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9月10日、日本株は急騰・急落を繰り返している。まさにジェットコースターのような相場だが、実はこれという特段の材料はない。都内で8月撮影(2015年 ロイター/Yuya Shino)
日本株の材料なき乱高下、ジェットコースター相場の裏側
http://jp.reuters.com/article/2015/09/10/stx-t-idJPKCN0RA0Y620150910
2015年 09月 10日 18:18 JST
[東京 10日 ロイター] - 日本株は急騰・急落を繰り返している。まさにジェットコースターのような相場だが、実はこれという特段の材料はない。相場乱高下の大きな背景は、米利上げに備えたグローバル投資家の資金移動だ。
これによりボラティリティが上昇し、長期投資家が様子見に入ったことで商いが減少。高頻度取引(HFT)やレバレッジ型ファンドなどトレンド・フォロワーの動きが増幅されるという構図になっている。
<たかが1%でない利上げの影響>
米連邦準備理事会(FRB)の利上げは、時期について市場の見方は分かれているが、ペースは緩やかというのが市場のコンセンサスだ。米経済がそれほど強くなく、インフレも進んでいない状態で、かつてのように政策金利を4%にまで上昇させるとの見方は少ない。利上げ開始後、1年で1%程度の引き上げとの予想が多い。
1%の利上げ。たった1%と見えるかもしれないが、多くの投資家にとって大きな問題になりそうだ。
これまでの実質的なゼロ金利政策によって、ほぼゼロ%だったトレーディングコストやヘッジコストは上昇。「無から有」への変化は大きい。長期金利が2%から3%に上昇すれば、それは1%の上昇ではなく、変化率は50%となる。
クレディ・スイス証券CIOジャパンの松本聡一郎氏は「流動性がジャブジャブの中で、投資家はトレーディングやヘッジのコストをほとんど意識する必要がなかった。しかし、米利上げが迫り日本株を含めたポジションの見直しを迫られている」と指摘する。
10日の東京株式市場で、トヨタ自動車(7203.T)は4.2%安、ファーストリテイリング(9983.T)は5.6%安と、下落率は日経平均.N225の2.51%を大きく上回った。
両社とも悪材料が出たわけではない。最近、特段の材料が見当たらないなかで、個別銘柄の株価急変が目立つのは「グローバル投資家がポートフォリオ・リバランスを進めている証拠」(外資系証券)とみられている。
<乱高下で長期投資家は敬遠>
こうした「資金大移動」は、相場の変動率を上昇させる。乱高下を嫌う長期投資家は様子見に入らざるを得ない。
ボラティリティの上昇は、ボラティリティ(リスク)を分母にし、リターンを分子にとるシャープ・レシオを低下させる。運用結果を四半期ごとに報告しなければならないようなファンドマネージャーにとって、成績の悪化を意味する。
また「四半期報告がいらないようなよほど長期の投資家でも、この乱高下のなかでは、安いと思ってもなかなか買いに動けないだろう」と、アストマックス投信投資顧問シニアファンドマネージャーの山田拓也氏は話す。
ボラティリティを示す代表的な指数は「恐怖指数」とも呼ばれるシカゴ・オプション取引所(CBOE)ボラティリティー・インデックス(VIX指数).VIXだ。VIX指数は米政策金利との連動性が高いことで知られ、1994年、99年、2004年の米利上げの際は、1─2カ月後にピークを付けている。
長期投資家の多くが取引を控え、売買量が減少。それがさらにボラティリティを高めるという結果になっている。10日午前の市場で、日経平均が一時、800円安水準まで下落しながら、東証1部売買代金は1兆1884億円しかできなかった。
<薄商いでトレンド・フォロワーの影響増大>
薄商いとなったことで、HFTや日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信(ETF) など、いわゆるトレンド・フォロワーの影響が大きく出やすくなっていることも、相場の変動を増幅している。
「彼らは相場の動きについていくだけ。方向性を決めるわけではない。ただ、売買の規模が大きいので、薄商いの中では相場を大きく動かしてしまう」(エモリキャピタルマネジメント代表の江守哲氏)という。
乱高下相場の材料には中国問題もあるが、株価の動きを除けば、政策や経済指標などでサプライズと言えるほどのインパクトを持つ材料が出たわけではない。ただ、流動性が高い日本株は、中国株のヘッジ手段として売買されているという面もあるという。他のアジア株などと比べて日本株の変動率だけが突出して大きい場合があるのは、こうしたことも影響しているとの見方が多い。
新興国はともかく、先進国のファンダメンタルは今のところしっかりしており、世界的な株価乱高下がおさまれば、日本株は再び再評価されるとの見方もある。
しかし、日本経済自体が怪しくなってきた。強さの象徴だった設備投資は減速。7月機械受注は予想外のマイナスだった。輸出や生産、消費も鈍い。グローバルな需給要因だけでなく、こうした不透明感の強まりも、日本株乱高下の一因となっているようだ。
(伊賀大記 編集:田巻一彦)
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