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中国の「QT」が引き起こす世界の金融バブル崩壊 原油市場が「強気相場入り」? しかし結果は三日天下に(JBpress)
http://www.asyura2.com/15/hasan100/msg/343.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 9 月 04 日 14:44:00: igsppGRN/E9PQ
 

中国の金融政策が原油市場に大きな影響を及ぼしつつある。上海の金融街の夜景(2010年3月28日撮影、資料写真)。(C)AFP/HO/SHANGHAI PACIFIC INSTITUTE FOR INTERNATIONAL STRATEGY〔AFPBB News〕


中国の「QT」が引き起こす世界の金融バブル崩壊 原油市場が「強気相場入り」? しかし結果は三日天下に
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44709
2015.09.04 藤 和彦 JBpress


 8月31日までの3営業日で27%上昇した原油相場は9月1日に約8%下落した。変動率はここ7カ月で最大である。その様子を9月2日付ブルームバーグは「原油市場、バンジージャンプのロープのように再び下落」と伝えている。

 8月31日、原油価格は3営業日で1カ月分の下落分を取り戻した。3営業日の上昇率は過去25年で最大を記録したため、6年ぶりの安値を付けてから1週間経たないうちに「強気相場入りした」との見方が市場で出ていた。

 急騰の要因は、(1)OPECが将来の減産の可能性を示唆したこと、(2)米国政府が原油生産量が減少し始めたことを認めたこと、であった。

■減産に踏み切る可能性は薄いOPEC

 OPECの動向から見てみると、8月の月報で「OPECは適正かつ妥当な価格達成に向け原油輸出国と協議する用意がある」と表明したのは事実である。しかし、「非加盟国が減産に応じない限り、減産による価格押し下げは実施しない」といういつもの条件を付けている。この声明はOPECが以前から主張していることであり、なんら目新しいものではない。

 9月1日付ブルームバーグによれば、8月のOPEC加盟国の原油生産量は前月比日量10.8万バレル増の同3231.6万バレルとなったようだ(9月2日付ロイターは「イラク要因で8月のOPEC原油生産量は日量3171万バレルに減少した」と報じている)。加盟国の中で最も生産量が増加したのはアラブ首長国連邦(15万バレル増の295万バレル)である。

 イランは同国の核開発に対する追加制裁が科された2012年7月以降の最高水準となった(前月比5万バレル増の290万バレル)。中旬まで減産傾向にあったイラクも0.5万バレル増の430万バレルで、1989年以降の月間生産量の過去最高水準に近づいた。

 一方、サウジアラビアは日量7万バレル減の1050万バレルで、2カ月連続で原油生産を減少させた。予算繰りが厳しい中で今後も減産を続けることができるだろうか。

 9月1日、イラン石油相は「OPECは他の産油国と調整して生産水準を決定する必要はない」との見解を示した。このように、OPECが一致団結して事態収拾に乗り出す雰囲気は醸成されておらず、懸案となっているOPECの緊急会合の開催の目途も立っていない。9月3日付ブルームバーグによれば、OPECは現在長期戦略報告書を作成中だが、その中に価格見通しを盛り込むことを主張しているイランに対し、サウジアラビアは除くよう強く求めており、調整が難航している。

 OPEC非加盟国の側も、OPECとともに減産に踏み切ると考えはないようだ。9月1日にロシア副首相は「政府として原油価格下支えのために減産するつもりはない」と発言した。

 ロシアでは、国内2位の石油会社ルクオイルの第2四半期の利益が原油安で10億ドルと前年比58%減少し、今年第2四半期のGDP成長率が前年比4.6%減となった。ロシアにとっても減産する余裕はまったくない。

 このような情勢を反映して、ペルシャ湾岸のOPEC加盟国関係者は「原油価格は年内1バレル=40〜50ドルにとどまる」との見通しを示している(8月31日付ロイター)。

