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世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第139回 エアコン経済
http://wjn.jp/article/detail/2717068/
週刊実話 2015年9月10日号
1年前の今ごろ、政府が経済の低迷についていかに「言い訳」をしていたか覚えておいでだろうか。
筆者らが散々に警告したにもかかわらず、消費税の増税を経て日本の国民経済は“ガケ”に突っ込んだ。4〜6月期の実質GDPの対前期比▲1.9%という結果を受け、日本政府は当初は「V字回復する」と強気の姿勢を崩そうとしなかった。
その後、いつまでたっても景気は好転する気配がなく、政府は「天候のせいだ」「自然災害(台風)のせいだ」と、子供でも“嘘”と分かりそうな言い訳を繰り返していたわけである。
8月17日。'15年4〜6月期の経済成長率が発表になったのだが、予想通り対前期比▲0.4%と、マイナス成長に終わった。特に、個人消費(GDP上の民間最終消費支出)が対前期比▲0.8%と大幅な落ち込みになったのだが、これを受けて甘利経済再生担当大臣が「先月から今月にかけては真夏日が続き、エアコンの需要も伸びているので、個人消費が回復する見込みはかなりあると思う」と発言。
筆者は知らなかった。わが国の国民経済は、エアコン需要に左右されるそうである。まさか、日本経済がエアコン経済だったとは。
もちろん、甘利大臣が思い付いたレトリックではなく、官僚の創作なのだろうが、国民はとことんバカにされている。エアコンが売れなかったからマイナス成長。分かりやすいことこの上ない。そして、分かりやすいが正しくない。
筆者は別に甘利大臣を揶揄したくて、本稿を書いているわけではない。経済成長率がマイナスになったならば「原因」を追究し、「対策」を講じるべき。と、ごく当たり前のことを言いたいだけだ。
今回の経済成長率のマイナスは、消費税増税による実質賃金の低下(物価「だけ」が上がった)により、国民の購買力が痛めつけられた結果なのである。何しろ、最大の需要項目である民間最終消費支出が「対前期比▲0.8%」となってしまったのだ。
GDP発表を受けた翌日、8月18日の日本の株式市場は、景気減速を受け、夏休み明けに安倍政権が補正予算を組む「のではないか」という期待から、建設株が大幅高になった。と言うよりも、当たり前の話として補正予算が組まれなければならない局面だ。
実は、安倍政権は当初予算で公共事業関係費をほとんど増やしていない。このまま補正予算を組まなかった場合、'15年度は普通に「緊縮財政」ということになってしまう。デフレ期に、消費増税と公共事業費削減。まさに、日本をデフレに叩き落とした橋本龍太郎政権そのままだ。
愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶというが、経験にも歴史にも学べない安倍政権を、果たして何と呼ぶべきなのだろうか。
とりあえず、日本国民は、せめて1年前の経験からは学べる愚者になるべきだ。年間500兆円規模の日本経済が、エアコンの需要ごときで大きく変動するはずがない。それ以前に、日本の民間最終消費支出が減ったのは、別に「涼しくて、エアコンを買わない」と、国民が判断したためではないのだ。
単に、実質賃金という所得が減り続けているためだ。実質賃金の低下とは、国民の貧困化とイコールである。国民が貧乏になっている以上、消費が増えなくて当たり前だ。「涼しくて、エアコンを買わない」が消費に大きく影響を与えるとしたら、それはあくまで「国民の所得が十分で、エアコンを買おうと思ったら買える」という環境が成立した場合のみである。
下の図(本誌参照)の通り、消費税増税後の日本の実質消費は、ひたすら低迷を続けた。'15年5月にV字回復しているように見えるが、'14年5月の落ち込みがひどかった反動だ。逆に'15年3月の激しい落ち込みは、'14年3月の駆け込み消費の反動になる。
いずれにせよ、日本国民は中期的に実質消費を減らし続けている。すなわち「ご飯を食べられなくなっていっている」のだ。国民の実質消費が減るとは、そういう意味である。
また、実質賃金は、消費者物価指数がゼロに接近しているため、「決まって支給する給与」が対前年比±ゼロとなった。要は、「物価が下がった結果、実質賃金がプラス化しそう」というのが現状なのだ。
インフレ目標2%は、どこに消えてしまったのだろうか。
ミクロ的に見た正しいデフレ脱却は、例えばインフレ率が2%で推移し、名目賃金が3%のペースで上昇し、実質賃金が1%増の状況が継続することになる。「物価が下がり、実質賃金がプラス化した」ではデフレ脱却にはならない。
実質賃金の継続的な引き下げを実現するためには、いかなる環境が必要だろうか。マクロ的にはインフレギャップ(総需要>供給能力)、ミクロ的には人手不足である。
人手不足の環境で「十分な給与」が支払われる状況になれば、実質賃金は上がる。日本政府は、介護分野や医療分、インフラ整備野など、需要が拡大し、人手不足が深刻化しようとしている産業に「給与を高める」形で率先しておカネを使うべきなのだ。
ところが、現実の安倍政権は公共事業を増やさず、介護報酬は削減。次は医療費抑制を狙っているわけで、これでデフレ脱却できたら「日本史上最大の奇跡」になる。
政府が実質賃金を増やすための「需要創出」に踏み切らない限り、日本経済の問題は解決しない。繰り返すが、補正予算が必要な局面である。
三橋貴明(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、わかりやすい経済評論が人気を集めている。
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