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「米フューチャーブランド HP」より
日本、国別ブランド指数世界一に 訪日客爆増、企業業績好調…さらなる世界進出のカギとは?
http://biz-journal.jp/2015/09/post_11355.html
2015.09.02 文=三村昌裕/三村戦略パートナーズ代表取締役/戦略コンサルタント Business Journal
■国別ブランド指数ランキング1位の快挙
日本が国別ブランド指数ランキングで1位に選ばれたことをご存じだろうか。米フューチャーブランド(ニューヨークに拠点を置くブランド・コンサルティング会社)が10年前から独自に調査、分析している国別ブランド指数(Country Brand Index)で、同社がブランド評価に値すると選定した22カ国に絞って調査した結果、日本が2014-15年のトップに輝いた。スイスやドイツ、スウェーデンをおさえての初の快挙である。
国別ブランド指数は、国の情勢(Status)と体験(Experience)を構成する国家基盤や生活の質、ビジネスにおける魅力、歴史遺産や文化、旅の魅力、国の生産品の6つのカテゴリーについて、少なくとも調査対象国のすべてを認知している海外旅行経験豊富な21歳から65歳までの男女、17カ国2530人への調査結果に基づいたものである。
日本が特に高い評価を得た項目は、「先進のテクノロジー」「歴史遺産や芸術・文化」「医療と教育」「訪れたい国」で、日本に対するイメージは、一例として「取引先としてだけでなく文化的にもユニークな国」「立ち止まることなく向上しているロボットの技術やエンジニアリングで世界をリードする国」といったものだ。
このような国のブランド指標には、アンホルトGfKローパー国家ブランド指数やモノクル・ソフト・パワー調査などがあり、いずれの調査も日本は6位となっている。今回、日本が1位を得たフューチャーブランドの調査は、政治や経済のみならず国の将来価値を占う先行指標ともなるイノベーションやテクノロジー、環境分野への評価に力点を置いているところが特徴的だ。同調査での好評価は、実際に日本との取引や来訪、口コミにおいて他国に対して高い競争力につながるという。
国のブランディングというと今ひとつ主体が不明確で茫漠とするが、国家戦略としても重視されるべき立派な国益の担い手といえる。日本に対するポジティブなイメージは、親近感やリスペクトといった連想につながり、心理的なハードルを下げ信頼感を上げる効果がある。実際、同調査でも日本を表現するキーワードとして「テクノロジー」や「アニメ」「寿司」だけでなく「尊敬(Respect)」や「美しい・すばらしい(Beautiful)」といったポジティブな言葉によって表現されている。
■観光立国目指す日本政府と海外需要取り込む業界戦略
調査結果とも呼応するように最新の訪日外国人旅行者の数は、約1630万人(14年7月から15年6月までの過去1年間、JNTO統計より)と過去3年で倍増する勢いだ。20年の東京オリンピック・パラリンピックや7月5日に世界文化遺産への登録が決定した「明治日本の産業革命遺産」などを追い風に、観光立国を目指す日本政府が示した20年の訪日外国人旅行者数の目標値2500万人(当初2000万人から上方修正)も現実味を帯びてきた。外国人旅行消費額も14年には2兆円を超えているが、直接的な消費以上の経済効果をもたらすことは間違いない。
また、円安や原油安を背景に8月初旬に相次いで発表された4〜6月期の上場企業の経常利益は、前年同期比で24%増(日本経済新聞社調べ)となった。純利益最高を更新しているブリヂストンをはじめ自動車や電機など製造業を中心とした輸出企業好調の貢献が目立っている。
一方、外食産業など内需型の企業も復調の傾向はあるものの、競争の激化や慢性的な人手不足の解消など課題も多い。そうしたなか、「すき屋」をチェーン展開するゼンショーホールディングスが中南米で牛丼店を倍増させ、「丸亀製麺」を展開するトリドールが秋にもカンボジアにうどん店を出店する動きを見せている。いずれもすでに競合進出の多い中国や台湾のテコ入れではなく、他社に先手を打つ海外市場開拓を狙った戦略だ。外食産業のこうした海外展開には、企業認知や食文化へのハードルと共に大きなリスクを伴う。
