数は平時の20倍を超え、ついに一日の解約金が契約金などの入金を上回り、「売り上げマイナス」という恐れていた事態が発生した。
9月1日、ジンは次のような経費削減策を決定した。
(1)本社事務所の縮小
(2)役員報酬の大幅減額
(3)広告の見直し
(4)スポンサー契約などの見直し
(5)CSR活動の見直し
(6)ジンがスポンサーの雑誌「Shunme」の休刊
(7)寮や社宅の解約
だが、巨額の簿外負債をどうするか、銀行や取引先との関係維持をどうするかという会社存続の根幹にかかわる問題を前に、こうした小手先の経費削減など焼け石に水だ。抜本的な施策が示されるのは、外資系会計事務所PwCによるデューデリジェンス(資産査定)が終わる9月以降となるだろう。
■朽ちた上場
実はこの騒動のとばっちりを受け、上場を取りやめざるを得なかった企業がある。9月16日にマザーズ上場予定だったネットマーケティング(主幹事・SBI証券)だ。同社は8月27日、突如上場の延期を発表。その理由について「特定企業との取引に関連し、2016年6月期の業績見通しが未達になる可能性が生じた」とのみ説明した。
この「特定企業」はエーアイパシフィックという企業で、ネットマーケティングの販売実績の2割を占める得意先だった。実は、エーアイパシフィックの実態はジンのトンネル会社といっても過言ではない。取引の約9割はジン関係であり、事務所も同じビルに所在している。報道がなければ、新たな「上場ゴール」銘柄が生まれる可能性があったのだ。
■常陽銀行の責任
この推移によって注目されるのが、ジンに役員を出しているメインバンクの常陽銀行の責任だ。同行は過去4度のシンジケートローン(複数金融機関による協調融資)のアレンジャー(幹事金融機関)を務めており、今年3月の第4回シンジケートローンでは13億円を調達したが、同じ月に常陽・足利銀行に5億円づつ返済がされている。
現在はすべての金融機関への返済が滞っている以上、シンジケートローンに参加した金融機関は「好い面の皮」といえる。簿外負債について知りうる立場だったアレンジャーの常陽銀行が、参加した金融機関に対して適切な情報提供を行っていたか否かでは、今後責任追及を受ける可能性も否定できない。もっとも、簿外負債の存在を把握していなかったとしても、アレンジャーとしては落第なのはいうまでもない。
■“心ないジャーナリスト”
高橋仁社長は報道から間もない8月25日夕方、社員に対して次のような“メッセージ”を発していた。
「昨今、一部の心ないジャーナリストによる、当社の経営状況に関する憶測記事が出ておりますが、そのような事実はありません。売上の低迷など厳しい時期もありましたが、広告費の圧縮や大幅なコストカット、また皆さんのご協力のおかげで業績は改善しております」
あたかも高橋社長が被害者であり、“心ないジャーナリスト”の不当な攻撃に晒されているかのような文面だが、私的整理も巨額の簿外負債があることも証拠と証言に基づいた事実だ。「憶測」ならば、取材拒否などせず堂々と反論すればいいのである。高橋社長は、前受金の全額売上計上という実現主義の原則に反する不適切な会計処理を敢行したからこそ、数億円もの役員報酬を得て競走馬を10頭近く所有する豪遊生活が成り立っていたことを忘れてはならない。本当の被害者はジンにカネを払った無数の顧客であり、そのツケが今回ってきたのである。
(文=村上力/フリーライター)
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