http://www.asyura2.com/15/hasan100/msg/219.html
Tweet |
[エコノフォーカス]バター不足でも輸入拡大NO?
政府、乳製品全体の需給調整重視 しわ寄せは消費者に
バターの品不足が続いている。都内のスーパーでは「お一人様1点限り」といった購入制限も見られ、価格も上昇傾向だ。政府は年内にバターを1万トン追加輸入するが7月末の環太平洋経済連携協定(TPP)交渉ではニュージーランド(NZ)による乳製品の輸入拡大要求に強く反対した。足りないのに輸入拡大をためらう理由を探った。(御調昌邦、古賀雄大)
「昨秋から満足な入荷ができない深刻な状況が続いている」。東京・練馬の食品スーパー、アキダイではバターを仕入れても1カ月の約4分の1は店頭に必要な商品が足りない状況になる。
総務省の統計によると、東京都区部の7月の小売価格(箱入り、200グラム)は436円で1年前より21円高い。東京・世田谷のアーモンド洋菓子店は「国産品にこだわりがあり、欲しい量の6割くらいしか確保できない」と打ち明ける。
バターが品薄な理由は大きく2つある。まず、酪農家の離農が広がり、乳牛の頭数もバターの原料になる生乳(搾ったままの乳)の生産も細り気味なことだ。
2015年の酪農家戸数は前年比5%減の1万7700戸。この10年で1万戸減った。14年度の生乳生産も前年度より1.6%少なく、2年連続減だ。業界は今年度の生産をほぼ前年度並みと見込むが「猛暑で生産が落ちる恐れもある」(生産団体関係者)という。
もう一つはバターの輸入がコメや麦などと並んで政府が輸入量や価格水準を厳しく管理する「国家貿易」の下にあることだ。輸入は原則として独立行政法人の農畜産業振興機構が担う。民間による輸入には国産品の卸売価格を上回るように高率の関税をかけている。
農水省はなぜ自由貿易を認めないのか。それはバターや脱脂粉乳が生産量の不安定な乳製品全体の「需給の調整弁」だからだ。林芳正農相は「生乳はバターになるし牛乳としても飲める。難しい需給のバランスを取る面がある」と解説する。
酪農家は生乳をまず鮮度が大事で利益も出やすい飲料用の牛乳に充て、残りを生クリームなどに回す。保存しやすく取引価格の低いバターや脱脂粉乳は後回しとなる。
14年度の場合、牛乳向け生乳は1.4%減で供給に大きな支障は来さなかった。しかし、バター・脱脂粉乳向けは4.1%減と不足に陥った。
バターという需給の調整弁がないと余った生乳は捨てなければならず、酪農家の経営は不安定になる。1万7700戸の酪農家を保護する結果、しわ寄せは消費者や食品・外食産業に行く。農林系議員も「バター不足の中で需給安定のために国内生産者を保護すべきだと説明するのは容易でない」と漏らしている。
製品、TPPでも争点
バターを含む乳製品の輸入問題は、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉でも大きな焦点だ。
「一部の国は法外な要求をしている」。甘利明経済財政・再生相は7月末に米ハワイ州で開いたTPP閣僚会合の閉幕後、ニュージーランド(NZ)による乳製品の交渉姿勢を非難した。
日本はNZ、米国、オーストラリアの3カ国向けに生乳換算7万トン程度(バター換算で約5700トン)の低関税の輸入枠を認める案を用意した。農林系議員に言わせれば「ギリギリの譲歩案」だが、年内に予定するバターの追加輸入の「1万トン」と比べても少ない。当然のようにNZのグローサー貿易相は大幅に上回る要求を突きつけた。
農林水産省の資料によると、NZの生乳1キログラムあたりの生産費は約27円。日本の3分の1以下だ。日本乳業協会は「いかに合理化努力をしても(海外との)差を埋めることは不可能」という。一方「農業であっても効率化すれば各国と競争できる」(法政大の小峰隆夫教授)との声もある。
TPPは本来、各国が市場を開き、生産性の高い国が生むモノやサービスを自由に取引して利益を共有する仕組みだ。東大の伊藤元重教授は「理想をいえば農業分野も開放すべきだが、現実には国内政治などを瀬踏みする必要がある」と自由貿易の難しさを指摘する。
[日経新聞8月24日朝刊P.3]
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民100掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。