4. 2015年9月01日 10:57:46
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「上野泰也のエコノミック・ソナー」 株安の震源地・中国で目撃した「落ち武者」
2015年9月1日(火)上野 泰也 (写真:AP/アフロ) 中国・上海総合指数が当面の下値メドとみられていた3500や3000を下回る急落となる中で、世界的な株価大幅安の連鎖が発生した。ニューヨークダウ工業株30種平均の8月21日終値は1万6459.75ドル(前日比マイナス530.94ドル)。週明け24日は下げ幅が一時は1089ドルに達し、終値は1万5871.35ドル(前週末比マイナス588.40ドル)になり、25日も続落した。
カネ余り相場であると同時に「官製相場」の性格を有しているため下げ余地が限られると考えられていた日経平均株価やTOPIXも、「リスクオフ」方向のマーケットの巨大な力には抗し切れず、急落した。日経平均株価の終値は24日が1万8540.68円(前週末比マイナス895.15円)、25日が1万7806.70円(前日比マイナス733.98円)である。 26日には日米ともに株価は大幅反発となったものの、大きく下げた後に起こり得る自律反発の範囲内と見なすべきだろう。 米国株が大きく下げるタイミングは、筆者が予想していた年明けよりも早くやってきた。また、きっかけはユーロ圏の金融政策動向ではなく、中国だった。 もっとも、筆者は7月の時点で、以下の警告を会社のリポートを通じて発信していた。 「米国の住宅バブル崩壊後の『リーマンショック』などで大きなダメージを受けた世界経済は、量的緩和などの無理な金融緩和によって資産価格や経済成長率が『かさ上げ』される中で、表面的にはかなり回復が進んだように見える。だが、そうした『かさ上げ』部分がなくなってもしっかり歩き続けることができる状態に戻ったわけではない」 中国経済の「幹」はどこまでダメになったのか 「地域ごとに経済の回復度合いにはかなりのばらつきがあると同時に、ちょっとしたボタンの掛け違いから市場発で不安定化しやすい要素を数多く内包している」 「一つ指摘しておきたいのは、中国の株式市場で『官製バブル』が崩壊したことをうけて、『では日本の株式市場では「官製相場」の耐久力はどの程度強いのだろうか』という不安心理が、内外の投資家の間で生じやすくなったということである」 中国人民元が突然、8月中旬に事実上切り下げられた際には、この動きが他国の経済に及ぼす直接の影響は大きくないといった楽観的な主張が市場でけっこう聞かれていた。 だが、そうした為替相場や株価といった「枝」の部分が問題なのではなく、本当に重要なのは中国経済という「木の幹がどこまでダメになっているのか」という点だという強い問題意識を、筆者は有している。 実態が見えにくい中国経済に大きさが分からない下振れリスクが存在しているという状況は、日経平均株価がとりあえず反発した後もほとんど変わっていない。崩壊した不動産バブルの後始末をするための抜本的な対応策が中国の当局によって講じられたわけではなく、輸出・設備投資主導から個人消費主導へのシフトという中国の経済が必要とする構造改革が急に進んだわけでもない。 そして、市場は「先が見えない」ことへの不安心理から動揺しやすいという性質を、常に帯びている。第2の経済大国である中国が人民元切り下げに動いたことで、世界経済は「視界不良」に陥ったと言わざるを得ない。「中国経済は実際にはどこまで悪いのか」という問いに、すぐ答えが出てくるわけでもない。 さらに、実体経済が生み出している付加価値との対比で、日本の「マネー経済」の象徴である東証1部時価総額は膨らみ過ぎており、バブルの域に足を踏み入れているので危ういという警告を、今回の株価急落前に筆者は何度も発していた(当コラムでは4月28日配信「この株価上昇は、かなり危ない」)。 このように整理して考えてみると、今回の世界的な株価急落の連鎖は、程度の差はあるにせよ、起こるべくして起こったものだということが、おのずと理解されるだろう。 中国・丹東で目撃した個人投資家 世界的な株価急落の震源地になった中国を、筆者は休暇中の8月19〜23日に訪れた。主な目的は、北朝鮮との国境近くにある中国の2つの都市(吉林省延辺朝鮮族自治州・延吉と遼寧省・丹東)から、北朝鮮の様子を見ることである。 