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楽天本社(「楽天オフィシャルサイト」より)
楽天、英語公用語化の「内実」 驚愕の効果創出!ついていけず退社した人も
http://biz-journal.jp/2015/09/post_11504.html
2015.09.11 文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント Business Journal
「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画や著作も多数ある経済ジャーナリスト・経営コンサルタントの高井尚之氏が、経営側だけでなく、商品の製作現場レベルの視点を織り交ぜて人気商品の裏側を解説する。
本田技研工業(ホンダ)が6月29日、「2020年を目標に社内の公用語を英語にする」と発表した。ホンダの今後への関心もさることながら、このニュースを知ったビジネスパーソンのなかには、楽天やファーストリテイリングの先行事例を思い出した人もいたのではないだろうか。英語公用語化を導入した各社は現在、どのような状況になっているのか。
そこで今回は“話題商品”の視点で「楽天の英語公用語化」の現在を紹介してみたい。
■スタート時に比べて、TOEICの平均点が276点上がった
「802.6点」――。同社公式サイトの採用情報にある「Englishnization(英語化)」に記された従業員平均のTOEICスコアである。スタート直後を除いて、ほぼ一貫して右肩上がりで、上に示したのは2015年4月時点の数字だ。スタート時の10年10月は526.2点だったので、4年半で平均点が276点上がったことになる。TOEICは英語力向上の判断ツールのひとつだ。
そもそも楽天は、なぜ英語を社内公用語にしたのか。筆者は次のように分析する。
(1)経営戦略として「世界一のインターネット・サービス企業を目指す」を掲げている
(2)「グローバル化」を推進するため
(3)具体的には、楽天グループ全体での情報の共有化、日本人社員に多い英語アレルギーの克服、世界中から優秀な人材を集める
この詳細や背景を簡単に説明しておきたい。
(1)については、そもそもインターネットは世界中に構築された情報インフラなので、言語も日本語以外のものが圧倒的に多い。すなわち、楽天が戦う競合も世界中のIT企業であり、英語は不可欠という意味である。
また、同社には「楽天経済圏」と呼ぶ仕組みがある。これは楽天市場や楽天銀行など同グループが提供するいずれかのサービスに入会した会員は、グループ内の共通IDを持ち、さまざまなサービスを受けられるもので、現在は同経済圏をグローバルに広げている。
ニュースで報道された、過去に楽天が行った海外企業のM&A(合併・買収)――たとえば無料電話メッセージアプリ「Viber」(バイバー)の買収(14年)、インターネット通販関連サービス「Ebates」(イーベイツ)の買収(同年)――も、この楽天経済圏の拡大の一環である。
(2)は、海外企業の買収で新たにグループ社員となった外国人とも円滑にコミュニケーションを取ることを目的としている。そのために世界共通語として用いられる英語を使いこなす。前述した公式サイトのページでは「ONE LANGUAGE - ONE TEAM」という言葉も掲げている。
(3)は、社員全員が、翻訳された情報ではなく「一次情報」としての英語の情報に接していくことを狙いとしている。同社が求める英語力とは「国籍の違う社員同士でもビジネスに関わる情報共有が円滑にできること」で、ネイティブスピーカーのような流暢な会話を求めるものではないという。導入した結果、海外での知名度も上がり、優秀な人材を獲得できるようになったそうだ。
英語公用語化は上記の目的を果たすためで、到達度合いの指標としてTOEICを採用した。かつては役職別に到達すべき点数を定めていた(部長クラスで750点、課長クラスで700点、係長クラスで650点、アシスタントマネジャーで600点)が、14年7月より「全社員800点以上」が目標点となっている。
■英語が苦手な役員が実験台になった
楽天は今から5年前、10年に三木谷浩史社長兼会長が「社内英語公用語化」を宣言した。そして経営会議や朝会、決算会議などで使う言語が英語に切り替わっていった。正式スタートしたのは12年7月からだ。
