1. 2015年9月04日 20:57:04
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日本株、過去最大規模の攻防戦 止まない海外勢の売り 2015年 09月 4日 17:00 [東京 4日 ロイター] - 前週の日本株式市場で、過去最大規模の攻防戦が繰り広げられていた。世界株安が連鎖する中で、海外勢が大量の売りを出す一方、国内の個人投資家や「公的資金」が買い支える対抗図だ。ただ、相場の主導権を握っているのはやはり海外勢。金融緩和効果や世界経済減速への疑念が強まるなか、リスクオフ再開の気配を見せている。<海外勢はアベノミクスに疑念も> 2015年の海外勢の日本株売買が売り越しに転じた。年初から8月第1週までに現物株と先物合計で約3.4兆円買い越していたが、8月第2─4週で計3兆6850億円の売り越し。特に第4週は1兆8830億円と2008年8月からのデータで最大の売り越しとなった。 日本株だけが売られたわけではない。米バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチによると、8月26日までの1週間に、世界の株式ファンドから02年の調査開始以来、最大となる295億ドル(約3.5兆円)が流出した。 その過去最大規模の「大波」の中で、日本株のポジションも縮小されたわけだが、注目されるのは、売りの主体がヘッジファンドやCTA(商品投資顧問業者)など短期筋だけでなかったことだ。長期資金の海外投資家も、日本株を売り始めている可能性が大きい。 ドルベースの日本株が今春以降、急上昇。通常は為替ヘッジをしない海外の長期投資家にとっても利益が乗る水準になっていたことで「益出し売りをしやすかった」(外資系投信)という。4日終値でも、ドルベースの日経平均.N225は、依然として前年比プラス圏だ。 だが、別の見方も浮上している。「日本経済に対する疑念を持つ海外投資家が増えてきた」と、ある外資系証券エコノミストは指摘する。消費、生産、設備投資、物価、いずれも停滞感が強まる中で、アベノミクスへの信頼感が低下してきたことも、日本株売りの背景にあるという。 「今の日本は、政治、経済とも、いい印象を受けない。日銀が追加緩和しても輸入物価だけ上がってしまえば、マイナス効果が強く出てしまう。政策にも手詰まり感が出ている」とJPモルガン・アセット・マネジメントのグローバル・マーケット・ストラテジスト、重見吉徳氏は話す。 <「日の丸連合」が対抗> 海外勢の売りに対抗したのは国内勢。国内年金の売買を経由する信託銀行は、8月第4週、現先合計で昨年12月第3週以来となる5155億円を買い越した。市場では公的年金や共済などを含めた「公的資金」の買いとの見方が多い。 日銀のETF(上場投資信託)買いもハイペース。8月第4週は、24日の337億円1回だけだったが、金融調節のデータでみた8月は3494億円の買いとなり、月間最高となった。 「公的資金」以上に買いを入れたのが個人だ。8月第4週は現先合計で、2674億円の買い越しだったが、投資信託の7922億円の買い越しと合わせると1兆円超のプラス。海外勢が過去最大の売りを見せるなか、週間で1.5%程度の下げにとどめたのは、こうした個人と公的資金の買いだ。 しかし、海外勢の売りは止まらず、4日の日経平均は一時500円以上の下落となり、26日に付けた安値を割り込んだ。「日本経済への自信というよりも、値ぼれで安くなったから買ったという個人投資家は、大きな損を抱えることになりかねない」(松井証券・シニアマーケットアナリストの窪田朋一郎氏)と警戒されている。 <芽生えた金融緩和への疑念> ショートはたまっており、反発のエネルギーは大きい。空売り比率は4日まで3日連続で40%を超え過去最高レベル。裁定売り残は8月28日時点で5295億円となり、統計開始の1991年4月以降、過去最高となった。 モルガン・スタンレーの31日付リポートでは、日本株をトップピックにしており、TOPIX.TOPXの目標株価を1740ポイントに据え置いた。企業業績の拡大を引き続き予想している。日本株に強気な見方がなくなったわけではない。 ただ、市場を取り巻く不安感は濃い。「各国がこれだけ金融緩和しても経済は依然弱いままだ。世界的な景気減速懸念の中で、政策に対する不安が強まっている」(シティグループ証券・チーフエコノミストの村嶋帰一氏)という。 欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は3日の理事会後の会見で、状況次第で追加緩和も辞さない考えを示唆したが、市場のポジティブ反応はすぐに減衰。