4. 2015年9月08日 12:21:36
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ジュリアン・ロバートソン 我は8年間で10億円を2兆2000億円にした天才
「タイガーファンドの破たんについて」 ニーダーホッファーの破産、そして前回はロングタームキャピタルマネジメントの破綻。そして、今回はタイガーファンドの破綻と巨大資本やファンドマネジャーの失敗ばかりを特集子する欄、というような感があります。実際のところ失敗の手口ほど、多くを学べる機会はないのではないでしょうか。
今回は昨日、つまり2000年 3月31日、まだ全く新しい出来事の最新の分析と論評です。 このファンドは商品をやっている方なら必ず1度か2度、名前を耳にしているはずです。最近最も有名だったのは、あの異常なまでにしつこいパラジウムの買いに次ぐ買で、これでどれだけの個人投資家が売り玉を絞め上げられて、最後に降参したか知れません。 このパラジウムへの資金集中などにも、このファンドの性質の一端が現れています。 そもそもこのファンドは20年ほど前に10億円足らずの資金で発足しています。そして、8年後にはなんと2兆2000億円約2,200倍という、ただただあきれるばかりのパフォーマンスを達成してきました。もちろんこの規模は、全く文句なく全米で最大規模のファンドをです。
しかし個人投資家ではなく、ファンドというすそ野の広い公共的性格を持っている組織の投機活動というものは、どれだけ大きくなっても常に、更に儲け続け、どこまでも大きくしないとならない、という義務があります。その手口、全体としてのポートフォリオは複雑きわまりなく、為替、債券、株、そのほかのデリバティヴ、凡そあらゆる金融商品、現物、投資できるものはすべて国内、海外、と手を広げています。中でも際立っているのは先物に対する買い占め、玉絞め、つまり少しでも利益率の高いものへの徹底した資金投入です。 前回書いたロングTermの破綻の時にはロシアの金融危機に際して、エマージング債の大暴落を読み切れず、それが彼らの破たんの原因になったと書きましたが、今回のタイガーファンドも、そのロシア金融危機に端を発しています。やはりその当時、エマージング債、それと猛烈な円高になりましたがその時に為替相場の為替相場で派手に逆目を食ってしまったこと、それとアジア全般に対する為替と株等の逆目、それらがその年代にはあったと思われます。 大体において巨大資本の投機活動は、海外へ資金を振り向ける時、実に派手に負けるものだ、ということがひとつの参考として学ぶことができます。例のイギリスのベアリングス社も、シンガポールガホールあたりで日経平均を強気していたことから大負けに負けて、会社を潰しました。ニーダーホッファーも、アジアの株と為替を、暴落のさなかに買い続けました。自分にとって最も身近で熟知している、殆ど自分の住んでいる環境そのものといえるところにある銘柄から投資すること、これこそが、案外最も大事な投機の鉄則かも知れません。 それはさておき、ロシアで最初の破綻の除草が始まり、2兆円以上の資金がわずか1年半で、つまり現在で4分の1に減らしてしまったのが、今回の破たんの全てです。 この1年半ということは、最も明瞭に分かることは、証券界のIT革命に完全に乗り遅れた、あるいは次々と逆目を張っていったということに他なりません。このファンドのリーダージュリアン・ロバートソン氏は「現在のハイテク・インターネット・通信関連株の狂乱は、いずれ崩壊する。私自身が理解できない市場で、投資家をリスクにさらすことは意味がない」として、現在続行中の全てのファンドの清算を発表しました。この発言にも見られるように、IT関連株に対する強い違和感、この株高の流れに対する、どうしてもそりが合わない、どうやって手口を合わせていったら良いのか分からない、という困惑がうかがえます。 思えば産業界で、鉄鋼株が全てになるとか、家電メーカーが全ての時代、運輸造船などが全て、資源株が全て、などなど、様々に時代的な主役が入れ替わる時があります。その主役が入れ替わる時には、理屈も何もないけた違いの買われ過ぎ、ということは必ずあります。そして5年−10年経つと、それらは自然に淘汰されて、残るべきものだけが残ります。それら全てを「相場の世界は相場」として先取りして買い続けるのが株の世界です。 ファンドマネジャーの中心人物が相場というもの今さらそのように不信感を持ってもも仕方がない、という感じも否めません。実際にはもっと凄まじい相場を散々張ってきたのに今更何を言うか、ということです。 しかしとにかく、全ての預託者に対し、75%で資金を還元する、というのは4分の1にまで減ってしまった全資金からすると、それなりに良心的な措置とは言えるのではないでしょうか。 