■原油安でも増産する米国のシェール企業

 次に米国の原油生産だが、米エネルギー省によれば、6月の生産量は日量930万バレルをわずかに下回り、生産量のピークだった4月に比べて3%減少した。

 その中で、南部テキサス州の原油生産量が過去の推計から引き下げたため、「リグ稼働数の増加基調は終わりつつあり、シェールオイル企業の淘汰の圧力が高まっている」との懸念が生じている。

 (ただしこの結果は、米エネルギー省が原油生産の算定方法を“州当局のデータ”から“主要各州のシェール企業からのヒアリング結果”を基に推計するやり方に変更したことにより生じたものであり、市場関係者の間では「米エネルギー省の新データを完全に信頼するのは時期尚早である」との声も上がっている。)

 一方、稼動している石油掘削リグ数は6週連続で増加している。米石油サービス大手のベーカーヒューズによれば、8月28日までの1週間の米国内石油掘削リグ稼働数は前週比で1基増の675基となり、5月上旬以来の高水準となった。

 シェール企業58社は過去1年間に設備投資を217億ドル削減したにもかかわらず生産量は19%増加し(8月27日付ブルームバーグ)市場の需給が悪化させる要因となっている。原油安でもシェール企業が増産する背景には、株主がリターンより増産を選好しているという事情がある。

 シェール企業の多くは、金融機関から前払いで現金を受け取る見返りに将来生産する石油やガスを現物で支払うという契約を結んでいる。そのため、原油価格等の下落で生産物の価値が下がれば、借金の返済のために赤字覚悟の生産の増加をますます迫られる。増産しない限り、シェール企業は借金の返済ができなくなり、会社が倒産することから、株主はやむなく増産を支持しているのだろう。

 ウオール街はリーマン・ショック後からシェール革命の最大の支援者だった。だが、銀行監督当局がシェール企業への融資に関連するリスクについて警告を発しているため、融資返済に向け圧力を強めつつある。生産物の価値に基づく与信枠が10月までに縮小されれば、シェール企業は資金繰りに窮する事態に追い込まれるだろう(7月21日付ブルームバーグ)。

■生産減少が始まるのはいつのことに?

 8月27日の原油価格急騰に話を戻すと、「ショート・カバー・ラリー」というテクニカルな要因も絡んでいたようだ(9月1日付日本経済新聞電子版)。

 ショート・カバー・ラリーとはこれまで空売りに走っていた投機家たちが大挙して買い戻しに走る現象を指す。原油先物を売っていた投資家たちは「売られ過ぎではないか」と神経質になっていたため、ポジテイブなデータには何でも反応する状態になっていた(8月28日付ブルームバーグ)。その矢先に「OPECがすべての原油生産者と話し合う用意あり」などの情報が流れたために、今度は一転して「買われ過ぎ」の状態になったようだ。ショートカバーで急騰しただけで、供給過剰というファンダメンタルズがなんら変わっていないため、その後の買いは続かなかった。

 9月1日のニューヨーク原油市場では、OPECが他の産油国と生産抑制で協調するとの期待が薄れ、2カ月ぶりの大幅安となった。「強気相場」は文字通り「三日天下」に終わった。

 米原油在庫の増加見通しも下落要因となったが、世界の原油市場には原油価格の命運を左右できるかつてのサウジアラビアのような調整役が存在しない現在、「1バレル=30ドルを割り込むまで、生産が減少することはない」(米シテイ)のだろうか。

■原油価格を引き下げる人民銀行の「QT」

 8月27日からの原油価格急騰は、米国の第2四半期のGDP成長率の改定値が3.7%と市場予想を上回ったことがきっかけだった。そのことが示すように、持続的な原油価格の回復には、世界経済の勢いを取り戻すしかない。