欧州株は1─2%上昇したものの、米ダウ.DJIは23ドル高で終了、日本など4日のアジア株は下落に転じている。 これまでなら、金融緩和環境が継続されるメッセージで市場センチメントが持ち直すパターンが多かった。しかし、金融緩和「マジック」の効果も薄れ始めているとすれば、グローバル金融相場は、大きな転機を迎える。海外勢の怒涛の売りを国内勢が吸収するのは容易ではないだろう。 (伊賀大記 編集:田巻一彦) J・デップの妻A・ハード、違法な愛犬持ち込みで豪当局が訴追 中国が朝鮮半島緊張に「深い懸念」、全当事者に自粛呼び掛け アングル:ドイツ、対中輸出の強さ裏目に 中国経済失速で退潮鮮明 米株は小反落、エネルギー株に売り 金融株高い 韓国軍との合同演習再開、砲撃で一時中断後=米高官 http://jp.reuters.com/article/2015/09/04/tokyo-stock-abe-idJPKCN0R40O220150904 日銀、次回会合で海外経済判断引き下げ検討 新興国減速で=関係筋 [東京 4日 ロイター] - 関係筋によると、日銀は14、15日に開く金融政策決定会合で、海外経済判断の下方修正を検討する。先進国を中心に回復傾向にあるとの見方は維持する方向だが、中国を中心としたアジアの新興国経済の減速が長引いていることを重視しているもよう。
今後、輸出がもたつく可能性もあり、新興国経済減速を通じた日本経済への影響について慎重に点検していくとみられる。 http://jp.reuters.com/article/2015/09/04/boj-idJPKCN0R412D20150904
日本経済「浮き沈み激しい」、追加緩和はインフレ次第=IMF幹部 [東京 4日 ロイター] - 国際通貨基金(IMF)アジア太平洋局のカルパナ・コーチャー副局長は4日、都内でロイターのインタビューに応じ、日本経済は「浮き沈みが激しい」との見方を示した。一方、日銀の追加緩和の是非をめぐっては、短期的な経済の下振れに対応するのではなく、あくまでインフレ期待の動向次第だと語った。 コーチャー氏は次回の世界経済見通しで、2015─16年の日本の成長率見通しを引き下げる可能性に言及。「今年の日本経済の回復という点では、率直に言って今のところ期待外れだ」と述べた。 もっとも、日銀の金融政策は実体経済の強弱で決められるものではないとし、年内にも追加緩和との見方を否定した。日銀がインフレ率をターゲットにしていることから、「日銀の行動はインフレ期待とリンクさせられるべき」と主張した。 仮に追加緩和に踏み切る場合は、国債のさらなる買い入れや付利金利の引き下げなどを選択肢に挙げた。 一方、中国当局が人民元の基準値を引き下げたことについては「タイミングが市場参加者を驚かせた」とする一方、「市場に為替レートを決めさせるという点で、ある意味IMFがこれまで推奨してきたことと合致する」と述べた。 人民元とドルとのリンクが緩めば、中国当局にとっては金融政策運営上、一定の独立性が得られるという利点が生じるとも語った。 中国発の市場不安が広がっているが、「最近の円の動きが継続するとは誰も思っていない」と強調。円相場の乱高下は、市場のボラティリティーに対応した短期的な動きとの見方を示した。 インタビュー後に行われた講演では、中国経済には「ダウンサイドリスクがある」と認める一方、「緩やかだが、より安全な成長を達成している」と語った。 (梅川崇、木原麗花) http://jp.reuters.com/article/2015/09/04/kochhar-imf-idJPKCN0R40YZ20150904 アングル:東大物価指数が上昇中、週平均で1.5% [東京 4日 ロイター] - 東大日次物価指数が上昇率を高めている。直近の9月1日を基準にした週間ベースは前年比1.5%上昇した。スーパーの特売が減少する一方、食品価格の値上げが相次いでいることが影響したとみられる。このまま物価の基調が強くなっていくのかどうか、日銀も注目しそうだ。 東大指数は、スーパーなどの販売データを集計し毎日公表。物価の動向をタイムラグなしにチェックできるとして、市場関係者だけでなく政策当局者の注目度も上がっている。 昨年4月の消費増税の直後、いったん前年比1.3%まで上昇したものの、その後は消費の低迷でほぼマイナス圏で推移。10月はマイナス1%以上下落していた。 ところが、今年2月以降は反転を始め、今年5月には同0.5%上昇となり、直近データでは同1.5%上昇まで加速してきた。