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「冷え切った」会社が急増?職場で孤立し精神病む若者、彼らを理解できない上司…
http://biz-journal.jp/2015/09/post_11494.html
2015.09.10 文=鈴木領一/ビジネス・コーチ、ビジネスプロデューサー Business Journal
「20代の頃、僕は餓死するしかないと思っていました」
そう語るのは、現在、派遣会社に勤める佐々木章一氏だ。筆者は今回、「若者の離職の実情」を取材していた。その際、佐々木氏の語る言葉から現代の日本社会の課題を深掘りするきっかけをいただいた。佐々木氏の言葉を続けよう。
「20代の頃、東京・六本木で飲食店を始めました。たまたま居抜き物件が見つかり、私も飲食店に興味ありましたし、先輩から誘われたこともあってスタートさせました。小規模ながら苦労して店舗を運営していましたが、ある日、オーナーが店舗を他人に譲ってしまい、一気に窮地に陥ってしまいました。借金もありました」
佐々木氏は借金を返済するために派遣社員として通信会社で働くことになる。職場環境が合い、良い上司にも恵まれ、仕事観が大きく変わったという。
「今から思えば、たったひとつの失敗だけで、『自分には能力がない、未来がない』と思い込んでいたと思います。飲食店をやっている時には、『自分は飲食店が一番向いている』と思っていましたから。しかし、思いがけない逆境をきっかけにまったく新しい職場と出合い、新しい可能性が自分の中にあることに気づきました。派遣で新しい仕事との出合いがなければ、今の自分はなかったと思います」
佐々木氏は現在、派遣会社で営業を任され充実した毎日を送っている。佐々木氏の取材を通し、筆者が今回テーマにした「若者の離職の実情」の裏側には、若者と職場とのミスマッチという問題があるのではないかと考えるようになった。
■企業と社員の関係性が崩壊
さらに取材を進めてみると、企業と社員の関係性が壊れてきている現実もみえてきた。
東京都内でメンタルクリニックを運営しているカウンセラーのM氏から、現在の若者の実情を聞いた。M氏によれば、若者が離職後に精神を病むケースは増えており、先の佐々木氏と同様に、たったひとつの失敗を引きずるケースが増えているという。「新型うつ」と呼ばれるような新しいうつの症状も現れてきている。
その理由をM氏は次のように語ってくれた。
「いわゆる終身雇用にみられるような日本独自の家族的経営が失われてきたため、職場での疎外感を感じるようになったことにも原因があると思います。今の若い人は、上司との飲み会に行かないだけでなく、社員旅行にも参加しない人がいます。仕事とプライベートを完全に分けることで、かえって職場での孤独感が強まり、上司の何気ない言葉でも傷つく人が増えているように思います。最近は若い人が心を病むだけでなく、若い人の行動が理解できないベテラン社員の相談を受けることも増えてきました」
さらにM氏は驚くべき事実を教えてくれた。
「企業と契約しているメンタルクリニックのなかには、『ご相談内容は会社には秘密にいたします』と謳いながら、社員の相談内容を会社の上層部に伝えているところがあります。それを人事考課に反映しているようです。
もちろん、私のところを含めてほとんどのメンタルクリニックは法令遵守していますから、このような悪質なところは例外中の例外です。これは強調しておきます。しかし、これは社員の人間関係が冷え切った企業が増えてきていることを物語っていると思います」
例外的な事例とはいえ、M氏が教えてくれた事実は、かつて日本にあった「企業と社員」の家族的なつながりの崩壊を意味しているように思う。
■新卒者の3割が3年以内に離職
ここで、厚生労働省が発表している新卒者の離職率をみてみよう。
<高校>
1年以内離職率・・・19.9%(平成25年度就職者)
2年以内離職率・・・31.4%(平成24年度就職者)
3年以内離職率・・・39.6%(平成23年度就職者)
<大学>
1年以内離職率・・・12.7%(平成25年度就職者)
2年以内離職率・・・23.3%(平成24年度就職者)
3年以内離職率・・・32.4%(平成23年度就職者)
(厚生労働省「新規学校卒業者の在職期間別離職状況」より)
就職後3年で、実に3割以上が離職している。日本的経営といわれた「企業と社員」の家族的なつながりは、もはや面影もない。
最近では、ユニクロが3年で離職率5割といわれ、「ユニクロの店舗の正社員の休業者のうち42.9%がうつ病などの精神疾患」(「週刊東洋経済」<東洋経済新報社/2013年3月9日号>)という報道もあった。ユニクロを展開するファーストリテイリングは、そのようなイメージを払拭するため、10月から社員の希望に応じて週休3日制を選べるようにした。
ファーストリテイリングだけでなく、多くの日本企業が「社員との関係改善」を大きな課題として抱えている。それも、かつてはなかった「ブラック企業」という名称にみられるような新しい評価が生まれたことも要因だろう。
(文=鈴木領一/ビジネス・コーチ、ビジネスプロデューサー)
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