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「福岡市雇用労働相談センター HP」より
厚労省関連セミナーで「解雇指南」疑惑!理不尽な理由による解雇横行の危険
http://biz-journal.jp/2015/09/post_11456.html
2015.09.08 文=北健一/ジャーナリスト Business Journal
労働者派遣の規制緩和(派遣法改正)、労働基準法など労働関連法の改正案(残業代ゼロ法案)と並ぶ、働き手の命運を左右する仕組みが、虎視眈々と準備されている。「解雇の金銭解決制度」である。
■雇用特区で「解雇指南」
「勤務考課では(評価の低い)1と2をつけろ」
「減給よりも出勤停止が役立つ」
こんなふうに「社員を解雇する手口」を指南するのは、怪しげなコンサルタントではない。厚生労働省所管の「福岡雇用労働相談センター」が2014年末に開いたセミナーで、弁護士が行った講演である。
同センターは、「福岡市グローバル創業・雇用創出特区」(雇用特区)に設置された。福岡市は特区の提案書で、「創業間もない経営不安定期においては、優秀な人材が必要である反面、解雇しにくい正社員の登用には躊躇感がある」とし、「再就職支援金を支払えば解雇できる『事前型の金銭解決制度』等を、創業後の一定期間(5年間等)について導入することで、正社員の雇用を促進する」とし、政府の国家戦略特区諮問会議はこの提案を採用した。
もっとも、全国一律の解雇規制を特区だけ緩めるという「解雇特区」には世論が反発し、厚生労働省も強く抵抗。結局、頓挫した。
にもかかわらず、「解雇指南」と思しきセミナーが特区で開かれるとは、どういうことなのか。管轄する厚労省に聞くと、「センターの運営は、競争入札で選ばれた民間会社に委託しています。そのセミナーに当省職員は立ち会っていないので、詳細はわかりません」(労働基準局労働条件政策課)と当惑気味。
センター運営を落札したのは、ベンチャー育成などを手がけるドリームインキュベータ(山川隆義社長)だ。同社会長は日本のコンサルの草分け的存在である堀紘一氏で、社外取締役にはオリックス元会長・宮内義彦氏の名前もある。セミナーについて同社に問い合わせると、「厚労省から事業を受託しているので、取材を受ける権限もない」との回答であった。
一方、セミナーで講演を行った弁護士のA氏は取材に対し、「『解雇の指南』をしたつもりはない。(解雇の)金銭解決を導入すべきとは思っているが、不当な解雇に対する制裁強化も提案しており、単純に『解雇規制の緩和』を主張しているわけではない」(要旨)とメールで回答した。
7月2日、田村智子参議院議員(共産党)は、この「解雇指南」セミナーを国会で追及。答弁に立った橋本岳政務官が「誤解を招くものだったのだろう」という認識を示し、石破茂地方創生担当相も「指導・監督」を約束せざるを得なかった。
■ブルームバーグ裁判
「誤解」を招きかねない講演をしたA氏は、労働弁護士から経営側に転じた異色の経歴で、手がけた労働裁判は数多いが、最近で有名なのは、外資系通信社ブルームバーグが記者を解雇した事件である。
ブルームバーグは中途入社で働くE記者(仮名)に2009年12月、「PIP(業績改善プログラム)を受けろ」と命令。スクープ記事執筆のノルマなど高いハードルを課し、わずかな「未達」を理由にE氏を解雇。E氏は新聞通信合同ユニオンに駆け込み、裁判を起こすが、その裁判で会社側代理人に就いたのがA氏だった。
裁判は地裁、高裁ともE氏が勝訴し、「解雇は無効」という判決が確定。ところが会社側は、高裁判決前の13年1月、復職条件としてE氏に「記者には戻さない。給料半分で倉庫業務ではどうか」と提案。E氏が拒否したところ「2度目のクビ切り」を通知し、同年7月、「雇用契約がないことの確認を求める裁判」を逆に起こした。
