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全日本空輸本社が入居する汐留シティセンター(「Wikipedia」より/Kakidai)
ANA、「目障りな」スカイマーク支配狙い傍若無人→梯子を外される 裏切り、裏取引…
http://biz-journal.jp/2015/09/post_11368.html
2015.09.03 文=田沢良彦/経済ジャーナリスト Business Journal
「そんな馬鹿な!」
6月15日、ANAホールディングスのスカイマーク再建支援担当者の大声が、室内に響き渡った。その日、スカイマーク民事再生手続き監督委員の多比羅弁護士から、8月5日の債権者集会でインテグラル・ANAチームの再建支援案とイントレピッドの再建支援案の決戦投票を行うと電話で告げられたからだった。
インテグラルとANAを中心とする「スカイマーク支援チーム」の再建計画案を東京地裁へ提出した5月29日、イントレピッドもANAの支援を排除した再建計画案を提出していた。ANAがイントレピッドに伝えていた「7機のA330を継続利用する考えを撤回するとイントレピッドに通告したのが原因だ」(業界関係者)といわれる。
「東京地裁への再建計画案提出まであと8日。イントレピッドに新しい再建計画案をつくる時間的余裕はない。当社がスポンサーになる計画案が採用されるのは間違いがない。『だとすれば、無駄な出費になるA330継続利用約束を撤回しても大丈夫だろう』とANAは高を括り、時期を見計らってイントレピッドに撤回通告をしたのだろう」(同関係者)
ところが、案に相違して撤回通告に怒ったイントレピッドは数日でANA排除の再建計画案を作成、東京地裁に提出していたのだった。とはいえ、提出時点でのイントレピッドの計画案は支援者となる航空会社さえ未定の具体性に乏しい内容。ANAはスカイマーク支援チームの再建計画案だけが債権者集会に提出されると信じ込んでいた。だから多比羅弁護士の電話通告は寝耳に水のような驚きだった。
■ANAの油断
「再建計画案は決まったも同然」と油断していたANAは5月30日以降、イントレピッドが債権者の多数派工作と航空大手擁立に汗を流していた事実に気付かなかった。それどころか、大口債権者の神経を逆なでするような行動までしていた。
例えば、ANAはスカイマークが発注していた総2階建て大型機「A380」を引き取る意向を欧州エアバスに伝えていたが、これも5月下旬に意向撤回を通告。その不誠実さに怒ったエアバスは即座に「現在の再建計画案に賛成できない」とANAに逆通告していた。
掌を返すようなANAの振る舞いに不信感を強めた英航空機エンジンメーカーのロールス・ロイス、米リース会社のCITも態度を硬化、イントレピッド同調の意思を表明していた。その背後には「ANAは信用できない」と大口債権者たちを煽るイントレピッドの姿があったといわれる。
議決権ベースでの債権額はイントレピッドが37.9%、エアバスが29.4%、ロールス・ロイス社が16.0%、CIT社が13.4%。この大口債権者4社の議決権だけで全体の96.7%を占める。スカイマーク支援チームの形勢が瞬く間に不利になった。
イントレピッドは大口債権者抱き込み工作の一方で、ANAに代わる航空業界支援者として米デルタ航空と豪カンタス航空に出資説得工作をしていた。そのうち、もっとも意欲を示したのがデルタ航空だった。
同社はかつて、日本航空が経営危機に陥ったとき、資本提携を画策、失敗した経緯があった。米航空大手では唯一日本に提携先がなく、秘かに提携先を求めていた。スカイマークが支援者探しに奔走していた1月中旬、デルタもスカイマークに支援を要請されたが、そのときは「無謀なA380導入計画」「喧嘩好きのオーナー経営者」などの企業イメージを嫌い、支援を断っていた。
