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欧米石油大手が投資縮小
6社の今年、前年比3.7兆円減 世界経済、短期的に打撃
【ニューヨーク=稲井創一、フランクフルト=加藤貴行】欧米石油メジャー6社は2015年の投資を前年実績の16%に相当する約300億ドル(約3兆7000億円)減らす。急速に進んだ原油安に対応し、人員削減や資産売却も本格化している。原油安はガソリン価格低下などで消費国に恩恵をもたらすが、身の丈を縮めるメジャーの動きは関連産業にも波及し、短期的には経済への打撃となる。
エクソンモービル、シェブロン、コノコフィリップスの米3社と英蘭ロイヤル・ダッチ・シェル、英BP、仏トタルの投資計画を調べた。15年の投資総額は合計で約1530億ドル(約19兆円)と、リーマン・ショック後の低迷期以来の低水準となる。15年12月期当初は6社が14年実績を下回る投資計画を打ち出していたが、さらに計画を下方修正した。
シェルは今期2度目となる投資計画の見直しで、直近の計画から30億ドル減らし、前年比2割減の300億ドルに年間投資額を引き下げた。シェルのベン・ファン・ブールデン最高経営責任者(CEO)は「今の原油価格の水準はしばらく続く。状況に対応して素早く動くことが重要だ」と原油安の長期化を予測する。
コノコフィリップスも投資額を5億ドル追加で減らし、前年比35%減の110億ドルとした。BPも投資額を下方修正した。
エクソンやシェブロンは現時点で当初の投資計画を維持している。ただ「進行中の案件はより少ない投資で済むよう業者と再交渉している」(シェブロンのジョン・ワトソンCEO)といい、投資圧縮の動きはメジャー全体に広がる可能性が高い。
メジャー6社は15年4〜6月期に前年同期比で大幅な減益となった。26日には原油先物の指標油種が1バレル30ドル台後半と約6年半ぶりの低水準で推移。油田開発は深海など大規模で資金回収まで時間がかかる案件が多く、新規投資は相場の回復を待ちたいとの思いが各社には強い。さらにメジャーの多くが株式配当など株主還元を重視している。確実に今期計画を実施するための原資を確保する狙いもある。
掘削現場に機器や作業員などを供給する石油サービス会社は、需要減と値下げに見舞われ業績が悪化している。26日には最大手のシュルンベルジェが米同業のキャメロンを148億ドル(約1兆7700億円)で買収すると発表するなど、業界再編の動きが出ている。
エネルギーコンサルティング会社の英ウッドマッケンジーは、原油安のよる投資見直し規模はエネルギー業界全体で2000億ドル(約25兆円)規模に上ると予測。「200億バレル相当の原油が生産されないことになる」(アンガス・ロジャー氏)との試算もある。メジャー6社合計の世界の原油生産(日量ベース)シェアは約10%に相当する。
[日経新聞8月31日朝刊P.6]
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[グローバルオピニオン]原油価格、調整役は不在
独アリアンツ チーフ・エコノミック・アドバイザー モハメド・エラリアン氏
原油価格が大きく下落している。エネルギー市場の力学は、2013〜14年にシェールオイルの生産が市場を動かすような規模に拡大したことで大きく変化した。この新型資源が世界、特に米国の石油需要に占める比率が高まる中、エネルギー消費国の石油輸出国機構(OPEC)やその他産油国への依存度が低下した。そのプロセスにおいて、消費国は地政学的な懸念に以前ほど脆弱でなくなった。
さらに、サウジアラビアはOPECにおける価格安定の調整役を降りるという歴史的な発表をした。価格が急落した時に減産したり、価格の急騰を受けて増産したりするのはもうやめるという。
非伝統的な産油国が市場で影響力を強め、OPECの非加盟国は引き続き高い水準の生産を計画し、OPEC加盟国の一部は生産の上限を守らなかった。こうしたことを考えると、サウジアラビアに市場安定の調整役として短期的、長期的なコスト負担を期待するのは無理がある。
昨年、一時的に下がり過ぎた原油価格はその後、しばらくの間は堅調に推移した。まず価格急落によって供給が大きく混乱した。エネルギー生産企業の一部で利益が出なくなったためだ。第二に、消費者がエネルギーコストの低下に反応して、需要調整はゆっくりとしたものになった。
しかしその後間もなく、この相対的な安定を揺るがす新たな要因が生じ、原油価格はさらに下落した。世界経済の減速の兆候が、特にエネルギー消費が多い中国やブラジル、そしてロシア(それ自体が産油国)でみられたことだ。
現在では、予想を下回る経済指標から、中国による人民元の切り下げをはじめとする予想外の政策対応まで、世界経済の減速の兆候が至るところで見られる。世界経済の減速は政治的圧力を増幅し、一部の国では社会的な緊張を高める。そのいずれも政策対応を制約する傾向がある。
原油市場の需給が急速に変わるとは考えにくい。確かに米国の消費者はより大型の車をより多く買い、より遠くまで走り、より多くの場所に飛行機で旅したいという誘惑にかられるだろう。ただ、エネルギーコストの低下が、消費者の支払う燃料価格に反映されるのにはかなりの時間がかかることを考えれば、こうした需要の創出は非常にゆっくりとしたものになるだろう。
結局のところ、現在の原油価格の命運を左右できる調整役は存在しない。持続的な原油価格の回復には、幅広い国におけるより高い経済成長とより大きな金融の安定を組み合わせた、より健全な世界経済が必要だ。先進国と新興国の両方で政策に欠陥があることを考えれば、これがすぐ実現することはなさそうだ。
((C)Project Syndicate)
Mohamed A. El−Erian 英オックスフォード大経済学博士。米債券運用大手ピムコの最高経営責任者を経て現職。著書「市場の変相」で金融危機を予測。57歳。
[日経新聞8月31日朝刊P.4]
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