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GPIF年金運用「一長一短だが国民的議論が欠けている」懸念も(週刊ポスト)
http://www.asyura2.com/15/hasan100/msg/413.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 9 月 08 日 09:13:05: igsppGRN/E9PQ
 

GPIF年金運用「一長一短だが国民的議論が欠けている」懸念も
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150908-00000010-pseven-bus_all
週刊ポスト2015年9月18日号


 日経平均が乱高下しているが、株式運用されている私たちの年金は大丈夫なのだろうか。経済学者で投資家の小幡績氏が、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が年金資金を株式市場で運用することの是非について解説する。

 * * *
 GPIFとは、私たちの年金を運用している政府が監督する機関で、130兆円もの資金を運用する世界最大の運用機関です。公的年金(国民年金と厚生年金)の運用ということで、かつては非常に保守的な運用、つまり「あまり儲けないが、確実に資金を守る」という考え方で金融資産に投資してきました。

 その結果、日本国債に資金の70%弱を投資し、残りの30%を日本株式、外国の国債、外国株式に向ける運用してきました。

 このGPIFが近年急に注目を集めたのは、安倍政権になって大きく運用方針を変えたからです。資金の50%を株式で運用する方針に大転換されました。残りの35%が日本国債、15%が外国の国債となりました。

 そもそも、70%弱を日本国債で運用していたのは、全額日本国債で運用した場合と同じ程度のリスクの範囲で運用しよう、という考え方をした結果でした。

 全額日本国債で運用するのは一つの考え方です。130兆円もの資金がある以上、現金で置いておくのはもったいないから、何か利子のつくものにしておこう、としたときに「一番無難なのは日本国債だ。リスクがもっとも低い国債で、円建てだから為替リスクもない。国民のコンセンサスを得やすい」という考え方です。

 しかし、全額日本国債というのは「もったいない」運用なのです。様々な資産で運用することによりリスク分散の効果が得られ、リスクを高めずに期待される平均運用利回りを高めることができます。

 たとえば株が上がるときは、国債はそれほど値上がりしないことが多いです。また、日本の株式がいまいちでも海外の株式が上昇することもあります。違う資産であれば、違う値動きをしますから、全部同時に暴落はしません。

 それでいて、平均的な利回りは日本国債よりも高い。だから「日本国債以外の資産も多少混ぜて運用しよう。全体のリスクを高めない中で、30%程度は日本国債以外の資産で運用して良さそうだ」といった試算をし、日本国債70%、その他の日本株、外国株、外国国債がそれぞれ約10%と決まっていたのです。

 株式に多少投資することで、リスクは上げずに我々の年金の資金を増やすことができる。私たちにとってもいいことなのです。

◆なぜか議論が盛り上がらない

 しかし、資金の半分を株式で運用する、外国の債券を合わせれば、65%もの配分を日本国債よりもリスクの高い資産で運用するというのは、まったく違う考え方です。当然、大きく損をする可能性が出てきます。

 ただ、利回りがより一層高くなる可能性もあります。つまり一長一短なのです。株式での運用比率を大幅に高めるのは、一つの考え方としては「あり」です。

 ただし、問題は「リスクを高めて、運用利回りを高めたい」という人は賛成ですが、「利回りを高めなくて良いから、安全最優先で、損する可能性が小さい運用にしてほしい」という人は反対します。人によって意見が大きく分かれる運用なのです。

 不思議なことに、GPIFが資金の多くを株式で運用すると発表しても、そのときは大きな話題になって不安の声も報道されましたが、その後は、それほど議論が高まらないままです。もっと大論争になってもおかしくない問題なのに、まったく話題にならなくなりました。

 年金運用で大きな損失を出せば、消費税を引き上げて穴埋めをするか、年金をカットせざるを得ません。消費税引き上げは大騒ぎになるのに、こちらが議論にならないのは、なぜか。

「実際に損失が出て、初めて国民はショックを受けるから」「現在株価が上がっているので、なんとなく儲かっているような気がするから」という二つの理由で議論にならないのだと思います。

 GPIFが発表しているデータでも、6分の1の確率で10%以上の損失、すなわち13兆円以上の損失が出る可能性があると示されています。かなり大きなリスクです。ただ、もちろん10兆円以上利益が出る可能性も同様にあります。

 この事実を踏まえた上で、国民全体で、「リスクを取ってもいいから、運用益を上げよう」というコンセンサスができているなら、この変更はとても良いことです。

 しかし、国民の多くが、大きな損失が出てから、「そんなことは知らなかった。リスクを取って利益を目指していたつもりはなかった」と思うのであれば、絶対にこのような運用はするべきではないのです。

 下手をすると、暴落が起きたときに「もう株式投資は絶対に嫌だ。公的年金では株式運用しない。国債に戻るか、運用自体を止めてしまえ」という議論になります。これは最悪です。なぜなら、暴落したときこそがチャンスで、そのときこそ、株式投資をするべきだからです。

 実際、リーマンショックでGPIFは約10兆円損を出しましたが、その後の回復で取り戻しました。そして、ここ数年の株価上昇で、それを上回る利益を出しています。

 ですから、多くを株式などの資産でリスクを取って運用するのであれば、国民全体が、その覚悟を持った上でやる必要があるのです。

●小幡績(おばた・せき):1967年生まれ。1992年東京大学経済学部卒、大蔵省(現・財務省)入省、1999年退職。2003年より慶應義塾大学大学院経営管理研究科准教授。『円高・デフレが日本を救う』など著書多数。


 

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