日時ベースでは、8月31日に同2.9%上昇と、2009年以来の上げ幅を記録した。 この急テンポな上昇の背景には、値下げしなくても売り上げが維持できるようになったスーパーの特売減少があると、多くの専門家が指摘する。 2%の物価目標必達を掲げる日銀内でも、カボチャなど生鮮野菜の値上げの影響もあるが、雇用・所得の改善で価格転嫁が進みやすくなったとの見方が多い。 もっとも昨年夏は、天候不順や消費増税で消費が低迷し、各スーパーが特売の乱発で値下げ競争に走った経緯があり、前年比の価格は上がりやすくなる地合いにあるとの見方もある。 他方、昨年の増税による消費低迷で延期されていた価格転嫁が、ここにきてようやく出てきたとの見方もある。 日銀が政策運営の指針とする生鮮を除く消費者物価指数(コアCPI)は、7月に前年比横ばい。2%達成には、足元で指数を押し下げているエネルギー価格の上昇と、食品・日用品の継続的な上昇が必須条件となる。 東大指数の注目度が、今後一段と高まる展開になりそうだ。 (竹本能文) http://jp.reuters.com/article/2015/09/04/tpi-idJPKCN0R40TL20150904?sp=true 【コラム】金曜日の米雇用統計を信用するな−ギルバート 2015/09/04 12:59 JST 【コラムニスト:Mark Gilbert】 (ブルームバーグ・ビュー):世界の金融関係者は8月の米労働市場の状況を知ろうと、4日(金)の雇用統計発表を待ちわびている。米金融当局が9月に利上げするかの決定がこの一つの指標に大きく左右されるとみるからだ。 8月の米雇用者数がかなりの勢いで増えたら、今月中の利上げは決まったも同然と思われるだろう。一方、伸びが鈍れば米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーは利上げ時期をもう少し先送りするとの予想が広がるはずだ。8月の米雇用統計が年間で最も信頼性に乏しいことを別にすれば、だ。 ウニクレディトのチーフ米国エコノミスト、ハーム・バンドホルツ氏(ニューヨーク在勤)は米労働統計局のデータを分析し、2011年以降の平均で見ると8月の雇用者数の伸びは年間で最も低いと指摘した(同氏のグラフへのリンク)。 従って4日発表の8月の非農業部門雇用者数の伸びが、結果として市場予想(前月比21万7000人増)に届かなかったとしても驚きではない。今年7月は同21万5000人の増加、4月は18万7000人増、3月は11万9000人増にすぎなかった。過去4年間の8月の平均は、たった10万2000人増だ。 それでは金曜日に発表される非農業部門雇用者数は予想ほど伸びず、米当局は利上げを先送りすると結論付けられるだろうか。その前に先ほどのバンドホルツ氏の2つ目のグラフを見てほしい。11年以降の月間雇用者数の伸びの修正値の平均だ。 それによると8月は労働統計局の見直し後に、速報値より平均で9万人も増えている。これは他の11カ月の修正後の伸びの平均を2倍余り上回る。米経済の体温を測るのに、8月は最も頼りにならない月であるのがこうしたことから分かる。 ブルームバーグが集計する世界金利予想によれば、トレーダーや投資家は9月の米利上げ確率を32%とみており、1週間前の24%から上昇した。しかし今回の雇用統計で米金融当局の今後の動きを測ろうとするのは、トレーダーと政策当局の双方にとって間違いとなり得ることを歴史は示しているだろう。(マーク・ギルバート) (ギルバート氏はブルームバーグ・ビューのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です) 原題:History Says Don’t Trust Friday’s U.S. Jobs Report: Mark Gilbert(抜粋) 記事に関する記者への問い合わせ先:ロンドン Mark Gilbert magilbert@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先: James Greiff jgreiff@bloomberg.net 更新日時: 2015/09/04 12:59 JST http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NU4VHF6JTSEL01.html