■Japanブランド
こうした局面において、「Japanブランド」が大きな後ろ盾となる。先の調査においても日本と強く結びつくキーワードに「食」と「文化」がある。日本食の世界無形文化遺産への登録もあって、日本食への世界的な関心が高まっている背景があるからこそ、自ずと市場醸成へのリスクもコストも軽減される。いわば、Japanブランドの高評価によって、企業の海外新規開拓への地ならしがすでに整っているということができる。
そうしたなか、繊維業界が業界主導で「JQプロジェクト」を立ち上げ、独自の日本品質の基準による新認証制度「J∞QUALITY」を発足した。「日本を纏う」「it’s “Japan Quality”」を掲げ「日本の技術と美意識の証」となる「染色」「織り・編み」「縫製」までを手掛けた純国産品を対象に、日本ファッション産業協議会が衣料品アイテム毎に認証する仕組みだ。
認証第1号は、三陽商会の「100年コート」。しなやかな素材の耐久撥水加工や閉めるときにスムーズな「立つボタン」縫製などディテールにこだわり、袖口のメンテナンスやクリーニングを含めた100年オーナープランによるユーザーとの関係性構築の仕組みにも余念がない。
その他、スーツやセーターなど各社72のアイテムが認証を受けたが、審査時点で約2割が不合格となった。こうした取り組みは、経済効果への即効性を狙うのではなく時間をかけて醸成していくものであり、業界の認識としても中長期を見据えた取り組みと位置づけている点が評価される。
■求められるJapanブランドへの基準づくりともたらす効果
Japanブランドを軸とした業界の求心力となるコンセプトとガイドラインを持つことが、業界全体の底上げに寄与し、国際競争力ある売れる高付加価値な製品づくりへとつながっていく。結果として「ものづくり日本」として空洞化しつつある製造分野においても、日本回帰の福音が伴ってくる。例えば、J∞QUALITYの謳う純国産品の基準は、1990年代に50%であった国内での縫製比率が現在、3〜4%にまで落ち込んでいる状況への打開策にもなり得る。
かつて日本のクォーツ時計に押され大きな打撃を受けたスイス時計産業も、機械式時計の復権とともに「Swiss made」のブランド力によって見事な成長トレンドを描いている。その背景として、Swiss madeをブランドたらしめる「クロノメーター」や「ジュネーヴシール」といった厳格な品質規定への信奉が定着していたことが大きい。
同様にJ∞QUALITYが衣料品におけるJapanブランドへのイメージ形成につながることで、ブランド信奉への心理的バイアスが醸成され、購買行動へと結びついていくことを期待したい。
「すでに形成されている人のイメージを変えることは容易ではない」からこそ、「人の頭のなかにすでにあるイメージを利用する」ことが、マーケティングの基本を成すポジショニング戦略(アル・ライズ/ジャック・トラウト)の基礎だ。例えば、ラーメンのイメージが定着している北海道ブランドでのうどんは売れにくいが、それを逆手に取る方法はあるといった具合である。
国別ブランド指数で1位となり、世界中の人の頭の中に日本に対する多くのポジティブなイメージが形成されることは、マーケティング戦略において大きなアドバンテージをもたらす。だからこそ今一度、各業界が「Japanブランドとは何か」を意識した明確な品質基準づくりに取り組む価値があるといえる。そうした基準のなかから国際標準化へのチャンスが生まれ、例えば、ISO(国際標準化機構)による国際標準化規格へとつながれば、大きな事業機会と共に国益をもたらすこととなる。
昨年、日本のロボット技術の優れた安全性が認められ、「生活支援ロボットの安全性に関する国際標準化規格ISO13482」が発行されたことは快挙であり、日本へのイメージを形成する「安全(Safe)」とも無縁ではないはずだ。
(文=三村昌裕/三村戦略パートナーズ代表取締役、戦略コンサルタント)
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