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中国、資本逃避の兆候 世界の中国不信深刻、同時危機回避への妨げになるのか
http://biz-journal.jp/2015/09/post_11361.html
2015.09.02 文=町田徹/経済ジャーナリスト Business Journal
先月(8月)の世界同時株安と通貨市場の混乱は、以前から懸念されていた中国経済リスクが今そこにある現実の問題であることをはっきりと裏付けた。世界の市場は小康状態を取り戻しているものの、当の中国は打開の決め手を欠く。この危機を乗り切るために、世界は強力な枠組みを必要としているのだ。
そこで注目されるのが、4日から2日間の日程で、トルコの首都アンカラで開かれるG20財務相・中央銀行総裁会議である。この会議には、月央の利上げ判断が注目されるジャネット・イエレン米FRB(連邦準備理事会)議長や、ギリシア危機対応のキーパーソンの一人マリオ・ドラギECB(欧州中央銀行)総裁、そして「異次元の金融緩和」を掲げる黒田東彦日本銀行総裁ら、G7の主要メンバーが出席する。
世界的な経済危機対応の経験がさほど多くないG20を、リーマンショックやギリシア危機、日本のバブル崩壊などの収拾経験を持つG7がリードできるかが会合の成否のカギを握るが、はたしてG7側にその覚悟があるだろうか。
■試金石となる「アンカラ会議」
輸出の大幅な落ち込みと予想外の人民元切り下げ、上海株の度重なる急落などに端を発した中国発の世界同時株安は、日本でも日経平均株価が2800円以上も下げる歴史的な暴落の要因のひとつになった。
これに対して、当の中国も責任を痛感したのだろう。李克強首相は、8月28日の国務院の会議で、「金融の安定は経済全般に関わる。地域リスク、システミックリスクを発生させないという最低ラインを守る」と強調したという。現状についても「(中国の)経済運営は新たな圧力にぶつかっている」と率直に認めたとされる。世界が中国経済の実態に疑心暗鬼になっている時だけに、そうした姿勢は評価してよい。
しかし、具体的な処方箋となると、決め手を欠く。さらなる人民元安を招いて資本の流出を加速しかねない金融緩和や、過剰設備問題の引き金になったインフラ投資を一段と積極化するなど、いずれも中国が抱える矛盾を増幅するような施策しか、李首相は打ち出せなかったという。
中国発の世界同時株安を、世界同時不況や世界的経済危機に発展させるリスクが最も高いのは、中国からの資本の逃避だ。資本逃避の懸念から、世界的な危機に発展した前例としては、1997年7月にタイ発で始まった「アジア通貨危機」が記憶に新しい。今の中国は、経済の低迷をきっかけに世界的な貿易縮小を招くリスクも抱えているが、資本の逃避はそれより短期間で危機を増幅させる。
その兆候はすでに見えている。貿易黒字にもかかわらず、中国の外貨準備高が大きく減少し始めているのだ。今年7月末の外貨準備高は3兆6500億ドルと、昨年12月末に比べてわずか7カ月で1900億ドルも減少した。一方、同じ時期の中国の貿易黒字は3060億ドルで、この半分の規模の経常黒字があったとすると、中国の外貨準備は1500億ドル強増えていなければならない計算だ。1900億ドルの減少は異常事態といわざるを得ない。
原因として考えられるのは、統計そのものが出鱈目なのか、それとも巨額損失の穴埋めに流用したか。いずれにせよ、なんらかの不都合が生じているのは明らかだ。資本は、こうしたリスクに敏感だ。放置すれば、株安だけでなく、実体経済を大きく揺るがす危機に発展しかねない。
そこで期待されるのが、急激な資本移動に対する国際的な資金融通の枠組みの強化だ。アジア危機以来、各国は金を備蓄し自国通貨の信認を高める努力をしてきたし、国際的な資金融通の枠組み整備にも努めてきた。しかし、中国は世界第2の経済規模を持つ。既存の枠組みは、資本流出の危機が現実化すれば、十分とはいえない。アンカラで開かれるG20財務相・中央銀行総裁会議は、そうした中国危機のシナリオに対して、世界が十分な協調姿勢を持っているかを試す試金石になるだろう。
■FRBの裏切り
とはいえG7、特に米国に、その覚悟ができているのかどうかは疑問だ。なぜならば、中国の資本流出を加速する懸念のある利上げについて、FRBが依然として今月16、17の両日に開く連邦公開市場委員会(FOMC)で強行する権利を留保しているからだ。
8月29日に閉幕したカンザスシティ連銀主催の経済シンポジウムは、そのことを明確にした。市場は、世界同時株安の勃発で利上げが遠のいたとの観測を強めており、FRB幹部がそうしたニュアンスの発言をするのを期待していたが、当のFRBはその期待を裏切ったのだ。
そもそも肝心のイエレン議長は会議を欠席した。そして、代わりに出席したナンバー2のフィッシャー副議長は、会議初日の28日に「まだ結論を出していないし、今出すべきでもない」と利上げの権利を留保した。翌29日の講演でも「中国経済の動向と他国経済への影響をいつも以上に注視している」「FRBが金融引き締めに動けば、他国経済に影響を及ぼすのは十分に認識している」としつつも、「(米国の)金融政策の正常化を慎重に進める必要がある」と譲らなかったのだ。
米国では、今月4日に雇用統計の発表が予定されているが、ここで米国経済が引き続き堅調で、多少の混乱はあっても中国経済の悪影響を乗り切れると判断すれば、予定通り利上げを強行する可能性は大きい。シンポジウムでは、各国の中央銀行総裁が参加したセッションがあり、その場で、やはり早期利上げを目指すイングランド銀行(BOE)のカーニー総裁は「中国の動向が利上げの軌道を変えることにはならない」と言い放ったという。
中国が経済力を背景に南シナ海への軍事的進出姿勢を強めてきたことや、経済統計への世界的な不信感を放置してきたことに対して、G7諸国の中には根強い反発があり、しばらくは静観したいとの思いが今なお強いのが現状だ。中国ほどの経済規模になれば、自力で解決すべしとの声もある。
日本では、菅義偉官房長官が8月25日の閣議後記者会見で、追加的な経済対策を問われ、「G7の財務相や中央銀行と連携し、対策を打てる状況は常につくっている。必要なら対策をとる」と強調した。これも、日本が独自に中国支援に乗り出す気はないという意思の表明ととるべきだろう。
確かに、中国自身が情報統制をやめて、民主的に正確な情報を公開する体制に改めたり、過剰生産設備を廃棄したり、理財商品などの官民の不良債権処理とその透明化に自助努力をすることは、国際的な危機克服策作りの前提条件だ。
しかし、振りかえれば、リーマンショックの際の米政府も、バブル崩壊の際の日本政府も、事前の株価急落など市場の警鐘を無視し、対策を小出しにして事態を悪化させた歴史がある。今度こそ、同じ轍を踏むのは避けるべきである。
(文=町田徹/経済ジャーナリスト)
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