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かつてはデフレ時代の勝ち組だった和民だが……
ワタミにブランド消滅危機 「総合居酒屋」の業態に限界論も
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150912-00000012-pseven-bus_all
NEWS ポストセブン 9月12日(土)7時6分配信
かつて「デフレ時代の勝ち組企業」といわれた大手居酒屋のワタミだが、業績不振に歯止めがかからない。2004年に参入した介護事業を売却し、本業回帰で立て直しを急ぐ方針だが、『和民』ブランドがこの先も生き残れる保証はない。
ワタミの苦境は数字にも表れている。和民をはじめ、『坐・和民』『わたみん家』など主力チェーンの客足が伸びず、既存店売上高は3年連続のマイナス。グループ全体の業績も2期連続の最終赤字に陥ったため、不採算店の閉店を断行。その規模は2015年3月期で100店、2016年3月期も85店を予定するなど、“失速ぶり”は目を覆うばかり。
ここまでワタミが客離れを招いている要因は何か。2008年に入社間もない社員が自殺して以降、ブラック企業のレッテルを貼られたことがイメージ低下に少なからず影響しているのは事実だろう。
しかし、「そもそもワタミのビジネスモデル自体が時代に合わなくなった」と指摘するのは、外食ジャーナリストの中村芳平氏である。
「カリスマ創業者の渡辺美樹氏(現・参議院議員)がいつまでも『つぼ八』時代(※ワタミ1号店はつぼ八のフランチャイズ店としてスタート)の成功体験に固執するあまり、居酒屋ニーズの変化についていけなくなったことが大きな敗因です。
ワタミのビジネスモデルとは、もともと駅前の好立地に100坪以上の“大箱”を構え、焼き鳥から刺し身、揚げ物まで何でも揃える“総合居酒屋”の形態。また、靴を脱がせてのんびり飲んでもらうことで、回転率が上がらなくても客単価を確保できるというスタイルが基本でした。
しかし近年、そんな殿様商売が通用しなくなっているのは明らかです。2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災を経て、節約志向や家飲み需要が増え、今ではファミレス、牛丼チェーン、回転寿司などで軽く“チョイ飲み”して帰るサラリーマンも多い。居酒屋で何時間も飲み続ける顧客を囲い込むのは容易ではありません」
しかも、総合居酒屋という業態の“賞味期限”も切れている――と中村氏は続ける。
「ワタミの不振を後目に、280円均一の焼き鳥店『鳥貴族』や、宮崎の獲れたて素材を提供する『塚田農場』、大阪伝統の味を売りにする『串カツ田中』など、特色を持たせた専門居酒屋は好調です。
“居食屋”をモットーにしてきたワタミも、自社農場の作物を活かした新メニュー開発を繰り返していますが、和民に行ってまで食べたいと思わせる名物料理に乏しく、価格設定を上下させるなどした挙げ句、客離れはかえって進んでしまいました」
価格政策の迷走ぶりは目に余る。昨年4月に商品価値を向上させるとして和民の1皿当たりの単価を15%引き上げていたが、今年の4月には一転、メニュー数を減らして平均単価を10%下げる値下げを実施。そして、再び9月より商品数を増やしている。
「もはや、小手先のメニュー見直しや価格改訂だけでは浮上できない」(外食アナリスト)との声も出る中、業界内では“和民ブランド”消滅の可能性まで囁かれている。すでに『炭旬』や『銀政』などワタミ名が入らない業態を立ち上げている。
「確かに客離れやブラック批判で和民ブランドは毀損しているので、社名はそのまま残したとしても、外食チェーンは新たなブランドで心機一転勝負するのは手だと思います。ただ、和民に思い入れのある渡辺さんがどこまで了承するかが問題です」(中村氏)
現在、渡辺氏はワタミの全役職を外れ、表向きは経営への関与を否定しているが、現社長はアルバイト上がりで渡辺氏の「懐刀」だった清水邦晃氏。同氏は事あるごとに渡辺オーナーの経営判断を仰いでいるといわれる。
その清水氏は、日経MJ(7月31日)の取材でブランド名を変える可能性について問われ、こんな発言をしている。
〈市場環境の変化に応じて専門業態を増やしていく結果、『和民』や『わたみん家』などの比率は相対的に下がるだろう。ただ、総合居酒屋として創業した以上、『和民』なども一定数は残す〉
ワタミ復活のカギを握るのは、やはり創業オーナーの「鶴の一声」ということか。場合によっては、カリスマ自らが再び経営に大ナタを振るう日が来るかもしれない。
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