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ANA、恐るべき策略と攻撃能力 スカイマークの息の根を止め「締め上げた」10カ月
http://biz-journal.jp/2015/09/post_11366.html
2015.09.03 文=田沢良彦/経済ジャーナリスト Business Journal
8月5日、民事再生手続き中のスカイマークの債権者集会が開かれ、同社はインテグラルとANAホールディングスの支援で経営再建を始めることになった。ずさんな国際線進出計画などが原因で経営危機に陥り、自力経営再建を諦めたスカイマークが東京地裁に民事再生法適用を申請、受理されたのは今年1月28日のことだった。それからおよそ7カ月。この間に同社の経営再建をめぐり事態は二転三転した。
関係者への取材を進めると、スカイマークの再建策決定がもつれた裏には、ANAによるスカイマーク潰しと、スカイマークが持つ羽田発着枠獲得への執念が浮かび上がってきた。そして、ドラマもどきの熾烈な攻防が水面下で繰り広げられていた。
■糧道断ち切り
昨年11月21日、スカイマークの西久保慎一社長(当時)は緊急記者会見を開き、日本航空と共同運航の業務提携交渉をしていることを明らかにした。14年3月期、5期ぶりの最終赤字に転落した同社は欧州航空機メーカーのエアバス社から巨額の解約違約金支払いを求められる中で搭乗率が伸び悩み、運転資金が底をつき始めていた。株式市場には「年内に資金ショート」の噂も流れており、その噂を打ち消すための発表だった。
西久保氏が業務提携先に日航を選んだのは、会社を乗っ取られる心配がないからだった。同社は国交省が示したいわゆる「8.10ペーパー」で16年度末までの新規投資が制限されている。「日航なら業務提携をしても出資できないので、経営の独立性を保てる」(スカイマーク関係者)との判断だった。
それだけではない。「ANAとスカイマークが親密な関係になることを警戒している日航は、燃費の共同調達や機材整備受託の業務提携にも応じてくれるはずと安易に期待していた」(同)。だが、国交省は日航との共同運航を認可しなかった。その理由は不明だが、「ANAの意を受けた国会議員から圧力がかかった」(業界関係者)との見方も広まっている。
12月15日、期待外れに終わったスカイマークは急遽、日航、ANA2社との共同運航交渉に作戦を切り替えた。日航とスカイマークの関係親密化を警戒していたといわれるANAはこれを快諾、さっそく実務者レベルでの調整が始まった。ところが業務提携交渉は遅々として進まなかった。
ANAはスカイマークのデューデリジェンス(資産査定)や安全監査を求め、日航より慎重な交渉姿勢を見せたからだった。その間に、運転資金は日ごとに枯渇していった。スカイマークは年末まで、同社に友好的な日航系商社を窓口に2社との交渉を進めていた。だが焦るスカイマークは年が明けると、突如交渉窓口をANA系商社に切り替えた。ANAに全面的な支援を要請するとの意思表示だった。
それからおよそ2週間後の今年1月13日、スカイマークとANAの役員交渉が行われた。席上、ANAの役員は「共同運航は実施する。ただし、燃費共同調達など他の協力はできない」と通告した。最後の望みを託したANAとの交渉が破談した瞬間だった。その日からスカイマークはなりふり構わず航空業界外の支援者探しに奔走した。会社乗っ取りを恐れて門前払いした国内外の投資ファンドにも支援依頼をして回った。
1月23日、翌週の資金ショートが確実になっていたこの日、スカイマークの井手隆司会長は本命視していた米投資ファンドの返事を待っていた。電話での返事は「即答できない」だった。破産の二文字が、井出氏の頭の中を駆け巡った。
■異例の経営再建が始動
万策尽きた井手氏は、国内独立系投資ファンドのインテグラルにダメモトの思いで電話をかけ、「当社は、ついに破産するかもしれない」と窮状を訴えた。投資ファンド回りをしていた1月中旬、同社共同代表の佐山展生氏が支援に前向きな姿勢を示していたのを思い出したからだった。
スカイマークの経営危機が明らかになった直後から、公開資料などで独自に同社の経営状況を分析していた佐山氏は、同社が米航空機リース会社イントレピッド・アビエーションから借りているエアバスの中型機「A330」を米ボーイングの小型機「B737」に替えれば、スカイマークは独力で経営再建できると判断していた。このため、井手氏の電話を受けた佐山氏は「民事再生法なら経営の独立性を守れる。必要な資金援助はする」と回答した。