フラッシュ・ボーイズのカツヤマ氏、株取引で大リーグ入りへ 2015/08/28 07:48 JST (ブルームバーグ):ブラッド・カツヤマ氏は自分が有名人になるとは夢にも思っていなかった。カナダ人で勤め先もロイヤル・バンク・オブ・カナダ(RBC)。ゴールドマン・サックスやJPモルガンといった著名金融機関ではないので、ウォール街の中ですら有名人にはなりにくい。そのためマイケル・ルイス氏が新著のためにインタビューにやってきても、ルイス氏の「フラッシュ・ボーイズ」という本の主人公が自分であることを知っても、何が起ころうとしているのか理解しなかった。「平凡な髪型のアジア系」カナダ人なので、世間に「溶け込んでしまう」と思ったのだという。 ルイス氏の2014年のベストセラー「フラッシュ・ボーイズ」は米株式市場が操作されているという前提に立ち、カツヤマ氏(37)を英雄として描いた。同書のおかげで有名人になったカツヤマ氏は米上院で証言したし、米証券取引委員会(SEC)の諮問委員会に加わるよう要請されもした。取引所運営会社バッツ・グローバル・マーケッツのビル・オブライエン社長(当時)を言い負かせたCNBCの番組での討論はウォール街をくぎ付けにした。有名になった同氏はボディーガードを雇うことまで考えたが、ルイス氏のアドバイスで自分について書かれた記事などを読まないようにした。「あまり考えない方が普通の気持ちでいられる」と同氏は語った。 カツヤマ氏がほとんどの時間を費やして考えるのは自身が運営するダークプール(私設取引システム)IEXグループのことだ。同氏と共同創業者らは高頻度トレーダーとそれ以外の人が公平に取引できる場を提供することを目指し、2012年にIEXを設立した。 時差裁定取引 RBCのシニアトレーダーだった頃、取引スクリーンでは注文できることになっている値段での取引が執行できないことがよくあるのに気付いた。高頻度トレーダーと取引所の結び付きや、取引所が乱立する米株式市場の構造が原因だという結論に達した。高頻度トレーダーはスピードを武器に、複数の取引所とトレーダーらがデータを受け取り注文を執行するのにかかる時間の差を利用して利益を上げる「レイテンシー・アービトラージ」という取引をする。これによって高頻度トレーダー以外の投資家は少し高い価格を払う羽目になる。「ほとんどの人にとって差はほんのわずかだが、わずかずつから恩恵を受けられる数少ない市場参加者にとっては大きな利益になる」と、IEXへの早期の出資者の1人であるヘッジファンド会社グリーンライト・キャピタルの創業者デービッド・アインホーン氏は指摘する。 IEXはわずかなスピードのむらを作りだすことで高頻度トレーダーがレイテンシー・アービトラージをできないようにする。IEXが売り込もうとしているのは「公平な市場」だ。米株式市場には11の取引所と40余りのダークプールがある。取引所やシステムは流動性と収入を高頻度取引会社に頼っている。このため、特別な注文タイプやより速いデータ提供、料金割引やコンピューターを取引所のものと同じデータセンター内に置く権利(コーロケーション)などさまざまな便宜を図る。 公平な審判 高校時代にフットボールをしていたカツヤマ氏は状況をスポーツに例え、「審判が試合の結果と利害関係を持ってはいけない」と言う。IEXは公平な審判になるために、コーロケーションを認めず、取引の両サイドから同じ料金を取り、リアルタイムのマーケットデータを提供、注文タイプは5種類だけにしている。 14年3月に「フラッシュ・ボーイズ」が出版された後に、IEXは米国で最大のダークプールの一つになった。既に幾つかの大手ヘッジファンドの出資を受けていたが、ベンチャーキャピタルからも関心が集まった。IEXが米株式市場の透明性と使いやすさを向上させることに貢献したと言うブローカーも多い。 IEXは今、これまでで最大の挑戦に立ち向かおうとしている。9月の最初の2週間のある時点で、取引所になる申請をSECに行うつもりなのだ。取引所になれば権威も付くしブローカーからの注文も増えるだろう。新規株式公開(IPO)する企業にIEXへの上場を勧誘することもできる。IEXがマイナーリーグから一挙にメジャーリーグ入りするかもしれない。 4ワートレビル もちろんリスクはある。SECがIEXの革新的な設計を承認するかどうか分からないし、ニューヨーク証券取引所(NYSE)やナスダック、バッツなどの大手から市場シェアを奪えるかどうかは未知数だ。悪くすればトップクラスのダークプールの地位を捨てて二流、三流の取引所という位置に甘んじることになり、経営面で行き詰まるリスクすらある。 新しい4ワールドトレードセンターの44階にあるIEXのオフィスは多くのトレーディングフロアと同じような作りだ。そして部屋の中央の台の上に銀のベルが載っている。