海外の銘柄、投機性の過ぎる銘柄、発展途上国に絡む銘柄、事情があまりにも急変するかもしれない銘柄その辺にあまりにも資金を注ぎ込むべきではない、このような教訓が残ると言えます。また自国内の株式でも時代的に根底的な激変があった時はそれを見抜かなければならない、これもとても重要なことだということを教えてくれます。 それにしてもファンドいうのは、2兆円も越えてしまうと何と難しいものだろう、という気がします。利は薄くても確実に、という方向で行ってもロングTermのような危険は待っています。少ない資金で利幅の大きい投機性の高いものを狙うことで高いパフォーマンスを得る、つまり攻撃は最大の防御、という手法も大きな利幅を狙える代わりに、大きな損失の泥沼にはまることもあると言えます。巨大資本になればなるほど、そのパフォーマンスを常に高く保つのは、夜も寝られないほど大変な事業となる、ということが想像がつきます。 私はそのような巨大資本の運用に関しては、丁度銀行の為替ディーラーがそれぞれ個人の裁量をある程度の額で任されていて、そのようなスタッフが複数集合していて全体として高いパフォーマンスを上げていく方法が一つの参考としてあるような気がします。例えば、海外債券を投資するという部門には20人のスタッフを抱えていて、そのスタッフの1人ひとりのパフォーマンスを全体として注意して見ていれば、そして一人ひとりが割当てられた枠を守っていれば、一気に破たんすることはあり得ないように思います。また、1番末端のディーラーを10人単位ぐらいでまとめるチーフマネジャー、そして大きな部門として統括部責任者そして更にファンド全体のリーダー、このような形の綿密な階層を整えていれば一遍に大きな失敗をするということはないのではないでしょうか。勿論、一人ひとりのパフォーマンスの高さを常に監視して一定に保ち、スランプになってきたディーラーは休ませる、という管理能力も必要とされますが。このように1番末端では個人個人の裁量があり、それを前提としてマネジメントするという戦略なら常に無数のディーラーの目を市場に対して持つ、ということが可能になります。これなら全体の戦略として、海外のある1つの為替なり証券市場なりに、大きな資金を注ぎ込む、という、一気に屋台骨を揺るがすような大失敗は避けられるのではないのではないでしょうか。 それにしても、今のNY市場の先行き、及びこの株が大崩れした時、株ー土地へ向けて資産を思い切り注ぎ込んだアメリカの個人投資家は一体どうなるのだろう、という問題もこのファンドの破綻に関連して考えさせられることです。 http://www.mmjp.or.jp/sunrise-co/kiji.html ◆素人熱狂相場にプロ負けた、タイガーファンドが清算 ◆ アメリカの大手ヘッジファンド、タイガー・マネジメントが2000 年 3 月30日、ファンドを清算することを決め、事実上破たんした。
タイガーはジョージ・ソロス氏のクオンタム・ファンドなどと並ぶ最大手のヘッジファンドで、九七年のアジア通貨危機の際には各国の通貨を次々と売り浴びせ、国際的な投機マネーとして勇名をはせた。それからわずか三年足らずで市場の淘汰(とうた)の波にさらわれた要因のひとつとして、今のアメリカの株式相場が、筋金入りのプロの投資家にも予想できなくなっていることが挙げられる。(ニューヨーク 三浦 潤一) タイガーの基本的な投資手法は、ソロス氏と同様に、ち密な経済理論から導き出された理論上の数値と、実際の株や通貨などを比べ、割安なら買い、割高だと売るという手法だ。これに様々なデリバティブ(金融派生商品)を組み合わせ、利益を最大化させる。アジア通貨危機の際には、各国の通貨が実際の経済力より割高と判断し、売りに回った。 しかし、思わぬ相場変動で大けがをすることもあった。日本経済が不況のどん底にあったにもかかわらず、円相場が一日で九円以上も急騰した九八年十月七日には、円の売りポジションを大量に抱えていたため、一日だけで二十億ドルを失った。九八年のロシア危機の際にも六億ドルを失った。 その後の相場の落ち着きで、運用状況は改善されていたが、最近のハイテク株の急騰に足をすくわれた。 ◆ 高騰ハイテク株、見送り致命傷に ◆
タイガーを主宰するジュリアン・ロバートソン氏(67)は、利益も上げていないハイテク株が高騰するのは「崩壊確実な砂で作ったピラミッドに過ぎない」と断じ、一切投資しなかった。逆に航空大手のUSエアなど、理論値より株価が安いと判断した「オールドエコノミー銘柄」を買い集め、結果的にこれが命取りとなった。