1月28日、スカイマークは東京地裁に民事再生法を申請、即日受理された。2月5日、インテグラルはスカイマークと再生支援基本契約を締結した。民事再生法手続き中の運転資金として最大90億円のつなぎ融資をするほか、再建計画の策定に向け、人材も派遣するという契約だった。
こうして、財務と事業の両面で民間投資ファンドが主導する、異例の経営再建が始まった。
■最大債権者抱き込みで支援者入り
インテグラルとスカイマークの実務者で構成する「スカイマーク再建チーム」は、2月23日を期限に共同支援者を募集した。オリックス、エイチ・アイ・エスなど約20社が応募表明したが、主軸に位置付けていた航空大手からの具体的な支援提案は、皮肉なことにスカイマークに経営破綻の引導を渡したANAだけだった。米デルタ航空、米アメリカン航空、マレーシアのエアアジアなどもスポンサーに応募してきたが、その提案内容は具体性に欠けていた。
ANAを共同支援者にするか排除するか、スカイマーク再建チームは判断に迷っていた。判断の鍵を握るのは、最大債権者であるイントレピッドの意向だった。
「ANAはイントレピッドに、ANAがスポンサーになればスカイマークがイントレピッドから借りている7機のA330を継続利用するとの考えを、非公式に伝えていた。ANAは水面下で、スカイマーク再建のキーマンであるイントレピッドに支援者入り工作をしていたのだ」(業界関係者)
共同支援者応募期限の2月23日、ANAはスカイ再建チームに「共同支援参加意向表明書」を提出した。それには出資に加え、運航や機材整備も共同で行う包括提携が提案されていた。米デルタ航空や米アメリカン航空も事業提携を含めた支援参加意向を表明してきた。
「4月8日、ANAはスカイマークが利用していた7機のA330を継続利用する考えを、イントレピッドに公式に示した」(同)
4月9日、イントレピッドは民事再生手続き監督委員の多比羅誠弁護士に、ANAの共同支援参加を推薦する上申書を提出。ほぼ同時期に、イントレピッドに次ぐ大口債権者のエアバスも、同様の上申書を提出していた。
4月16日、スカイ民事再生の出資総額は180億円、出資比率はインテグラルが50.1%でANAと同社が指名する出資者の合計が49.9%、取締役数は両陣営3名ずつとする、いわゆる「多比羅裁定」が下された。しかし、この裁定は妥協の産物だった。
■ANAとインテグラルの激突
イントレピッドとエアバスの推薦でANAの支援参加が実質的に確定した9日以降、出資比率をめぐりインテグラルとANAは真っ向から対立、監督委員の多比羅弁護士の前で激しい応酬をしてきた。
スカイマークの経営独立性を守りたいインテグラルは、自社が80%出資、残りをANA側が出資するよう主張、スカイの経営関与権を握りたいANAは過半数以上の出資を主張した。出資比率が3分の1を超えると、定款変更、合併等、会社の重要事項の決議を拒否できるなど、経営関与権が強まる。ANAの支援参加交渉は膠着状態に陥った。
多比羅弁護士はスカイマークの独立性担保に賛同し、インテグラルが過半数以上を出資する考えに傾いている。このままでは形勢不利と見たANAは、「細かい条件は株主間契約で縛る」(ANA関係者)作戦に変更、インテグラルの主張に歩み寄り、多比羅裁定が確定した。ANAのスカイ経営参与権掌握の攻防は、株主間契約に持ち越された。
4月22日、インテグラルとANAは、スカイマーク経営再建の「共同支援基本合意書」の締結を発表した。裁定通り、出資比率はインテグラル50.1%、ANA16.5%、残りを日本政策投資銀行、三井住友銀行などANAの取引金融機関が引き受ける内容だった。
5月28日、インテグラルとANAは共同支援の株主間契約を締結した。契約交渉で最も紛糾したのが、株式譲渡制限に関する条項だった。
インテグラルは「再建計画通り5年以内にスカイマークを再上場できなかった場合は、自社持ち株分の第三者譲渡制限解除」を主張した。有利な条件でスカイマーク株売却先を探すのは、最上場できなかった時の投資ファンドの出口戦略として当然の主張だった。
しかし、50.1%のスカイマーク株が他の航空会社、特に日航に渡るのはANAにとって最悪の事態。永遠にスカイマークを掌握できなくなる。攻防の末、ANAは「3年間は両社合意なしの株式譲渡は不可。ANA以外の航空会社への株式譲渡も不可」とする条項盛り込みに成功。スカイマーク掌握の最大の脅威を取り除いた。
後はじっくりと時間をかけ、あの手この手でインテグラルを切り崩してゆくだけだった――。
(文=田沢良彦/経済ジャーナリスト)
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