午前9時半になると、1人の社員が取引開始のオープニングベルを鳴らす。その日の取引量が前日を上回ると、翌日も同じ社員がベルを鳴らせる。最長記録は4営業日だという。私が訪ねた6月のある日、午前11時過ぎに歓声が上がった。IEXでの取引が初めて米株取引全体の1.5%を超えたのだ。8月4日には1.86%と新記録を打ち立てた。 雪だるま的効果 わずかのように聞こえるが、細分化された米株式市場ではなかなかのものだ。1.1−1.9%のIEXのシェアはダークプールの中ではほぼ常に3位か4位だ。現在では160以上のブローカーがIEXに接続している。創業時は35だった。 コロンビア・スレッドニードル・インベストメンツの米株トレーディング責任者のマット・ワルドナー氏は、新取引所がゴールドマンやJPモルガンのような大手を引き寄せることができれば、雪だるま的な効果があるだろうと話している。 原題:Katsuyama Parlays ‘Flash Boys’ Fame Into Plan for New Exchange(抜粋) 記事に関する記者への問い合わせ先:ロンドン Jeremy Kahn jkahn21@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先: Stryker McGuire smcguire12@bloomberg.net 大久保義人 更新日時: 2015/08/28 07:48 JST http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NTOLZC6K50XS01.html
来週はドル上値重い、米雇用統計後も不透明感 [東京 4日 ロイター] - 来週の外為市場で、ドル/円は上値が重い展開が予想されている。8月米雇用統計の内容を織り込みながら米国の利上げ時期を見極めることになるが、よほど極端な数字でなければ不透明感は払しょくされない見通しだ。連休明けの中国株の動向にも注目が集まる。ただ、リスクオフムードが強いだけに、全体としては積極的なドル買いは期待しにくい。
予想レンジはドル/円が117.50―121.00円、ユーロ/ドルが1.0950―1.1350ドル。 8月の米雇用統計についてロイターがまとめた市場予想によると、非農業部門雇用者数(NFP)は22万人増、失業率は5.2%。9月16─17日の米連邦公開市場委員会(FOMC)前に発表される最後の雇用統計となるため、ここから9月利上げの有無を見極めたいとする参加者が多い。 ただ、雇用統計を受けた相場の反応については、不確定要素が多いため読みづらいとの声もある。その要因の一つが、株式市場の動向だ。中国の景気減速懸念を発端に世界的な株安が広がって以来、ドル/円はリスクセンチメントを意識した展開が続いている。 雇用統計をFOMCにどのように織り込んでいくかについては、さまざまな見方がある。「指標が強い内容となり、中国株も安定していたら、9月利上げももしかしたら(ある)という展開になるかもしれない」(邦銀)との声がある一方、指標が相当強い内容でなければ利上げ決定は難しいとの見方もある。 外為どっとコム総合研究所の調査部長、神田卓也氏は「中国ショックの余波が残っているいるうえ、欧州中央銀行(ECB)が緩和強化の姿勢を示した中でFRBだけが利上げ実施、というのはやや厳しい」と指摘する。 その先の展開についても、ドル/円の方向性は見極めにくい。今回の雇用統計が市場予想の範囲内に収まった場合でも、株式市場が落ち着けば「10月利上げの目が出てくる可能性も十分あるので、ドルを売るのは難しい」(国内金融機関)という。リスク回避で円買いが強まっても、極端なドルの下げは回避されるとの見方も多い。 経済指標としては、8日に日本の4─6月期国内総生産(GDP)改定値と中国の8月貿易収支、10日に中国の8月消費者物価指数(CPI)と8月生産者物価指数(PPI)、11日に米国で8月PPIと9月ミシガン大米消費者信頼感指数などの発表が予定されている。 (為替マーケットチーム) http://jp.reuters.com/article/2015/09/04/tokyo-f-idJPKCN0R40RA20150904 焦点:米債券市場「逃避買い」不発、ちらつく中国の影 [ニューヨーク 4日 ロイター] - 米国株式市場が先週、急激に下落した際、多くの投資家は債券への「逃避買い」が起きると予想していた。ところがその予想は外れ、著名ファンドの多くで多額の損失が発生。投資家の間では困惑が広がっている。 米国株は8月後半、中国不安を背景に急落。