今のハイテク株バブルはパソコン経由のゲーム感覚の個人投資家が高騰を演出する素人主導の相場となっており、利益などは初めから度外視され、理論武装したプロの投資家でも予測がつかなくなっている。そこに落とし穴があった。 ロバートソン氏をよく知るあるヘッジファンドの投資責任者は「彼は、彼が信じた理論に負けた」と話している。 ヘッジファンドの中にも論理無用のハイテク株バブルで利益を上げているものもある。ソロス氏のクオンタム・ファンドは昨年、マイクロソフトやワイヤレス通信機器製造のクオルコムなどハイテク銘柄に投資を始め、預かり資産の35%もの運用成績を上げた。ただ、今年初めには三日間で六億ドルを失うなど、乱高下する相場に手を焼いている。 ロバートソン氏は、証券大手のキダー・ピーボディーに二十年間勤めて、投資技術を学び、八〇年にタイガーを設立した。その後は順調に運用実績を膨らませ、九六年には預かり資産の50%、九七年には72%もの運用益を上げた。 九八年にはクオンタム・ファンドに次ぐ二百二十億ドルもの預かり資産を集め、顧問にサッチャー元英首相や元米大統領選候補のボブ・ドール氏などを迎えるなど絶頂を誇った。それからわずか二年足らずの暗転となった。 http://www.daytradenet.com/HowtoDT/C02.htm 魔術師は市場でよみがえる―タイガー・マネジメントの興亡 ダニエル・A. ストラックマン (著), Daniel A. Strachman (原著) ロバートソンの真髄は、「バリュー投資法」――
潜在成長力が高くてフリーキャッシュフローを生み出す実力がありながら無視され過小評価されている株や商品を購入し、高くなり過大評価された時点で売って利益を確保する方法である。 その為には、あらゆる手法を駆使して徹底的に銘柄を分析し、長期に亘って驚異的な運用実績を上げ続けた。 しかし、IT革命とそのバブル・テクノロジー株の狂気により完全に株式市場が変質し、バリュー投資法の継続が裏目に出て運用が悪化し、出資者の投資資金の回収が急で、同時に大企業化した経営が時代にキャッチアップできずに、結局タイガーファンドを閉鎖――この顛末が実に示唆に富んでいて面白い。 _______
ジュリアンロバートソン率いるタイガーと言えば有名ではあったが、私にはジュリアンロバートソンという人物が今まで謎でした。知れば知るほど面白い人間だ。
やっていることの規模も勿論だが一つ一つのポジションを組むまでの執拗な調査は凄みがある。 何ヶ月も調査した内容を昼食の間の5分で説明することが求められる組織。 大学卒業したばかりの若者やスポーツに傾倒していた若者を採用していた勃興期から自分の保身ばかりを考える人が残るようになるまでの組織の変貌は読んでいてなるほどと感じてしまう。 なぜ、タイガー出身のファンド運営者がこれほどまでに多く現在成功しているのかがなんとなく肌で感じられる一冊。 「投資家がいなければ何も出来なかった。彼らの面倒をみるのは私の義務だ。」 という言葉にジュリアンの気概が感じられる。 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492731954/qid%3D1143256659 ジュリアン・ロバートソンと言えば、ジョージ・ソロスなどと並び、その功績を称されるヘッジファンド・マネジャーの伝説的大物ですが、その人物像、運用スタイル等の詳細は、意外な程知られていません。 その彼と、彼のファンド運営会社タイガー・マネジメントについて書かれた本が、 東洋経済新報社「魔術師は市場でよみがえる タイガー・マネジメントの興亡」です。 ネット・ITバブルの最中、「熱狂的な」或いは「バカげた」株価を多くの新興企業が付けていく中、本来の得意分野であるバリュー株投資に拘った結果、そして設立後しばらくして徐々に広げていったグローバルマクロ投資分野での、それまでそう多くは無かった失敗、が重なって、結果としては、出資者の期待するリターン水準を超える事が出来なくなりファンドを閉める事になった、完全な勝ち逃げに至る事の出来なかった英雄との印象も残る彼ですが、 その主要ファンドの設立来の実績、元部下としてこの業界に輩出した人材の層の厚さ、を見れば、ヘッジファンドに限らず、全ての投資・運用の世界の中でも、最も優れた功績を上げた内の一人である事は、やはり疑いの無い事実でしょう。 また、彼が表舞台から降りる事を決めた後の、IT・ネットバブルの崩壊とその後の停滞を見れば、彼のバリュー投資に対する信念自体は決して間違っていなかった事も、また明らかだろうと思います。 http://bose.blog.ocn.ne.jp/bose/2006/03/post_7b73.html
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