http://www.asyura2.com/15/hasan100/msg/269.html
Tweet |
客が皆無のゴーストデパートが続出中〔PHOTO〕gettyimages
【現地ルポ】もはや打つ手なし〜中国経済 絶望の現場から
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/44967
2015年09月01日(火) 週刊現代 :現代ビジネス
TEXT 週刊現代編集次長 近藤大介
■未完の超高級マンション
2日間で株価(上海総合指数)が10%以上も大暴落した直後の7月31日午後6時、クアラルンプールで開かれていたIOC総会で、2022年冬のオリンピックの開催地が決まった。
私はその時間、「北京の銀座通り」こと、王府井(ワンフージン)のホコ天を歩いていた。6時前になると、広告用の巨大な電光掲示板が中国中央テレビのニュース画面に切り替わり、クアラルンプールの会場から生中継となった。道行く若者たちが立ち止まり、固唾を飲んでスクリーンを見守っている。
「Beijing!」
バッハ会長がそう告げた瞬間、クアラルンプールの中国代表団が、歓喜を爆発させた。中央テレビのアナウンサーも「われわれはついに勝ち取りました!」と、興奮気味に伝えている。
だが王府井のホコ天は、いたって静かなものだった。人々はポケットからスマホを取り出し、パチパチとスクリーンを撮って、その場から「微信(ウェイシン)」(WeChat)で友人たちに送るだけ。それは彼らが普段、レストランで好物の「麻辣火鍋」を食べた時に写真を撮って送るのと、何ら変わらない行為だった。撮影が終わると、三々五々散った。
「自分の故郷に再度、オリンピックを誘致する」という習近平主席肝煎りの「国家事業」を成功させたにしては、何とも寂しい光景だった。隣に立っていた若い女性に聞いたら、こう答えた。
「別に招致を成功させたからって、経済がよくなるわけでもないでしょう。嬉しいのはオリンピック期間中、大気汚染がなくなることと、臨時の祝日ができることくらい」
彼女は、「いまからユニクロのタイムセールがあるから」と言って、走り去ってしまった。
続いて30代の男性に聞くと、ややくぐもった声で回答した。
「冬に雪も降らない北京で、どうやって冬季オリンピックをやるの? それに招致費用や開催にかかる費用は、われわれの税金で賄うわけでしょう。政府にそんな余裕があるなら、減税するか株価を上げる対策にでも使ってもらいたい」
思えば株価が暴落を始めたのは、習近平主席の62回目の誕生日(6月15日)だった。そのため人は「習近平暴落」と呼ぶ。上海総合指数はこの日から約3週間で34%も下落。7月27日、28日にも2日間で10%以上も下落し、直近では8月18日に6・1%も暴落した。
2億人の「股民(グーミン)」(個人株主)も、大損こいて「愚民」と化した。いまや自分の財産をいくら失ったかを、互いに自嘲気味に告白し合うのが挨拶代わりになっている。
今回、北京で一番驚いたのが、かつて「爆買い」で人が溢れかえっていたデパートの凋落だった。どこに行っても閑古鳥が鳴いているのだ。
『新世界』という庶民的な大型デパートが、朝陽区建国路の目抜き通り沿いにある。一週間で一番の書き入れ時のはずの日曜日夕刻に行ったにもかかわらず、見渡す限り私しか客がいないではないか。2階、3階……と上がってみたが、やはり客は皆無だった。
店員たちは「歓迎光臨!(いらっしゃいませ)」と声をかける気力も、とうに失っているようだった。店員同士でおしゃべりしていたり、中には店の電源に自分のスマホをつなげて、ゲームに興じている女性店員もいた。
7階のレストラン街に行って、ようやく客を見つけた。だが10軒ほどある中でも、大入り満員なのは、日本のしゃぶしゃぶ屋だけだった。習近平政権は「抗日戦争勝利70周年」ばかり唱えているが、折からの日本旅行ブームに伴って、いま北京では和食ブームが起こっているのだ。
まさにゴーストタウンならぬゴーストデパートである。ちなみにこのデパートの斜向かいで工事中の超高級マンション『長安8号』は、北京初の1m210万元(約190万円)超え物件として話題を呼んだ。だが、すでに着工から6年以上が経つというのに、不動産バブル崩壊の影響を受けて、いまだに未完成だ。
■職にあぶれた若者たち
ゴーストデパートは、『新世界』だけではなかった。同じく別の日の夕刻に訪れた朝陽区のCBD(中央商業地区)に建つ高級デパート『財富ショッピングセンター』も、だだっ広い1階と2階の高級ブランドショップは、シーン。
3階のレストラン街まで上がって行って、ようやく人間と遭遇した。だがまたもや、千客万来なのは日本料理店だけだ。
一緒に歩いていた中国人経済学者に正直な感想を告げたらこう答えた。
「もはやこうした光景には慣れっこになってしまったから、驚かないよ」
私が「中国の上半期のGDP成長率は7%に達し、消費も10・6%も伸びている」と反駁すると、自嘲気味に漏らした。
「李克強首相だって、『中国の経済統計なんか信用できない』と嘯(うそぶ)いているではないか。本当のGDP成長率なんか、おそらく4%くらいだろう」
確かにGDPの粉飾疑惑については、中国を代表する経済誌『財経』(8月3日号)も指摘している。
経済学者は、統計粉飾の例まで教えてくれた。
「先日、ある地方に視察に行ったら、街にブラブラした若者が溢れているのに、就業率が異常に高かった。そこで地元の大学に聞いたら、なんと共産党の命令で、企業の内定証明を取ってこない学生は、卒業させなかったのだそうだ」
GDPが上がらないと、就業率も上がらないのである。この夏に790万人もの大学生が卒業したが、就職は大変だ。ある卒業生は就職先がなくて、時給18・9元(約370円)でセブンイレブンでバイトしていた。
中国のGDPは、輸出、投資、消費の「三輪馬車」から成っている。だが、政府は投資を減らし、国民は消費を減らし、企業は輸出を減らす。その輸出を少しでも増やそうと、8月11日から13日にかけて、中国人民銀行(中央銀行)は人民元を米ドルレートで約4・5%も切り下げた。ただアメリカも利上げを控えており、中国で楽観論はまったく聞こえてこない。
「週刊現代」2015年9月5日号より
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民100掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。