株式市場の混乱時には債券が買われるのが常だが、米債券利回りはそれほど下がらなかった。 ストラテジストはいくつか理由を挙げている。株価下落時にも米連邦準備理事会(FRB)の当局者がタカ派的な発言を続けた。債券市場の上昇見込みが外れたヘッジファンドが売りに動いた。自国通貨の下落を阻止するため、中国その他新興国の中銀が米債を売った──などだ。 FRBは今月16─17日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、利上げの是非を検討する。決定をめぐる不透明感が重しとなり、債券投資家はFOMCの結果が判明するまでは、様子見姿勢を続けるだろう。 パインブリッジ・インベストメンツ(ニューヨーク)で先進国の投資適格級債券を担当するロバート・バンデン・アッセム氏は「債券と株式の相関性は今や、中銀次第になっている」と話す。 S&P総合500種.SPXは8月第3週に9%下落したが、10年物米国債利回りは12ベーシスポイント(bp)しか下がらなかった。 これは異例のことだ。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチの分析によると、2009年以降続いてきた株価・債券価格の関係性を踏まえると、10年物国債利回りは22bp低下するはずだったという。 債券利回りはその後上昇しており、買い関心はごく薄い。債券価格がほとんど上昇しなかったことから、著名ヘッジファンドで大きな損失が発生しており、ブリッジウォーター・アソシエーツの「オール・ウェザー・ファンド」は8月のリターンがマイナス4.2%に落ち込んだ。 ストラテジストは、利回りがさほど低下しなかった理由の1つに、フィッシャー副議長らFRB当局者のタカ派的なシグナルを指摘する。 先月27─29日にワイオミング州ジャクソンホールで開催された経済シンポジウムにおけるFRB当局者の発言は、利上げが9月でないにしても、12月はほぼ確実であることを示唆する内容だった。 <中国が米国債売却か> 米国債利回りを支援しているもう1つの要因は、自国通貨を下支えるために中国その他の新興国が外貨準備を取り崩していることだ。中国をはじめとする新興国では、米国債が外貨準備のかなりの部分を占める。 経済成長率の鈍化をめぐる警戒感や、コモディティー(商品)価格の下落などを背景として、一部の新興国通貨は下げ足を速めている。 中国などの新興国は1997年のアジア通貨危機以降、世界的な外貨準備積み増しの動きをけん引、世界の外貨準備は昨年、12兆ドルのピークに達した。2007─08年の世界的な金融危機の際、手厚い外貨準備が新興国を守ったが、外貨準備は再び、積極活用されつつある。 中国当局が先月、米国債を売ったのか、もし売ったとすればどの程度だったのか、はっきりとは分からない。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチはリサーチノートの中で、中国が8月11日の人民元切り下げ以降の3週間に、1日あたり70億─100億ドルの米国債を売ったとすれば、最大で1500億ドルを売ったことになると試算している。 米国債の今年の発行額がネットべースで5000億ドル程度であることを踏まえると、これは大きな額だ。米財務省のデータによると、中国は6月末時点で1兆2700億ドルの米財務省証券を保有していた。 パインブリッジのバンデン・アッセム氏は「市場における中銀の存在感は圧倒的。2008年以降、相場を主導している」と述べた。 (Gertrude Chavez-Dreyfuss記者 翻訳:吉川彩 編集:内田慎一) コラム:世界株安の教訓、次の過大評価は何か=熊野英生氏 熊野英生 熊野英生第一生命経済研究所 首席エコノミスト [東京 4日] - 8月上旬から始まった世界連鎖株安は、まだ楽観してはいけない段階にある。過去、株価が下落したときには、背後に実体面での変化が隠れていて、株価はそれを先取りするかたちで反応していることが多かった。
