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スズキの鈴木修会長
スズキの敗北 4千億円の「損」と致命的「空白」 修会長の孤独な戦い続く
http://biz-journal.jp/2015/09/post_11372.html
2015.09.03 文=編集部 Business Journal
スズキが4年にわたって求めてきた独フォルクスワーゲン(VW)との資本・業務提携の解消が、ようやく実現する――。
スズキは8月30日、筆頭株主のVWが保有する19.9%分の自社株をすべて買い戻すと発表した。29日、英ロンドンの国際仲裁裁判所が両社に通知した内容は「包括提携の解除を認める」「VWが保有するスズキ株式の売却を命じる」「VWが主張していたスズキの技術関連の契約違反について一部認め、損害の有無や額について引き続き仲裁で審議する」の3つである。
スズキは2009年にVWとの資本・業務提携を発表したが、VWがスズキを子会社と見なしたことや、スズキが期待するような技術がVWから供与されないことから溝が深まり、11年9月にスズキが提携解消を申し入れた。同年11月から国際仲裁裁判所での係争が続いていた。
資本提携の解消、自社株の買い戻しが認められた点ではスズキの勝訴だが、名を捨てて実をとったのはVWのほうだ。8月28日の東京市場でのスズキ株の終値は1株4151円50銭。この株価を基準に算出すると、スズキの買い取り価格は約4600億円になる。株価次第では増加する可能性が高い。買い戻し額は5000億円規模との報道もある。VWは約2200億円でスズキ株を取得しているため、売却すれば買い値を上回る売却益を得ることになる。
加えて、国際仲裁裁判所はスズキの契約違反を認定した。VWはスズキに対して「損害賠償を請求する権利を留保する」との声明を発表した。損害賠償額がどの程度になるのかはこれからの審議を待たなければならないが、VWはスズキから多額の賠償金を受け取る可能性もある。VWとスズキの資本提携の収支決算は、VW側の大幅な黒字である。
■高い授業料
逆に、スズキにとっては大幅な赤字だ。
スズキはVWがスズキ株式を取得した金額の2分の1を限度にVW株を取得した。現在、スズキは1.5%分のVW株を保有する。時価が約1000億円のVW株式を売却して、自社株買いの原資とする。買い戻しに備えて銀行から資金を借り入れるなど準備を重ねてきた。
株式の持ち合い解消でスズキはVW株式を1000億円で売却し、5000億円規模で自社株を買い戻すわけだ。単純計算になるが、差し引き4000億円のマイナス。国際仲裁裁判所での係争期間は4年に及び、日進月歩で進んでいる世界の自動車メーカーの技術開発競争において長い空白ができた。スズキの授業料は実に高くついた。
VWと提携解消発表後最初の営業日となる8月31日、東京市場でスズキ株は4291円50銭(140円高)の買い気配。17万株の買い物が集まり、4339円50銭(188円高)で寄り付いた。高値は4340.5円(189円高)だったが、同日の終値は前週末比マイナス(22円安)の4129.5円まで下落した。
VWとの提携解消で経営のくびきが取れたという面から見れば確かにプラス材料だが、今後、世界第10位の自動車メーカー、スズキがどう生き残りを図るかについて投資家には懐疑的な様子がうかがえる。
8月31日付け日本経済新聞は「物言う株主として知られ、8月初旬にスズキ株の保有を明らかにした米投資ファンド、サード・ポイントのダニエル・ローブ最高経営責任者(CEO)が、『フォルクスワーゲンから買い戻す株はすべて消却すべきだ』と述べた。消却で株数を減らし、資本効率を高めるよう求めたものだ」と報じている。
スズキはVWから買い戻した株式を次の資本・業務提携の切り札に使う算段である可能性もあり、サード・ポイントの要求が通れば「次の一手」が狭められることになる。
■囁かれるGMとの関係