だが、状況が変わった。スカイマークが民事再生手続きに入ったことにより、悪い企業イメージが消えた。日本に提携先を確保する千載一遇のチャンスだった。デルタはイントレピッドに共同支援者になる意向を伝えた。
■漁夫の利
7月14日、「デルタ航空、スカイマークを支援」のニュースが流れた。同日午後、ANAのスカイマーク再建支援担当役員が東京地裁と打ち合せをしたとき、同役員は地裁側からこれに関する説明を受けなかった。同役員は「いつもの観測気球だろう」と気にもしなかった。ところが同日午前、イントレピッドは国交省に出向いて「デルタ航空が支援者になる。ANAが支援者に選ばれなくてもスカイマーク再建にはなんの支障もない」と伝え、ANA降ろしの根回しをしていた。
7月15日、イントレピッドは都内で債権者約80社を集め、「デルタ航空を共同支援者候補に選んだ」と正式に発表。さらに自社案の成立を条件に自らの債権の一部取り下げも表明した。他の債権者の弁済額を増やすことでANA案を上回る弁済条件を示し、自社案の支持者を増やすのが狙いだった。
この日からスカイマークの再建計画案は、スカイマーク支援チームと最大債権者のイントレピッドとの戦いに発展した。イントレピッドの駒はデルタ航空だった。
■エアバスのしたたかさ
デルタ航空を推すイントレピッドの攻勢で、ANA降ろしの準備が着々と進んでいるように思われた。だが、意外なドンデン返しが待っていた。エアバスのしたたかな二正面交渉作戦が原因だった。
イントレピッドは国交省にデルタ航空の共同支援受諾を伝えた数日後、決選投票で約16%の議決権を持つロールス・ロイスと約13%の議決権を持つCIT社が東京地裁に議決権の分割を申請した。
「両社はANAとの今後の取引を考え、両陣営に分割投票する考えだった」(業界関係者)
それでも両社の議決権の半分はイントレピッドに入る。これにイントレピッドの議決権約38%を加えれば同社の議決権は過半数を超える。イントレピッドとANAの両方に顔を立てる苦肉の策だった。
ところが、エアバスはもっと大胆で巧妙だった。
約29%の議決権を持つエアバスは、それを分割しなかった。表面的にはイントレピッド案断固支持の姿勢を貫いているように思われたが、裏では「イントレピッドに次ぐ議決権の力を誇示し、ANAが反故にした大型機A380引き取りを再度迫るのが目的だった」と業界関係者は謎解きをする。エアバスからイントレピッドのANA降ろし工作の内情を知らされ、議決権29%のニンジンを鼻先にぶら下げられたANAはこれにすぐさま食いついた。
7月28日、スカイマーク支援チームの定例会議で、ANAのスカイマーク担当支援役員は「債権者集会でエアバス社は我々の案を支持すると思う」と報告した。それを聞いた出席者は全員「A380引き取りの裏取引をしたなと直感した」(業界関係者)という。
それを裏付けるように7月末日、「ロールス・ロイスとCITもエアバスの要請を受け入れ、全議決権をスカイマーク支援チーム案に投票する意思を固めた。デルタ航空にこれをひっくり返そうとする動きはない」との情報が業界に流れた。
8月に入ると、エアバスは「スカイマーク支援チーム案支持の意向」をメールでANAに伝えた。この時点でデルタ航空は「日本に提携先を確保する千載一遇のチャンス」を失った。
8月5日午後の東京地裁集会室。債権者集会の投票結果は、議決権額ベースの得票率がスカイマーク支援チーム案60.25%、イントレピっド案38.1%。頭数ベースの得票数がスカイマーク支援チーム案135.5票、イントレピッド案37.5票だった。
敵対するイントレ社を除く大口債権者全員を味方につけたスカイマーク支援チームの圧勝だった。これで表面的には、インテグラルがANAの協力を得てスカイマークを再建してゆくことになった。
■日航の脅威
ANAが水面下でスカイマーク支援チームの矢面に立ってイントレピッドと激しい攻防戦を繰り広げたのには、もちろん理由がある。それは日航の脅威とスカイマークの羽田発着枠だ。