背後にある悪材料は、株価下落の局面ごとにその素顔が異なっていて、一様ではない。そのため、「今回は過去とは違ってみえるから、大丈夫」という楽観のバイアスに常に流されてしまう。 上記の議論は実例を示した方が、話が早い。代表的な株価下落は2008年のリーマンショックである。このときは、手前にサブプライムローン問題があって、時間をおいて同年9月にリーマン・ブラザーズの破綻があった。隠れたレバレッジと証券化商品の損失拡大がこれほど広範囲に隠れていたとは、その6カ月前のベアー・スターンズ救済時には十分に認識されていなかった。 直近では2013年5月のバーナンキショックがある。あのときは、金融緩和の終了を示唆しただけで、新興国通貨の下落が誘発された。事前に、ドルの過剰流動性がそこまで新興国通貨の買われ過ぎを生じさせていたことが認識されていなかった。 2000年のITバブルの崩壊は、米国の新興企業の株価上昇が行き過ぎていることが十分理解されていなかった。1997年のアジア通貨危機は、アジアの新興国の経済成長力を見誤っていた。 それぞれの局面における株価・通貨下落に共通するのは、実体面で何らかの過大評価が起こっていたという点である。局面ごとに材料視される対象は変わるが、共通点は、その対象を事前には過大評価していて、それが何かの弾みで暗転することだ。過大評価が是正されるときには、金融市場の予想が悲観に大きく振れて、マーケットにおける売られ過ぎを引き起こす。実体の変化に対して、期待形成の振れが大きくなるから株価などの振れがより大きくなるわけだ。 <今回の過大評価は中国経済> とはいえ、何が過大評価だったのかは、後講釈で語るのは易しい。反対に、現在や未来に対して、何が過大評価であり、何が将来の過大評価になるのかを特定することは甚だしく困難である。問題の核心はまさにそこにあるにもかかわらず、である。 今、株価下落の背後にあるものは何に対する過大評価なのだろうか。上海株の下落と、日米欧の株価下落が連鎖することは、資金移動では説明できない。人によっては、上海株の下落は、本当は関係ないとみえるかもしれない。筆者は、上海株の下落は、中国経済への楽観や中国政府の管理能力への過度の期待がはがれ落ちたものだとみている。 今、考えると、「新常態(ニューノーマル)」は、景気悪化を安定成長と読み替えるレトリックだった。新常態という言葉が、評価を偽装するものだったように思える。すると、個別企業の中国関連ビジネスの採算性もどうなるかわからない。中国関連ビジネスの悪化は、これから先進国企業の収益に表れてくるだろう。 もしかすると、筆者自身でさえ、まだまだ中国の経済成長に楽観している部分があるかもしれない。今後、中国経済に対する不都合な事実が判明すると、現時点の楽観が修正されて、金融市場の波乱を生じさせる可能性がある。 <日米にもある過大評価の芽> 思考実験として、中国経済以外に、何が過大評価されているかを問いたい。 まず卑近な例では、来日する中国人観光客の旺盛な消費、いわゆる「爆買い」だろう。その勢いが継続するという期待感は、やや過大評価されている代表例ではないか。「爆買いがなくなる」というのは明らかに言葉の誤用だが、訪日外国人の消費ペースが普通の需要ペースに落ちることは十分に考えられる。 ほかには、日本企業の収益力への期待感である。今年は「株主資本利益率(ROE)を高める」というのが合言葉のようになっていた。上場企業のROEは8%で、今後も高まっていくとみられているが、世界経済が不安定化すれば、グローバル化している日本企業も無傷ではいられないはずだ。 さらに、米国経済の成長力である。米連邦準備理事会(FRB)の利上げ予想は、基本的に米経済の強さに依拠している。筆者自身も現時点では、中国発の景気下押し圧力が働いても、米経済のけん引力が勝って、世界経済が先行きは浮揚していくとみている。こうした見方は、現在は疑われにくいが、そこに過大評価が潜んでいるリスクがあるかもしれない。 最後に、もっと先々の過大評価にも言及しておきたい。日本においては、2020年の東京五輪は、政治的テーマとして人々の楽観を生み出しやすい。筆者は、新国立競技場の費用が高すぎるのではないかという批判があることや、「東京五輪は最後の宴」と揶揄する庶民の声があることは、むしろ健全なことだと考える。そうした冷ややかな見方が小さくなって、東京五輪で日本経済が飛躍するという見解が大勢を占めるとき、危惧される過大評価が生じていることになろう。 現在のように株価が下落して、きな臭い状態が予感される局面だからこそ、甘い将来展望に注意を払い、現時点で隠れているリスクに気を配ることが有意義になる。 *熊野英生氏は、第一生命経済研究所の首席エコノミスト。1990年日本銀行入行。調査統計局、情報サービス局を経て、2000年7月退職。同年8月に第一生命経済研究所に入社。2011年4月より現職。 http://jp.reuters.com/article/2015/09/04/column-hideokumano-idJPKCN0R40AF20150904
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