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中国人が韓国人並みに豊かになったら、中国経済の規模は米国と欧州の合計より大きくなるが・・・(写真は上海 (c) Can Stock Photo)
中国が直面する「経済の断絶」のリスク 経済成長の実績は見事だが、将来を保証するものではない
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44705
2015.9.3 Financial Times JBpress
(2015年9月2日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
影響力のある中国人エコノミスト、デビッド・ダオクイ・リー(李稲葵)氏は次のように論じている。「株式市場の急落は問題ではない・・・問題なのは――大きなものではないが、それでも問題ではある――中国経済それ自体だ」
筆者はどちらの指摘もその通りだと思うが、1つだけ同意できない点がある。これは非常に大きな問題かもしれないと思うのだ。
市場の混乱は取るに足らない出来事ではない。中国政府が株式市場を支えるために2000億ドルを投じながらも失敗したことや、2015年7月までの1年間で外貨準備高が3150億ドルも減少したことはやはり重大だ。スケープゴートを探す動きが進んでいることも重要だ。
これらは資本逃避と政策立案者のパニックを示す指標だ。信認について――あるいは、それがないことを――教えてくれるからだ。
それでもなお、最終的な決め手になるのは経済のパフォーマンスである。中国に関する経済の重要な事実は、過去に成し遂げた実績だ。中国の購買力平価ベースの国内総生産(GDP)は、米国の3%相当額から約25%相当額に増加した。確かに、GDPは生活水準を完璧に計測できる指標ではないが、この値の変化は統計上の作為ではない。現場を見ればすぐに分かる。
■中国の成長余地はまだ大きいが・・・
第2次世界大戦以降に、貴重な天然資源がないのにこのような実績を上げた「大きな(ここでは、都市国家よりも大きいという意味)」経済は、日本、台湾、韓国、およびベトナムだけである。
それでも、米国との比率で言うなら、今日の中国の人口1人当たりGDPはまだ1980年代半ばの韓国のレベルでしかない。韓国の人口1人当たり実質GDPはその後実質ベースで4倍近くに増加し、米国のほぼ70%の水準に達している。
もし中国が韓国と同じくらい豊かな国になったら、その経済規模は米国と欧州を合わせたものよりも大きくなる。
以上は長期的な楽観論を支持する議論だが、これに異を唱える見方もある。「過去の実績は将来のパフォーマンスを保証するものではない」というただし書きがそれにあたる。経済成長率は通常、世界平均に回帰する。もし中国がキャッチアップ時代の高成長率を次の世代も続けたら、それは極端な例外となるだろう。
新興国では、経済成長が「断絶(discontinuity)」と称される急激な変化に見舞われることが多い。
だが、中国の政策立案者が言う「新常態(ニューノーマル)」それ自体は、そういう意味での断絶ではない。
中国当局は、年率10%の経済成長から、まだ速い同7%の成長へのスムーズな減速を自分たちが差配してきたと考えている。
では、これ以上の減速はあり得るのだろうか。また、それ以上に重要なことだが、この「断絶」は1990年代後半に危機を迎えた韓国で見られたような一時的な中断なのか、それとも1980年代のブラジルや1990年代の日本で見られたような長期的なものなのだろうか。
■断絶の可能性を示唆する3つの理由
中国の経済成長が断絶に見舞われるかもしれないと思われる理由は、少なくとも3つある。現在の成長パターンは持続不可能であること、過剰債務が巨額であること、そしてこれらの難題に手を付ければ需要急減のリスクが生じること、という3点だ。
中国の現在の経済成長パターンにおいて最も重要な事実は、需要と供給の出所を投資に依存していることだ。この国では2011年以降、全要素生産性(1単位の投入に対する産出の変化を計測した指標)の成長への寄与がゼロに近くなっており、追加的なGDPを生み出すのは追加的な資本だけになっている。
また、投資のリターンが急低下する中、限界資本産出率(ICOR、経済成長への投資の貢献を測る指標*1)が急上昇している。
*1=ICORは値が小さいほど投資の効率が高い
国際通貨基金(IMF)は次のように論評している。「改革を行わなければ、経済成長率は緩やかに低下して5%前後になるだろうし、債務も急増するだろう」。しかし、そんな状況は持続し得ない。債務がすでに高水準に達しているとなれば特にそうだ。
そのため、広義の信用残高の指標である「社会融資総量(TSF)」は、2008年のGDP比120%から2014年の同193%に急上昇した。
中国政府はこの過剰債務なら管理できる。しかし、これが再度積み上がっていく事態は防がねばならない。借金頼みの投資は減らしていかなければならない。
投資が今後しぼんでいく理由は過剰債務だけではない。ブリュッセルに本部を構える欧州政策研究所(CEPS)のダニエル・グロス氏によれば、中国のICORは爆発的に上昇している。特に目を引くのは、米国の水準をすでにはるかに上回っていることだ。
もしこのICORが現在の水準で単に安定するにとどまるなら、そして経済が約6%のペースで成長するなら、GDPに占める投資の割合は約10%低下しなければならない。もしそれが急に起これば、需要が急減して景気が悪化することになろう。
■持続不能な経路から抜け出す難しさ
改革によって、GDPに占める投資の割合が35%になる(つまり、2000年代初めの水準に単に戻す)のが望ましいが、このレベルに急激に引き下げてしまったら、国内需要も今日の水準から急減してしまうだろう。
中国の経済成長はすでに政府が認める以上に減速している、と思っている人は多い。
しかし、経済成長率の予想が低下したり投資のリターンの不確実性が増したりすればするほど、投資の実施を延期することは合理的になっていく。
その結果、経済成長はさらに減速することになる。
断絶の議論のキモは、持続不可能な経路からスムーズに抜け出すことは容易でないということだ。
中国には、経済が今日の大方の予想よりも急激に減速するリスクがある。
中国政府は、世界または国内の不均衡を悪化させない対応策をひねり出さねばならない。
恐らく最善のアプローチは、改革を継続する一方で消費者がもっとお金を使えるように努めるとともに、公的セクターによる消費と環境改善を目指した投資を増やすというものだろう。そのような対応策なら、中国のニーズにぴったり合致する。
■中国経済の難問の解決が世界経済を形作る
中国の経済成長が断絶する可能性は、ここ数十年で最も高くなっている。このような断絶は短期間では終わらないかもしれないし、政策立案者は大変な苦難に直面することになる。減速していく経済を破綻させずにリエンジニアリング(抜本的な再構築)をしなければならないのだ。
しかも、この難題は技術的に難しいばかりではない。技術的な難しさが中心であるわけでもない。市場主導の経済と、ますます進む政治権力の集中とは果たして両立するのか、という大きな問題が控えているのだ。中国経済の次の段階は難問だ。そして、それを解くことが世界を形作ることになるだろう。
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