その際に、今後の到達目標も定めた。「14年までに全社員が英語で読み書きができる、16年までに全社員が英語で意見を言えるようにし、18年までに全社員が完全にコミュニケーションができる」というものだった。
導入当初は、それまでの日本語だけの会議に比べて時間を要したり、日々の業務の効率性が落ちたりしたという報道もあったが、現在の進捗状況は順調のようだ。
全社一丸の取り組みなので、人事部門が中心となってプロジェクト活動を続けてきた(現在も継続中)。興味深いのは、活動の推進役を担ったある役員は英語が苦手だったことだ。学生時代から他の科目に比べて英語が不得意だった同役員は、大学受験も英語が災いして失敗。浪人して有名大学に入学したが、卒業して社会人になってからも英語を遠ざけて過ごしてきた。だが、楽天がどんどんグローバル化に向けて舵を切り、ビジネス現場で英語が必要不可欠になるに従い、そこに参加できないもどかしさがあったという。
それが2年後に社内英語公用語化を打ち出すにあたり、三木谷氏から英語化推進プロジェクトチームのリーダーを命じられた。「一番英語で苦労しているからこそ、リーダーを務めてほしい」という理由だった。
そこで覚悟を決めた同役員は、プロジェクトチームのメンバーに「私を実験台にして英語力の向上を図ってほしい」と伝え、業務の合間だけでなく、3カ月ほど業務を外してもらって英会話の集中レッスンを受けたり、オンライン教材を買って勉強したり、文字通り「英語漬けの日々」を送った。すると、大学受験まで苦労したリーディングもリスニングも「意外に習得できる」と実感して英語力も向上。最初に受けたTOEICは350点程度だったが、2年で800点を突破したという。
この役員自身の取り組みが、英語アレルギーを持つ社員にとってモチベーションアップになったようだ。
■キーワードは「やめないこと」
楽天の名物ともいえる存在に、創業以来続ける「朝会」がある。現在は毎週火曜日・朝8時に全社員が集まり、各海外拠点をビデオ会議システムでつなぐ。毎月第3週目は「Englishnization(英語公用語化)の進捗状況」を伝えている。各事業部が英語力アップに向けて、どう努力しているかを発表して情報を共有するという。
楽天の英語公用語化が順調に進んだ理由はいくつかあるが、振り上げた旗を降ろさずにPDCAサイクル(Plan/計画→Do/実行→Check/評価→Action/改善)を回し続けたことが大きいだろう。そして、トップダウンで物事が動き事業内容や活動領域がどんどん変わるIT企業の特性や、変化を続ける企業風土もある。
三木谷氏は社内で「なぜ我々が負けないかというと、やめないからだ」と話すという。失敗した事業もあるが、しぶとく続けようとする。「絶対に失敗しない唯一の方法は、成功するまであきらめないこと」という格言と同じ姿勢だ。
もちろん、すべての社員が英語公用語化にくらいついていったわけではない。会社の方針とは合わずに退社した社員もいれば、英語力が伸び悩む社員もごく少数だがいる。ただし、英語力が向上しないと処遇の面では厳しくなってしまう。
現在、同社の人事評価は仕事のプロセスにおいて発揮した能力=コンピテンシーと、残した成果=パフォーマンスに分けて評価している。評価の半分を占める「コンピテンシー評価」の11項目の中には、「常に改善、常に前進」や「チャレンジ 革新 Get Things Done」という項目がある。常に改善、常に前進の項目では、「人間には2つのタイプしかいない」として、こう記されている。
【GET THINGS DONE】様々な手段をこらして何が何でも目標を達成する人間
【BEST EFFORT BASIS】現状に満足し、ここまでやったからと自分自身に言い訳する人間。一人一人が物事を達成する強い意思をもつことが重要。
楽天グループとしてこう宣言している以上、同社に勤めて評価されたいのなら、英語力を向上させるしかないのだ。いろいろな外部の声を受けながらも英語公用語化を進め、人事評価にも連動させた同社の取り組みは、今後の企業モデルのひとつになるかもしれない。
(文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)
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