1. 2015年9月08日 08:42:24
: jXbiWWJBCA
株価暴落の裏にヘッジファンドの売り2015年9月8日(火)田村賢司 世界で下落を続ける株価。日経平均は、年初来高値から約15%も下げたが、懸念は去らない。ただ、中国経済への不安や米国の利上げなどは以前から言われた懸念でもある。なぜ今、急落なのか。カブドットコム証券の荒木利夫・執行役に市場の裏の動きを聞いた。 日経平均株価は8月半ばから約3100円も下げています。よく言われるように、中国の景気懸念、米国の利下げなど、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)が要因と見ていますか。 http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/238739/090700050/ 荒木利夫(あらき・としお)氏 カブドットコム証券 執行役 営業本部副本部長。イー・ウイング証券、投信投資顧問会社を経て、2006年3月カブドットコム証券入社。 営業推進室室長等を経て、2013年4月より現職 荒木:ネット証券は、外資系の証券会社に株式を大量に貸し出している。その株式は、海外のヘッジファンドに貸株として渡っている。これが今回の下げで大量に返ってきた。 つまり、ファンドは前から大きな売り仕掛けをしており、それが手じまいされているということだ。売り仕掛けをしたのは中国リスクや米利上げ懸念が元だが、ヘッジファンドの決算が近いことも絡んでいるだろう。 ヘッジファンドは11月に決算を迎えるところが多い。その前に、リスクや懸念を材料に売り仕掛けをした可能性はある。 個人投資家は暴落への耐久力をつけた 9月初めの1週間では、日本株の下げが世界の中で突出していました。高くなりすぎていたのでしょうか。 荒木:ファンドの話を続ければ、彼らは世界をいくつかの地域に分けて損益管理している。一方、日本は市場の制度が整備されている上に、時価総額が大きいから、こういう“危機”の時にリスクヘッジに使われやすい。空売りなどが必要以上に使われ、株価は下げやすくなる傾向がある。 他の市場は、空売りも出来なかったり、規制があったりする。オプションなど、デリバティブも使いにくい。日本がリスクヘッジの役割を一手に引き受けている格好だ。 過去、非常に大きな暴落が起きると、個人投資家の一部が投資から撤退し、市場は市場は次第に活力を失って行きました。今回はどうですか。 荒木:確かにその通りだ。今回も結構、損失は出していると思う。ざっくりと規模感を言うと、アベノミクスが始まって以来の利益の3分の1は失ったかもしれない。だが、それでも利益は十分残っている。ここが、これまでの危機とは違う。 今までは、大暴落が起きると、それまでの上昇相場で得た利益をすべて失うヒトが結構いた。今回は、アベノミクスによる上昇相場が3年半にも及んで、利益の厚みが違う。それと、2012年末以前の低迷が長く、その中を生き抜いた投資家は危機への対処の仕方が身についている。 8月中旬から急落した日経平均株価の推移 [画像のクリックで拡大表示] 利益が厚くなっているとは? 具体的にはどういうことですか。 荒木:証券会社は売買益に対する税金を源泉徴収している。この額から、利益総額を推計すると、今年は1〜6月で昨年1年間の分を超えている。アベノミクスが始まって以後は、毎年利益を伸ばしている。 危機に対する対処方法とはどういうことですか? デリバティブを使うといったことですか。 荒木:日経平均先物miniや日経平均のETF(上場投信)に、株式をある価格で買う権利や売る権利を取引するオプションなどを組み合わせてリスクヘッジする。そういう手法にも慣れてきている。それが、以前よりずっと低コストで簡単に使えるようになっている。日経平均ETFでいうと、日経平均の前日比変動率の2倍、またはマイナス2倍となるようなレバレッジETFもあり、今人気になっている。 ただし、当然だが、みんながこういうものをうまく使いこなしているわけではない。最近始めた人だっているのだから、撤退したヒトだっているはず。すべてが大丈夫だとは言わない。 銀行融資の相当部分が株式市場に流れた 中国リスクをどう見ているのですか。バブル崩壊でしょうか。 荒木:そう見ている。中国の景気指標は、どこまで信用していいのかという面もあるが、李克強首相がGDP(国内総生産)に代わる指標として注目している電力消費量、鉄道貨物輸送量、銀行新規融資額にはやはり注意している。いわゆる李克強指数と呼ばれるものだ。 その中でも、銀行の新規融資は今年1〜7月に前年同期比で31.2%も伸びた。実体経済の動向から見て、この一部が株式投資に振り向けられたのだろう。新規融資の動きを見て3月頃には、「これは…」と思った。 米中の景気の動きによる日本企業の業績への影響をどう見ますか。2016年度予想を下げる動きもあります。 荒木:米国の景気自体はまだ回復を続けていると見ている。自動車販売は7月も年率1700万台と高い水準だし、住宅着工件数も高い。ただただ利上げがいつになるかだけだ。しかし、株価的にはその影響は既にかなり織り込んでいるのではないか。 日本企業の業績については、懸念の声が出てきているのは知っているが、私は基調はまだ強いと思っている。日経平均も今回の下げで、株価収益率が14倍台に落ち、逆にいい水準になった。株価収益率は、株価が1株当たり純利益の何倍になっているかを見て水準を判断するもの。14倍台は世界的に高くはない。これ以上の下げはないと思うし、中国リスクが和らげば、また上げる可能性もある。 このコラムについて キーパーソンに聞く 日経ビジネスのデスクが、話題の人、旬の人にインタビューします。このコラムを開けば毎日1人、新しいキーパーソンに出会えます。 |