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日本郵政本社が所在する日本郵政ビル(「Wikipedia」より/Ons)
懸念だらけの日本郵政上場 恐らくうまくいかないと考えられるこれだけの材料
http://biz-journal.jp/2015/09/post_11340.html
2015.09.01 文=編集部 Business Journal
持ち株会社の日本郵政と傘下のゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の3社は、11月4日に東京証券取引所第1部に上場する。9月10日に上場を承認し、11月4日を軸に上場日を調整している。初回売り出しで計1兆5000億円規模の資金を調達する超大型案件になる。「21世紀最大の新規上場案件」との呼び声さえある。
現在、政府は日本郵政の全株式を保有しており、段階的に売り出しを進め、最終的には保有株式の割合を3分の1超まで引き下げる。政府は売却によって、東日本大震災の復興財源として4兆円を確保する方針。日本郵政は傘下の金融2社の全株式を保有しており、当面は保有割合を50%程度まで下げ、将来的にはすべて売却する方向だ。
今回の上場における最大の懸念は、3社のガバナンス(企業統治)体制にあるとされている。東証は今年6月、コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)を導入した。ROE(自己資本利益率)の改善や、増配、自社株買いなどの株主還元策の拡充、独立社外取締役の複数選任や、綿密な中長期的な経営ビジョンなどが求められる。
「日本郵政グループは、金融庁・東証が求めているコーポレートガバナンス・コードの水準に達していないのではないか」(金融筋)
確かに日本郵政は、社外取締役が過半数を占める取締役の体制は整えた。取締役18人のうち社外取締役が10人である。取締役兼代表執行役社長は西室泰三氏。東芝の社長、会長から東京証券取引所の会長に転じ、2013年に日本郵政社長に就いた。
日本郵政は委員会設置会社だ。権力の中枢は役員の選任・解任を決める指名委員会にある。指名委員会は3人。委員長は三村明夫・新日鐵住金相談役名誉会長(日本商工会議所会頭)。委員は西室氏と御手洗冨士夫・キヤノン代表取締役会長兼社長CEO(元経団連会長)である。
社外取締役には木村惠司・三菱地所取締役会長、八木柾・共同通信社監査役、渡文明・JXホールディングス名誉顧問、清野智・東日本旅客鉄道取締役会長、石原邦夫・東京海上日動火災保険相談役、犬伏泰夫・神戸製鋼所名誉顧問など、経団連OBが名を連ねている。財界の主流派挙げての支援体制といえる。
■拒絶反応
今回の上場の最大のポイントは、純粋持ち株会社である日本郵政とその完全子会社である金融2社が、同時上場を目指す「親子上場」という点だ。3社同時上場を強行するのは、株式の売却益をできるだけ多くしたいという政府の意向が背景にある。
「親会社だけの上場では、東日本大震災の復興財源を確保できない。しかし、利益相反を防ぐという観点から、親子上場は市場では歓迎されない。拒絶反応を示す投資家も少なくない」(市場筋)
コーポレートガバナンス・コードが適用された今年の株主総会では、社外取締役に厳しい目が向けられた。15年6月の株主総会では、選任時の賛成率が80%を切った社外取締役が多数出た。日本郵政が上場後初となる来年の株主総会で、西室氏と経団連OBで固めた社外取締役がどの程度の賛成票を得られるか、これが最初の関門になる。
■収益力に課題
国の保護を受けてきた国営会社の日本郵政が、果たして市場原理に対応できるのかという疑問も多い。収益力の向上が、大きな経営課題として浮上しているのだ。
日本郵政の15年3月期のROEは3.4%、14年同期が3.7%と、合格最低水準といわれる5.0%を下回る。いかにしてROEを引き上げるかが喫緊の課題だ。
また、15年3月期決算を見る限りにおいて、稼ぎ頭といわれている金融2社の収益力は民間大手に比べて見劣りする。ゆうちょ銀行の貯金残高は177兆円で純利益は3694億円。メガバンクの三菱UFJフィナンシャル・グループの預金残高は153兆円で純利益は1兆337億円。ゆうちょ銀行は資金量では三菱UFJを上回っているが、利益は三菱UFJの3分1強にとどまる。