実は筆者には、1992年9月に名古屋発のチャーター便を利用したツアーに参加して、北朝鮮のピョンヤンとケソン(開城)・板門店を訪れた経験がある。それからずいぶん時間が経ったので、好奇心がうずいた次第である。現地で見聞したことは後日に別途お伝えする所存だが、ここでは丹東の証券会社で目撃した現地の個人投資家の様子をご報告したい。 筆者は個人旅行中、やや長い距離はバスや地下鉄などの公共交通機関を使って移動しつつ、サンダルがすり減るほど街歩きをするのが常である(普段から身体は鍛えており、体脂肪率は10%前後を維持している)。中国はバスの料金がわずか1元なので動きやすい。今回の旅では、街で見つけた現地の証券会社の店舗に何度か入ってみた。 8月21日、丹東の中心街でのことである。遅い昼食を取った後、上海市場の取引が終わる直前の時間に偶然、証券会社の店舗を1つ見つけた。ビルの2階にあり、中型のスクリーンに主な銘柄の現在の価格がリアルタイムで表示されていた。机上のパソコン画面を見ると、上海総合指数はずるずる下げて、この日の終値は3507.74。7月8日に記録した水準とほぼ同じになってしまった。当局が発動した各種株価対策の効果がすっかり帳消しになってしまったわけである。 すると、フロアの奥にあるため最初は気付かなかったのだが、2つのトレーディングルーム(それぞれにパソコン端末のあるブースが20ほど設置されている)から、中年男女を中心とする個人投資家の集団がぞろぞろと出てきて(中国人にしては珍しく)口数が少ないまま階段を降り、街中に散っていった<写真>。 この場面を目撃して筆者の脳裏に浮かんだ言葉はずばり、「落ち武者」である。この人々の中には、政府を信じて株を買い、政府の株価対策を信じて売らずに我慢したり買い増しをしたりしてまたも裏切られてしまった人が、少なからずいたのではないかと想像される。
中国中央電視台(CCTV)総合の毎朝のニュースは、天津の爆発事故、9月3日に行われる抗日戦争勝利70年記念軍事パレードの準備、そして北京で開幕した世界陸上の関連がほとんどだった。 8月22日の現地英字紙「チャイナデイリー」を見ても、株価下落の記事はさほど大きくなく、当局の対策として掲載されていたのは中国証券監督管理委員会(CSRC)が不正取引の監視を継続するということと、香港・マカオの金融機関への本土証券市場の一層の開放の2つだけだった(その後、23日には年金基金による株式投資を認めることが発表された)。 中国では土日も銀行の支店が個人向けに朝から夕方までしっかり営業しているのだが、預金準備率や金利の引き下げといった金融緩和策が発動されることはなかった。 筆者が帰国した後、週明け24日の上海総合指数は一時9%を超す急落となり、終値は3209.91。6月12日につけた直近高値からの下落率は38%に達した。中国全土の「落ち武者」から、見切り売りがかなり出たということなのだろう。中国人民銀行は25日も上海総合指数が下がって3000も割り込んだ後、金利と預金準備率の引き下げという2つの金融緩和策を打ち出した。だが翌26日も中国株は下落。上昇したのは27日になってからである。 中国政府と市場に大きな認識のギャップ 今回の世界同時株安に際して市場で蔓延したのは、中国による本格的な経済対策発動への期待感である。だが、その中国は「リーマンショック」後の4兆元という大規模な景気刺激策が不動産バブルの発生につながるなど自国の経済に大きな問題を生じさせてしまったという、強い反省の念を抱いているようである。 また、人民銀行による金利引き下げや預金準備率引き下げといった今回の金融緩和は、結局のところ弥縫策にしかならない上に、金融政策を株価動向と強くリンクさせることには望ましくない面がある。 筆者が現地のニュース映像で見た習近平国家主席や李克強首相の表情は、意外に明るかった。中国の外交にとって極めて大きなイベントである9月3日の式典・軍事パレードを控える中で、経済はとりあえず二の次といったところなのだろうか。 あるいは、先進国の経済政策が身動きしにくい中で中国が「キャスティングボート」を握ったような形になっており、自国の影響力が一昔前よりも格段に向上したことについて一種の満足感のようなものを覚えているのかもしれない。筆者はこんなことさえ想像してしまった。 