スズキの鈴木修会長は8月30日の記者会見で、「まだ次のことまで考える余裕はないが、自立して生きていくことを前提にしたい」と述べるにとどめた。世界の自動車メーカーや投資家の関心は、新たなパートナーはどこかということだ。イタリアのフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)が秋波を送っているが、VWとの関係悪化で懲りたスズキは、気心の知れない相手と組む気はないとされる。
そこで浮上するのが、08年に資本提携を解消した米ゼネラルモーターズ(GM)との復縁だ。
スズキはGMと喧嘩別れしたわけではない。GMはスズキの国際展開の原点でもある。1981年8月、GMとの資本提携を発表する会見で、修氏は報道陣から「スズキはGMに飲み込まれてしまうのではないか」としつこく聞かれた。この時の修氏の答えは次の通りだった。
「GMさんとスズキの差は、鯨とメダカどころではありません。あえていうなら、鯨と蚊のようなものです。メダカなら、鯨に飲み込まれてしまうかもしれないが、小さな蚊なら、いざという時に空高く舞い上がり、飛んでいくことができます」(『俺は、中小企業のおやじ』<鈴木修/日本経済新聞出版社刊>より)。
世界に君臨していた巨大な鯨・GMが瀕死の重症に陥った。スズキはGMが保有していた20%の株式を最終的にすべて買い取り、資本提携を解消した。
GMが再建した今、元の鞘に納まるのが自然な流れだとの見方もある。GMは今年6月、フィアットから合併の打診を受けたが拒否している。6月9日に開いたGMの株主総会でメアリー・バーラ最高経営責任者(CEO)が「フィアットから届いたレターを経営陣と取締役会で検討し(拒否すると)決断した」と説明した。
GMはすでに年間世界販売台数1000万台の規模を誇っており、これ以上規模を拡大する合併は不要と判断したとされる。だが、スズキはインドで高いシェアを持っている。GMは過去にスズキと資本業務提携するに当たり、スズキの小型車や軽自動車を日本から持ち込み徹底的に解剖。スズキの小型車づくりのノウハウに強い関心を示したという歴史がある。
スズキが新しいパートナーとしてどこを選ぶのか。修氏の最後の大勝負となる。
■修氏の孤独な戦い
今年6月、修氏は社長職を長男の俊宏氏に譲った際、「VWとの提携解消にメドがついた時点で経営から退く」意向を示していた。だが、8月30日の会見では「まったく考えていない」と述べ、続投を宣言。次のパートナー選びを含め陣頭指揮をとる姿勢を強く滲ませた。この日の記者会見は修氏の独演会だった。俊宏氏も出席していたが、まったく存在感がなかった。
株主総会からわずか4日後という異例の社長交代は苦渋に満ちた、究極の選択だった。5月の決算発表の席上では、「取締役の若返りが必要だが、私が辞めるわけにはいかない」として、「90歳まで続投する」と宣言した。株主総会に出席した多くの株主からも後継者問題に関する質問は出なかった。
俊宏氏の社内での評判は、「まじめで温厚、お酒も飲まない。冗談も言わないくらいおとなしい。最近、少しは冗談を言うようになった」(スズキ関係者)というもので、修氏のように我を通して自己主張するタイプではない。
「修氏はもともと俊宏氏を社長にする気はなかったのではないのか。社長交代の会見で記者に俊宏氏の評価を聞かれ、『経営はヤル気と責任感があれば、誰にでもできる』と答えている。修氏は経営の実権を手放すつもりはない。基本方針は修氏が決め、業務執行は新社長を中心に集団指導制で決めてもらう考えだろう。今は、次の社長を探すための期間と割り切っているのではないのか。新たな社長候補が見つかれば、俊宏氏を会長にして、完全に引退するでしょう」(外資系証券会社の自動車担当アナリスト)
俊宏氏は就任の会見で「チーム・スズキで衆知を集めて経営していく」と語っている。
「トヨタ自動車社長の豊田章男氏は豊田家の出身としてでなくてもトヨタに入社できる能力があったが、俊宏氏はどうなのだろうか。修氏の後継者と目されていた小野浩孝取締役専務役員(修氏の娘婿)が07年末に膵臓がんで急逝したが、もし小野氏が生きていれば、修氏の苦悩はこれほど深くなかったはずだ。VWとの『離婚』は、修氏の孤独な闘いの新たなスタート地点となる」(自動車メーカー首脳)
(文=編集部)
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