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2015年 09月 3日 12:41 コラム:通貨危機再来説が見落とすアジアの進化=政井貴子氏 政井貴子 政井貴子新生銀行 執行役員・金融市場調査部長 [東京 3日] - 中国を中心に足元で起こっていることは、1990年代のメキシコ危機やアジア危機の発端とほぼ同じ構図である。端的に言えば、バランスシート上の「通貨のミスマッチ」だ。つまり、長期に及ぶドル安・米金利安という環境下、通貨(人民元)の変動がほとんどない、あるいは緩やかに上昇することを前提とした投資が、特に中国を中心とした金融市場で起こっていたと推測される(いわゆるドルのキャリートレード)。 むろん、こうしたポジションはすでに米国の利上げ準備や中国の金融緩和により国内調達環境の改善が見られ、昨年来徐々に縮小されつつあったと考えられるが、今回の市場の動揺を見る限り、相応の残高があった可能性がある。 国際決済銀行(BIS)の6月の四半期報告書によれば、米国外のドル建て債券発行額は2015年3月末時点で8兆6280億ドルに上る。2009年の金融危機時から見て、3割強も増えている。 また、1月に発表されたBISのワーキングペーパーは 米国外のドル調達の主体は2009年以前では欧州や日本といった先進国中心だったが、それ以降では新興国向けの伸びが顕著であると指摘している。 同じくBISが公表している25カ国の新興国向けの与信状況を見ると、中国向けは他国比で相応に大きいことが確認できる。経済規模に鑑みれば、この与信状況も違和感なく、同様にドルの調達も相応の規模だったと思われる。現在、こうしたいわゆる緩和マネーが世界の金融市場に与える影響を測る努力が国際機関を中心に行われているところだ。 <必要かつ不可避だったアンワインド> ただ、このタイミングでアンワインド(ポジションの巻き戻し)が一気に加速した理由の1つは、国際機関の調査を待つまでもなく、明白である。多くの専門家が指摘するように、国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)通貨バスケットへの人民元採用を目指す中国が市場需給に合わせた為替変動を許容していく方向性が確認されたことが挙げられよう。 中国は2013年11月の第18期中央委員会第3回全体会議(三中全会)で構造改革への強い決意を示し、経済については市場の役割を重視する方針を打ち出した。それ以来、広範囲に及ぶ改革の流れが続いている。人民元の基準値算出方法の変更など、今回の動きは結果的に世界の金融市場に動揺を与えてはいるが、こうした改革の流れの中での、必要な調整過程とも受け止められる。 安いドルをテコにしたドルキャリーは、各国の過去の経験に鑑みれば、そもそも永続的ではない。経済規模に応じた人民元の国際化プロセスや、中国の預貸金利自由化の流れの中では、アンワインドは避け難かったのではないか。 足元では、米中の景気動向の違いから金融政策の方向性に非対称性が日本と同様に見込まれており、市場の需給に任せれば元安傾向が自然な流れとなる。そのため、8月11日の人民元の対ドルレート基準値引き下げを受けて、もともとあった元安期待に火が付き、元高ないしは横ばいを前提とした裁定取引の解消が一気に起こった可能性がある。 そもそも、この裁定取引は通貨だけでなく、商品を担保にした取引も含め、かなり広範囲に及んでいた可能性が高い。したがって、裁定の解消には、現在デットエクイティスワップ(債務の債券への交換)が進行中の地方政府の借り換えを含め、ある程度の時間が必要だろう。いわゆるバランスシート調整であるため、中国ではこの間、企業は借り入れ返済を優先し、金融機関は与信に慎重になりそうだ。こうしたことから成長は制約されやすく、当面の中国経済の成長率が実績よりも低めに推移すると見積もるのは自然だ。 ただ、中国のバランスシート調整が過去のメキシコやアジア諸国が経験した状況と異なる点は、それが経常収支の黒字国、世界一の外貨準備高を有する純債権国で起こっているということである。このため、人民元買い・ドル売りのスムージングオペが市場で意識されても、中国の外貨準備の水準を心配する市場参加者はあまりいない。むしろ、同国と経済関係の深い周辺各国への影響が懸念されている。 <危機耐性高めるアジア> では、1990年代型のアジア通貨危機が再現される可能性は高まっているのだろうか。主要通貨について年初来の対ドル騰落率を見ると、ブラジルレアルの下落が目立つが、8月に限るとマレーシアリンギの下落率が大きい。そこで、一番の売り圧力にさらされているマレーシアを例に検証してみたい。 まず、最近のマレーシアリンギ下落の背景には、同国が東南アジア諸国連合(ASEAN)の中で純資源輸出国であること、また外貨準備高の減少スピードが他国比で大きくなっていることが挙げられよう。企業の手元流動性を図る手法を転用して、マレーシアの外貨準備高による短期債務のカバー率を確認すると、確かに2009年の2倍近くから足元では1.1倍程度に低下している。当面は中国金融市場の不安定な状況と、米国の金利正常化模索は続くと思われ、こうした危機管理モニター的な指標は悪化しやすそうだ。 ただ、前回の通貨危機当時とは異なる点がいくつもある。第1に、マレーシアはまだ経常収支が黒字だ。政府債務も国内総生産(GDP)比6割に満たない(自重気味な財政運営は他のアジア通貨危機経験国に共通する特徴だ)。 また、1人当たりのGDPは危機当時と比べて倍増し、1万ドルを超えている。この水準は、日本で言えばバブル直前の1980年代半ばの状況だ。インフレ率は7月の消費者物価指数(CPI)が3.3%と、この春の物品・サービス税(GST)導入で上昇基調ではあるものの、90年代の通貨危機時を上回る通貨安に見舞われている割には、パススルー(為替変動が物価に与える影響)はまだあまり認められないのではないか。 さらに、新興国の蓄えた外貨準備高は2000年に比べてタイ、インドネシアで5倍近く、一番伸び率の低いマレーシアでも3倍近い。こうした様々な点から見て、危機への耐久性は以前よりも増していると考えられる。 最後に言い添えれば、国際協調の深化も大きな安心材料だ。昨年、ASEANに日中韓を加えた短期の流動性供給安全網であるチェンマイ・イニシアティブについて、資金枠が2400億ドルに倍増され、IMFデリンク割合(引出可能上限額に対してIMF融資がなくても発動可能な割合)も20%から30%に引き上げられた。 むろん、市場の動揺はまだ続いており、また長期に及んだドルキャリーも解消過程であるため、過度の楽観は禁物だが、こうした調整は長期的には世界経済の成長にプラスに働くと考えている。 *政井貴子氏は、新生銀行執行役員・金融市場調査部長。トロントドミニオン銀行、クレディ・アグリコル銀行などを経て、2007年5月新生銀行に入行。キャピタルマーケッツ部部長、市場営業部部長などを歴任後、2013年4月に新生銀行初の女性執行役員として、市場営業本部市場調査室長に着任。同年7月より現職。 *本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(こちら) 中国でマツダがライバル凌駕、ドイツ神話に陰り 2015年 07月 17日 超低金利による弊害増大「FRBも気づき始めた」、グロス氏警告 2015年 07月 31日 コラム:見過ごされた黒田発言、長期株高のサインか=木野内栄治氏 2015年 07月 24日 http://jp.reuters.com/article/2015/09/03/column-takakomasai-idJPKCN0R20OR20150903?sp=true
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