もっとも、彼らが経済やマーケットの状況をしっかり把握して事態をコントロールできているとは市場の側は思っておらず、そこに大きな認識ギャップがあるのだが・・・。 このコラムについて 上野泰也のエコノミック・ソナー 景気の流れが今後、どう変わっていくのか?先行きを占うのはなかなか難しい。だが、予兆はどこかに必ず現れてくるもの。その小さな変化を見逃さず、確かな情報をキャッチし、いかに分析して将来に備えるか?著名エコノミストの上野泰也氏が独自の視点と勘所を披露しながら、経済の行く末を読み解いていく。 http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/248790/082800010/ 2015年 09月 1日 10:04 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス アングル:中国などが「量的引き締め」、経済防衛へ外貨売却 [ロンドン 28日 ロイター] - 世界の主要中央銀行は2007─08年の金融危機とその後の景気後退がもたらした悪影響を和らげるため、量的緩和(QE)が持つ力を信じて金融システムに潤沢な資金を流し込んできた。
先鞭をつけたのは米連邦準備理事会(FRB)で、バトンを引き継ぐ形で欧州中央銀行(ECB)が今年になって1兆ユーロ規模の債券買い入れプログラムを始動させ、日銀もまた大規模緩和を続けている。 ただここにきて「量的引き締め(QT)」とでも呼ぶべき逆の力が勢いを持ちつつある。中国が急激な資金流出から自国経済と市場を守ろうと外貨を売却し、他の新興国も追随しているためだ。 シティグループのアナリストチームの推計では、過去1年程度で見ると世界の外貨準備額は毎月平均590億ドルのペースで減少し、この数カ月間では減少ペースが1000億ドルに迫っている。 別の大手グローバル行筋は、新興国は8月だけで計2000億ドルの外貨を売却し、そのうち1000億─1500億ドルは中国だった可能性が大きいとの見方を示した。 ドイツ銀行の通貨アナリスト、ジョージ・サラベロス氏は「中国からさらに資金が流出する可能性は相当に大きい」とした上で、QTがもっと進むと懸念される点が重要だと述べた。 中国の外貨準備は世界で群を抜く規模で、大半は米短期国債や米国債などのドル建て資産。6月末時点では総額は3兆6900億ドルだった。ただ1年前に過去最大の約4兆ドルを記録した外貨準備はじりじりと減少傾向にあり、一部はドル高を受けた為替介入に回されているものの、最近は完全な資産売却が主因となりつつある。 こうした中国やその他新興国による米国債売却は大きな影響をもたらす可能性を秘めている。 シティがさまざまな調査研究をもとに試算したところでは、米国の国内総生産(GDP)の1%相当の外貨準備が減少すると、米10年国債利回りは15─35ベーシスポイント(bp)押し上げられるとみられる。 ノムラの中国チーフエコノミスト、Yang Zhao氏は、中国人民銀行(中央銀行)が7月と8月に1000億ドルに迫る外貨準備の売却に動いたと見積もっている。 同氏は「われわれの計算によると中国から7月に900億ドルの資金が流出したが、為替レートは変化しなかった。これはつまり人民銀行が1000億ドル近くの外準を売ったと推察される。人民銀行は人民元を3%安く誘導した後は、下支えのために積極的な介入を始めた。だから8月も、売却額は1000億ドル目前になっただろう」と説明した。 コモディティ価格の急落と中国などの成長懸念を背景に、新興国から資金が逃げ出している。調査と資産運用を手掛けるクロスボーダー・キャピタルによると、過去1年間に新興国から出て行った資金は約1兆ドルで、そのうち中国からが7500億ドル強を占める。 これに伴って多くの新興国の中銀は、通貨安を食い止めるために外準を使わざるを得なくなった。 一方で人民元切り下げをきっかけにした世界的な「通貨戦争」が激化するとの懸念が広がり、新興国通貨が値下がりする流れが再び強まって、ベトナムドンやカザフテンゲなどが切り下げに追い込まれる事態も生じている。 http://jp.reuters.com/article/2015/09/01/markets-global-reserves-idJPKCN0R12BM20150901?sp=true
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