6月29日、ANAの株主総会が開催された。総会で質問に立った株主の一人は「スカイマークはANAが目の敵にしていたはず。そんなスカイマークをなぜ支援するのか」と質した。この質問にANAの長峯豊之上席執行役員は「共同運航が目的だ。スカイマークの共同運航実現は、競合他社に対するわが社の優位性を強める」と、そのメリットを説明した。
燃料コストの低減や堅調な旅客需要に支えられ、ANAの業績は目下好調だ。2015年3月期の連結営業利益は前期比38.7%増の915億円。今期は1150億円と過去最高になる見通しだ。
競合の日航に対しても優位な戦いを展開している。公的資金の注入と会社更生法の適用で再生を果たした日航は、公正競争を歪めないよう「8.10ペーパー」で16年度末までの新規路線開設や新規投資が制限され、14年3月に実施された羽田国際線の拡張でもANAにより多くの発着枠が配分された。その結果、ANAは14年度国際線運航規模で初めて日航を上回った。
また、すでに傘下に収めたAIRDO、スカイネットアジア航空、スターフライヤーに続き、1日36往復分の羽田発着枠を持つスカイマークも傘下に収めると、自社分を含め「ANAグループ」の羽田発着枠シェアは約6割になる。
しかし、ANAと日航の経営体力差は歴然だ。15年3月期連結決算で、売上高こそANAは日航を凌駕したものの、営業利益915億円は日航の半分程度(日航の営業利益は1797億円)でしかない。過去最高予想の今期営業利益も日航のそれとは570億円もの開きがある(日航の今期営業利益予想は1720億円)。自己資本比率も日航の52.7%に対してANAは34.7%。
ANAと日航は「国内航空2強」と称されるものの、その実「ANAは常に日航の脅威に怯える万年2位の存在」(業界関係者)でしかない。日航が「8.10ペーパー」の制約が解ける17年度に完全復活する前に、ANAはなんとしても咽喉に刺さった小骨のスカイマークを掌中に収めておく必要があった。
例えば、主要路線の羽田―札幌線の普通運賃はANAと日航が同一の4万190円に対し、スカイマークは2万3900円から。ANA傘下のAIRDOは3万3790円で、ANA・日航より6400円安いもののスカイマークと比べると1万円近く高い。ANA・日航と比べるとスカイマークの運賃は半値に近い。この価格差がANAにとっては煩わしい。
しかも、AIRDOなど新興エアライン3社をすべて傘下に収めたANAにとって、低運賃で何かにつけ小競り合いを仕掛けてくる喧嘩好きのスカイマークは、最後に残った目障りな新興エアラインだった。
■新たな課題
ANA関係者は、「日航との競争優位の基盤固めをするためにも、スカイマーク潰しとスカイマークの羽田発着枠獲得はかねてからの裏戦略だった」と打ち明ける。つまり、ANAにとってスカイマークの経営危機は裏戦略発動の絶好のチャンスだったといえる。
そのために、のらりくらりの時間稼ぎで「3社共同運航」交渉を潰してスカイマークに引導を渡し、今度は万全の準備を整えてスカイマーク支援に乗り出し、支援チームの矢面に立ってイントレピッドと熾烈な攻防を繰り返した理由もうなずける。
ANAは今回の勝利で、長年の課題だったスカイマーク掌握の確実な道筋をつけた。半面、新たな課題も抱え込むことになった。それはエアバスと裏取引したといわれるA380の引き取りだ。同社は大型機から燃費性能に優れた中型機への転換を戦略的に進めてきた。そこへA380を導入すれば戦略に齟齬を来すほか、機材と路線のミスマッチが運賃値上げにつながり、ひいては日航との競争力弱化要因になる恐れもある。
「スカイマーク再建問題は決着したが、ANAにとってはこれからがスカイマーク掌握に向けての正念場になる」(業界関係者)
これから始まるスカイマーク再建の行方が注目される。
(文=田沢良彦/経済ジャーナリスト)
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