かんぽ生命保険も同様だ。保険契約準備金は77兆円で純利益は817億円。保険料収入で日本生命保険を抜いて首位に立った第一生命保険の保険契約準備金は42兆円で純利益は1424億円。かんぽ生命は保険契約準備金では第一生命の1.8倍だが、利益は第一生命の6割弱に過ぎない。
これは、金融2社が大量の国債を引き受けている国営の金融機関の色彩が強いためだ。ゆう
ちょ銀行は貸出金は2.7兆円しかないが、国債の運用は106兆円に上る。かんぽ生命も国債の運用は48兆円だ。国債に依存していることが収益力を低下させる最大の要因である。
■オールジャパン体制
上場する3社は7月に1株を30株に分割したため、最低投資金額は当初予想から大幅に下がった。幹事証券会社などの推計では、日本郵政の株価は1800円前後、ゆうちょ銀行は1200円、かんぽ生命はおよそ2700円。売買単位が100株になると3社あわせても60万円を超えないことになる。3社で100万円以内の投資額なら、NISA(少額投資非課税制度)を使える。個人投資家を多数呼び込むことができる、との思惑もあるようだ。
日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の初回の株式売り出し額は、合計で1兆5000億円程度になる模様だ。民営化案件の初回の売り出し額としては、1987年に上場したNTT(日本電信電話)の2兆円強に次ぐ規模になる。14年1年間に新規上場した企業による資金の調達額は、合計で9800億円。郵政グループの3社は、昨年の年間調達額を上回る資金を株式市場から一気に吸い上げることになる。
3社合計の株主数は100万人に達する可能性があり、トヨタ自動車の2倍の規模。時価総額は10兆円を突破し、ソフトバンクグループや日本たばこ産業を上回り、市場に与えるインパクトは大きい。
「政府は最低でも6兆円の時価総額を確保したいが、無理に株価を高くして投資家が郵政アレルギーになっては困ると考えている」(金融筋)
3社の上場にあたり、野村證券やゴールドマン・サックス証券など国内外の11社が巨大な幹事団を結成した。販売体制は地方の証券会社やインターネット証券会社など90社程度に膨らむ。オールジャパン体制で上場を後押しする。
しかし、西室氏が現在も相談役を務める東芝の不正会計問題、中国リスクに加えて9月には米国の利上げも考えられる。外国人投資家の日本株買いの意欲は急激にしぼんでいる。そのため、21世紀最大といわれるような超大型の新規上場をするには時期が悪すぎるという見方も急速に広まっている。
■NTT株の二の舞か
上場して民間企業になるのだから、さまざまな「縛り」の解消を要求する動きも出ている。
自民党は、ゆうちょ銀行の貯金限度額を現行の1000万円から2段階で3000万円に引き上げるよう提言した。さらに、かんぽ生命の加入限度額も現行の1300万円から2000万円に増額する方針を打ち出した。これに対し金融業界は揃って「民業圧迫」と猛反発している。
日本郵政グループは純利益4826億円のうち93%を金融2社に依存している。6200億円を投じてオーストラリアの物流大手トール・ホールディングスを買収したのは、「成長戦略不在」との批判をかわす狙いがある。「金融2社を完全に民営化すれば、日本郵政は抜け殻だけになる」(金融筋)と揶揄する声もある。上場に当たり、日本郵政は10年後の自社の具体的な青写真を早々に示す必要に迫られている。
市場筋の間では、NTT株の再来と囃し立てられている。1987年上場のNTT株は公開価格119万7000円に対し、上場初日は値がつかず、翌日ストップ高の160万円で初値を形成し、2カ月余りで318万円まで高騰した。NTT株の公開は、バブル相場の初期に個人投資家を一気に拡大する起爆剤となった。
ただし、その後のバブル崩壊とともに、NTT株は長らく低迷状態が続き、近年大幅な上昇を演じたものの、権利落ち換算の実質ベースで依然株価は初値(160万円)には届いていない。
大手証券会社はNTT株の上場を「株式投資の大衆化」の突破口に使い、メディアもこぞって購入を囃し立てた。そのため、個人投資家は証券会社の店頭に行列をつくってまで先を争ってNTT株を買ったが、結局「ババをつかまされる」結果となった。
日本郵政の大型上場がNTTの二の舞にならないという保証はどこにもない。上場前の最後の決算となる15年4〜6月期決算の連結純利益は、前年同期比2%増の1426億円。収益の柱である金融2社は金利低下で運用収益が低迷。郵便・流通事業の赤字も解消できていない。
(文=編集部)
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