 しかし、リーマン・ショック後の救世主だった中国政府がリセッション回避に失敗すれば、世界全体が景気後退に陥り、原油価格の下値が見えない状態になってしまう。

 9月1日に中国国家統計局が発表した8月の製造業購買担当者指数(PMI)は3年ぶりの低水準だった。それをきっかけに世界の株式市場は「2段下げ」の様相を呈してきている。世界の金融市場は中国経済の減速以上に動揺している感が強い。

 景気対策の一環として政府が8月に実施した人民元の切り下げは、資本流出の拡大を招いてしまった。人民銀行は人民元急落を阻止するための人民元買い・ドル売り介入を余儀なくされ、これにより国内の金融市場で流動性が低下し、経済成長の足を引っ張る事態が生じている。

 この事態を打開するため、人民銀行は8月25日に銀行融資拡大のための預金準備率の引き下げを実施した。だが、意図に反してさらなる資本流出を招いてしまい、人民銀行はさらなる為替介入に追い込まれる。そしてまたもや流動性不足に直面し、資本流出が加速するという悪循環に陥っている。

 途方に暮れた人民銀行は人民元の取引自由化に完全に逆行する措置を講じ始めている。資本流出の温床となっている為替予約を実質的に封じ込めるために、10月15日から顧客が元売り・外貨買いの為替予約を結ぶ場合、銀行は残高の20%を「危険準備金」として人民銀行に預けさせることを決定した(9月2日付日本経済新聞)。

 こうして中国政府はなりふりかまわず資本流出防止策を実施しているが、この動きが世界の金融市場全体にまで「量的引き締め」という深刻な副作用を生じさせるとの懸念が高まっている(8月28日付ブルームバーグ)。

 中国は2003年以降、人民元の上昇を抑制するため元売り・ドル買いを前例のない規模で行い、10年間で約4兆ドルの外貨準備を積み上げた。資産の内訳は米国債が中心だったが、その後、中国経済が減速に転じ資本流出が生じたため、今年7月には外貨準備が前年比5000億ドル超も減少した。さらに8月には、人民元の切り下げなどの影響もあって最大2000億ドルの資本が流出したと言われている。

 人民元防衛に動けば人民銀行は保有する海外債券を市場に放出することになるが、これにより世界の金融市場から流動性が失われることになる。リーマン・ショック後、米連邦準備制度理事会(FRB)が米国債などの資産を購入して世界の金融市場に流動性を供給した「QE」(Quantitative easing:量的金融緩和政策)が、現在の人民銀行はその逆に当たる「QT」(Quantitative tightening:量的金融引き締め政策)を実施し始めているというわけである。

 米国のQEの規模は3期にわたり、合計3.9兆ドルの資金が世界の金融市場に放出された。4兆ドルの外貨準備を保有していた人民銀行がQTを実施し続ければ、米国のQE以上の資金が世界の金融市場から吸い上げられ、世界の市場関係者のリスク志向は萎えてしまう。世界のリスク資産は総崩れだろう。

 中でもFRBのQE開始とともに上昇を始めた原油価格は、人民銀行のQTにより2003年以前の原油価格(1バレル=20ドル前後)に下落するのではないだろうか。

■シェール企業関連債券が大地震を引き起こす?

 米国で投資家は5週連続でジャンク債の投資信託から資金を引き揚げている。中国のQTによる最初の犠牲者はシェール企業かもしれない。

 シェール企業への逆風はまだある。かねてより環境保護団体が、シェール企業が原油の採取に用いる「水圧破砕法」に対して地震発生につながると警鐘を鳴らしていたが、8月27日、カナダ西部ブリテイッシュコロンビア州当局は2014年8月に観測されたマグニチュード4.4の地震はシェールガスの採掘によって引き起こされたとの見解を示した(水圧破砕法による地震としては世界最大級)。

 水圧破砕法は欧州の一部諸国では禁じられている。今後、北米地域での生産活動にも悪影響が出るかもしれない。

 シェール企業と地震は縁があるようだが、中国発のQTにより、世界の金融市場でシェール企業関連債券が大地震を起こさないと言い切れるだろうか。

 

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