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日本生命、「まさか」の買収で背負った火種と荷物 首位奪還以外に恩恵なしか(Business Journal)
http://www.asyura2.com/15/hasan100/msg/233.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 8 月 31 日 01:00:40: igsppGRN/E9PQ
 

                    日本生命保険本社(「Wikipedia」より/663highland)


日本生命、「まさか」の買収で背負った火種と荷物 首位奪還以外に恩恵なしか
http://biz-journal.jp/2015/08/post_11331.html
2015.08.31 文=黒羽米雄/金融ジャーナリスト Business Journal


 日本生命保険の恐るべき執念を見せつけた一手――。

 8月26日、日生が三井生命保険を買収することが明らかになった。買収金額は3000〜4000億円に上り、買収を完了すれば、売上高に相当する保険料等収入は単純合算で5兆8822億円(2015年3月期ベース)と、国内トップの第一生命(同5兆4327億円)を上回る。ただ、王者のプライドを維持するための買収策は「ガリバー」を苦しめる諸刃の剣にもなりかねないことを、業界内のだれもが感じ始めている。

「まさか本当に買うとはね」

 中堅生保幹部はこう苦笑する。日生が三井生命に関心を示していたのは、業界内では周知の事実だった。15年3月期に保険料等収入で首位陥落が確実になった後、第一を抜き返すための案件を探し続けていた。競合の大手生保に比べて、日生はリスクの高い海外企業の買収には消極的。まずは国内企業の買収で首位奪還にメドをつけるとの見方が支配的だった。

 三井は保険料等収入が5000億円程度と首位奪還の規模としては十分だ。出資先の旧ニッセイ同和損害保険が三井住友海上火災保険と経営統合した経験もあり、三井生命のメーンバンクである三井住友銀行との関係も遠くない。
 
 一方の三井も中長期的な成長戦略を自社では描きにくいのが現状だった。国内市場の成長が緩やかになった前提に立っても凋落が止まらない。保険料収入は過去20年で約5分の1に落ち込んでおり、早晩、提携相手を探す必要性があった。

■買収の効果

 焦点は今回の買収の効果だ。団体保険の強化や銀行での保険商品の底上げにつなげると報じられているが、額面通り受け止める業界関係者はいない。

「日生にとって、三井の買収が首位奪還以外にもたらす恩恵は見当たらない。三井が三井系企業の多くの団体保険を抱えているのは事実。だが、銀行窓販は強いわけでない。4000億円も投じる価値があるのか疑問だ」(経済記者)

 むしろ、日生は負の遺産を抱え込むことになりかねない。日生も三井も国内の営業職員が稼ぎ頭。買収すれば、大勢の生保レディーを必然的に抱え込むことになる。

「三井は労働組合が強い。人員に余剰感もあるし、従業員の権利意識も強い。かつて、銀行が送り込んできた『傭兵』を返り討ちにした事件があったほど。日生の悩みの種になるのでは」(外資系生保社員)

 事件が起きたのは2012年のことだ。三井の改革が進まない状況にメーンバンクの三井住友銀行がしびれを切らし、外部人材の登用を積極化した時期があった。例えば、三井生命の津末博澄会長(当時)は、片岡一則氏(現オリックス生命保険社長)を営業担当役員に招聘。片岡氏は米AIGグループを中心に外資系金融機関を渡り歩き、リストラの手腕を期待されて登用された。

 日本企業も外部から優秀な人材を役員登用するのは今や珍しい話ではないが、旧態依然とした日系の生命保険会社では極めて異例。加えて片岡氏が登用されたのは生保会社の「聖域」とされる営業畑だけに、前代未聞の人事だった。

 片岡氏はかつて勤めていた旧AIGエジソン生命保険(現ジブラルタ生命保険)の部下を引っ張ってきたほか、新しい営業職員の採用制度の開始に伴いコンサルタントを雇い入れた。新陳代謝を急いだが当然、逆風も強く、1年半あまりでオリックス生命に転じた。表向きは業績不振の責任をとらされた格好だが、メーンバンクのお墨付きの肝いりの人事だっただけに、業界内が騒然となったのは想像に難くない。

「片岡さんが新卒後に入社したのは千代田生命保険(現ジブラルタ生命保険)。護送船団方式時代の『ゆるい時代』を知っている。その後、外資畑を歩み、久々に日系生保に戻ったわけだが、営業所の現場を見て『ここの会社は何十年も時が止まっているのでは』と驚いていた。解任されたともっぱらだが、自ら見切りをつけたのかもしれませんね」(三井生命元社員)

■大きな「荷物」

 住友生命との合併が過去何度も噂に上ったが実現しなかったことの背景には、そうした三井の体質があるともいわれている。住友生命関係者は「あっち(三井)はうちとくっつけば助かるかもしれないが、言葉は悪いがこっちは迷惑なだけ」とささやく。

 三井の買収によって、日生は必達目標である「首位奪還」を果たすであろうが、同時に大きな「荷物」を背負わされることにもなる。もちろん、業態が近い会社だけに大規模なリストラを断行できれば効果は大きいが、大ナタを振るう覚悟は日生にあるのか。「思い切った決断ができるようだったら、そもそも第一に抜かれない」(生保関係者)と揶揄する声も聞こえてくる。

 三井という首位奪還の起爆剤は、大きな火種になる可能性も高い。

(文=黒羽米雄/金融ジャーナリスト)

 

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