5月28日、東京地裁(鷹野旭裁判官)は、「E氏が(倉庫業務への復職という)提案に応じる法的義務はない」などとして会社の請求を退ける。E氏は記者会見で、「復職させないという会社の姿勢は間違っている。素直に認め、謝罪してほしい」と訴えたが、会社は控訴した。
解雇から10年近く。3度の判決ですべて勝ったE氏は、それでも仕事に戻れない苦悩の日々が続く。
■「俺的にダメ」でクビ
解雇が不当だと裁判で決まっても、働き手を職場に戻さない。そんな非常識を合法に変えようという企みが、着々と進んでいる。それが「解雇の金銭解決制度」である。
7月1日に閣議決定された「日本再興戦略改訂2015」(成長戦略の15年度版)で政府は、「予見可能性が高い紛争解決システムの構築」を盛り込み、「具体化に向けた検討を進め、制度構築を図る」とした(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/dai2_3jp.pdfの58ページ参照)。
この紛争とは、解雇をめぐる会社と労働者の争いのこと。現在の法制度では、E氏のように労働者が裁判に訴えると、解雇理由が理にかなうかどうかを裁判所が見極め、解雇が不当なら「解雇無効」の判決が出される。勝利判決を得て、職場に戻った労働者も少なくない。経営者にとってそれは嫌だから、解雇された人が職場に戻る道を閉ざそうというのが、解雇の金銭解決制度(予見可能性の高い紛争解決システム)なのである。
E氏の代理人を務める今泉義竜弁護士は、「ブルームバーグ裁判は、会社側代理人が推進役になっている、解雇の金銭解決の危険性を示す事例でもある」と話す。
また、解雇問題を扱った『中高年正社員が危ない』(小学館101新書)などの著書もある東京管理職ユニオンの鈴木剛委員長は、「『解雇の金銭解決』が導入されれば、『カネで済むから』と不当な解雇が誘発される。解雇が増えれば個人消費も冷え込み、経済にもマイナスだ」と警鐘を鳴らす。
そんな悪い会社は少ないのではないかと考える向きもあるだろうが、実際の解雇は不条理の巣窟だ。独立行政法人・労働政策研究・研修機構の濱口桂一郎統括研究員の調査によると、労働局が相談にのったトラブルのうち、「労働者個人の行為や属性にもとづく雇用終了」を見ると、「態度を理由とする」ものが圧倒的に多い(「個別労働関係紛争処理事案の内容分析」より)。
労働者の態度を理由にした解雇とは、「仕事に誠意が見られない」「調和を乱した」「カラーに合わない」といったもの。店長から「俺的にダメだ」と言われ、クビにされたケースまである。
A氏は13年11月、産業競争力会議に呼ばれ、「(日本では)実質的に、勤務成績や経営状態を理由とする解雇が禁止されているに等しい」と主張。解雇しやすくするための法改正まで提案した。だが、勤務成績や経営状態どころか、「態度が悪い」といった曖昧な理由での解雇が横行しているのは前述のとおりである。
■「クビの値段」もダンピング
しかも現在、解雇紛争の多くは金銭で解決している。現状で解雇の金銭解決の舞台となっているのは、労働局のあっせん、裁判所で行うが迅速に答えが出る労働審判、裁判での和解など。ところが、労働局あっせんは強制力がなく、労働審判も解雇無効の判断をほとんど出さないため、解決金の額が低くなりがちだ。
厚労省の委託調査によれば、あっせんはわずか16万円、労働審判でも110万円(中央値=金額の多い順に並べた真ん中の額)。何の落ち度もない働き手が職を失う代償としては、あまりに安い。本格的に裁判で争えば、和解金額も230万円に上がるが(同)、再就職に時間がかかれば生活に窮する。
前出・鈴木氏は、「組合が関わったケースからすれば、驚くほど低い。解雇の金銭解決が入れば、解決金がダンピングされるだろう」と指摘する。
解雇の金銭解決制度は、来年の国会に出されようとしている。もしこれが通れば、日本中が「解雇特区」になり、ブルームバーグ解雇のような横暴が広がりかねない。
(文=北健一/ジャーナリスト)
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