4. 2015年9月01日 10:12:02
: OO6Zlan35k
今週のキーワード 真壁昭夫 【第394回】 2015年9月1日 真壁昭夫 [信州大学教授] 次の金融恐慌は2017年か!?“10年周期説”の信憑性金融市場は安定を取り戻すがいずれ中国の問題表面化は避けられない ?中国政府が矢継ぎ早に対応策を打ち出したが、世界の金融市場では依然として不安定な動きが続いている。ただ今後、リスク回避のために株式や原油などの先物を売っていた投資家の買い戻しが入ると見られ、早晩、金融市場は安定した展開を取り戻すだろう。
?しかし、長い目で見ると、中国経済が抱える問題が片付いたわけではない。今後、数年というスパンでは、同国の経済や政治体制などの問題点が表面化する可能性は高い。というよりも、それは避けることのできない必然と見る。 ?今回の金融市場の混乱の中で、最も顕著になったのは中国政府の慌てぶりだった。なりふり構わぬ強引な株価押し上げ策や、突然の為替レートの実質的な切り下げなどは、明らかに政策当局のコントロールの限界を露呈していた。 ?市場関係者から、「経済や金融市場の動向に関して、中国政府が制御できる範囲はかなり限定的だったことが分かった」との指摘は多い。今まで、何ごとも力づくで抑え込むことが可能と考えられてきた、一党独裁の政治体制にも限界が見えたとも言える。 ?今後、何かのきっかけで中国の問題が顕在化した場合、今回の世界同時株安を上回る混乱が発生することも想定される。世界第2位の経済大国が抱えるリスクを過小評価することは適切ではない。 ?中国の経済問題と欧米経済の減速などが運悪くタイミングが重なると、主要国の経済政策ののりしろが限られていることもあり、世界経済はかつての世界恐慌のような厳しい状況に追い込まれることも考えられる。そのリスクシナリオは、頭の中に入れておくべきだ。 中国経済が抱える本源的な問題点 このままでは世界にも影響不可避 ?元々、中国経済では個人消費の割合が低く、輸出と設備投資が経済を牽引するエンジン役を担ってきた。ところがリーマンショック後、世界経済が大きく落ち込んだこともあり、輸出の伸び率が鈍化した。 ?それに対して当時の胡錦濤政権は、4兆元(現在の邦貨換算約80兆円)に上る大規模な景気対策を打ち景気を浮揚させた。しかし、その景気対策は、結果的に国内の供給能力を一段と拡大することになり、足元の中国経済は大きな過剰供給能力を持つことになった。 ?そうした中国経済の体質を変えるためには、個人消費を拡大させて、輸出・設備投資依存型の構造をモデルチェンジすることが必要だ。それには中間層を育成することが重要になる。 ?高級品を志向しやすい一部の富裕層と、低価格商品への需要の大きい低所得層だけでは、国全体の有効需要を大きく拡大することは難しい。しっかりした購買力を持った中間層を拡大することは、中国経済の体質を変え、経済全体を安定させるためには必要不可欠だ。それは習政権も十分に理解しているはずだ。 ?しかし、現在の中国で、中間層を育成することは容易ではない。共産党一党独裁体制の下で、一部の政府関連機関や国有企業などが経済活動の中心を担っている状況を見ると、経済活動全般の効率化が遅れており、生み出した経済的な富を公平に分配する仕組みがワークしていない。 ?今後、中国政府は国営企業や金融市場の改革を断行すると同時に、社会保障制度などの改革を進め、国内の中間層を育成し経済構造のモデルチェンジを図ることが必要だ。それができないと、今回と同じように“チャイナリスク”の顕在化によって、世界の経済・金融に大きなマイナスの影響を及ぼすことは避けられない。 “10年周期説”を無視できない理由 世界経済で続くデフレ傾向 ?以前にもこのコラムで書いたが、金融市場には“10年周期説”という見方がある。1987年、1997年、2007年と末尾に7が付く10年毎の年に、世界の株式市場が大きく下落するイベントが発生した。 ?87年にはブラックマンデーがあり、97年にはアジア通貨危機、2007年にはサブプライム問題が発生した。この周期を適用すると、今から2年後の2017年に世界の株式市場が変調を来すとの見方だ。 ?この周期説を鵜呑みにするつもりはないが、足元の経済状況や米国の金融の金融政策変更の可能性などを考えると、2017年に世界的に株式市場が急落する事態が発生することも、あながち荒唐無稽と片づけられない部分がある。 ?そう考える理由の一つは、足元で世界経済のデフレ傾向が続いていることだ。大規模な過剰供給能力を抱える中国の卸売物価指数は41ヵ月連続マイナスで、明らかにモノを売りたい人が買いたい人を上回っている。 ?わが国では、日銀が異次元の金融緩和策を取ってデフレ脱却を目指しているが、原油価格の下落もあり、なかなかデフレ状況から明確に足を抜くことができない。また、相対的に期待インフレが高い欧米諸国でも物価水準は落ち着いたままだ。 ?そうした状況が続いている間は、世界経済全体が力強く回復に向かうことは難しい。ということは、企業業績の伸び率に限界があり、株価が大きく上昇することは難しいと見るべきだ。 ?逆に、そうした状況下で、“バブル”のように株価が急速に上昇するようだと、必ず大幅に下落する局面を迎えることは避けられない。特に、昨年夏場以降、景気減速が鮮明化しているにも拘わらず、株価が1年間余りで2倍以上に上昇した中国株がピークを打って、下落局面に入ることは時間の問題だったと言える。 中国と米欧の変調が重なり 政策対応もできないという最悪のリスク ?もう一つの理由は米国の金融政策だ。同国の金融政策が緩和から引き締めに転換されたことは、“10年周期説”における株価急落のきっかけの一つになった。 ?基軸通貨であるドルを司る米FRBの金融政策が、お金を潤沢に供給する緩和基調から、金利を引き上げ、市中に出回っているお金の一部を吸収する引き締めに転換することは、米国のみならず、世界の金融市場に大きな変化をもたらす。 ?米国の金利が上昇することによって、同国の株式市場から投資資金が流出し、市場が不安定化することが懸念される。また、新興国の金融市場に回っていた資金は、米国に回帰する=リパトリエーションの可能性が高まる。それが実現されると、新興国の株式市場が不安定な展開になりやすくなる。 ?今回の世界同時株安の前まで、FRBは9月に金利の引き上げを実施するとの見方が有力だった。仮に今年中にFRBが金利引き上げを実施すると、かつて10年毎に発生した株価急落の引き金になることも懸念される。 ?重要なポイントは、今後数年の間に、“チャイナリスク”が顕在化し、それに米国やユーロ圏経済の落ち込みが重なると、そのインパクトはかなり大きくなる可能性が高いことだ。市場関係者の一部には、「中国・欧米の経済が一度に下落すると、世界恐慌のような最悪のシナリオの可能性も否定できない」との悲観的な見方もある。 ?2008年のリーマンショックの時には、世界的な不動産バブルの後だったこともあり、多くの主要国経済はそれなりにパワーが残っていた。金融・財政政策にも一定の発動余地があった。 ?ところが足元の状況を見ると、わが国や欧米諸国に関しては、金融・財政政策にほとんどのりしろが残っていない。言ってみれば、主要国の政策当局は、政策発動の余地が限られた、ほとんど丸腰の状態で景気の落ち込みに対峙しなければならない。それは容易なことではない。 ?残念だが、その最悪のリスクシナリオが実現する可能性を完全に払拭することはできない。 http://diamond.jp/articles/-/77643
[12削除理由]:管理人:無関係の長文多数
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